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諮問第八十一号

(原文縦書き)

諮問第八十一号
    裁判員の参加する刑事裁判の制度の円滑な運用等のために、早急に法整備を行う必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。


別紙
     要綱(骨子)

第一  部分判決制度
 一  区分審理決定
  1  裁判所は、同一の被告人に対し公訴が提起された数個の対象事件(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第二条第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件をいう。以下同じ。)の弁論を併合した場合又は同法第四条第一項の決定に係る事件と対象事件の弁論を併合した場合において、併合した事件(以下「併合事件」という。)を一括して審理することによる裁判員の負担を考慮し、その円滑な選任を確保するため特に必要があると認められるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、当該併合事件のうち一部の事件を区分し、順次、この区分した事件(以下「区分事件」という。)ごとに、審理する旨の決定(以下「区分審理決定」という。)をすることができるものとすること。ただし、犯罪の証明又は被告人の防禦に支障を生ずるおそれがあることその他相当でないと認められるときは、この限りでないものとすること。
  2  区分審理決定につき即時抗告の規定を設けること。
 二  区分事件の裁判等
  1  部分判決
   (1)  裁判所は、区分事件に含まれる被告事件について、犯罪の証明があったときは、刑事訴訟法第三百三十三条及び第三百三十四条の規定にかかわらず、部分判決で有罪の言渡しをしなければならないものとすること。
   (2)  部分判決で有罪の言渡しをするには、刑事訴訟法第三百三十五条第一項の規定にかかわらず、罪となるべき事実、証拠の標目、必要な範囲の法令の適用並びに法律上犯罪の成立を妨げる理由となる事実及び刑を加重減免する理由となる事実を示さなければならないものとすること。
   (3)  裁判所は、部分判決で有罪の言渡しをする場合、犯行の動機、態様及び結果その他の罪となるべき事実に関連する事実並びに没収、追徴又は被害者還付の要件である事実及びその根拠となる規定の適用を示すことができるものとすること。
   (4)  裁判所は、区分事件に含まれる被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条の規定による管轄違いの判決、同法第三百三十六条の規定による無罪の判決、同法第三百三十七条の規定による免訴の判決又は同法第三百三十八条の規定による公訴棄却の判決の言渡しをしなければならない事由があるときは、部分判決でその旨の言渡しをしなければならないものとすること。
   (5)  部分判決には、独立して不服申立てをすることができないものとすること。
  2  構成裁判官による部分判決
   (1)  裁判所は、区分審理決定をした場合において、区分事件が対象事件を含まないときは、当該区分事件を裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)の合議で審理する旨の決定をすることができるものとすること。
   (2)  裁判所は、(1)により区分事件につき審理をした場合は、構成裁判官の合議により、当該区分事件につき部分判決をしなければならないものとすること。
  3  終局の判決
   (1)  裁判所は、区分事件の審理及び裁判の後、併合事件の全体について、終局の判決をしなければならないものとすること。
   (2)  裁判所は、併合事件の全体についての終局の判決をするときは、部分判決に係る事項についてはこれによるものとすること。
   (3)  裁判所は、併合事件の全体についての終局の判決をする場合において、構成裁判官の合議により、部分判決に刑事訴訟法第三百七十七条、第三百七十八条又は第三百八十三条の事由があると認めるときは、職権で、当該部分判決によらない旨の決定をしなければならないものとすること。
 三  部分判決制度における裁判員等の選任手続等
  1  区分審理決定をした場合における区分事件を審理する裁判員及び補充裁判員の選任は、区分事件ごとに行うものとすること。
  2  裁判員及び補充裁判員の任務は、その審理する区分事件について、部分判決を告知したときに終了するものとすること。
  3  裁判所は、部分判決の告知により裁判員及び補充裁判員の任務が終了したときに裁判員及び補充裁判員に選任されることとなる選任予定裁判員をあらかじめ選任することができるものとすること。
第二  証人尋問等の記録媒体への記録
 一  裁判所は、対象事件及び裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第四条第一項の決定に係る事件の審理における証人等の尋問及び供述並びにその状況等について、評議等における裁判員の職務の的確な遂行を確保するため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができるものとすること。ただし、事案の内容、審理の状況、供述又は陳述をする者に与える心理的負担その他の事情を考慮し、記録媒体に記録することが相当でないと認めるときは、この限りでないものとすること。
 二1  一の場合において、刑事訴訟法第百五十七条の四第一項に規定する方法により証人尋問を行うときは、証人の同意を要するものとすること。
  2  1により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとすること。ただし、裁判所は、当該証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがないと明らかに認められるときは、当該記録媒体を訴訟記録に添付しないことができるものとすること。
第三  公判調書の整理
 公判期日から判決を宣告する日までの期間が十日に満たない場合の当該公判期日の公判調書の整理期限を伸長し、当該公判期日から十日又は判決を宣告する公判期日から七日のいずれか早い日とするものとすること。
第四  その他所要の規定の整備を行うこと。