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文書提出命令制度研究会(第6回)議事要旨

平成9年6月10日
担当:法務省民事局

1 日  時  平成9年6月10日(火)13:30~16:40
2 場  所  法務省小会議室
3 出 席 者  座 長  竹下
        研究員  秋山,阿部,伊藤,宇賀,菅野,熊谷,小早川,坂本,長野,萩本,長谷部,花村,平山,深山,山下,山本
        ゲスト  春日偉知郎・筑波大学教授
4 議  題  諸外国の法制に関するヒアリング(1)
5 会議経過
 (1)  長谷部研究員から,「イギリスの文書提出命令制度-公益を理由とする秘匿特権(public interest immunity = PII)を中心として-」についての調査報告がされた。その概要は,質疑応答を含め,次のとおりである。
   ○はじめに
      公務文書を対象とする文書提出命令については,イギリスでは,公益を理由とする秘匿特権(PII)という論点の下で論じられており,最近,議論が活発になっている。
 PIIを含む秘匿特権(privilege)は,トライアルにおける証人の証言拒否及びディスカヴァリーにおける文書の開示拒否の双方に共通の概念である。
   ○PIIを巡る最近の動向
      昨年2月15日,Scott Report(Report of the Inquiry into the Export of Defence Equipment and Dual-Use Goods to Iraq and Related Prosecutions,H.C.115)が公表されたことを契機として,PIIについては,ここ1年ほどの間に様相が大きく変わった。
 Scott Reportは,イラクに対する武器輸出を巡るスキャンダルに関する報告書であり,様々な問題点を扱っているが,PIIについても,PIIを主張すべき範囲,PIIの主張に対して裁判所が採るべき態度等についての提案を行っている。この提案を受けて議会で議論がされ,同月26日には,法務総裁(Attorney General=内閣の法律顧問的な存在)がScott Reportの提案について政府として検討するとともに,意見照会を行う旨の声明を発表した。意見照会に対しては50名から意見が寄せられ,これを踏まえて検討した結果が法務総裁の報告書として下院の図書館(House of Commons Library)で公表された。この報告書の中に,PIIに対する政府の姿勢が示されている(この内容については後述する。)。
 このような動きは,1991~92年のMatrix Churchill caseが発端となって生じたものである。この事件は刑事事件であるが,PIIの実務を理解する上で参考になるので紹介する。事件の概要は,次のとおりである。西側諸国がイラン及びイラクに対する武器輸出を禁止したことに呼応して,イギリス政府も84年にイラン及びイラクへの武器輸出に関するガイドラインを発表し,翌年,外務大臣が議会に報告した。しかし,88年,通商産業省の閣外大臣を務める政府高官(Mr. Alan Clarke)が武器製造用資材を輸出する業者の会合において84年のガイドラインを緩めてイラクに対する武器輸出をある程度容認する趣旨の発言をし,その際,資材輸出の目的が軍事目的であることをできるだけ隠して,平和目的であることを強調するように指示したため,その後,武器製造用資材の輸出が実際には行われていた。91年に湾岸戦争が勃発し,Matrix Churchill社によるイラク向けの武器製造用資材の輸出が84年のガイドライン違反の容疑で摘発され,同社の取締役3人が税関によって逮捕・起訴された。被告人らは,容疑事実に対し,政府は武器製造用資材の輸出を承認していたし,被告人の1人は政府の諜報機関の指示によりイラクの武器製造に関する情報を提供していたから,逮捕は不当である旨の主張をし,その裏付けのために政府機関が保有する文書の開示請求をした。この開示請求に対しては,内務,外務,通商,国防の4大臣がPII certificate(行政庁が公益に反することを理由に裁判上の文書開示請求を拒否する場合に大臣が発する証明書で,文書の趣旨や開示によって生ずる公益上の不利益を記載するもの)を提出し,当該文書は開示から保護されなければならない一定の種類の文書に該当するし,当該文書に記載された情報が開示された場合には公益に計り難い損害が生ずる旨の主張をした。しかし,裁判所は,諜報機関が保有する機密性の高い情報等一部の情報を除いて開示を命じた。そして,開示された情報に基づいてMr. Alan Clarkeの尋問が行われた結果,検察は公訴を維持することができなくなり,公訴が取り下げられた。この事件は,PIIだけでなく,大臣の説明責任といった問題点を含むものとして社会的な関心を集めたため,メージャー首相は,事件の真相究明を命じた。これを受けて設置されたのがScott裁判官を委員長とする調査委員会(Scott Inquiry)であり,この調査委員会によって発表されたのがScott Reportである。
