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株券不発行制度の導入に関する要綱

平成15年9月10日
法制審議会総会決定

第1  商法の改正関係
 1  株券の不発行の定め等
  (1)  株券の不発行の定め
 会社は,定款で,株券を発行しない旨の定めをすることができるものとする。
  (2)  株券廃止会社への移行手続
    ア  株券を発行しない旨の定めをする定款の変更の決議をした場合においては,会社は,株券を発行しない旨の定款の定めをした旨及び一定の日において株券は無効となる旨をその一定の日の2週間以上前に公告し,かつ,株主及び株主名簿に記載(記録を含む。以下同じ。)のある質権者(以下「登録質権者」という。)に各別に通知しなければならないものとする。
    イ  株券を発行しない旨の定款の定めの設定は,アの一定の日において効力を生ずるものとする。
    ウ  すべての株式について株券不所持の申出(商法第226条ノ2第1項)又は3(1)により株券が発行されていない会社(以下「準株券廃止会社」という。)は,新株引受権者及び新株予約権者に対してもアの通知を行った場合には,アの公告をすることを要しないものとする。
    エ  会社が株券を発行しない旨の定めをする定款の変更の決議をした場合には,株主名簿に記載のない質権者(以下「略式質権者」という。)は,アの一定の日までの間,会社に株券を呈示した上で,自己の氏名及び住所を株主名簿に記載することを請求することができるものとする。
    オ  エにより株主名簿に記載された質権者(以下「特例登録質権者」という。)は,会社より利益若しくは利息の配当,残余財産の分配及び商法第208条の金銭の支払いを受けることはできないものとする。

 2  株式の譲渡方法及び名義書換
  (1)  株券を発行しない旨の定款の定めをした会社(以下「株券廃止会社」という。)の株式を譲渡する場合には,株券を交付することを要しないものとする。
  (2)  株券廃止会社(第2の1(2)の株式振替制度利用会社を除く。以下2において同じ。)の株式の移転は,取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載しなければ,会社のほか,その他の第三者にも対抗することができないものとする。
  (3)  株券廃止会社の株式についての株主名簿の名義書換は,次のいずれかの場合でなければ,することができないものとする。
   ア  株主名簿に株主として記載された者(以下「名義株主」という。)又はその一般承継人と株式の取得者が共同して請求した場合
   イ  名義株主又はその一般承継人に対して株式の取得者への名義書換の請求をすべきことを命ずる確定判決を添付して当該取得者が請求した場合その他の株式の取得者の請求による名義書換をしても利害関係人の利益を害するおそれがないものとして命令で定める場合
   ウ  会社が株式交換により完全子会社となった場合その他の請求によらない名義書換をしても利害関係人の利益を害するおそれがないものとして命令で定める場合
   (注 )  有限会社にも,(3)と同様の規定を設けるものとする。
  (4)  株券廃止会社の株主は,会社に対し,当該株主についての株主名簿に記載された事項を証明した書面の交付を請求することができるものとする。

 3  譲渡制限会社における株券発行時期の特例等
  (1)  譲渡制限会社における株券発行時期の特例
 株式の譲渡について取締役会の承認を要する旨の定款の定めのある会社は,商法第226条第1項の規定にかかわらず,株主の請求がない限り,株券を発行することを要しないものとする。
  (2)  株券不所持制度における株券の寄託制度の廃止等
    ア  株券の寄託制度(商法第226条ノ2第2項)を廃止するものとする。
    イ  株券が発行されていない時に株券不所持の申出(商法第226条ノ2第1項)がされた株式について,株主が株券発行請求(同条第4項前段)をした場合における株券発行費用は,会社の負担とするものとする。

