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第2回行刑改革推進委員会顧問会議

日 時: 平成17年2月2日(水) 14時00分~16時12分
場 所: 法務省第1会議室(20階)

午後2時00分 開会

○林総務課長 それでは,定刻となりましたので,会議を開催させていただきます。

法務大臣あいさつ

○林総務課長 まず初めに,法務大臣のあいさつがございます。滝副大臣,よろしくお願いいたします。
○滝副大臣 皆様方には,大変お忙しい中をこうしてお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 法務大臣は,今日から衆議院の予算委員会で本予算のための基本審査が始まったばかりでございまして,そちらの方に呼ばれております。本来であれば,ここに出席させていただいて,ごあいさつを申し上げるところでございますけれども,出られませんので,私,副大臣の滝実でございますが,代わりまして大臣のお気持ちをお伝えさせていただきたいと思っているわけでございます。
 南野大臣は,大臣就任に当たって,総理から,刑務所問題,行刑改革について特に力を入れるようにと指示されたこともございまして,この問題については,就任以来,大変思いを深くされているところでございます。そういう意味では,行刑改革会議から提出いただきました御提言について,ずっと取り組んでいるような状況でもございます。そして,就任以来,府中刑務所でございますとか,あるいは多摩の少年院でございますとか,あるいは東京拘置所,名古屋刑務所などを,時間をやりくりして,御自身で実地に視察もされてきたところでございます。
 そして今,法務省といたしましては,できるところから着手するということで,未決拘禁者の問題は別途譲ることにいたしまして,今回は受刑者処遇の部分について監獄法の改正をするという方針を決定し,この方針のもとに,ただいま立法作業を進めさせていただいているところでございます。
 そんなことで,本日は,ここに至る関係方面との協議の経過について改めて御説明させていただき,そして現在立案中の法案の概要についても御説明させていただいて,改めて顧問会議の皆様方の御意見を承ると,こういうような趣旨で,誠にお忙しいところを恐縮でございますけれども,お集まりいただいたような次第でございます。
 そして,一つ付け加えさせていただきますと,予算的には,かなり刑務所の整備の関係で確保させていただくことができました。御提言以来,自民党の各方面からも応援を賜りまして,施設整備についてはそれなりの金額を,こういう御時世の中で確保させていただきましたけれども,御提言で指摘された中で一番距離がございますのは,やはり職員ですね。刑務官の人数の確保については,なかなか指摘どおりには進んでいないというのが現状かと存じます。それにつきましても,後ほど矯正局長の方から経過の御説明をさせていただきますが,そんなような制約がございます。取りあえずはそういうようなことを前提としながらの立法作業だということだけを付け加えさせていただきまして,皆様方の御意見を賜れれば有り難いと思う次第でございます。
 開会に当たりまして,大臣のお気持ちだけをお伝えいたしまして,ごあいさつに代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

            〔法務副大臣 退席〕
○林総務課長 それでは,議事に入りたいと思います。
 本日の議題でございますけれども,大きく分けまして二つございまして,一つは,提言の中でも最重要課題とされております監獄法の改正に係る部分でございます。もう一つは,法改正を待たずに実施できる事項につきましての実施状況についてでございます。
 まず初めに,監獄法改正の大きな方針につきまして,矯正局長から説明をいたします。続きまして,監獄法改正の法案の概要につきまして北村官房参事官から説明をさせたいと思います。その上で,まずは監獄法改正の関係で皆様方に御議論いただきまして,その次に,法改正を待たずに実施できる方策の実施状況につきまして矯正局から報告をさせていただきまして,またそれについての御意見等をちょうだいすると,こういう形で二つに分けて議事を進めさせていただきたいと思います。

監獄法改正の方針について

○林総務課長 まず初めに,監獄法改正につきましては,これまで関係機関等々と協議を重ねてまいりましたので,その協議の経過等も含めまして,その大きな方針について横田矯正局長から説明を行いたいと思います。
○横田矯正局長 矯正局長の横田でございます。よろしくお願いいたします。
 監獄法改正の方針等につきまして御報告申し上げます。
 監獄法の改正に関しましては,行刑改革会議から,「この提言の中心は,なんと言っても,明治時代にできた監獄法を,その後の時代の変化などに見合ったものになるよう,全面的に改正することである。この立法に向けた作業も,また,可及的速やかに行う必要がある。」という御提言をいただきました。法務省といたしましては,この御提言を受けまして,監獄法の改正に向けて鋭意作業を進めてまいったところでございますが,関係各方面との協議の結果を踏まえまして,現在開かれています通常国会に,まずは受刑者の処遇を中心とした「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案」,これは仮称でございますが,そういう法律案を提出することとしたいと考えております。この基本的な方針に関しましては,既に顧問の皆様方にも御報告し,御了承いただいているものと理解しておりますが,この機会に私から,これまでの経緯等について御説明をさせていただきたいと存じます。
 監獄法改正の方針に関しましては,昨年6月7日の第1回顧問会議に報告いたしましたとおり,法務省としては,監獄法を全面的に改正する法案を通常国会に提出したいと考えていたところでございますが,これに対しましては,日弁連から,未決拘禁者等の処遇に関してはなお検討すべき問題があるとして,まずは監獄法のうち受刑者の処遇に関する部分のみの法改正を行うべきであるなどとする意見が示され,顧問会議におきましても,未決拘禁者等の問題を議論することによって受刑者処遇を中心とした行刑改革が遅れてしまうのではないかとの御懸念などが示されたところでございます。そこで,法務省といたしましては,監獄法の改正を円滑に実現するためには,まずは関係機関の御理解を得るよう努める必要があると考えまして,昨年7月から警察庁及び日弁連との三者協議会を開催してきたところでございます。昨年末までの三者協議会における議論では,いわゆる代用監獄制度などに関する意見の対立は依然としてあるものの,日弁連から,警察留置場における逮捕段階の者を含む未決拘禁者等の処遇に関する法律の制定を積極的に求めるとの方針が明確に示されるなど,未決拘禁者の処遇等についても法改正の実現に向けた現実的な協議を行い得る環境が整いつつあると判断される状況に至りました。
 そこで,法務省といたしましては,行刑改革を実現するために監獄法を改正することが喫緊の課題でありますことから,まずは受刑者処遇の部分を中心とした立法を先行させ,引き続き代用監獄問題を含めた未決拘禁者等の処遇に関して協議を行い,なるべく速やかに,できれば平成18年通常国会を目途に監獄法の全面改正を実現するのが現実的な方策であると判断するに至りました。なお,未決拘禁者等の処遇に関する法改正につきましては,これを検討する別機関の設置の是非も含めて,三者協議会において協議することを確認したところでございます。
 現在,法務省では,このような方針に基づきまして,行刑改革会議から提言されました「刑事施設視察委員会」,これは仮称でございますけれども,「刑事施設視察委員会」の設置等を含む刑事施設の基本及びその管理運営に関する事項,並びに受刑者処遇に関する部分を内容とする「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案」を3月中旬を目途に国会に提出すべく,立案作業に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。現時点におきましては,他省庁との協議や内閣法制局における法案審査も未了でございますので,確定した条文の形で顧問の皆様方にお示しすることはできませんが,本日は,行刑改革会議の御提言についてどのように法案に盛り込む考えであるかという点を中心にいたしまして御説明させていただきたいと存じます。
 今回の法案は,受刑者の人間性を尊重し,真の改善更生及び社会復帰を図るための処遇を目指すべきとの行刑改革会議の御提言を受けまして,ともすれば規律偏重の弊に陥りがちであった受刑者処遇の在り方を見直そうとしているものであります。そのためには,受刑者の人権を尊重することはもちろん,受刑者の処遇に当たってはその自発性や自律性をできる限り尊重し,受刑者自身の自覚に訴えて改善更生の意欲を喚起し,社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨としなければならないと考えておりますし,刑事施設に求められる規律秩序も,過度に厳格なものとなってはならないとの基本的な考え方も法案の規定に盛り込む予定でございます。
 説明させていただきます内容につきまして,顧問の皆様から御意見をいただければ,これも踏まえまして最終的な法案の作成作業を進めてまいるつもりでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

監獄法改正の概要について

○林総務課長 引き続きまして,現在作業中の監獄法改正の概要につきまして,北村官房参事官から説明いたします。
○北村官房参事官 官房参事官の北村でございます。
 行刑改革会議の御提言に基づきまして検討をしております法改正事項について,御説明をさせていただきます。
 お配りさせていただいております資料1「監獄法改正の概要」というものを御覧いただきたいと思います。茶色の表紙のものです。局長から御説明いたしましたように,法務省では,現在開会中の国会に,受刑者の処遇に関する事項を中心といたしまして,行刑改革会議で法律事項として御提言を受けたものにつきましては,その趣旨に従いまして,すべてこれを盛り込んだ内容の法案を提出したいと考えております。この資料は,行刑改革会議において提言された事項ごとに,ページの上部に提言の内容を記載いたしまして,その下に「法案での対応」という見出しをつけまして,提言に対応して新法にどのような内容で規定を設けるかを取りまとめたものでございます。この資料に基づきまして,順次要点を御説明いたします。
 まず,1ページの「受刑者の権利義務の明確化」を御覧いただきたいと思います。
 行刑改革会議の提言では,上部に記載してありますように,「受刑者の権利義務を明確にすることによって人権保障を十全なものとすべき」とされたところでございますが,新法では,この趣旨に沿いまして,様々な事項について受刑者の権利と義務をきちんと法律に規定するようにしたいと考えております。
 その内容でございますが,まず,「法案での対応」の一つ目の丸印のところでございますが,受刑者の権利等を法律に明示する事項をここに記載しております。例えば自弁の書籍等の閲覧の範囲などにつきまして,その範囲を法律で明らかにする予定でございます。
 二つ目の丸印のところは,受刑者の義務を明示するものでございます。新法では,規律秩序を維持するため受刑者が施設において守らなければならない事項を刑事施設の長が遵守事項として定めることを予定しておりますが,現行監獄法の下でのように,施設の長が自由に受刑者の守らなければならない事項を定められるといった仕組みとはせずに,遵守事項として定める事項を,ここに記載しておりますように,他人に迷惑を掛ける行為をしてはならないこととか,作業や指導を拒んではならないことといった形で,法律に類型化いたしまして列記すると。そして,そうやって法律に列記した事項について,遵守事項を具体的に定めるものとすることを考えております。
