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更生保護のあり方を考える有識者会議(第10回)議事概要

1 日時

平成18年3月14日(火)午後2時から午後5時35分まで

2 場所

最高検察庁大会議室

3  出席者

(委員等,敬称略)
(座長)野沢太三(社団法人日中科学技術文化センター会長・元法務大臣),(座長代理)金平輝子(日本更生保護女性連盟会長・元東京都副知事),(委員)佐伯仁志(東京大学法学部教授),佐藤英彦(前警察庁長官),瀬川晃(同志社大学法学部教授),田中直毅(21世紀政策研究所理事長),本江威憙(公証人・元最高検察庁公判部長),桝井成夫(読売新聞東京本社論説委員)(委員・50音順)
(法務省)
 樋渡利秋法務事務次官ほか
(事務局)
 麻生光洋事務局長ほか

4  議題

(1) 全国更生保護法人連盟からのヒアリング
(2) 刑務所出所者等の自立更生の支援について(更生保護施設のあり方)(意見交換)
(3) 重大再犯防止のための指導監督のあり方について(取りまとめ)
(4) 保護観察における新たな制度(権限)の導入について(意見交換)

5  会議経過

(1) 全国更生保護法人連盟の木藤繁夫理事長等から,中間報告に対する意見として,別紙1【PDF】及び別紙2【PDF】により説明がなされた後,以下のとおり質疑応答がなされた。
・  現状の更生保護制度の問題点のひとつとして,本来は仮釈放や保護観察付執行猶予に馴染まない者が当該処分に付されていることが指摘できる。そうだとすると,その解決方法のひとつとして,仮釈放許可基準,保護観察官と保護司の役割分担,処遇のあり方等を考えていくべきであろう。仮釈放になじまない者を排除することが必要であり,その関連で満期出所者への対応のあり方も考えていくべきではないか。
(回答 :我々は,対象者の改善更生の結果,再犯が防止されると考えているが,再犯をしない人間にさせることによって改善更生が図られるということも事実でり,改善更生と再犯防止は,相互に目的と手段の関係にあると考えるべきである。確かに,所在不明者対策等対応が不十分な部分もあるが,目の前に対象者がいる状況において,保護観察官や保護司の手が及ばず,再犯防止が機能していないということはない。また,本来仮釈放になじまない者が保護観察に付されているという指摘については,満期で釈放する方が社会にとって危険であって,逆に,もっと仮釈放を積極化すべきであると考える。本来仮釈放になじまない者を敢えて保護観察に付すことは相応のリスクを伴うことであるということについて国民にきちんと説明し,理解してもらうことが重要だと思う。)
・  別紙2で書かれている中間処遇施設と刑法改正との関係について,具体的に説明してほしい。
(回答 :別紙2の中で書いている中間処遇施設は,対象者に施設への居住を命じ,国が斡旋する就労先で就労させるものであり,矯正施設における懲役刑と比較すると,自由の制限は比較的少ないものの,居住の自由等において制約がある。こうした点から,従来の刑の一執行形態という範疇には入らないと思われるので,刑法の改正が必要だと思う。)
・  上記中間処遇施設については,いわゆる矯正施設の延長上にあるような存在として考えているのか,それとも現行の更生保護施設の権力的関与を強めたものを考えているのか。
(回答 :本質的には更生保護が担うべきことであるが,更生保護官署のみでは対応できないと思われるので,矯正の人的援助等が必要だと思う。)
・  公的な更生保護施設の創設が最終提言の柱のひとつになると考えているが,今後,この議論をする場合に,民間の更生保護施設との兼ね合いから注意すべきことは何か。
(回答 :一番大切なことは処遇の多様化である。対象者一人ひとりの問題点に的確に対応できるような処遇形態が用意されていることが必要であり,その処遇をするために,どんな施設が必要かという議論になるだろう。上記中間処遇施設は,権力的関与の強いものを想定しているが,もっと権力的関与の弱いものがあってもよい。更生保護施設の機能にバラエティがあってよいし,一つの施設が複数の機能を持つことも必要である。民間の更生保護施設は十分に役割を果たしており,公的な施設ができたとしても,民間の存在意義は失われない。)
・  更生保護施設は,経営状態を含めて非常に困難な施設運営をされていると思うが,実情を教えてほしい。
(回答 :職員の目が行き届くようにすること等を考えると,大規模な施設運営は困難であり,必然的に経営も苦しくなってしまう。)
・  更生保護施設自体が起業して,入所者をそこで働かせることの実現性や運営上の困難さはどうか。
(回答 :かつては授産施設を備えていた更生保護施設もあったが,今ではほとんどなくなった。利益を追求する形での運営は難しいと思われるが,職業訓練の場としての存在意義は大きいと思う。)
・  更生保護事業法第3条第2項に地方公共団体の協力に関する規定があるにもかかわらず,実際には地方公共団体との連携が十分でないように感じるが,いかがか。