 4  株券の不発行に関する特例等
  (1)  各種公告制度の特例
   ア  株券の提出の催告のための公告及び通知
    a  株券廃止会社及び準株券廃止会社(以下「株券廃止会社等」という。)は,株式併合の際の株券の提出の催告をするための公告及び通知(商法第215条第1項)をすることを要しないものとする。
    b  株券廃止会社等は,株式の併合をしようとするときは,その旨及び会社の定める一定の日においてその効力が生ずる旨を,その日の2週間以上前に,公告しなければならないものとする。
    c  株券廃止会社等(株式振替制度利用会社を除く。)は,株主,登録質権者(特例登録質権者を含む。以下同じ。),新株引受権者及び新株予約権者への通知をもって,bの公告に代えることができるものとする。
    d  強制消却の際の公告(商法第213条第2項)その他の株券の提出の催告をするための公告についても,aからcまでと同様の規定その他所要の規定を整備するものとする。
   イ  基準日・割当日公告
    a  株券廃止会社等(株式振替制度利用会社を除く。)は,株主,登録質権者,新株引受権者及び新株予約権者への通知をもって基準日の公告(商法第224条ノ3第4項)に代えることができるものとする。
    b  その他の割当日を通知するための公告についても,aと同様の規定その他所要の規定を整備するものとする。
  (2)  株主名簿の閉鎖期間の廃止
 株主又は質権者として権利を行使する者を定めるための制度(商法第224条ノ3第1項)について,株主名簿の閉鎖の制度を廃止し,基準日制度に一本化するものとする。
  (3)  新株引受人が株主となる時期
 新株の発行において,新株引受人が株主となる日(商法第280条ノ9第1項)を,「払込期日ノ翌日」から「払込期日」に改めるものとする。
  (4)  その他
 その他株券の不発行制度の導入に伴い,所要の規定を整備するものとする。

第2  株式の振替制度関係
 1  振替制度の利用の定め等
  (1)  振替制度の利用の定め
 株券廃止会社が,その発行する株式について振替制度を利用するには,振替機関等を規律する法令において別に定めるところに従うほか,取締役会の決議又は発起人全員の同意によることを要するものとする。
  (2)  権利の帰属
 株券廃止会社のうち株式の振替制度を利用する会社(以下「株式振替制度利用会社」という。)の株式(以下「振替株式」という。)の全部についての権利の帰属は,振替口座簿の記載により定まるものとする。

 2  振替口座簿の記載事項
 振替機関又は口座管理機関(以下「振替機関等」という。)が作成する振替口座簿中の各口座には,次に掲げる事項を記載するものとする。
  (1)  振替機関等が口座を開設した者(以下「加入者」という。)の氏名又は名称及び住所
  (2)  株式振替制度利用会社の商号及び振替株式の種類(以下「銘柄」という。)
  (3)  銘柄ごとの数((4)に掲げるものを除く。)
  (4)  加入者が質権者であるときは,その旨並びに質権の目的である振替株式の銘柄ごとの数,当該数のうち株主ごとの数並びに当該株主の氏名若しくは名称及び住所
  (5)  加入者が信託の受託者であるときは,その旨並びに(3)及び(4)の数のうち信託財産であるものの数
  (6)  (3)から(5)までの数の増加又は減少の記載がされた場合において,増加又は減少の別,その数及び当該記載がされた日
  (7)  その他政令で定める事項
  (注 1) 振替機関等が下位口座管理機関の口座を開設した場合には,当該下位口座管理機関の口座については,当該下位口座管理機関自身が保有する株式を記載する自己口座と,当該下位口座管理機関の加入者が保有する株式の合計数を記載する顧客口座に区分するものとする。
  (注 2) 振替機関は,消却義務を履行するために,振替機関自身が保有する株式を記載する機関口座を開設するものとする。
  (注 3) 譲渡担保権者が譲渡担保設定者を株主として通知する旨の申出(株券等の保管及び振替に関する法律第31条第3項括弧書,第4項括弧書参照)をした場合の取扱いについては,8及び9で定めるものとする。