 なお,この遵守事項として定められるものが余りに細かなことにわたるようでは,過度に厳格な規律を招くことになりますが,新法では,規律秩序を維持するためにとる措置は,被収容者の収容を確保し,処遇のための適切な環境や安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならないと,こういう一般原則を規定したいと考えているところでございまして,この原則が制約としてかかることによって,過度に厳格な遵守事項を定めることは許されないということになります。
 次に,三つ目の丸のところでございますが,新法では,ただ今申し上げましたように,受刑者の権利義務の内容を法律上明らかにするだけではなく,権利義務にかかわる重要な事項は書面で受刑者に告知すると,こういうことにしたいと考えております。
 次に,2ページを御覧いただきたいと思います。提言では,「職員の職務権限の内容及び限界を明確なものとすべき」とされたところでございますが,新法では,「法案での対応」のところに記載しましたように,検査,制止等の措置,戒具の使用,武器の使用などにつきまして,職員の権限を明確に規定することを考えております。
 次に,3ページを御覧いただきたいと思います。受刑者の処遇につきましては,「受刑者の特性に応じた処遇を実現すべき」との御提言をいただきましたが,新法では,その趣旨を踏まえまして,個々の受刑者にふさわしい矯正処遇を行えるように,その仕組みなど,幾つかの規定を設けようと考えております。
 矯正処遇といいますのは,改善更生,社会復帰の促進のために受刑者に積極的に働き掛けを行うものでございまして,受刑者の処遇の中でも中核を占めるものでございますが,新法では,この矯正処遇のメニューといたしまして,刑務作業のほかに,改善指導,教科指導を明記いたしまして,刑務作業,改善指導,教科指導の三つを矯正処遇の柱として位置付けることとしたいと考えております。
 その上で,1日8時間,1週間40時間の作業時間を確保することを基本とする考え方を改めまして,作業時間や作業を行わない日を柔軟に定めることが可能な仕組みといたしまして,改善指導などの指導につきましても,なおその充実を図っていきたいと考えております。
 改善指導というのは,資料の吹き出しの中に記載しておりますが,受刑者に犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識,生活態度を習得させるための指導でありますが,具体的に申し上げますと,心理学,教育学,社会学などの知見を活用いたしまして,カウンセリングですとかグループでの討議を始め,様々な手法を用いて指導をしていくということを考えております。
 さらに,受刑者には,例えば薬物依存があることですとか,暴力団に加入していることというように,改善更生や社会復帰を妨げる事情を有する者がいるわけでございますが,そうした事情を有する受刑者に対しまして適切な改善指導を行うためには,その事情の改善に資するように特に配慮することが肝要でありますので,そうした配慮義務を規定することを考えております。
 さらに,改善指導などを含めた矯正処遇につきましては,これを受けることを受刑者の義務として構成する予定でございます。もちろん,教育的な指導というものは,受刑者本人の自発的な取組があってこそ効果が発揮できるものでございまして,原則的には本人が納得している場合にこれを受けるということになるものでございますが,改善指導も,これを義務付けることによりまして,施設の方でより強力にこれを受けることを働き掛けることが可能となると,こういうふうに考えております。
 次に,矯正処遇の実施方法についてでございますが,矯正処遇を実施するに当たりましては,受刑者の資質や環境を調査し,その調査の結果に基づいて,その者に対する矯正処遇の方針や基本的な内容,方法を定めた処遇要領をあらかじめ策定いたしまして,これに基づいて矯正処遇を実施するという個別処遇の原則,計画的処遇の原則を法律に定める予定でございます。また,矯正処遇は,専門的知識を活用し,社会と連携して行う旨の規定も設けたいと考えております。
 二つ目の丸印のところは,外部通勤作業や外出・外泊の制度の導入でございます。外部通勤作業は,受刑者を施設の外にある事業所に職員の同行なしで通勤をさせる制度でございます。それから,外出・外泊は,出所後の引受人ですとか雇用主のところに職員の同行なしで受刑者を訪問させるための制度でございます。こうした職員の同行なしに受刑者を施設の外に出すような処遇は,現行法下では認められていないところでありますが,円滑な社会復帰を図るために有効な処遇方法としまして,一定の要件を満たす者についてはこれを認めることができることとするものでございます。
 次に,4ページを御覧いただきたいと思います。行刑改革会議からは,「現行の累進処遇制度は廃止し,真に受刑者の改善更生の意欲を喚起することが可能となる報奨制度を設けるべき」との御提言をいただいたところでございます。現行の累進処遇制度は,画一的・固定的な運用に陥っているとの御指摘を受けたところでございますが,これを改めまして,新法では,一定の期間ごとの受刑者の受刑態度の評価に応じまして,優遇措置を講ずることを規定することを考えております。ここでは,受刑態度に応じまして,例えば物品の給貸与ですとか,自弁物品の使用を許す範囲の拡大,面会の時間や回数の増加,信書の発信回数の増加といった優遇措置を講ずることを想定しております。この優遇措置の制度の下では,受刑者の受刑態度がよければ入所の当初から最上級の優遇措置を与えることも可能でございますし,また,受刑者の受刑態度の評価の期間を数か月といったように比較的短期間とすることによりまして,優遇の付与を固定化せずに,受刑態度に応じて臨機に適切な優遇を与えることが可能となります。提言の御趣旨を踏まえまして,そういった運用を行っていきたいと考えているところでございます。
 次に,5ページでございますが,提言でも指摘されておりますとおり,施設の規律秩序が維持されなければならないことは当然の要請でありますが,その一方で,規律の在り方が,重箱の隅をつつくようなことまで事細かに規制するなど,社会通念に照らして著しく合理性を欠くようなものであってはならないということを肝に銘じまして,新法では,そのような運用が行われないようにするためにいろいろな規定を設けることとしております。
 まず,所内規則の基本となります遵守事項についてでありますが,この点は先ほども御説明をさせていただいたとおりでございます。
 次に,これも先ほど御説明をしたところでございますが,刑事施設側による規制措置の限界を画するものといたしまして,規律秩序を維持するためにとる措置については,必要な限度を超えてはならないという規定を設けまして,これによりまして,法律上,過度に厳格な規律が強制されることがないような配慮をしたいと考えております。
 次に,「制限の緩和」とある三つ目の丸印のところでございますが,これは,施設の中での受刑者の生活及び行動に対する制限につきまして,改善更生の意欲や社会適応能力が高まるに従いまして順次制限を緩和する旨を定めるというものでございますが,具体的には,受刑者が改善更生して社会に復帰できる見通しがついてくるに従いまして,例えば居室の検査の頻度を少なくしたりとか,仕切り板なしの部屋での面会を認めたりとか,日中は居室に施錠しないといった運用をしていくことを想定しております。
 次に,6ページを御覧いただきたいと思います。
 昼夜間独居拘禁につきましては,その適正さの確保のため,具体的な方策について御提言をいただきました。
 現行監獄法下における受刑者の昼夜間独居拘禁に当たるものといたしまして,新法では隔離と保護室収容を明確に規定する予定でありますが,隔離につきましては,受刑者の心身に対して悪影響を及ぼすおそれがあることなどから,新法では,隔離の適正さについて検討する機会を増やすために,当初の隔離期間,それから更新の間隔を現在よりも短縮することとしたいと考えております。さらに,提言に沿いまして,3か月に1回以上,隔離された受刑者の健康状態について医師の意見を聴くことを義務付ける規定も設ける予定でございます。
 7ページを御覧いただきたいと思いますが,懲罰に関しましては,「懲罰の種類及び内容,懲罰を科すべき事由,懲罰を科す際の手続について法律に明記すべき」との御提言をいただいたところでございますが,これに従いまして,新法では,懲罰を科すべき事由,懲罰の種類,懲罰の内容,科罰手続につきまして,具体的に規定することを考えております。
 四つ目の丸印のところ,懲罰に関する手続について申し上げますと,事前に懲罰の原因となる事実の要旨を書面で受刑者に通知しなければならないということ,受刑者を補佐する役割を担う者を職員の中から指名しなければならないということ,閉居罰を科する場合には,受刑者の健康状態について医師の意見を聴かなければならないことなどを規定する予定でございます。
 次は8ページでございますが,受刑者の生活水準につきましては,これが適正なものであることを法律的に担保するために,新法では,「給貸与する物品は,受刑者の健康を保持するに足り,かつ,国民生活の実情等を勘案し,受刑者としての地位に照らして,適正と認められるものでなければならない」という基準を明示することなどを考えております。
 その下,運動に関してでございますが,運動時間につきましては,「運動スペース,職員配置の問題を解決した上で,最低1日1時間の運動時間を確保するように努めるべき」との提言をいただいたところでありますが,いまだ多くの施設におきまして,1日1時間の運動時間を確保するための運動スペースですとか職員配置の問題を解決できる状況にはございませんで,その具体的な見通しも立っておりません。そういうことから,法案に1日1時間の運動の機会を付与する義務を書くことは,現段階では困難であると考えております。しかしながら,現在,平日の入浴のない日のみ運動を行っている,つまり,夏は週に2日,冬は週に3日,運動の機会を保障しているにすぎない現状にありますが,この現状につきましては,提言の趣旨に沿って改善したいと考えているところでございまして,新法には,日曜日などの休日を除いて毎日,できる限り戸外で運動の機会を与えなければならないということを義務付ける規定を設けることにしたいと考えております。もとより法務省といたしましては,提言に沿いまして,運動スペースや職員配置の問題を解決した上で,将来的には1日1時間の運動時間を確保できるようにしたいと考えているところでございまして,現に,提言を受けまして,既に各施設において運動時間の拡大に努め,運動スペースや職員配置上の問題が比較的少ない施設におきましては毎日1時間の運動を確保したり,入浴日やレクリエーションの実施日などを除きまして1日1時間の運動を確保するなどの試行も始めているところでございまして,順次その試行庁を拡大することとしたいと考えております。
 次に,9ページの「医療」でございます。
 医療につきましては,「被収容者の健康の保持とその疾病の治療は,拘禁を行う国の責務である」との御提言をいただいたところでございます。新法では,施設には,受刑者の心身の状況を把握することに努め,適切な保健衛生上・医療上の措置を講ずる義務があることを規定いたしまして,提言の趣旨を一般的な原則として宣言した上で,健康診断でございますとか,医師による治療などにつきまして,所要の規定を設ける予定でございます。
 次に,10ページの「外部交通の拡大」でございます。