   ○Scott ReportまでのPIIを巡る法と実務
     (ディスカヴァリーの範囲)
      イギリスの民事訴訟におけるディスカヴァリーの範囲は,かなり広い。訴訟において問題になっている事項と関連する(relevant)文書であることが要求されているが,「関連する(relevant)文書」とは,開示を求める当事者の主張を裏付けること又は相手方の主張を損なうことを直接又は間接に可能にする情報を含むものと理解されている(Companie Financiere v Peruvian Guano Co.(1882) 11 QBD 55)。したがって,当該文書によって主張が基礎付けられる場合だけでなく,当該文書によって別の文書の存在が明らかになり,その別の文書によって主張が基礎付けられるような場合にもディスカヴァリーが認められることになる。
     (秘匿特権の対象)
      一定の種類の情報は,秘匿特権によって開示から保護される。秘匿特権の対象となる情報は複数ある(我が国やアメリカと比べると若干狭いと思われる。)が,主要なものとしては,(1)弁護士と顧客の間で交換された情報(legal professional privilege),(2)自己が刑事責任を問われるおそれのある情報(privilege against self-incrimination),(3)証拠として提出しないことを条件として交換された情報(without prejudice communications),(4)開示することによって公益が損なわれる情報(public interest immunity)がある。(3)としては,和解の席上で交換された情報が想定されている。これらに該当しない秘密情報,例えば,聖職者と悔悟者,銀行と顧客,医師と患者,新聞記者と情報提供者等の間で交換された情報については,秘匿特権は認められていない(新聞記者と情報提供者の間で交換された情報について,British Steel Corporation v Granada Television Ltd [1981] 1 All E R 417 HL参照)。すなわち,秘匿特権によって保護される対象は,単に秘密にされるべき情報というだけでは足りないと解されている。もっとも,ディスカヴァリーに関しては裁判所の裁量(RSC Ord.24, rr 2(5), 8, 13(1); CCR Ord.14, r 8(1))が認められており,秘匿特権の対象とならない情報についても,当該事件を適切に処理するのに必要でない場合等には,ディスカヴァリーを命じないことができるものとされている。
     (PIIの種類)
      PIIについては,従来から,文書の内容を理由とする主張(contents claim)と文書が一定の種類に該当することを理由とする主張(class claim)とに分類するのが一般的である。contents claimは,情報の内容(例えば国防,良好な外交関係等)を理由として開示が公益の損害をもたらす旨を主張する類型である。これに対し,class claimは,文書の内容を問わず,文書が一定の種類(例えば内閣の閣議の議事録,在外公館から本国に対して急発信された文書等)に該当することを理由として開示拒否を主張する類型である。しかし,秘匿特権としての保護を享受するには,単に秘密にされるべき情報というだけでは足りず,プラスアルファの要件(開示によって公益が害されること等)が必要であると考えられているから,class claimについては,一定の種類の文書に該当することをもって当然にPIIの対象となることを正当化することができるかどうかを巡って議論がある。class claimの根拠として最も有力に主張されているのは,公務員の職務の遂行における率直さ(candour)を維持することである。すなわち,省庁間で交換された情報,省庁内部で公務員が大臣に助言をする際の情報等が,後の訴訟において明らかにされるとすると,公務員の率直な意見交換を妨げることになるという理由である。このような理由でPIIを基礎付けることができるかは疑わしいとも言われているが,現在でもなお,いくつかの判例においてclass claimの根拠として引用されている。