 3  新規記載手続等
  (1)  会社が設立の時から株券廃止会社となり,かつ,株式振替制度利用会社となる場合には,発起人は商法第169条の書面に,株式申込人は株式申込証に,株式の振替を行うための口座を記載しなければならないものとする。
    (注 ) 株式振替制度利用会社が新株発行をする場合にも,株式申込人は,株式申込証(商法第280条ノ14第1項において準用する同法第175条第1項)に株式の振替を行うための口座を記載しなければならないものとする。
  (2)  株券廃止会社が,設立の後に,振替制度を利用することを定めたときは,株式の譲渡に振替制度を利用する旨及び一定の日までに株式の振替を行うための口座その他所要の事項を会社に通知すべき旨を,その一定の日の1か月以上前に,名義株主及び登録質権者に各別に通知しなければならないものとする。
  (3)  発起人又は株券廃止会社が振替制度を利用することを定めたときは,株券廃止会社は,設立後又は(2)の一定の日後,遅滞なく,振替機関に対し,振替制度の利用を開始する日(以下「振替開始日」という。)及び株式の種類ごとに,当該株式を有する名義株主若しくは当該振替株式についての登録質権者である加入者の氏名若しくは名称,当該加入者の口座,当該加入者ごとの2の(3)から(5)までの事項その他命令で定める事項の通知をしなければならないものとする。
  (4)  (3)の通知があった場合には,当該通知を受けた振替機関は,直ちに,通知を受けた事項のうち所要の事項を,振替口座簿に記載し,かつ,直近下位機関に通知しなければならないものとする。
  (5)  株式振替制度利用会社は,口座等を通知しなかった名義株主又は登録質権者があるときは,振替機関等に対し,これらの者を名義人とする口座(以下「特別口座」という。)の開設の申出をしなければならないものとする。この場合においては,当該特別口座をこれらの者の口座として(3)の通知をするものとする。
  (6)  株式振替制度利用会社は,特別口座に記載された株式を振替開始日までに取得したが,株主名簿の名義書換をしなかった者(以下「失念株主」という。)若しくはその日までに当該株式について質権の設定を受けた略式質権者が,名義株主若しくはその一般承継人と共同して請求した場合,又は確定判決若しくはこれに準ずる書類として命令で定めるものを添付して請求した場合その他命令で定める場合には,特別口座を管理する口座管理機関に対し,当該失念株主又は略式質権者を名義人とする特別口座を開設し,かつ,当該株式について当該特別口座への振替をすることの申請をすることができるものとする。
  (7)  (6)の場合を除いて,特別口座に記載された振替株式については,当該特別口座の名義人,その一般承継人又は当該振替株式を発行した株式振替制度利用会社以外の者の口座への振替の申請をすることができないものとする。
  (8)  株式振替制度利用会社は,振替制度の利用を止めることができないものとする。

 4  振替株式の譲渡等
 振替株式の譲渡,質入れ,信託の対抗要件,権利の推定及び善意取得については,社債等の振替に関する法律(以下「社振法」という。)第73条から第77条までと同様の規定を設けるものとする。

 5  振替機関等の消却義務
 振替株式の善意取得によりすべての株主の有する振替株式の総数が当該銘柄の振替株式の発行数を超えることとなる場合において,(1)の数が(2)のア又はイの数を超えるときは,振替機関等は,当該超過数に達するまで,当該銘柄の振替株式を取得した上,株式振替制度利用会社に対し,当該振替株式を消却する旨の意思表示をしなければならないものとする。
  (1)  当該振替機関等の備える振替口座簿におけるその加入者の口座に記載された当該銘柄の振替株式の合計数
  (2)ア  当該振替機関等が振替機関である場合 当該銘柄の振替株式の発行数
    イ  当該振替機関等が口座管理機関である場合 当該口座管理機関の口座が開設されている振替機関等(以下「直近上位機関」という。)の備える振替口座簿における当該口座管理機関の口座の顧客口座に記載された当該銘柄の振替株式の数
  (注 1) 社振法第78条第2項に相当する規定をも設けるものとする。
  (注 2) 振替機関等の消却義務について5の考え方を採る前提として,現在の社振法と同様に,加入者保護信託を整備する必要がある。

 6  振替機関等の消却義務の不履行の場合における取扱い
  (1)  消却義務を負う振替機関等が当該義務の全部を履行するまでの間は,当該振替機関等又はその下位機関の加入者は,当該加入者の口座に記載された当該銘柄の振替株式のうちアの数がイの数に占める割合を5の超過数(消却義務の一部が履行されたときは,当該履行に係る数を控除した数)に乗じた数に関する部分については,株式振替制度利用会社に対して対抗することができないものとする。
    ア  当該加入者の有する当該銘柄の振替株式の数
    イ  当該振替機関等又はその下位機関の加入者の有する当該銘柄の振替株式の総数
    (注 ) 当該振替機関等の下位機関も消却義務を負うときは,ア及びイの数に所要の調整を行うものとする。
  (2)  商法第224条ノ3第1項に定める権利の行使の関係においては,8(1)アの通知の後2週間以内に,振替機関等が消却義務の全部を履行し,かつ,当該消却義務の履行に係る株式について同項の規定により当該権利を行使すべきものとされた株主が株式振替制度利用会社に対して当該権利の全部を放棄した場合(当該株主が商法第241条第2項等の規定により当該権利の全部を行使することができない場合を含む。)には,(1)は適用しないものとする。
  (3)  振替機関等が消却義務の全部を履行した場合には,単独株主権・少数株主権の継続保有要件等の関係においては,(1)は適用しないものとする。
  (4)  消却義務を負う振替機関等は,自己又はその下位機関の加入者に対して,当該義務の不履行によって生じた損害の賠償をする義務を負うものとする。