 外部交通につきましては,様々な観点から御提言をいただいたところでございます。
 まず,提言では,外部交通の重要性につきまして,「受刑者の改善更生や円滑な社会復帰等に寄与するという観点から,拡大を図るべき」であるとされております。
 現行の監獄法では,外部交通は,施設長の広範な裁量にゆだねられているところでございますが,提言の趣旨を極めて重要なものと受けとめまして,新法では,外部交通に関する規定の冒頭に,外部交通を許し,又は制限するに当たっては,適正な外部交通が改善更生等に資するものであることに留意しなければならない旨を明らかにする規定を設けたいと考えております。新法下でも,施設の管理運営上の理由から,施設長に外部交通の回数を制限したりする権限を認める必要がございますが,そうした制限をする際に,他方で外部交通が改善更生などに資するということに留意しなければならないとすることによりまして,施設管理上の理由を優先するような運用にならないように法律上配慮しようとするものでございます。
 次に,面会の相手方につきましては,新法では,一つ目の丸印のところでございますが,親族を始めとする一定の相手方との面会については,基本的にこれを認めることといたします。
 さらに,提言で,改善更生に有益な場合には友人・知人との面会を積極的に認めていくべきであるとされたことを受けまして,この提言の御趣旨を更に一歩進めまして,友人・知人との関係を維持するために面会が必要な場合には,積極的に改善更生に有益と認められるという場合に限らずに,支障がない限りは面会を認めることができることとしたいと考えております。
 次に,四つ目の丸印のところの面会・信書の発信の回数についてでございますが,現行では,最も少ない受刑者の場合,それぞれ保障されている回数は月に1回となっておりますが,新法では,受刑者が面会できる回数は月に2回,受刑者が発信できる信書の通数は月に4通を下回ってはならないといたしまして,法律上の最低保障を規定したいと考えております。
 その下の五つ目の丸印のところでございますが,面会の立会い,信書の検査につきましては,新法では,一定の理由から必要があると認める場合に行うということにしたいと考えております。現行では,面会の立会いは一部の例外を除いて実施しておりますし,信書の検査もすべての場合に実施しているところでございますが,新法では,提言で御指摘を受けました外部交通の重要性にかんがみまして,これまでの思想を転換し,受刑者の行状ですとか面会の相手方のいかんなどを考慮して,立会いを行わなくても問題はないであろうと思われる場合には,立会いを行わないという運用が行われやすい法制にすることが適当であると考えて,こういう規定ぶりにしたいと考えているものでございます。
 資料の次のページを御覧いただきたいと思いますが,提言では,職員が受刑者に対し人権侵害行為に及んだ場合に,受刑者が萎縮することなく人権救済等を求めることができるようにすることが重要であるとされ,また,重大な利害に係る用務の処理のため弁護士と面会する場合において,必要と認めるときは,立会いをしないなどの配慮をすることが相当であるとされました。
 新法におきましては,この提言に沿いまして,受刑者が自己に対する処遇に関して弁護士ですとか調査を行う国や地方公共団体の機関の職員と面会をする場合には,原則として職員が立会いをしてはならないこと,それから,受刑者が自己の受けた処遇に関して弁護士等との間で信書の発受をする場合には,原則として,そういった信書であることを確認するのに必要な限度においてのみ検査を行うことといたしまして,人権救済等を求める場合の外部交通について配慮する規定を設けたいと考えております。
 外部交通に関します最後の点といたしまして,提言では,電話による通信につきまして,まず開放処遇を受けている者から認めるなど,一定の基準のもとに,改善更生及び円滑な社会復帰に有益な場合に行えるよう検討すべきであるとされました。
 現行法のもとでは,外部交通として電話の使用を許すことはできないところでございますが,新法では,受刑者が開放的施設において処遇を受けている場合などであって,受刑者の改善更生に資すると認めるときなどに,電話による通信を許すことができることを規定したいと考えております。その運用におきましては,提言の趣旨に従いまして,開放的施設において処遇を受けている受刑者を中心といたしまして,電話を認めることとしたいと考えておりますが,その運用状況などを踏まえながら,必要に応じて,電話による通信を認める受刑者の範囲を広げることについても検討していきたいと考えております。
 12ページを御覧いただきたいと思います。
 人権救済のための制度に関しましては,提言において,抜本的な改革が求められております。
 まず,制度の大枠から申し上げますと,新法では,一つ目のものといたしまして,一定の施設の長の措置を対象として,その取消しなどを請求することができる不服申立制度である「審査の申請」の制度,二つ目といたしまして,職員の暴行などの事実行為を対象とする「事実の申告」の制度,三つ目といたしまして,自己に対する処遇すべてについて行うことができる「苦情の申出」の制度,これらを導入したいと考えております。
 審査の申請と事実の申告につきましては,その制度の概略は御覧いただいているページの中ほどにまとめているところでございますが,まず,審査の申請の制度について御説明いたしますと,提言において,適正かつ迅速な処理を確保するため,矯正管区の長に対する審査の申請と,法務大臣に対する再審査の申請の2段階にすべきとの御指摘をいただいたところでございまして,新法では,この点,提言のとおりにしたいと考えております。また,審査の申請を受けた管区長又は法務大臣は,職権で必要な調査をし,90日以内に処理するよう努めなければならないという規定も設けることとしたいと考えております。
 事実の申告の制度につきましては,提言では,職員による暴行は不服申立ての対象に含まれるべきであるとされたところでございます。暴行ですとか,違法・不当な戒具の使用につきましては,これは処分ではありませんで,したがいまして,その取消し等によってこれを救済するということはできませんので,処分性を有する施設の長の措置を対象とする審査の申請とは区別いたしまして,管区の長,法務大臣の監督権の発動を促すための制度といたしまして,事実の申告の制度を設けたいと考えているところでございます。
 1ページおめくりいただきたいと思いますが,苦情の申出でございます。苦情の申出につきましては,提言の趣旨に沿いまして,新法では,施設の長,監査官は,苦情の申出につきまして誠実に処理し,申し出た者に対し結果を通知しなければならない義務がある旨を規定したいと考えているところでございます。
 このほか,新法では,提言に沿いまして,審査の申請などにつきまして,秘密申立て,不利益取扱いの禁止のための規定も設けることとしたいと考えております。
 最後に,14ページの「刑事施設運営協議会」について御説明をさせていただきます。
 提言におきましては,行刑運営の透明性の確保のための方策として,行刑施設ごとに地域の市民及び専門家からなる「刑事施設視察委員会」を設置すべきとされたところでございます。これを受けまして,新法では,第三者に刑事施設の状況を継続的に把握していただき,刑事施設の運営に関し意見を述べていただくための仕組みとして,今のところ仮称ではございますが,「刑事施設運営協議会」を法律上の組織として設置することとしたいと考えております。
 その委員は,周辺住民の方ですとか,法律家,医師など,様々な方々になっていただくことを想定しておりますが,このように様々な方々に委員となっていただき,協議会としての意見をまとめていただくことによって,国民の一般常識を反映した的確な意見を述べていただくことが期待できるものと考えているところでございます。
 また,協議会に刑事施設の運営に関し適切な意見を述べていただくためには,委員の方々に施設の運営の実情を的確に把握していただくことが必要でございますので,新法では,刑事施設の長は協議会に対し,刑事施設の運営に関する情報を提供するものとすることを規定するほかに,協議会の決定で委員が刑事施設を視察することですとか,被収容者と面接することができることを規定したいと,このように考えております。
 以上,提言に基づく法改正事項の概要について御説明をさせていただきました。
○林総務課長 それでは,監獄法改正の大きな方針について,また具体的な監獄法改正の作業の概要につきまして説明申し上げましたが,まずは,この監獄法改正に関することにつきまして,顧問の皆様方の御意見等をいただければと思います。何分,論点は多岐にわたっておりますけれども,特に論点を絞らずに,御意見,また御質問等もあれば,お願いします。
○江川顧問 質問があるのですけれども。
 一番最後の14ページの協議会のところの下の方に,赤字で「守秘義務を負う」とありますね。これはどういう範囲での守秘義務なんでしょうか。
○北村官房参事官 基本的には,この運営協議会の委員の方々には,自由に施設の中を視察していただきます。また,委員の方から申出があれば,受刑者が嫌だという場合は別でありますが,受刑者と面接をすることになるわけであります。そこでは,受刑者の個人の秘密,プライバシーにわたる事項でございますとか,それから,余りないのかもしれませんが,施設の規律秩序の維持に関わる施設の構造の問題とか,そういう事項も知ることになりますが,そういうことを想定いたしまして,そういう秘密として保持しなければならない価値のあるものといいますか,その範囲で,国家公務員が負っている一般的な守秘義務の範囲で,守秘義務を負うということになるという構造で考えているところでございます。
○江川顧問 例えば,そこにいろいろな問題点があったときに,それを外に言うということはいけないということなのでしょうか。
○北村官房参事官 一般論として,施設にこういう問題があるというようなことを発言することは,もともとこの運営協議会の職務といいますか,その範囲でございますので,プライバシー侵害になるだとか,施設の安全を害するような情報を漏らすことになるだとか,そういう意味で漏らしてはいけないといいますか,そういう事項でない限りは,守秘義務はかからないことになると考えております。
○江川顧問 どこからどこまでというのがすごく気になるのですが。つまり,秘密を守らなければいけないところとそうでない部分というのは,だれが判断して,どこで線引きをされるのですか。
○北村官房参事官 結局のところは,秘密として漏らしてはならないものであるかどうかで判断することになるのだと思います。
○江川顧問 例えばどういうものを漏らしてはいけないのかという線引きがはっきりしないと。
 それから,義務というからには,それに違反したときに何か罰則みたいなものがあるわけですか。
○北村官房参事官 国家公務員法の罰則の適用があります。
○江川顧問 罰則があるんだったら,余計,どういうところで線引きをされるのかというのははっきりしていただかないと。罰のあるものだったら,余計そこのところは厳格に,しかも分かりやすくしていただかないとという気がします。
○北村官房参事官 受刑者等のプライバシーに関する事項を知ることになるということで,守秘義務を負うこととすべきであるというのは,御提言で求められたところであり,範囲が不明確になるという御懸念も提言で言われているところでありますが,御懸念の点につきましては,提言でも御指摘されているところに従いまして,施設の方でも,公権的な判断をするのは,それはそれで適切ではないと思いますが,どういう内容のことを漏らしてはいけないかという,枠組みといいますか基準といいますか,そういうことは御説明することになると思います。