     (PIIを主張する手続)
      国が当事者である訴訟においては,国が自らPIIを主張して開示を拒否することが期待される。
 私人間の訴訟においては,私人が国からの指示を受けてPIIの主張をする(監督官庁の大臣が宣誓供述書を発する。)ことがあるほか,法務総裁がPIIの主張をするために訴訟に参加することが認められている。なお,PIIは公益の問題であるから,理論上は,当事者の主張の有無にかかわらず,裁判所が職権でPIIの存否を審理することも認められる。
     (判例の推移)
      必ず引き合いに出される判例として,Duncan v Cammell Laird & Co., Ltd [1942] 1 All E R 587 HLがある。これは,1939年6月,被告会社が海軍との契約に基づいて潜水艦を建造したが,潜水実験中に沈没し,乗組員99名が死亡した事故について,乗組員の遺族が損害賠償を請求した事件である。原告は,潜水艦の機械装置,浮力状態,設計図,仕様書等についてディスカヴァリーを請求したが,これに対し,海軍大臣が軍の機密に関する情報を含んでいることを理由として開示を拒否するよう指示した(宣誓供述書により,開示は公共の利益を害する旨の主張をした。)ため,被告が開示を拒否し,裁判所は第1審から一貫して開示拒否を認めた。貴族院は,この事件の判決において,PIIに関する一般原則として,(1)文書の開示が公益に反するか否かについての最終的な判断権は,行政庁の長にある,(2)行政庁の長は,文書の開示により国防若しくは良好な外交関係等の公益が損なわれるとき又はある種の文書を秘密にしておくことが公務員の職務の適正な遂行(proper functioning of the public service)のために必要であるときを除き,文書の開示を拒否してはならない旨の判示をした(なお,この判例の考え方は,我が国において,昨年,政府が提出した民事訴訟法案の考え方に類似しているということができると思われる。)。このため,以後の実務においては,行政庁がPIIの最終的な判断を行うようになった。
 しかし,Duncan caseで示された一般原則は,Conway v Rimmer [1968] 1 All E R 587 HLによって変更された。この事件は,試用期間中に解雇された巡査が上司であった警視を相手として悪意訴追(malicious prosecution)を理由に損害賠償を請求した事件である。原告は,試用期間中,同僚の懐中電灯を盗んだとの嫌疑をかけられ,上司が作成して警察本部長あてに提出した報告書に基づいて窃盗罪で告発された。窃盗罪については陪審によって無罪の評決を受けたが,その直後,何者かによって原告の試用期間中の試用状況報告書が作成され,原告はこれに基づいて解雇された。このため,原告は,元上司に対して損害賠償請求訴訟を提起し,この中で,警察本部長あての報告書のほか,解雇の資料として使用されたと思われる試用状況報告書その他の報告書についてディスカヴァリーを請求した。これに対し,内務大臣は,これらの文書はいずれも開示することによって公益が害される種類の文書に該当するとしてclass claimを主張し,この主張を支持するため内務総裁が訴訟に参加した。控訴院は文書開示を否定したが,貴族院は控訴院の判断を覆し,(1)文書の開示が公益に反するか否かについての最終的な判断権は,裁判所にある,(2)裁判所は,文書を秘匿することによって保護される公益と文書を開示することによって保護される公益を比較衡量しなければならない,(3)裁判所は,比較衡量をするに当たって必要な場合には,当該文書を請求者には開示せずに非公開で閲読すること(private inspection)ができる旨の判示をした。この考え方がDuncan caseのように国防に関する情報が問題となる事例にまで及ぶかどうかについては疑問もあるが,少なくとも,Duncan caseの後の実務がclass claimの対象を日常的な公務文書についてまで広げ過ぎたことを示すものということができる。また,この判例は,class claimの類型そのものは否定しなかったが,PIIの対象になるかどうかを判断する場合には,当該事案の個別具体的な状況を離れて文書の種類だけから一律に判断してはならず,当該事案に即した具体的な利益衡量を要するものとした。
 ところが,Conway caseの後の判例は,必ずしもConway caseの判例が意図したとおりには展開せず,むしろ,class claimの対象となる文書を拡大することにより,当該事案の個別具体的な状況を考慮せずに,一律に一定の種類の文書はPIIの対象になるものとして開示拒否を認めるようになった。