 7  消却義務の不履行の場合等における商法の特例
  (1)  加入者が株式振替制度利用会社に対抗することができる株式数について,6により一株に満たない端数が生じたとき又は一単元の株式の数に満たない株式が生じたときは,商法第241条第1項の規定にかかわらず,当該端数又は当該株式については,当該端数又は当該株式の数を一単元の株式数で除した数(その数に100分の1に満たない数があるときは,これを切り捨てた数)の議決権を有するものとする。
  (2)  株式振替制度利用会社は,商法第211条の規定にかかわらず,その有する自己の振替株式を,消却義務を負う振替機関等に対し,公正な価額で譲渡することができるものとする。

 8  株主名簿の名義書換手続に関する商法の特例
  (1)  振替機関は,次のアからエまでに掲げる場合のいずれかに該当するときは,株式振替制度利用会社に対し,当該アからエまでに定める日における振替口座簿に記載された株主について,その株主の氏名又は名称及び住所並びに当該株主の有する株式の種類及びその数その他命令で定める事項を速やかに通知しなければならないものとする。
    ア  株式振替制度利用会社が商法第224条ノ3第1項の規定により基準日を定めた場合 その基準日
    イ  営業年度を1年とする株式振替制度利用会社について,営業年度ごとに,当該営業年度の開始の日から起算して6か月を経過した場合(当該株式振替制度利用会社が商法第293条ノ5第1項の規定により定款をもって営業年度中の一定の日を定めている場合にあっては,営業年度ごとに,その日が到来した場合(アに該当するときを除く。)。)当該営業年度の開始の日から起算して6か月を経過する日(当該株式振替制度利用会社が同項の規定により定款をもって営業年度中の一定の日を定めている場合にあっては,営業年度ごとのその日)
    ウ  会社が株式併合,株式分割等についてその効力の発生日等を公告又は通知した場合 その公告又は通知がされた日
    エ  その他所要の場合 所要の日
  (2)  命令で定める場合において,(1)の株主から,その直近上位機関に対し,他の者を株主として(1)の通知をする旨の申出があった株式については,(1)にかかわらず,当該他の者を株主として,(1)の通知を行うものとする。
  (3)  口座管理機関は,その直近上位機関から,当該口座管理機関の顧客口座に記載された株式につき,(1)の通知又は当該直近上位機関の報告のために必要な事項の報告を求められたときは,速やかに,自己又は下位機関の加入者について,当該事項を報告しなければならないものとする。
  (4)  振替機関等が消却義務を履行していない場合には,振替機関等は,消却義務を履行していない振替機関等又はその下位機関の加入者の口座については,(1)柱書に掲げる事項のほか,6により株式振替制度利用会社に対抗することができないものとされた部分の株式の数をも通知又は報告しなければならないものとする。
  (5)  株式振替制度利用会社は,正当な理由がある場合には,振替機関に対して,費用を支払って,(1)の通知をすることを請求することができるものとする。
  (6)  振替機関は,振替口座簿に記載された質権者からの申出があるときは,(1)又は(5)の通知において,当該質権者の氏名若しくは名称及び住所,質権の目的である振替株式の種類及びその種類ごとの数並びに当該振替株式の株主の氏名若しくは名称及び住所その他命令で定める事項をも通知しなければならないものとする。
  (7)  (6)による通知がされた質権者は,商法第209条第1項の質権者と同様の地位を有するものとする。
  (8)  株式振替制度利用会社は,(1),(5)又は(6)の通知を受けたときは,株主名簿に,当該通知に従って,商法第223条第1項各号に掲げる事項又は質権者の氏名若しくは名称及び住所を記載しなければならないものとする。この場合において,(1)のアからエまでに掲げる場合のいずれかに該当するときは,当該アからエまでに定める日に名義書換がされたものとみなすものとする。