○菊田顧問 3ページのところ,「受刑者の特性に応じた処遇の実施」というところですね,これについては,現在は収容分類というのがとられているわけですが,この趣旨でいきますと,個別処遇ないしは計画的処遇というのを実行していくことになりますと,事実上,収容分類というのは並行するわけにはいかないように思うのですけれども,そういう方向で考えておられるのかどうかということをちょっと確認しておきたいのです。
 趣旨はお分かりでしょうか。この趣旨によりますと,特性に応じた処遇ということになるわけですよね。具体的に薬物とか暴力団というのがあげてありますけれども,要するに,全般的に個別化処遇ということを徹底していくことになると,今あるL級等を含む収容分類というのは成り立たないのではないかと。そういうものは,将来的には解消していく方向にあるのかどうかと。新法の施行規則をこの先つくるにしても,そういう方向があるのかないのか,ちょっとお伺いしたいということです。
○山下官房審議官 被収容者の特性に応じた処遇を実施するということで,施設もそれぞれ特色を持っていくということであるわけで,そういう特色のある施設にどういう者を収容するかという意味での収容分類というのは,あると思うのですが。今,先生がおっしゃっているのは,現在の収容分類級のことをおっしゃっているのだろうと思います。そういうものの重要性は部分的にはなくなるし,例えば,男子と女子は分けなければならないわけですから,そういうものは残ることになります。
○菊田顧問 A級,B級とかL級というのはどうなるのですか。
○山下官房審議官 A級,B級の収容分類級を前面に出すことはないと思います。今のようなやり方でのA級,B級の判定で収容分類を決めていくということは,将来なくなると考えています。
○菊田顧問 つまり,今ある,我々が知っているそういう収容分類というのは,なくなる方向にあると,こういうことですか。
○山下官房審議官 ですから,収容分類級の重要度は部分的にはなくなるでしょうけれども,刑名による分類だとか,あるいは性別による分類だとか,それも収容分類級の一つでございますが,そういうものの重要性は現在と同程度に残ると考えています。
○菊田顧問 つまり,長期受刑者などの施設はそのまま残すのですか,なくなるわけですか。
○山下官房審議官 刑期について,今,長期は一応8年で分けていますけれども,8年で分けるかどうかは別として,処遇期間が長い者と短い者では,当然,実施する教育内容が違ってくるわけですから,それぞれの施設が,例えば5年ぐらいの人を中心に集めるとか,あるいは8年ぐらいの人を集めるとか,そういう施設ごとの特色は出てくるでしょうから,それに見合う……
○菊田顧問 いや,そこがやはり,基本的に発想が違う。長期収容でも比較的緩やかな施設に入れるという人間もいるわけで,この個別処遇ということは,そういう運用を基本にするわけですよね。本人の特色に応じて必要な処遇を施していくというのが個別処遇ですから。外形的な刑の重さで区切って,長期は長期だけ集めて,その中で個別的にしろという枠の中とは,ちょっと発想が違うと思うのですけれども。
 要するに,今ある収容分類というのを解消していく方向にあるのか,ないのかということだけお伺いしておきたいのですけれども。
○山下官房審議官 今の収容分類とは違った観点で収容のやり方は考えられることになります。
○菊田顧問 分かりました。
○林総務課長 今,受刑者の特性に応じた処遇という点,これは3ページにございますが,こういった点についての御指摘・御意見がございましたが,この件につきまして,ほかに,顧問の先生方,何かございますでしょうか。
 もしなければ,ほかの論点につきましても御意見等をいただければと思います。
○菊田顧問 それでは,続けて申し訳ありませんが,6ページの昼夜間独居拘禁の点ですけれども,提言では,この点について明確な表現はしていませんけれども,長期の独居拘禁というものは避けるべきだと,こういう方向付けをしていると思います。それに沿っていきますと,この案では,期間を現行より短縮するというだけであって,更新は無制限にできるわけですね。最高期間というのは決めていないわけです。これでは,事実上現在の独居拘禁と同じようなことになるというふうに危惧されるのですね。最高期間を決めると,その期間が来たとき,問題があることが分かっていながらも出さなければならないことになるという実務上の問題があると,こういうふうにおっしゃる可能性があるのですけれども,いずれにしても,最高期限を決めて,いったん出して,それでも問題があれば戻すというぐらいの歯止めをつくってもらわないと。施設側の理由,本人側の理由,いろいろなものが混ざり合って,本人を厳正独居から出せないという状態が延々と続いているのが現状であるわけです。その辺について,やはりこの際,明確な最高期限というものを区切ってやっていただくような方法は可能かどうかということをお伺いしたいのですが。
○林総務課長 今の点につきましては,行刑改革会議の本体及び分科会でもいろいろ出たと思いますが,ほかの顧問の方々,御意見等ございましたら,お願いします。
○菊田顧問 いや,それは,提言では最高期限を設けろとまでは言っていないのです。だけれども,厳格にやるべきだというところまでは提言していると思います。その厳格というところが,この案では,事実上現在と中身が全く同じになってしまいますね。無制限に置いておけますから。
○林総務課長 この点につきましては,分科会等でもそういったような意見が出た一方で,やはり上限期間を設けるのは困難だということで御意見があったと承知しているのですが,それも踏まえまして,法律上,どのようにして不必要な拘禁を防ぐ仕組みとしているかについて御説明申し上げます。
○北村官房参事官 今,総務課長から申し上げましたとおり,その必要性がある限り隔離を続けなければならないという事態がどうしても出てくると想定されるので,そういう意味で,法律上の上限を設けるということは困難だと考えております。
 一方で,不必要に長期間になってはいけないという御趣旨はもちろんそのとおりでございますので,法律上,先ほども御説明いたしましたが,資料の5ページのところにございますように,規律秩序の維持のために執る措置全般にわたりまして,必要限度を超えてはならないという原則規定を設けることにしております。これはもちろん隔離についても適用される原則でございます。さらに,隔離につきましては,6ページ真ん中の隔離のところの一つ目の丸の二つ目のポツに書いてありますように,「必要がなくなったときには,直ちに中止」しなければならないという,そういう規定も,隔離という事柄の重要性にかんがみて,更に重複的にといいますか,そういう形で明記して,不必要な隔離の継続が行われないような法律上の配慮をしたいと考えております。
○菊田顧問 よく分かりますけれども,その厳正独居が続いている限りは必要性が続くという人間の異常さというのはあるわけですね。だから,管理者側の基準で必要がなくなったとかなくならないという考え方では,必要な限度を超えてはならないという歯止めというのも,非常にあいまいなものになると思うんですよ。
 だから,最高の期限を設けておいて,超えたらいったん戻す。戻して,なお処遇困難であれば,独居に原則的に入れると。このぐらいのことをやっていただかないと,現在のこの,国際的にも非常に問題になっている昼夜間独居が解消されないままの新しい法案を認めるというのは,どうも私は納得できないんですよね。
 それと,戻りますけれども,もう法案はほとんどできているのだろうと思います。今日の会議には,多くの顧問がそろっていますが,今ここで申し上げたことが,現実の法案として修正に結び付くのか,今日の会議はそういう場なのかどうかということについても,私はちょっと不満を持っています。無駄な発言にならないかという気もしないでもないのですけれども,その点も含めて,今日いただいたこの資料がどの程度現実の条文になるのか,そして,今日の発言がどの程度修正として反映されるのかということも含めて,お答え願いたいと思います。
○南顧問 隔離についても,救済措置はあるわけですよね。
○北村官房参事官 審査の申請の対象になります。
○林総務課長 今の菊田顧問のお話ですが,いったん必ず出すという措置を執れない者があり得ることを想定しているわけですから,やはりそれは,必要があれば継続せざるを得ないという法規範になろうかと思います。
 ただ,それでは現状が変わらないのではないかという御指摘でございますが,少なくとも,先ほど北村から申し上げたように,一般原則として比例原則というのを法律上明記するということがございますし,また,必要がなくなったら直ちに中止するということが法律上明記されます。これは単純に刑事施設の長が必要のあるなしを自己の主観で判断していいわけではなく,当然,事後的にも様々な救済手段の中で客観的に判断されることでございますので,少なくともそういったことが法律に明記されることによって,不必要な隔離の継続というものがなくなるように,最大限法規範として用意しているということでございます。
○菊田顧問 おっしゃることは分かりますが,私の言っているのは,独居拘禁にいる間はそういう症状が治らないのだと,いったん出したら治る人間も,出さないから治らないのだということで,だから歯止めが必要だということです。念のためもう一度だけ言っておきます。
○林総務課長 ほかの点につきまして,いかがでございましょうか。
○広瀬顧問 名古屋の非常に痛ましい事件から考えますと,極めて早い時期に法改正ができそうだ,しかもかなり抜本的だという気がいたします。
 問題は,現状が画一的であるところ,今後は,受刑者の個性に応じてという処遇になると思うのですね。とすると,職員の事務量がものすごく増えるのではないかなという気がするのですけれども。例えば2割とか1割とか,そういう事務量の増加で終わるんですかね。1割増しだとか2割増しの事務量で,この新しい制度がやっていけるのかということですけれども,その辺はどうですか。現場と若干のやり取りはあると思うのですけれども。
○山下官房審議官 まだ具体的な制度の仕組みを用意しておりませんから,どのぐらい事務量が増えるのか,あるいは減るのかというのは,現場の方にも検討材料がまだ十分提供できておりませんで,やっておりません。気持ちとしては,事務量が,少なくとも増えないようにしたいということで,増やす部分と減る部分をどう繕って全体として増えないようにするかということを一生懸命考えたいなと思っています。それから,民間の方のお力もかなりお借りしなければいけないなと。それによって,職員だけの負担が増えるという形はなくなるようにしたいというふうに考えていますけれども,量的にどうなるかというのは,まだちょっと吟味が進んでおりません。
○滝鼻顧問 3ページにもう一回戻るのですが,矯正の新しいやり方として,刑務作業のほか,改善指導と教科指導という二つの項目が新設されましたね。これの中身が今一つはっきりしないけれども,仮にこのとおりだとすると,改善指導であるとか,あるいは教科指導というのを専門にやる刑務所の職員というのは,これから誕生してくるのでしょうか。
○山下官房審議官 現在でも,いわゆる刑務官と,それから教科の指導を専らにする教官というのはもちろんおります。それから,カウンセリングとかそういったことを担当する技官もおりますが,数から言いますと,教官・技官というのはかなり少のうございますので,これは逐次拡充していくように努力しなければいけないと思っていますし,それから,先ほどもちょっと申し上げましたけれども,自前だけでは恐らくできないでしょうから,その筋の民間の専門家の方にもお力添えいただくと。その両方を追求しながらスタッフを確保するようにしたいというふうに考えています。
○滝鼻顧問 先ほど副大臣から,予算はついたけれども,職員の増員についてはなかなか難しいというような説明がありましたね。その辺の見通しはどうなんですか。
