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更生保護のあり方を考える有識者会議(第7回)議事概要

1 日時

平成17年12月8日(木)午後2時から午後5時15分まで

2 場所

最高検察庁大会議室

3  出席者

(委員等,敬称略)
(座長)野沢太三(社団法人日中科学技術文化センター会長・元法務大臣),(座長代理)金平輝子(日本更生保護女性連盟会長・元東京都副知事),(委員)清原慶子(三鷹市長),佐藤英彦(前警察庁長官),瀬川晃(同志社大学法学部教授),田中直毅(21世紀政策研究所理事長),堀野紀(弁護士),本江威憙(公証人・元最高検察庁公判部長),桝井成夫(読売新聞東京本社論説委員)(委員・50音順)
(法務省)
 樋渡利秋法務事務次官ほか
(事務局)
 麻生光洋事務局長ほか

4  議題

(1) 保護観察所における性犯罪者処遇プログラムの概要について
(2) 更生保護の担い手のあり方等について(事務局説明及び意見交換)
(3) 中間報告について(意見交換)

5  会議経過

(1) 事務局から,保護観察所における性犯罪者処遇プログラムの概要について,別紙1【PDF】により説明したところ,以下のような質問等がなされた。
・  このプログラムは,どのような保護観察官が行うのか。また,このプログラムを実施するための研修期間はどのくらいか。
(回答 :詳細は未定だが,比較的経験を積んだ保護観察官を予定している。また研修は4日間程度を2回実施することを予定している。)
・  イギリスでは,性犯罪処遇プログラムを受けた者の再犯率は,受けていない者の3分の1程度ということであり,明らかに有意差がある。また,性犯罪者処遇プログラムのほか,薬物事犯者等に対するプログラムも行われており,日本でも,可能なところから順次拡大していくことを検討してほしい。
・  最近の法律や社会学,心理学等の分野は医療分野の影響を受けており,エヴィデンス・ベイストということが強く叫ばれている。きちんと効果があるのかというエヴィデンスが重要であり,効果があるか等については今後も継続して検証してほしい。効果がある者もいれば,ない者もいるので,効果がある者とない者に分けてきちんと検証してほしい。
・  地域では,性犯罪を未然に防いでほしいという要望が強いので,このプログラムの検証を通じて,教育現場等において情報共有を行い,予防的なプログラムの策定にも結び付けてほしい。
(2) 事務局から,更生保護の担い手に関する統計等について,別紙2【PDF】及び別紙3【PDF】により説明を行った後,更生保護の担い手のあり方等について意見交換を行ったところ,各委員から,以下のような意見が述べられた。
・  保護観察官と保護司との関係については,よく協働態勢と言われるが,その法律上の根拠はどこにあるのか。法改正をし,保護観察官の職務内容を明記するべきである。
・  保護観察官に求められるのは専門性だと思うが,現状では,むしろ保護司が専門性を有しており,保護観察官のは「事務処理能力の専門性」ではないか。
・  保護観察官の専門性は,一つは保護観察対象者の社会復帰を容易にするための支援のあり方や対象者の心理をよく理解できるという専門性であり,もう一つは再犯の予兆を的確に嗅ぎ分けて適切に判断することの専門性だと思う。心理学や社会学はこの専門性を鍛えるための道具として必要な学問に過ぎない。
・  保護観察官には,人間と向き合うことについての専門性,そして,対象者との信頼関係を築くための人間的な素養が必要である。
・  保護観察官の人数が圧倒的に少ないことが,保護観察官に様々なことを諦めさせ,また,処遇の密度等を薄めさせ,現在のような状況になってしまったことの一つの要因ではないか。まずは,一定程度の人員を確保し,その上で24時間体制の導入等について検討すべきである。
・  保護観察官の専門性を担保する社会的な基盤整備がなければ,保護観察官が生涯をかけてこの仕事を行うことはできない。そのためには,専門試験を設けることが必要である。
・  保護観察官になりたいというモチベーションの高い人を採用することが望ましく,保護観察官の採用のあり方自体を見直す必要がある。また,望ましい保護観察官を育成する研修システムになっていないことも問題である。