 その一例として,「犯罪捜査に関して一般から警察に提供される情報」の類推によってPIIの範囲を拡大し,文書開示の拒否を認める法理が広く用いられるようになったことを挙げることができる。すなわち,犯罪に関して一般から警察に提供される情報は,class claimの対象になり,文書開示から保護されるものと考えられている。これは,犯罪に関する情報の提供者の身元が公になってしまうと,情報提供者が犯人から復讐されるおそれ等があるからであり,この考え方には相当の合理性があると思われる。この考え方を他の情報(一般から警察に提供された情報以外の情報)にまで押し及ぼすことには疑問があるが,この考え方を拡大適用したものとして,Rogers v Secretary of State for the Home Department [1972] 2 All E R 1057 HLがある。この事件は,賭博場の開帳の不許可処分を受けた原告が内務省を相手に訴えを提起した事件である。賭博場の開帳の許可申請があった場合,所轄庁は,申請者の性格,評判,経済状況等について調査することを法律上義務付けられているため,原告からの許可申請を受けた所管庁は,警察に意見照会をした上で,警察が原告に関して作成した報告書に基づいて原告の申請を不許可とした。そこで,原告は,内務省を相手とする訴訟の中で,警察が作成した報告書の開示を求めたが,貴族院は,当該報告書について,class claimの対象になるものと判断し,開示拒否を認めた。この場合の情報提供者は警察であるから,具体的事案に即して考えれば,情報提供者が仕返しを恐れて情報提供をしなくなるといえるかには疑問があるが,貴族院は,これが先例となって一般からの情報が開示されるようになれば,一般からの任意の情報提供の道が絶たれるおそれがあることを理由に,class claimの主張を認めたものである(貴族院にはConway case当時の裁判官も残っていたにもかかわらず,このような判断がされた。)。
 同様の理由から文書開示を否定した判例として,D v NSPCC [1977] 1 All E R 589 HLがある。NSPCC(全国児童愛護会)は,法律上,虐待されている児童の保護命令を裁判所に申し立てる当事者適格を認められている団体であり,この申立てに必要な情報収集をする権限も認められている。この事件は,第三者の誤った通報によって児童虐待の疑いをかけられた母親が,通報者に損害賠償請求訴訟を提起する前提として,NSPCCに対し,通報者の身元を明らかにするように求めた事件である。裁判所は,この事件においても,通報者の身元を明らかにすることは任意の情報提供の障害となり,NSPCCの情報枯渇につながるとの理由から,文書開示を否定した。後に大法官となった裁判官がこの判決の中で示した考え方(class claimの範囲は決して閉じられたものではなく,広がり得るものであるとの考え方)は,その後の判例に影響を及ぼしており,この判決は,class claimが拡大するきっかけとなった判例と評価することができる。
 このほか,class claimが次第に拡大していった例としては,警察に対する苦情の調査(1964年警察法49条)の過程で得られた情報がPIIの対象になるという法理を挙げることができる。すなわち,警察に誤認逮捕されたり,不当な捜索差押えを受けたりした場合には,苦情処理機関に対して苦情の申立てをすることができ,苦情処理機関は,担当警察官や申立人から事情を聴取する等の調査をすることになっているが,この調査の過程で作成された報告書についてPIIの対象に含まれる旨の判示をした判例がある。例えば,Neilson v Laugharne [1981] 1 All E R 829 CAは,警察官の率直さの維持を根拠として,報告書の開示を否定した。また,Hehir v Commissioner of Police of the Metropolis [1982] 2 All E R 335 CAは,申立人の意見を記載した報告書の開示を申立人自らが求めた事件であり,申立人は秘匿特権を放棄したものとみなされる旨の主張をしたが,裁判所は,PIIは放棄することができないものであるとして,この主張を排斥するとともに,被告が反対尋問のために当該報告書を使用することもできないとした。さらに,Makanjuola v Commissioner of Police of the Metropolis [1992] 3 All E R 617 CAは,陳述をした第三者(情報提供者)が報告書の開示に同意していた事例であるが,この場合でも,PIIの主張をすることは行政庁の義務であり,開示は拒否されるとした。