○山下官房審議官 職員の増員状況は,後ほどまた御説明させていただきますけれども,トータルでは前年並みの増員,実質で260ぐらいだったかと思います。その中で,いわゆる心理技官の枠も若干ございますし,国家財政の状況の中で言いますと,かなり増員がいただけたとは思っております。行刑改革会議の御提言の中で試算された数字からははるかに遠いのですけれども,客観情勢の中では,いろいろ御配慮をいただいていると思います。我々として,その中で更にどういうところに重点を置いていくか,技官も必要ですし,教官も必要ですし,それから医療にかかわるスタッフも必要ですし,その重要度を勘案しながら,どこを増やしていくかということを考えるように,また努力していかなければいけないと思っています。
○滝鼻顧問 一つだけ要望ですけれども,法律を改正して,新法をつくって魂が入らないということになると,何のために改正したのか分からなくなってしまうので,是非その辺りについて,やはり刑務所は人なりだと思うので,今後の御努力というか,継続的な御努力をお願いしたい。
○林総務課長 若干補足させていただきますと,後ほど御説明しようと思っておったのですが,当然,今の点につきましては,全体の量的な拡大も必要でございますが,刑務官に限らず,心理技官でありますとか,そういった専門職種の拡大・充実が必要だという観点は承知しておりまして,これは17年度予算案の中では,全体で心理技官としての調査専門官6名の増員が入っております。さらに,24施設分につきまして,民間カウンセラーを採用するための,これは公務員ではございませんので民間委託経費でございますが,そういったものも予算案の中に入っております。ですから,実質的には,30人分くらいのそういった心理技官というものが,今回の予算の中に取りあえず入っております。
 こういった方向性,いわゆる量的な全体の枠の拡大だけでなくて,中身の職種の充実といいますか,専門職種の充実という点は,今後とも強く努めてまいりたいと思います。
○江川顧問 一つ質問なのですが,これの12ページですか,「人権救済のための制度の整備」のところなのですが,先日説明を受けたときは,申告期限が30日というふうに区切られていて,そうなると,例えば,問題の職員がいる間は精神的な圧迫があって申告できない状況があったりするとどうなんだろうというのが心配だったのです。この資料ではそれが消えておりますけれども,申告期間というのはなくなったというふうに考えてよろしいのですか。
○北村官房参事官 申告期間については,以前御説明したとおりでございまして,この資料には書いてないだけで,申立期間は設けるべきだと考えております。
 ただ,やむを得ない事由によってその期間を遵守できないというか,徒過した場合の救済規定といいますか,それも設けることとしたいと思っておりますし,その辺りは一般の行政不服審査の制度と同じ発想で制度をつくりたいと考えております。もちろん,御指摘のように,施設内の状況というのは一般社会の状況とは違うところがございますので,そこは運用の問題ですが,今言われたような設例の場合にやむを得ない事由と言えるのかというところは,直ちにそうかなというところもあるかとは思いますが,施設の中にいるという特殊性も考えて,必要な救済を図るという形で運用を行っていきたいと思っております。
○江川顧問 そこのところは,すごく柔軟に運用していただきたいと思います。というのは,例えば,女性の受刑者で,職員に妊娠させられてしまった人がいましたよね。ああいう場合は,その職員がいる間は恐らく申告が無理だろうと。やはり,特殊な事情というのは,いろいろなところに生じると思うのですね。だから,天変地異が起きたとか,そういう物理的なものだけではなくて,そういう心理的な制約があって申告できなかったということも,十分に酌んでほしいというふうにお願いします。
○林総務課長 ほかに,いかがでございましょうか。
○久保井顧問 14ページですけれども,今回,短期間の間に提言を的確にまとめていただいて,私としては,おおむねよくできているというふうに思いますが,この点だけは一つ,どうしても見直していただきたいと思います。
 というのは,今回のこの改革のきっかけになりましたのは,名古屋で非常に不幸な事件が発生して,ああいう事件が今後起きないようにする必要があるということで,そのための改革の柱の一つとして,閉鎖的な運営をなくす,ガラス張りの運営をしていくという考え方を採用すると。そこで,イギリスの「訪問者委員会」,後日「刑事施設視察委員会」というふうに名称が変わりましたけれども,要するに,明るいところでは悪いことはできない,なるべく一般の国民なり市民の監視下で刑務所の運営をしていくということから,「刑事施設視察委員会」というものを提言させていただいたわけです。
 ところが,今回のこの14ページを見ますと,「視察委員会」という言葉に代えて,「運営協議会」という名前になっている。これは,名前は体をあらわすということが言われますが,非常に大きな変更で,「運営協議会」といいますと,刑務所の運営に民間の力も借りる,皆さんの知恵も借りて運営していくという意味で,意味は分かるのですけれども,やはり外からのウォッチングをする機関という点が,「運営協議会」という言葉では表れていない。外から見える,外からのウォッチングをする中で運営していくという思想を捨てたら,今回の改革の大きな柱が抜けてしまう。
 私は,提言には二つ大きな柱があると思うのです。一つは,要するにガラス張りの運営をすることによって,悪いことをしにくくするということ。もう一つは,受刑者といえども人間だから,その自発性と人間性を最大限尊重して,更生の道をとってもらうように仕向ける,力で上から押さえつけるような刑務所運営はやめるということ。この二つの柱が今回の改革の哲学だと思います。この,外から見える,ウォッチングをするというのは,非常に大きな改革の柱なので,この「運営協議会」という組織の名前は,是非とも,もとの提言の「施設視察委員会」に戻していただきたいというふうに思います。
 あとの点は,非常に提言に忠実に,よくできている。まあ,細かい点は希望はありますけれども,切りがありませんから。この1点だけはどうしても見直していただきたいと思います。
○林総務課長 今の点,行刑改革会議の提言の中で「刑事施設視察委員会(仮称)」となっていた名称の問題でございますが,他の顧問の先生方の御意見も伺いたいのですが,1点だけ,中身のことを申し上げます。
 今,名は体を表すとおっしゃられましたが,中身につきましては,全くその提言の中身,この組織の持つ権限についてはすべてを取り込んでおります。それ以上に,むしろ提言を進めている部分がございまして,例えば,視察とか面接をするということについて,提言ではそれが規律秩序等にかかわるときには行刑施設の長と協議をするというような形で記載がございましたが,基本的には,私どもは,委員会が必要と考えれば視察・面接ができるような規定へと一歩進めまして,そういった中身をつくっております。今考えている中身につきましては,全く透明化のためという中身になっているということ,それを御理解いただいた上で御議論いただければと思います。
○久保井顧問 中身は結構だと思うんですよ。私は,是非とも名称を考え直していただきたい。
○菊田顧問 今おっしゃっている「協議会」と「視察委員会」,これはやはり,名称が違うと,例えば具体的に委員を選ぶのに,「視察委員会」というのは,かなり専門性というものがイメージとして出てきますね。だけど,「協議会」になると,おっしゃったように,地区の婦人団体の代表とか,何かそういう人も入ってくることがイメージとして出てくるのではないか。そういう意味で,これは,ウォッチングとおっしゃったけれども,正にウォッチング委員会ですから,やはり専門家でないと,具体的な不服などをどう処理するかということが難しいと思うのです。その委員会の委員のイメージにつながってくるので,重大なことだと私は思います。
○林総務課長 御意見,いかがでしょうか。
○井嶋顧問 この提言をどう読むかということだろうと思いますけれども,恐らく久保井先生の御意見は,ウォッチングとおっしゃっているように,ああいう不幸な事件を起こさないようにということで,権限の濫用に対する一種のオンブズマン的な規制をかけたいというような,割に限定的な意味合いでこういうものをつくるべきだとおっしゃっていて,その趣旨をもっと徹底しろとおっしゃっているように伺うのですが,私は,この案のように「運営協議会」という形をとるということは,ウォッチングの意味でのオンブズマン的なものも取り込んで,さらにもっと広い意味での,もっと一般的な施設運営に関し,開かれた刑務所として地域の人たちに参加してもらって,その中で,例えば所内規則とか遵守事項の内容といったものを一般的な目でもって見直してもらうとか,あるいは作業について地域ともっと密着した作業の在り方を提言していただくというようなことであるとか,あるいは1日の動作時限について,ある程度緩和すべきところがあれば緩和するという意見を出していただくといったように,もっと根本的な,一般的な管理運営に関する意見というものが述べられる委員会,協議会というものをイメージしております。その中で,もしおっしゃるようなオンブズマン的な機能を果たさなければならないことがあったら,それは当然,この委員会の機能として規定されている,含まれているというふうに考えますので,どちらかといえば,むしろこの案は,答申よりも更に一歩押し進めた,広くした考え方で,開かれた刑務所,あるいは地域に密着した刑務所というものを考えている我々の立場からすれば,これは大変いいことだろうと思います。
 ただ,おっしゃるように,委員にどういう人を選ぶかという問題はあります。ですから,余りオンブズマン的な人ばかりを集めるということではなくて,もっと一般的な管理運営,あるいは地域に密着した適切なアドバイスができる地元の委員を選ぶということが重要で,そういう委員の選び方によって,この「運営協議会」というのが開かれた刑務所の運営につながっていくのだろうというふうに,私は思いますけれども。
○江川顧問 先ほど菊田さんの方から,私としては非常に不安な発言があったのですが。近所の婦人会の人が委員に入って何が悪いという感じですね。むしろこれは,市民及び専門家からなる委員会で,市民感覚を生かしていくということなのですから,専門家さえ入ってくればいいというものではなくて,近所の人たちの目も大事だというふうに思うので,先ほどの発言は非常に不穏当だったと思います。
 それから一つ伺いたいのは,先日の説明で,「委員会」という名称をつけるのは法律的・行政的に非常に難しいということで,「協議会」にしたのだという話だったのですけれど,ではどうして「視察」が「運営」になったのでしょうか。つまり,「協議会」と「委員会」の問題はともかく,「視察」というところにすごく力点を置いていたのに,「視察」という名前が消えて「運営」になった理由を伺いたいのですが。
○林総務課長 いずれにしても,まだこれは作業中でございますが,「運営」という形で考えたというのは,結局,この組織の最終目的というものは,やはり行刑施設に対して適正な意見を述べるということだと思います。その意見を述べるに当たって的確な情報を得る手段として,一方で視察というのがございます。もう一つ面接というのもございます。さらに,必要な情報を刑事施設からもらう権限がございます。そうしますと,「視察」というのは,やはり面接等と並列で並ぶ,ツール,手段としてのものだと思います。刑事施設の長に対してそういった的確な情報に基づいて意見を述べることにこの組織の最終的な目的があるとすれば,その手段である「視察」というところで書くよりも,「運営」ということについての名称を付した方が,より全体を表しているのではないかと,一応,我々はそのように考えたわけです。