・  小さい組織であるが故に,保護観察官一人当たりの事務も膨大で仕事が追いつかなくなり,内向きな組織になっているのではないか。保護観察官が高いモチベーションを持つことができるようなシステムを検討する必要がある。
・  地区担当制と合わせて,覚せい剤事犯者や性犯罪等,対象者の問題・機能別に対応できる専門の保護観察官を養成し,一人の保護観察官が二役も三役も担えるようにするなど,今いる人たちに上手に働いてもらうシステムのあり方を工夫することが重要である。
・  別紙3【PDF】によれば,保護司の有給化について,73%が「有給化はすべきではないが,実弁をもっと充実させるべき」と回答している。この数字だけ見れば,保護司に対する経費は問題ないのではないか。
・  この結果は,有給化すれば,ボランティアという高い精神性に基づく保護司制度が崩壊してしまう,しかし,保護司活動をするのに当たり,もっと国で経費を面倒見てほしいということを現しており,意味深い。今こそ,この問題を解決したい。
・  有給化の問題は,保護司の精神構造を象徴的に現していると思う。保護司は無償の社会貢献を大切にしている。金を貰わないからこそ保護司の活動はできるという声を多く聞く。保護司は精神的に非常に高邁な人達の集まりで,人類の歴史の中でも奇跡に近い稀な存在である。報酬制の導入には反対する。報酬制を導入すると,保護司の精神構造を大きく変え,異質なものにしてしまう。
・  一般国民としては,保護司組織に潤沢に資金を出せるようにして,お力を貸してくださいというのが本来の姿だろう。
・  保護司個人に対する実費弁償金の充実と,保護司組織に対する予算の裏付けの両方が必要である。現在の法律では,保護司個人にしか支払えないということなら,法改正し,保護司組織への活動経費を手当てしてほしい。
・  マンションに住んでいる保護司からは,プライバシーに配慮でき,かつ落ち着いて面接できる場所を確保してほしいとの要望や保護観察官のスーパーバイズが適切に受けられる条件整備についての要望が多かった。中間報告には,保護司の持つボランタリーな面の良さを尊重しつつ,活動し易くなるよう,きめ細かい支援内容を盛り込みたい。
・  専用スペースの件は,別紙3を見ても多くの保護司が望んでいることである。家族の協力も得られ易くなるし,この点も中間報告に盛り込むべきである。
・  保護司の専門性を高める必要があり,例えば少年専門保護司とか高齢者専門保護司など,機能分化を図ってもよいのではないか。精神科医や臨床心理士に保護司になってもらってもよいと思う。そして,こうした専門保護司には,報酬を出すべきである。
・  報酬は出すべきだし,公募を行うべきだと思う。現在の保護司制度は閉鎖的で,公募制にすれば,異質な人達が入ってくるのではないかと考えているのだろう。一定の体質変化を図る時期にきており,そのためにも報酬制の導入,公募制の導入が考えられるべきである。
・  保護司適任者の発掘について,推薦委員会を地方更生保護委員会単位に設けて,開拓する努力をすべきではないか。そして,この推薦委員会に関連して,公募制を導入してもよいのではないかと考える。
・  保護司法第3条に保護司の具備条件が書かれているが,この条件を満たす人は,比較的高齢な人に限られるのではないか。幅広い人に保護司になってもらうため,本規定自体を見直すべきである。
・  更生保護は,10年くらい前に「地域と共に歩む」という方向を明確にした以上,地方公共団体と共にあってよいのではないか。地方公共団体にすれば,助成金を支出する場合には自分のところに使いたいというのが普通で,保護区の中に複数の市町村がある場合に悩むところもあるのではないか。市町村単位に保護区を設けるというのが分かり易いし,市町村にしても協力しやすいと思う。現在のような保護区にこだわる必要はあるのか。
・  保護司の職務内容が明確でないことから,法改正をして,保護司の職務を明確にすべきである。
・  保護観察官と保護司の関係が不明確である。両者の関係について,現状はどうあるのか,そして今後はどうあるべきなのかを議論すべきではないか。
・  保護観察官の役割を考えることは,保護観察を刑事司法の一環としてとらえるかどうかにかかわっている。基本的に刑事司法は国の仕事であり,保護観察は保護観察官の仕事,保護司はこれを手助けするということになる。
・  刑事司法において,保護観察は何を受け持つべきかを議論しないといけない。