 しかし,警察に対する苦情調査の過程で得られた情報について,ここまでPIIを認めるのは行き過ぎであり,これらの判例の考え方は,R v Chief Constable of Mest Midlands Police,ex p Wiley [1994] 3 All E R 420 HLによって変更された。この判決の中でウルフ卿が示した考え方は,1996年の法務総裁の報告書にも大きく反映している。
   ○Scott Report以後の状況
      Matrix Churchill caseは,判例が以上のように推移する中で起きた事件である。 PIIに関する判例は,従来,民事事件におけるものが大半であり,刑事事件においてPIIが主張されることはまれであった。刑事事件においてPIIの主張がされた場合,無罪となるべき被告人が有罪とされる危険がある。この事件は,このような刑事事件にまでPIIの主張が拡大されるようになったことを示す事件であるということもできる。このため,Scott Reportも主として刑事訴訟を念頭に置いて出されたものであり,刑事訴訟におけるclass claimの廃止を提案している。また,刑事訴訟において文書開示を命ずる場合には,部分開示を活用することも提案している。
 Scott Reportを踏まえて公表された法務総裁の報告書は,刑事事件だけではなく,民事事件においても,政府としてはclass claimを主張しないとの立場を明らかにしている。法務総裁の報告書が打ち出した考え方は,次のとおりである。すなわち,PIIに関する従来のcontents claimとclass claimの分類は説得的でないから,これに代えて,文書の開示が公益に対する真の損害(real damage)をもたらすかどうかを基準とし,仮に,真の損害をもたらすと判断される場合であっても,行政庁は,PIIの主張を提出する前に,自ら利益衡量(文書を秘匿することによって保護される公益と文書を開示することによって保護される公益との比較衡量)をし,その結果,文書を開示することが望ましいと考える場合には,PIIの主張をしないで自発的に文書を開示することができるとの考え方である。利益衡量に当たっては,文書に記載されている情報の重大さや,情報提供者が秘密とされることについて抱いていた期待の程度等を考慮すべきものとした。また,文書全体の開示が公益に反する場合には,部分的な開示をすることも奨励している。部分的な開示の方法としては,開示を拒否すべき部分を見えないように編集する方法や,当該文書の要約を提出する方法を掲げている。
 イギリスでは,政府情報へのアクセスに関するCode of Practice(政府が示した情報公開のガイドライン)に政府が違反した場合には,オンブズマンによる不服申立ての対象になるものとされているが,この不服申立手続においても開示が公益に対する真の損害をもたらすかどうかを基準とするアプローチが採用されており,法務総裁の報告書の考え方は,これと足並みをそろえたものであると説明されている。いずれにしても,法務総裁の報告書によって,拡大傾向を示していたclass claimの問題は一応の解決をみたということができる。
 もっとも,法務総裁の報告書は,政府関係の文書のみを対象とするものであり,地方自治体(警察はこちらに含まれる。)の文書は対象外である。また,この報告書の考え方は行政としての指針を示すものであり,裁判所を拘束するものではないから,裁判所がPIIについてどのような判断をするかは別問題である。行政が自発的に開示した場合には,裁判所としても開示を前提とした判断をするものと思われるが,必ずしも真の損害が生じないような場合にもかかわらず行政が再びPIIの主張をしたときに,裁判所がこの主張を認めるかどうかは今後の問題ということができる。
   ○残された問題(裁判所による文書の閲覧を巡って)