○滝鼻顧問 今の御意見には,ちょっと私は余り賛成できないんだけれども。言葉自体を厳格に解釈して,視察と面接が両方あるじゃないかと,だから片方の視察だけ委員会の名前にするのはおかしいとおっしゃるのだけれども,「視察」という言葉を提言の中で使ったのは,要するに,外からよく目を光らせてるぞと,自分たちだけでやっては駄目なんだと,闇から闇へ葬るなという意味で「視察」という言葉を使ったのだと思うのですね。したがって,そういう趣旨は,やはり,この新しい組織の中に埋め込むべきだというふうに私は思いますね。
○成田顧問 私は,要するに運営協議会というのは,視察なり何なりがあって,その上位にあるものだと思うのですね。運営協議をただそれだけでできるわけではなくて,視察があった,監査があった,そのほかいろいろあって,その上で運営について協議すると。ですから,何かそこに,この運営協議会のやり方を明確に記述するならば,いいのではないですか。「運営協議会」の方が,より動的なものがあるでしょう。だから,この協議会の下にあるのが,視察委員会であり,何であるというような考え方をすればいいんじゃないですかね。
○江川顧問 ただ,「運営」という言葉の意味なのですけれども,国語辞典を引いてみても,組織・機構などを働かせること,つまり当事者なんですよね。この提言の趣旨というのは,第三者であって当事者とは違う人がそこを見ていくということがとても大事だと言っているわけです。「運営」というと,一緒になって運営しましょうという,つまり,外部の人というのではなくて,一緒になって何かやるという感じが,やはり一般の人はすると思うのですね。これは専門家集団,行政側の人たちだけのものではないので,一般の人たちに性格が分かりやすい言葉にする必要があって,その面からも,「運営」というと当事者的だけれども,「視察」というと外からきちっと見ていくという,そこのところの性格づけというのがはっきりするんじゃないかなと。
 それで,「視察」というのは,何も狭義の見ることだけではなくて,書面を見ること,つまり,資料を提供してもらってそれを見るというのも含めて,もう少し大きな意味でとらえれば,そちらが考えていることと全然矛盾しないで伝わっていくと思うのですけれども。
○宮澤(弘)顧問 「運営協議会」といいますと,どうしても私どもは,PTAの会合だとかの協議というようなものを思い起こすのですね。ですから,先ほど来お話の,ウォッチングというのを強く出していく必要があるというお考えであれば,それはやはり,「運営協議会」ではない言葉というものを考えなければいけない。私はそう思います。
○宮澤(浩)顧問 私は,「運営協議会」という名前でいいのではないかと思うのですが,問題があるかなと思ったのは,資料の「協議会の職務や権限を規定」というところに,「必要があると認めるときは,…視察させ,…面接させる」とありますが,こういうふうに書くのはやはりまずい。「協議会を置き,その協議会のメンバーは,刑事施設を視察し,被収容者と面接したその知見を踏まえて,施設の運営に関して意見を述べる」というふうな書き方をしないと。今の書き方だと,いかにも視察とか面接というのは例外的な場合にだけというふうに読めてしまうものだから,そこで抵抗があるんじゃないですかね。私は,名称としては,「施設視察委員会」というと,どうしても何か,ただ見に行くだけというような印象が強いので,やはり,見たものを施設の運営に生かす,それが大事なんじゃないかと思います。その意見が通るか通らないか,それは分かりませんけれど。
○成田顧問 「刑事施設運営」ではなくて,これは「改善委員」なんじゃないですか。施設を改善するというのではなく,行刑の在り方自体を改善するために,実際に実行されているのか,言ってることをやってないねというようなことが視察されるだろうし,それを改善して運営していくという意味ではないかと思うんですがね。いかがでしょうか,「刑事施設運営協議会」というのは。
○林総務課長 もとより,改善に向かっての意見をいただくということで制度設計はしております。先ほど宮澤(浩)先生から言われた,何か例外的な場合にのみ視察するというような読み方ができてしまうという点につきましては,むしろ我々は,先ほど,提言を一歩進めると言いましたが,会から視察をしたいとか面接をしたいと求められれば,刑事施設の長は拒んではいけないという規定もつくる予定でございますので,そういう意味では,いつでも面接・視察ができるという趣旨は,十二分に今回の法案の中に入れるつもりでございます。ですから,名称についての御議論は,まだ我々としても当然考えていかなくてはいけないものでございますが,その権限の書き方,実体につきましては,十分に提言を踏まえておると思っております。
○野﨑顧問 この「運営協議会」という名称なんですが,運営について協議するというと,官側の人も入ってこないと協議できないですよね。「視察委員会」というのは,視察を一般の人がやる,そういう委員会をつくる,そしてその人たちが視察をした結果,意見を述べることができるということになるわけですが,その人たちが視察した結果について,「運営協議会」というもので何か議論をしようというのであれば,官側も入ってこないといけないし,そこで決まったことをどう反映するかということも出てくると思うのです。その点は,ここの書き方ですと,「施設の運営に関し意見を述べる」ということになっていて,そこはどうも「視察委員会」的なものとして残っているわけですね。だから,「運営協議会」とされたときに,例えば委員の構成とかそういうことについて,特段のお考えがあるのなら教えていただきたいと思います。
○北村官房参事官 この「協議会」なり「委員会」は,いずれにしましても施設側の人間が入る組織とは考えていませんで…
○野﨑顧問 それだと,運営を協議するというようなものにはならない感じなんです。
○北村官房参事官 今の御議論を伺っておりまして,確かに,「運営協議会」というと,民間の人から構成される会が,施設長と何か協議しているイメージを与えてしまっているのだと思います。
 開き直って言えば,刑事施設に委員会を置く,前項の委員会は意見を述べるものとすると書いて,委員会の名称は書かない,要するに無味乾燥な条文だけで書くというやり方も,法律的には可能だと思うのです。しかし,それはそれでちょっと適切でないので,ある程度何か名前をつけた方がいいだろうと。それで,こちらが考えていた発想は,「施設の運営について施設と協議をする」ということではなくて,「施設の運営に関して意見を述べるために委員が協議をする」というところの「運営」と「協議」を引っ張ってきたというイメージで考えていました。先ほど申し上げましたように,条文を引っ張って無味乾燥な書き方もできますが,それはそれで余りよくないだろう,かといって余り長ったらしい名前も書けないということで,コアとなる言葉をくっつけたら,誤解を与えるようなイメージの言葉になってしまったということなのかなと。今の御議論を聞いておりまして,そんなふうに感じております。
○野﨑顧問 もう一つ申し上げたいことがあるのですが。
 これまでの監獄法と随分違ったものになるなということで感心をし,安心もしているのですけれども,行刑改革会議が進行中であった際,我々は欧米の刑務所を見る機会を得まして,行刑というものが動いている,大きく変わりつつあるということを痛感しました。
 しかし,何がベストなのかというのは,これからいろいろ議論もあるでしょうし,一挙に大きく変えていくというのもなかなか難しいところがあるわけですね。
 だから,これからできる行刑施設に関する法案というのは,職員の職務権限であるとか,受刑者の権利義務であるとか,そういうところは非常にきっちりしたものにしないといけないけれども,運用に関しては,時代の変化に応じて動かすことのできるような中身を持たないと,日々に新たになっていく情勢には対応していけないことになる。こういう法律は,人権に非常に絡んでくるわけですから,がんじがらめに規定する方が楽にできるところはあるのですけれども,それでは運営が膠着化,固定化してしまう危険性が非常に高い。だから,そういった意味で,私は,二つの要請をうまく満たすものにしていただきたいということを考えます。
 運営をその時代時代の実情に合うようにうまく変えても,法改正はしなくてもいいという方法をとっていくことは,私は,大切なことだと思いますね。
 同時に,我が国では,いったん法律をつくりますと,不磨の大典化して,何十年も法律を変えない。それがいろいろな議論を生む結果になるわけで,この機会にちゃんとやっておかないともう後は駄目だぞということで,前回の監獄法改正の大議論なんかもそういう前提があったと思うのです。法務省が所管されている法律でも,商法みたいに年中変わる法律もあるわけで,立法に対する姿勢が変わりつつあるなという気はするのですが,行刑に関する法律なども,やはり日々に新たにするために大枠までも変えないといけないということになれば,それを改正することをちゅうちょされることのないような運用をしていかれることが,いい行刑制度をつくっていく根幹になるのではないかというふうに私は考えております。
○横田矯正局長 この「刑事施設視察委員会」あるいは「運営協議会」という点につきましては,正に御提言の大きな柱と思っていますし,私どももまた,今度の法改正の核になる事項の一つだというふうに考えています。これにつきましていろいろ御意見がございましたので,最初に私が申し上げましたように,今日の先生方の御意見を踏まえまして,また検討を進めてまいりたいと考えております。顧問の先生の中には,本日いろいろ御予定のある方もあるやに承っておりますので,この点については,私ども十分御意見を伺いながら検討してまいるということで,いったん打ち切らせていただいて,先に進めさせていただくということでよろしゅうございましょうか。
○後藤田顧問 それで結構だと思うけど,「運営協議会」というのは,印象としまして,中の機関ではないかという印象なんですね。平たく言えば,これはぐるの機関ではないかと。極端に言うとね。江川さんなどは,外からウォッチしろ,見ろと,こう言うのだけれど,見ただけではどうにもならんわな。圧力はあるかもしれないけれども。やはり,見て,それが運営の改善になっていくということでなければいけない。結局は,名前もさることながら,運営協議会というものの役割,あるいは委員の任命の仕方,そういうようなところをもう少しきちんとして,「ああ,なるほどな」という感じを与えるものにした方がいいのではないですかね。これだと,法務大臣が任命して云々というだけで,この程度では世間は納得しないかもしれないよ。ちょっと考えたらどうですか。内容は今おっしゃったことでいいと思いますけれどね。
○南顧問 この「委員会」という名称は,先の行革のときに,国家行政組織法の3条にいう行政委員会でないとつけられないというようなことを伺っているのです。だから,今「委員会」という名称は原則として使えないんですよね。そんなことから,かなり御苦心なされて,「協議会」というふうにされたと思うんですよ。
 ただ,「視察」という言葉,これは私ども第2分科会で随分議論したのです。その経緯を申しますと,最初イギリスでは,「訪問委員会」,visitingという言葉を使っていたのですが,visitingではやはり弱過ぎると。それから,今度,monitoringに変わりましたね。これは日本語では「監視委員会」という訳をしているのですね。だけど「監視」というのは,やはりこれは名称としてつけにくいだろうというので,かなり苦心して,「視察」という言葉を使ったいきさつがありまして,だから,このような議論を踏まえ,monitoringの何かいい訳語,それが一言で分かるような言葉をお考えいただければ,私は幸いだと思っております。
○後藤田顧問 これは警察刷新委員会でも問題になったんですよね。イギリスの制度をまねまして,あれはたしか「評議会」とつけたと思うが。