・  保護司の中には,保護観察官はやるべきことをやっているのか,または保護司はこれだけやっているのにもかかわらず,保護観察官は何をやっているのかなどの不満があると推測された。
・  保護観察官と保護司の関係を明確にしないと,保護区や保護司定数の問題も語れない。
・  日本の治安が守られているのは,保護司の果たしている役割が大きい。保護司の存在をもっとPRすべきである。
・  保護司制度の見直しが強調されすぎると,これまでやってきたことが間違っていたとの印象を与え,保護司に誤解を与えると思うが,これまで我慢してきたことについての見直しは図りたい。
・  民間の更生保護施設で保護しきれてない処遇困難者等の受け皿として,国立の更生保護施設を設置したい。
・  国立の更生保護施設を建設し,そこに特別保護司と優秀な保護観察官が常駐することにすれば,保護観察官の意識改革や保護司制度の見直しにもつながる。
・  地域の安心・安全が叫ばれる中で,更生保護施設の重要性は顧られない。再犯防止において更生保護施設が果たしている役割は大きい。視察を通じて更生保護施設の諸活動に感銘を覚えたが,これを感銘で終わらせてはいけない。
・  高齢者や障害者が刑務所を居住先としている現状を,ぜひ中間報告等に盛り込みたい。
・  更生保護施設が,保護観察所のほか地方公共団体や医療・福祉機関と連携できないと,本当の意味での社会内処遇にならない。更生保護事業法には地方公共団体の協力規定があるが,努力規定であり,実態を伴っていないというのが実情だろう。この機会に,地方公共団体との関係を明確化してほしい。
・  ハリケーン,カトリーナの襲撃により,アメリカ社会の幾つかの前提が崩れた。ハリケーンがきて被害が出ても,アメリカでは市民自治が成立し,ボランティアが多く,住民のふたりに一人が週に数時間ボランティア活動に従事しているような社会だから,連邦政府や軍隊が来なくても対応できると信じられていたが,実際には市民自治は成立せず,暴動まで起きた。大統領が現地に来ないことよりも軍隊がこないと秩序が保てなかったことが非常にショックなことだった。重大再犯の防止を考えるとき,保護観察官のあり方や保護司,更生保護施設の基盤強化で対応できるのか,そもそも議論する必要がある。保護観察官の専門性等だけで手当てできることとは思われない。我々に与えられた中で答えを出すことももちろん必要だが,こうした点を中間報告に書き込んでほしい。
・  日本社会の犯罪状況に照らし,根本にある原因を探り,それに対する改善策を投げかけることも必要だと思う。しかし,現時点ではそこまで手が回らない。更生保護は,刑事司法全体の中で,これまで日が当たらなかった分野であることは間違いない。更生保護から矯正等の他の領域に問題提起すると同時に,更生保護の領域でできることをしっかりやれば,それでよいのではないか。
(3) 第6回会議までの議論をもとに野沢座長が作成した中間報告(座長素案)について,その構成や内容のあり方について意見交換を行ったところ,各委員から,以下のような意見が述べられた。
・  現状認識の中に,更生保護制度,保護観察制度が再犯防止の上で貴重なシステムであること,保護観察制度は,刑事政策に止まらず,刑事司法の一環であること,保護観察官が不足していることの三点を盛り込んでほしい。
・  更生保護の現状には問題があり,そのために再犯防止機能を十分に発揮していないとあるが,少なくとも私はこういう認識には至っていない。改善更生という観点から余りにも弱体だから問題とされているのではないか。
・  本会議が再犯防止に寄与するという観点から立ち上げられた経緯からして,中間報告は再犯防止に考慮した内容になっているべきである。
・  再犯防止を強調しすぎて,社会内処遇を萎縮させるような印象を与えるのはよくないと思う。
・  「国民の理解」とか「国民の信頼」が必要だと思われるが,具体策に乏しい。
 なお,今後の手続きについては,各委員の意見を踏まえて,座長が中間報告(案)を作成し,各委員の了解を得た上で,できる限り年内に法務大臣に提出するとともに,公表することとされた。

6  今後の日程等

次回は,平成18年1月26日(木)午後2時から開催する予定。


(文責 更生保護のあり方を考える有識者会議事務局)

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