      PIIについては,裁判所による文書の閲覧に関する問題が残されている。裁判所は,従来,裁判所による文書の閲覧は最後の手段であるとの立場から,他に十分な証拠が提出されない場合を除き,文書の閲覧には非常に消極的であった。Burmah Oil Co v Bank of England [1979] 3 All E R 700 HLは,オイルショックの際に倒産の危機に直面した原告を救済するため,原告と政府(イングランド銀行)との間で原告の保有株式の売買契約が締結されたものの,その後,原告が売買代金額が不適切であったとして錯誤に基づく契約の解除を求めた事件であり,政府の経済政策に関する決定を記載した文書(民間から提供された情報を含む。)に対する開示請求が問題となった。裁判所は,文書を閲覧した上で不開示の結論を出したが,文書の閲覧まで進むべきではなかったとの少数意見が付された。この少数意見は,行政が確かな理由に基づいてPIIの主張をしている以上,開示を求める当事者の側で開示を求める利益の存在を証明すべきであるとし,また,裁判所が非公開で文書を閲覧するのは,当該文書が重要な証拠を含むことについて強力な理由が示された場合に限られるべきであるというものであった。この少数意見の考え方がAir Canada v Secretary of State for Trade [1983] 1 All E R 910 HLでは多数意見となり,しかも,この判決は,裁判所による文書の閲覧について,当該文書が単に訴訟において重要な証拠であるというだけでは足りず,開示を求める当事者は,当該文書によって自らの主張が補強されるであろうことを証明しなければならない旨の判示をした。しかし,この判決に対しては,文書の開示を求める当事者には文書の記載内容が分からないから,当該文書によって自らが有利になることの証明を求めることは不可能を強いるものであるという批判が強い。
 このように,文書の開示・不開示の審査において,どのような要件の下で裁判所による非公開での文書の閲覧を認めるかについては,問題が残されている。我が国の新民事訴訟法においても,解釈論の問題かもしれないが,いずれは解決しなければならない問題ではないかと感じている。
   ○質疑応答
     (ディスカヴァリーの範囲について)
     ・  アメリカでは,訴訟におけるディスカヴァリーの範囲(privilegeが認められる範囲)と情報公開法による開示の範囲とが一致していないため,情報公開法が訴訟のディスカヴァリー目的で利用されるという事態が生じているが,イギリスにおいても,1986年に地方自治体レベルで議会の公開及び議事録へのアクセスが認められたことに伴い,情報公開法とディスカヴァリーとの関係についての問題が生じているのではないか。
     ・  イギリスでは,情報公開法が存在しないために情報公開が不十分であるという点が強調されており,ディスカヴァリーとの関係についての議論は見あたらないように思われる。むしろ,Code of Practiceについても,開示の対象から除外される情報の範囲が広いため,不十分であるという評価をする公法学者が多いようである。
     (秘匿特権の対象,裁判所の裁量について)
     ・  秘匿特権の対象といわれている「証拠として提出しないことを条件として交換された情報」としては,訴え提起前の和解の段階において,将来訴訟になった場合に訴訟当事者になるであろう者との間で交わされた情報が念頭に置かれている。我が国の情報公開法の制定過程で議論されている民間から行政に提供された情報の取扱いについては,犯罪に関して一般から警察に提供される情報を類推してclass claimを拡大したNSPCC caseが参考になるのではないか。NSPCCは民間の団体であるが,地方自治体や行政庁に民間から提供された情報についても,情報提供者が秘密とされることについて高い期待を抱いていたにもかかわらず,その情報が行政の外部に開示されるとすると,以後,任意の情報提供が妨げられるという理由が当てはまる場合には,開示が否定されることになると思われる。
     ・  ディスカヴァリーの要件としての事件との関連性には間接的なものも含まれるので,ディスカヴァリーの対象は非常に広範であるが,裁判所は,秘匿特権がない場合であっても,トライアルの適正さ,審理の促進,訴訟経済等のために役に立たないと考える場合には,裁量で文書開示を認めないことができるものとされている。
     ・  プライバシーは秘匿特権の対象とされていないので,プライバシーだけではPIIは基礎付けられない。PIIの中には,情報提供者の身元,氏名,経済状態等のプライバシーに属する情報も含まれ得るが,これらについても,プライバシーに基づいてPIIを認めているわけではなく,これらの開示によって行政への情報提供が妨げられるという点に公益侵害が認められることをPIIの根拠としている。したがって,税務申告書等,法律上の根拠に基づいて行政に提供されるプライバシー情報も,秘匿特権によっては保護されないが,当該事件における重要性が乏しい場合等には,裁判所の裁量によって保護されることはある。
     (PIIを主張する手続について)