 まあ,これは実体の問題ですから,考えたらどうですか。
○菊田顧問 一言だけいいですか。
 やはりこれは,名称としてはもともと「第三者委員会」というものが想定されていた。そもそもは,受刑者の不満をどう外に容易に出すかというところに視点があったわけです。ですから,そのために視察に入る,面会に入るわけで,その結果,所長にいろいろと具申するということですから,中心は,いかに受刑者の不満を第三者に伝えるかというところがポイントですから,そこのところをお忘れのないようにしていただきたいと思います。
○林総務課長 十分に踏まえてまいります。
 若干時間も押しておりますけれども,ほかの点で何かございますれば,お願いします。
○瀬川顧問 全体として,非常に御努力の跡がたくさん見えると思いますし,顧問の先生方もそういうふうにおっしゃったのですが,ただ,法律家として,最近の状況を踏まえて,今回の行刑改革はなかなか前途多難な面を持っているという点をやや強調的に申し上げます。
 法定刑の引上げというのが昨年の12月に刑法改正という形で通りまして,それで今年の1月1日施行という形になってるわけです。これはもう御存じかと思いますけれども,有期刑で30年ということが可能となったということでありますので,その点で,量刑相場がどうかは別としまして,矯正現場に対する負担というか,それはすごいものがあるんじゃないかというふうに予想されます。短期的には量刑相場がすぐ動いて拘禁期間が長期化するということは認められないかもわかりませんけれども,今後,保安面あるいは改善更生面で,そういう拘禁期間の長期化ということが,じわじわと押し寄せてくるのではないかと思います。そういう意味で,この行刑改革の提言というのは極めてミニマムだということを,やはり我々としては自覚しなければいけないんじゃないかというふうに思います。それゆえ,先ほどから少し触れられていますけれども,人的・物的な面で,ほどほどであるという程度では駄目なので,やはり,是非,画期的に予算獲得を目指していただきたいということを1点思います。
 もう一つは,その長期化に伴ってなのですけれども,前にも申し上げたのですが,仮出獄との関係をもう少し視野に入れて考えておかないと,この行刑改革の提言というのはなかなかうまくいかないんじゃないかという危惧を持っております。
 全体としてはこれで大変結構だと思いますし,賛成という形でこの会議を終わるのがいいのかもわかりませんけれども,予算の面と,拘禁の長期化に伴う対策ですね,改善更生面と保安面の対策というのは早急に考えざるを得ないのではないかということと,さらに仮出獄の問題,これらの点は是非考えていただきたいということです。
○林総務課長 高久先生,もしございますれば,御発言いただければと思いますが。
○高久顧問 話がもとに戻って恐縮ですが,運営協議会は,自治体病院などを最近随分つくっていまして,その場合通常,当然,病院の内部の人と外部の市民の方の両者で運営をするという形をとっていますから,外部の人だけですと,「運営協議会」という名前はふさわしくないと思います。強いて言うならば「監視運営協議会」とか,「監視」という言葉を入れれば,ある程度皆さん方の御同意を得られるかと思います。思い付きですが。
 それから,余計なことかもしれませんが,1時間の運動時間という点について施設の問題があるとのことですが,運動は非常に幅が広くて,普通の散歩も運動に入りますから,設備はそれ程いらないのではないかと思います。
○菊田顧問 もう一つだけ。
 弁護士が信書を出した場合に,これも全部中身を見るというふうになっているようですけれども,弁護士の外からの手紙は検閲しないという原則は,この際確立すべきではないかと私は思います。それは防御上の批判がいろいろあると思いますけれども,少なくとも弁護士からの手紙は受刑者の面前で開ける,そして,おかしくなければそのまま渡す,中身を見ないという,そういう保障をするような形の法にしていただかなければ困るんじゃないかと思います。
○北村官房参事官 弁護士等との信書の発受につきましては,提言で,人権救済等の場面で,これは結局,施設の方が見るというのはアンフェアだという思想だと思いますが,それについて,確認の限度での検査にとどめろという御提言をいただいたところで,今回の新法では,それをそのまま,提言どおりの立法をしたいと考えているところでございます。
○菊田顧問 その確認の方法を言っているわけですよ。確認というのは,受刑者の面前で確認しないということは,中身を見てしまうわけですよ。そして,施設側がいろいろと中身を知るわけですね。そうじゃなくて,弁護士からの手紙は,確認はいいんだけれども,受刑者の面前で確認して渡しなさいと,そのぐらいの細かい神経を使うような方法で,弁護士の手紙が真っすぐに受刑者に行くようにしてもらいたいということを言っているわけです。確認の手段の違いですね。
○林総務課長 確認の方法というのは運用の段階ではさまざまあり得るかと思いますが,法案というレベルでは,今回は提言そのままに取り込ませていただいております。
○久保井顧問 それに関連して。
 11ページの提言,上の方ですけれども,二つ目の丸のところで,「法律上の重大な用務の処理のための弁護士との面会については……立会いをしない」ということを提言しているわけですね。それに対して,法案の方は,「法律上の重大な用務の処理のため」というのが,「人権救済等を求めるため」というふうに変わっていますが,これはどういうわけでしょうかね。
○北村官房参事官 人権救済の関係の用務の処理といいますか,人権救済のための外部交通について,信書についてしか提言にはなかったところを,面会についても,配慮をするというのにとどまらず,立会いは駄目よと禁止している。こちらとしては,その点で提言より進めているつもりでございます。
 そしてさらに,提言では,そのほかの弁護士との面会についても,立会いをしないなどの配慮,運用上の配慮事項ということで理解していいのだと思いますが,そういうことが求められています。この点に関しましては,先ほど若干触れましたが,現行では,立会いは,例外もございますが,基本的にすべてについて行う,弁護士との面会もすべてやるということになっておるわけですが,今回の法律では,そこは方針転換をして,必要がなかったら立ち会わないという制度に変えると。それは今後の運用の問題ではございますが,お互いに信頼できる二人が会うような場面については,実績といいますか,運用を見ながら,必要がないということが分かってくればどんどん立会いを省略していくといいますか,立会いをしないという形での配慮をしていくことになる。そういう意味で法律上の配慮をしているということを御理解いただきたいと思います。
○久保井顧問 そうすると,「法律上の重大な用務の処理のため」というのは,法案の「人権救済等」の「等」の中に入ると考えていいわけですね。つまり,当該受刑者についての裁判でなくとも,別の裁判,例えば国賠訴訟なんかで面会する場合も「等」の中に入ると。つまり,提言を狭めたつもりはないとおっしゃるわけですね。
○北村官房参事官 むしろ,人権救済の場面における配慮については,信書については提言で言われておりますが,面会については言われていなかった。が,そこは面会でも同じことであろうと考えまして,人権救済のために弁護士と相談する場面においては,提言にはなかったところですが,それには立ち会ってはいかんということを法律に書きたいということでございます。
○久保井顧問 それは大体分かりましたけれども,「法律上の重大な用務」というのが法案では落ちているから。それは「人権救済等」の「等」の中に入ると考えていいのですか。そうとも言えないのですか。
○北村官房参事官 それは別の話として,面会の立会いの運用上の配慮事項として生かしていくことになるのだと考えております。
○久保井顧問 法律には決めないで,運用の問題として処理すると。
○北村官房参事官 はい。
○久保井顧問 まあ,理解はできました。
○菊田顧問 関連質問で。
 今の,弁護士が人権救済のために面会することですけれども,その場合に,暴行を受けた受刑者を目撃したという同僚の受刑者にも面会を求めるというようなケースについては,今後は認めていくという方向で考えてよろしいのですか。
○北村官房参事官 面会の範囲は,権利として保障といいますか,親族等については絶対認めなければならない。もちろん制限はありますが,基本的には制限の範囲内でこれは認めますという範囲と,さらに,そういう親族等一定の人ではない範囲の人についても,必要があれば面会を認めるという規定を設けることにしておりますので,その規定の運用といいますか,その範囲で面会を……
○菊田顧問 弁護士との面会ですよ。
○北村官房参事官 だれとであっても,必要性の判断を経て,面会を許す場面が出てくるということになると考えております。
○菊田顧問 つまり,弁護士が申し込んで,受刑者の証人にも面会をするということが必要であれば,認めていくということですね。
○北村官房参事官 はい。
○井嶋顧問 一つだけ。時間がなくて恐縮なのですけれども,前回の会議で,私は,監獄法の,未決,既決,全体の一体的な改正をすべきだということを主張した。ですから,蛇足ながら一言だけ付け加えて,議事録に残していただきたいのですが。
 冒頭に局長から説明がありましたように,いろいろな事情,それに三者協議の進展状況などから,未決については残すということで,受刑者だけをやるという今回の方針を決めたということについては,私も了解いたしますが,その後の手段として,これは従来の経緯からいって大変重要な代用監獄問題を抱えている部分でございますから,なかなか,切り離してしまうと切り離されっぱなしで,監獄法だけがいつまでも残るという事態になることを,私は一番恐れるわけであります。先ほど御説明があったように,何としても18年度の3月に国会へ出すという原則のもとに,三者協議を強力にやっていただいて,是非,未決拘禁の処遇についても改正法案を引き続き出すと,そして,監獄法を完全になくしてしまうという今日の御説明を必ず実行していただくように,強く要望したいということを申し上げておきたいと思います。
○久保井顧問 本当に申し訳ないのだけれども,今の点について。
 確かに,専門的な側面があるから,三者協議を優先するというか,ある程度前さばきをしていただくのは,それは必要かと思いますが,やはり,こういう会議にかけて,専門家以外の委員の意見も十分に聞いて,その上で最終的に誤りなきようやっていただきたい。そういう意味では、この顧問会議を活用するような方向で御努力いただきたいとお願いしたいと思います。
○横田矯正局長 一言申し上げます。
 ただいま井嶋先生,それから久保井先生からもお話がございましたけれども,未決処遇者の法案については,私ども,心底から,これは是非実現しなければならないし,実現したいと思っております。
 先ほども申し上げましたように,監獄法改正につきましては三者協議で協議を重ねてまいりましたけれども,未決拘禁者等の処遇については,昨年12月15日の三者協議会で,これを検討する別機関の設置の是非も含めて協議するということで合意がなっております。
 もとより,今の先生の御発言ですけれども,行刑改革会議は,行刑改革に必要な課題について一切の聖域なしに御議論いただくという,そのための場として設けられたものでございますので,その流れをくむこの顧問会議には,節目節目で未決拘禁者等の処遇に関する法改正につきまして御報告いたしまして,御意見をいただくということは当然でありますが,まずは三者協議の場で協議しつつ,顧問の先生の皆様方の御意見もいただきながら検討してまいりたいというふうに申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

法改正を待たずに実施できる方策の実施状況について