(回答 :地方公共団体からは,更生保護は国の仕事なのだからと言われることが多い。今後は,更生保護施設が地方公共団体や住民にとって日常生活で役立つ存在となることが必要だと思う。)
・  近年,矯正施設は地方公共団体からの誘致が多くある。提案の仕方を工夫すれば,更生保護施設も地方公共団体から歓迎される存在になるのではないか。
(回答 :更生保護施設が矯正施設と異なる点は,自由の制限がないことと,就労させて自立させることが目的であるため,街なかに作らなくてはならないことである。この点で近隣住民の大半は反対であり,特に放火犯や性犯罪者は近隣住民からの反対が大きい。)
・  保護観察官(所)と更生保護施設の関係について,その実態はいかがか。
(回答 :官のバックアップ態勢がきちんとあれば,更生保護施設も安心して取り組めるし,それが収容率のアップにもつながる。)
・  更生保護制度に対する我々委員の共通認識として,犯罪者予防更生法には官の足らざるところを民が補うと規定されているにもかかわらず,現実にはこれが逆転していると理解している。再犯防止が国の責務だとすれば,官と民の役割分担は法律の規定どおりに行われるべきではないか。
(回答 :責任機関と実行機関とは分けて考える必要があると思う。確かに再犯防止は国の責務であるが,実際にこれを誰が実行するかは別問題である。現実の保護観察場面でも,保護観察官の指導のもとに保護司に処遇を任せる方が効果的な場合もある。個人的には,保護観察官の足らざるところを保護司が担うという規定そのものがおかしいと思う。)
・  保護観察官と保護司との役割分担が不明確であるという指摘についてはどう考えるか。
(回答 :不明確という側面もあるが,保護観察官と保護司が分担して行うという枠組みは定まっており,個々に対応しているにすぎない。突き詰めて考えると,一体何が不明確なのかということになるのではないか。)
(2) 刑務所出所者等の自立更生の支援,特に自立更生の場として大きな役割を果たしている更生保護施設のあり方に関し,事務局から,(1)更生保護事業の担い手,(2)民間の更生保護施設の経営環境の改善と機能の強化,(3)社会福祉との連携強化,(4)更生保護施設と地域社会との関係の観点から説明した上,意見交換が行われたところ,各委員から次のような意見等が述べられた。
・  高齢者や知的障害者等の受入れをどうするかを考えた場合,現状では,社会福祉と連携して何とかしようと努力しているが,困難が多い。こうした高齢者等の処遇困難者の受入れに当たっては民間では限界があるので,国立の更生保護施設が必要ではないか。民間の更生保護施設を拡充すると同時に,国立の更生保護施設が必要だと思う。
・  更生保護は刑事司法の一環であり,更生保護施設の仕事も本来国がすべきことではないか。民間にもっと尽力してもらうことはよいが,更生保護施設を国が建設することは当然である。
・  国立更生保護施設の建設が,この有識者会議の1つの方向性だと考えられるが,その際,PFIを活用することも当然考えられる。
・  更生保護施設では,被保護者の就労確保も必要であり,市街地に建設することが求められる。そうした観点から,保護観察所と同じ建物に建設したらどうか。
・  社会福祉との連携強化が必要なことはよく理解できる。この点について,これまで厚生労働省との間でどういう話が進められてきているのか。制度改正をしようとすれば協議の積重ねが必要だと思う。専門家や行政を入れて,法務省と厚生労働省との間で勉強会を立ち上げ,お互いの問題点を洗い出すような努力が必要だと思う。
・  刑務所に高齢者や病人が増えていることは現実であり,こうした人々には改善更生や再犯防止とは違う観点から考えなければならない。これは福祉との境界ということも含め,提言でしっかり触れておかなければならない。国はもとより地方公共団体も含めてどうしていくのかを触れておく必要がある。
・  保護観察官と更生保護施設との連携が重要だと思う。
・  大阪保護観察所を視察した際,直接処遇実施班に配属されている保護観察官と意見交換する機会があったが,直接処遇の経験をつむこともできるし,それによってケースワーカーとしての能力向上にもつながり,とてもよい制度だと思った。直接処遇の経験を積むことにより保護観察官ひとり当たりのアウトプットを何倍にも増やすことができる。是非提言に盛り込んでほしい。
(3) 前回(第9回)の会議で意見交換を行った重大再犯防止のための指導監督のあり方について,野沢座長が取りまとめ(案)を示したところ,各委員から意見等はなく,別紙3【PDF】のとおり取りまとめることで合意した。
 また,前回(第9回)の会議で更に検討を継続することとされた仮釈放許可の基準等についても意見が交わされたが,引き続き検討することとされた。
(4) 時間の関係で,保護観察における新たな制度(権限)の導入についての意見交換は,次回(第11回)の会議で行うこととされた。

6  今後の日程等

次回は,平成18年3月29日(水)午後2時から開催する予定。


(文責 更生保護のあり方を考える有識者会議事務局)

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