     ・  イギリスのディスカヴァリーでは,訴訟当事者が現在保有する文書だけでなく,過去に保有していた文書も対象となるので,第三者が保有する文書に対するディスカヴァリーもあり,したがって,私人間の訴訟においてもPIIが問題となり得る。しかし,私人間の訴訟においてPIIが問題となる場合に,所管庁や法務総裁にPIIを主張する機会を与えるための特段の手続は用意されていない。Duncan caseでは,被告が海軍に伺いを立てたことを受けて,海軍大臣が開示拒否を指示した。
     (判例の推移について)
     ・  Conway caseの後,class claimを拡大する判例が続いたが,1996年の法務総裁の報告書によってConway判決の原則に戻ったということができると思われる。Conway判決は,PIIの要件として真の損害ということには言及していないが,class claimに該当する場合でも個別具体的な利益衡量をしなければならないとしたものであり,他方,法務総裁の報告書は,一定の種類の文書に該当するだけではPIIを認める根拠としては不十分であるとしてclass claimを否定した上で,公益に対する真の損害を要するとしたものであるから,両者の結論はあまり異ならないように思われる。
     ・  Conway caseでは試用状況報告書の開示が問題となったが,その後にclass claimを拡大した判例では,開示によって情報提供者に危害が及び得るような性格の文書の開示が問題となっており,このことがConway判決と異なる判断をする根拠になったとも考えられるのではないか。
     ・  確かに,class claimを拡大した判例は,文書の性格の違いを前提として判断をしていると思われる。しかし,これらの判例がclass claimの直接の根拠として挙げているのは,公務員の職務の遂行における率直さを維持することであり,学説上は,この率直性の理論を根拠としてclass claimを正当化することはできないという見解が有力である。例えば,警察に対する苦情の調査の過程で得られた情報については,既に解決した事件に関する情報であり,仮に当該情報が開示されたとしても担当の警察官に危害が及ぶおそれは少ないし,また,他の事件についての苦情調査が困難になるという弊害が生ずることも考えにくいから,判例は十分な論証をしないまま率直性の理論を鵜呑みにしてclass claimを認めていたにすぎないとの批判が強い。
     ・  contents claimについては,Conway 判決の前後を問わず,国防等の重大な情報が問題となる場合には,行政庁の判断が優先されるという考え方も有力である。Conway caseの裁判官も,Duncan caseの結論自体は正しいと言っており,Conway 判決の射程範囲について,国防等の重大な情報が問題となったような場合には異なり得るという含みを残している。最近,国防に関する情報の開示が問題となった事件があったが,この事件でも,裁判所は,文書の開示を否定した。もっとも,contents claimが問題となる場合には部分的な開示が可能であるから,部分的な開示を進めるべきであるとの見解も有力である。
     ・  イギリスの判例でPIIが争われた事例としては,誤認逮捕等に関連して警察関係の情報の開示が問題となったものが多い。ex p Wiley caseの被告となったWest Midlands Policeは,重大犯罪の捜査部局が証拠をねつ造し,無罪の人を起訴したとして問題になったこともある。その他の情報の開示についてもPIIが問題となることはある(法務総裁の報告書にも言及されている。)が,訴訟にまで持ち込まれた事例はそれほど多くないようである。Burmah Oil caseでは政府の政策形成に関する情報の開示が問題となったが,一般私人が政府に対してPIIが問題となるような情報の開示を求めることは少なく,むしろ地方自治体が保有する情報の開示を求めることが多いのではないか。
     (private inspectionについて)
     ・  秘匿特権の審理だけでなく,裁判所の裁量による開示・不開示を判断するためにも,private inspectionを行うことができる。
     ・  private inspectionを行った場合の審理時間については明らかではないが,対象となる文書の量や,閲覧をする裁判官の員数によっても左右されるのではないかと思われる。
     ・  開示をする場合には必ずprivate inspectionを行うということではなく,判断が容易である場合には文書を閲覧しないで開示を命ずることもあると思われる。もっとも,従来の判例の傾向として,文書の閲覧には消極的であり,むしろ裁判所による閲覧の手続までは進まずに,公益を害するとの理由から開示拒否を認めた事例が多いように思われる。