○林総務課長 それでは,もう1点,法改正を待たずに実施できる方策の実施状況についての報告をさせていただきたいと思います。これにつきましては,時間の関係上,当初の予定よりも若干短縮させていただいて御説明いたします。
○山下官房審議官 官房審議官の山下でございます。
 それでは私の方から,いただきました御提言の内容のうち,法改正を待たずに実施できる方策等の現在における進捗状況について御説明をさせていただきます。
 資料2を御覧いただきたいと思います。
 この資料は,昨年6月の第1回顧問会議の際に御報告申し上げた事項を資料の左側,灰色部分の方に記載しておりまして,今回新たに御報告申し上げる事項を右側,水色部分に並べて記載いたしております。項目が大変多いのですが,時間の方の制約もございますので,はしょる感じで申し訳ございませんけれども,主だったところをかいつまんで御説明させていただきます。
 1ページ目でございますが,「(1) 被害者の視点を取り入れた処遇」と,「(4) 薬物依存者の処遇の在り方の検討」につきましては,それぞれどのような処遇を実施すべきかということについて研究会を設けまして,部外の有識者あるいは専門家の方々から御意見をちょうだいいたしました。その結果を踏まえまして,現在,右の欄に記載しておりますような内容の事柄について,その実施に向けた準備を進めているところでございます。
 「(2) 刑務作業の在り方の見直し」につきましては,作業時間短縮の試行を,前回は3庁というふうに御報告したと思いますが,現在,かなり多くの施設で試行を始めております。
 そのほか,来年度予算で職業訓練種目の拡大のための予算措置も若干いただけそうですので,特に社会貢献を実感できるようなものをということで,ホームヘルパー,あるいは点字翻訳の技術習得のための職業訓練,これを拡充していきたいというふうに考えております。
 それから,「(3) 処遇困難者の処遇の抜本的改革」につきましては,先ほど総務課長からも御説明しましたけれども,来年度は,心理技官6名,それから民間カウンセラーとの委託契約が24施設で行えるようになったということを御報告させていただきたいと思います。
 2ページに移りたいと思いますが,「(6) 保護房収容の適正さの確保」につきましては,前回会議で,保護房の仕様の見直しを進めているということを御報告いたしました。その後,府中,大阪医療,この2施設で計4種類の新しい単独室を設置しまして,その運用を試行しているところでございます。写真にございますとおり,いずれも大きな窓を設けまして,拘禁感の緩和を図り,それから空調設備を整備するなどいたしまして,従前の保護房よりは居住環境の向上にかなり配慮したつくりといたしております。
 少し順を追って御説明申し上げますと,2ページのa)のところには,大声に対応する単独室を紹介しております。この部屋は,防音設備を施しまして,収容者の発する大声が外部に漏れないような構造としておりますが,部屋の中には畳を敷くなど,一般の部屋と同じような仕様にいたしております。
 次のページの上半分にございます4枚の写真は,大声,それから精神変調状態にある者に対応する単独室でございまして,この部屋は,防音設備が施してある点は先ほどと同じでございますけれども,精神変調状態にある者に対応するために,畳は設置せず,ベッドを備え付けております。こういう部屋は医療専門施設,あるいは医療重点施設の病棟に併設したいということを考えております。
 下半分でございますが,そこでは,逃走・自殺・暴行等に対応する単独室と,それらに加えて房内汚染にも対応できる単独室を紹介いたしております。いずれも部屋の構造は同じでございますけれども,房内汚染に対応できる単独室の方には,被収容者が汚物などによって部屋を汚染した場合に簡単に清掃ができるようにということで,壁に特殊なコーティングを施しております。写真でもその様子がうかがえるかと思います。また,部屋のすぐ近くにはシャワー室を設けまして,汚染がひどくて一般の入浴場に連れていけないような者についてそこで洗体ができるように配慮しているものでございます。
 4ページ目でございますが,「(10) 懲罰手続の運用の改善」については,来月から,軽屏禁40日以上の懲罰を科した事案については,上級庁である管区への報告を義務付け,後刻,その相当性の判断が検証できるような仕組みをつくる予定といたしております。
 5ページに移りますが,「2 行刑運営の透明性の確保」につきましては,「(4) 地域社会との連携」ということで,前回,学術研究のためのいわゆる参観とは別個に,広報のための施設見学の機会を設けるようにいたしましたという御報告をいたしました。昨年末までの実績は,行刑施設74庁中68庁において,延べ人員で1万6,400人,延べ回数で176回でございます。その風景が,一部写真で掲載されておりますので,御覧いただけるかと思います。
 6ページ目の「3 人権救済のための制度の整備」に移りたいと思いますが,これにつきましては,独立の救済機関である人権救済機関が設置されるまでの間,暫定的かつ事実上の措置として,刑事施設不服審査会,これは仮称でございますけれども,これを設ける必要があるという御提言がございました。来年度の予算では必要な予算内示をいただいておりますので,提言の趣旨を体した制度設計を進めていきたいというふうに考えております。
 それから,「4 矯正医療の在り方」についてでございますが,矯正医療につきましては多くの御提言をいただいたところですので,必要な予算,あるいは人員の確保に現在最大限度の努力をいたしているところでございます。一例を挙げますと,矯正医療センターの設立についての御提言がございましたが,来年度予算案におきましては,西日本矯正医療センターの設置に関する調査費が計上されました。徐々にその実現に向けて歩みを進めることができるものと考えております。
 それから,スタッフの確保の点については,次のページの「(2) 医師の確保」というところでございますが,来年度予算におきましては,精神科医師,精神保健福祉士,薬剤師等の非常勤の医療スタッフの拡充が見込まれるところでございまして,現在は21人しかこれが認められておりませんが,新年度は74人になるということが予定されているところでございます。
 8ページに移りたいと思いますが,「6 行刑施設における人的物的体制の整備」。まず,「(1) 施設の増設」でございますが,先ほど副大臣からもございましたけれども,本年度の補正予算,それから来年度の本予算におきまして,合わせて7,400人分の収容能力拡充の予算経費の内示を受けております。
 「(2) 人的体制の整備,充実」につきましては,来年度は267人の増員が見込まれることになっているところです。これに加えまして,先ほどもちょっと触れましたが,業務の民間委託の方も積極的に進めてまいることにしておりまして,現在,212ポストの民間委託経費が予算措置されているのでございますが,来年度はこれが3倍の617ポストになるという趣旨の内示をいただいているところでございます。
 9ページでございますが,「(3) 人事管理の在り方」につきましては,刑務官の相談窓口,あるいは矯正情報ネットワークを活用しての処遇改善意見の提出制度,これは従前どおり,引き続きその活用を図り,うまく利用されていると思いますが,今年度は,これに加えまして,巡閲の際に法務本省から施設に出向く職員が,施設の現場職員と面接を行う機会を設けまして,現場の職員が抱えている悩みや,施設に内在する問題について把握をし,それを施設運営に反映させるような仕組みにしていきたいというふうに考えているところでございます。
 時間の関係ではしょりまして誠に申し訳ございませんが,以上でございます。
○林総務課長 ただいまの説明に対しまして,御意見等ございましたら,よろしくお願いいたします。
○江川顧問 中身については,それでよく分かったというか,あとは全部読んでみようと思うのですけれども,今度の改革は,やはり,国民の人たちにもアピールするものでなければ,支持を得られないと思うのですね。それで,今,国民の関心の一つが,性犯罪を犯した人たちの矯正処遇だと思うのです。提言のときには,薬物依存の人についてかなりのことをお願いして,それが少しずつ実現しつつあるということだと思うのですけれども,性犯罪の処遇となると,どこからどこまでを性犯罪に入れるかとか,専門家によってもいろいろな意見があって,なかなか一つの方針をすぐに打ち出すというのは大変難しいとは思うのですけれども,できることから何かやっていく,やはり矯正局の方で,今この問題について何ができるのかというのをもう少し打ち出していただいた方が,全体として,国民にも理解され,受け入れられやすいものになるのではないかなと思うので,今後の御検討をお願いしたいと思います。
○林総務課長 ただいまの点でございますが,もとより今の御指摘はそのとおりと思っておりまして,たまたま今回,あの奈良の事件で,性犯罪ということでございました。そういう中で,今たまたま監獄法の改正をやっているということでございまして,先ほど改善指導という概念を御説明させていただきましたが,その中には,当然,性犯罪に対する処遇についてもその範ちゅうに入ってこようかと思います。
 ただ,何分にも,現状,十分に科学的・体系的な処遇プログラムがあるわけではございませんので,では中身としてどのような処遇をしていくかということにつきましては,まだ発足の時期は決めておりませんが,近く,矯正局だけではなく保護局等々も入りまして,合同で研究会のようなものを喫緊に立ち上げて,外部の専門家の方の力も借りて,処遇の中身の問題も,この法改正と併行して検討していこうということにしております。現在,外部の専門家の方の人選を進めているところです。
○菊田顧問 一つだけ申し上げておきたいのですが,資料は非常に立派ですけれども,例えば,長野刑務所は今現在零下10度なんですね。ところが,全然暖房がないんです。だから,例えば単独室に入れられている連中は,もう,頭の先から指の先まで凍えるんじゃないかという,凍傷で耳が垂れたり,そういう状況に置かれているのですね。これは緊急の課題として問題にしてもらいたいと思います。法改正を待たずにできることの最先端ではないかと思っておりますので。
○林総務課長 ほかにいかがでございましょうか。
 それでは,議事の主要な点につきましては,これで終了させていただきます。

行刑改革推進委員会委員長あいさつ

○林総務課長 最後に,行刑改革推進委員会委員長である事務次官から,あいさつがございます。
○樋渡事務次官 本日は,長時間どうもありがとうございました。
 ほかの会議があったものですから,途中から出席ということになってしまいまして,失礼いたしました。
 行刑改革会議の御提言を受けまして,まずできることから行刑の改善に努めてまいりました。そして,ここに,先ほど説明させていただきましたように,この国会に監獄法の改正案を出せる準備が着々と整ってきたところでございます。皆様の御協力に対しまして,本当に感謝申し上げます。
 もとより,まだ,新法として出す法律案の名称も含めまして,細部までは詰め切っておりません。本日いただきました貴重な御意見を踏まえまして,これを法案として完成させ,是非ともこの国会で成立させていただくように頑張りたいと思っております。
 この法案ができますと,今度は,先ほど局長からも話をいたしましたように,未決拘禁者の処遇に関する法案をつくっていかなければなりません。また皆様のお知恵を拝借したいと思います。どうか,今後ともよろしく御協力のほどお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
○林総務課長 それでは,これをもって閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
午後4時12分 閉会