 9  単独株主権・少数株主権の行使方法
  (1)  株式振替制度利用会社における単独株主権・少数株主権の行使に係る継続保有期間,保有株式数等については,商法第206条第1項の規定を適用せず,(2)の通知の内容により判断するものとする。
  (2)  振替機関は,振替口座簿に記載された株主から申出があった場合には,当該株主の有する振替株式について,当該振替株式の種類及び数,その数の増加又は減少の記載がされているときは増加又は減少の別,その数及び当該記載がされた日その他命令で定める事項を株式振替制度利用会社に対して通知しなければならないものとする。この場合において,8(2)の申出があった株式については,8(2)の他の者をその振替口座簿に記載された株主とみなすものとする。
  (3)  株主は,振替機関が(2)の通知をした後命令で定める期間内でなければ,単独株主権・少数株主権を行使することができないものとする。

 10  振替口座簿に記載された情報の提供請求権
  (1)  加入者は,その直近上位機関に対し,命令で定めるところにより,費用を支払って,当該直近上位機関が備える振替口座簿に記載された情報の提供を請求することができるものとする。
  (2)  株式振替制度利用会社は,その発行した株式について,振替機関等に対し,命令で定めるところにより,費用を支払って,当該振替機関等が備える振替口座簿に記載された情報であって,当該会社がその提供を受ける正当な理由を有するものとして命令で定めるものの提供を請求することができるものとする。

 1 1 その他
 その他株式の振替制度の創設について,所要の規定を整備するものとする。

第3  保振制度利用会社の株式振替制度利用会社への一斉移行
 1  株券等の保管及び振替に関する法律(以下「保振法」という。)第2条第2項に規定する保管振替機関において取り扱われている株券を発行している会社(以下「保振制度利用会社」という。)は,この要綱案に基づく改正商法の施行後5年以内の政令で定める日(以下,「一斉移行日」という。)において,株券を発行しない旨の定めをする定款の変更の決議をし,かつ,第2の1(2)に規定する株式振替制度利用会社になったものとみなすものとする。
  (注 ) 一斉移行日における保振制度利用会社は,すべて一斉移行日に株式の振替制度に移行することになるところ,その場合においては,株主及び質権者に負担をかけることなく,また,株券を回収せずに,かつ,第1の1(2)及び第2の3(2)から(5)までの移行手続によらずに株式の振替制度に移行することを実現するために所要の経過措置を設けるものとする。なお,一斉移行日の後は,保振制度の参加者及び顧客は,預託株券の返還を請求することができないものとする。

 2  保振制度利用会社は,一斉移行日までの間は,株券を発行しない旨の定めをする定款の変更をすることができないものとする。

第4  新株引受権,新株予約権及び新株予約権付社債の証券不発行制度
 1  商法の改正関係
  (1)  株券廃止会社は,新株予約権証券を発行することができないものとする。
  (2)  株券を発行しない旨の定めをする定款の変更の効力は,既発行の新株予約権証券には及ばないものとする。
  (3)  株券廃止会社における新株予約権原簿には,新株予約権者の氏名及び住所,その有する新株予約権の数並びにその取得年月日を記載するものとする。
  (4)  第1の2(1),(2),(3)のア及びイ並びに(4)は,株券廃止会社における新株予約権及び新株予約権原簿について準用するものとする。

 2  新株予約権等の振替制度関係
  (1)  新株予約権
 株式振替制度利用会社は,新株予約権の発行決議において,当該新株予約権について振替制度を利用するかどうかを定めなければならないものとする。
  (2)  新株引受権・新株予約権付社債
 株式振替制度利用会社は,新株発行又は新株予約権付社債の発行の決議においては,新株引受権又は新株予約権付社債について振替制度を利用することを定めることができるものとするとともに,この定めをした場合には,新株引受権証書又は債券を発行することができないものとする。
    (注 )この要綱案に基づく改正法の施行日において発行済の新株予約権付社債については,社振法附則第10条から第18条まで(振替社債の特例)と同様の経過措置を設け,社債権者の申出によりペーパレス化して振替制度を利用する新株予約権付社債として取り扱うことができる制度を整備するものとする。

 3  その他
 その他新株引受権,新株予約権及び新株予約権付社債の振替制度等について,株式の振替制度に準じて所要の規定を整備するものとする。