 (2)  春日偉知郎・筑波大学教授から,「ドイツにおける文書提出命令制度(付:公務員の証人尋問制度)-ドイツ行政裁判所法を中心として-」についての調査報告がされた。その概要は,質疑応答を含め,次のとおりである。
   ○民事訴訟法における文書提出命令制度
      民事訴訟法の文書提出命令については多数の文献があるので,主として最近の傾向を概観するにとどめたい。
 我が国の現行民事訴訟法312条に相当する規定がドイツ民事訴訟法422条であり,「相手方当事者は,挙証者が民法の規定により文書の引渡し又は提出を求めることができる場合には,文書の提出を義務付けられる」ものとされている。また,第三者については,同法429条により,「第三者は,挙証者の相手方の提出事由と同一の事由に基づいて,文書の提出を義務付けられる」ものとされている。民法の規定により文書の引渡し又は提出を求めることができる場合の典型例といわれているのがいわゆる利益文書及び法律関係文書について定めたドイツ民法810条の規定であり,同条は,「他人が占有する文書を閲覧することについて法律上の利益を有する者は,その文書が自己の利益のために作成されたとき若しくはその文書中に自己と他人との間に存する法律関係が記載されているとき,又は自己と他人との間若しくはその一方とその共同の仲介者との間でなされた法律行為に関する交渉内容を含んでいるときは,文書の占有者に対して閲覧の許可を求めることができる」旨を定めている。民法には,このほかにも随所に情報請求権を定めた規定があり,また,環境責任法や著作権法等の特別法にも,実体法上の情報請求権を定めた規定がある。このように,ドイツの民事訴訟法においては,実体法上の情報請求権を介して,訴訟当事者又は第三者を相手方として文書の開示を求めることができるという構造になっている。
 通説は,近時の判例の傾向について,「民事訴訟法422条及び423条が予定していた文書提出義務の範囲は狭いけれども,近時の判例は,実体法上の請求権(例えば民法810条)を拡大することによって,提出義務の範囲を著しく拡張している(BGHZ72,132; BGH NJW1978,1681)。この義務に違反した場合には証明妨害を理由とする証明軽減を図っている。しかし,これによって一般的な事案解明義務が認められるわけではない」と評価しており(Rosenberg/Schwab/Gottwald, Zivilprozesrecht, 15.Aufl.S.702.),依然として文書提出義務を限定義務と理解している。しかし,判例は,実体法上の情報請求権を用いることにより,提出義務の範囲を積極的に拡大しているようであり,例えば,連邦裁判所1988年12月6日判決(BGHZ106,146)は,医療過誤訴訟において,民法242条(信義則)及び61l条(雇用契約。日本の診療契約に相当するもの)に基づいて患者の医師に対する診療録の閲覧請求権を認め,この実体法上の情報請求権を根拠として文書提出義務を認めている(なお,上記の2つの判例(BGHZ72,132; BGH NJW1978,1681)も医療過誤訴訟の例である。)。また,連邦裁判所1989年11月30日判決(BGHZ109, 260)は,民法666条(受任者の報告義務。日本の民法645条に相当する規定),667条,810条,弁護士法50条及び破産法6条に基づいて破産管財人の破産債務者の弁護士に対する書類閲覧権を認め,これを根拠として文書提出義務を認めている。
 もっとも,ドイツの解説書等ではあまり触れられていないことであるが,実務においては,文書提出命令それ自体が利用されることは少ないようである(司法研究報告書「ドイツにおける簡素化法施行後の民事訴訟の運営」115頁参照)。これは,訴訟の準備段階において,我が国の釈明処分に相当する規定によって大半の文書が提出されてしまうからであるといわれている。すなわち,142条は,422条と同じ文書提出命令という見出しが付された規定であるが,「裁判所は,系図,地図,設計図及びその他の図面で当事者の一方が引用し,かつ,その手中にある文書を提出すべき旨を命ずることができる」旨を定めており,例えば建築瑕疵を巡る事件等で必要となる設計図類は,この規定によって提出されることになる。また,143条(記録の提出命令)は,「裁判所は,当事者が占有している記録であって,それが事件の弁論及び裁判に関係する書面からなる限り,提出すべき旨を命ずることができる」ものとし,相当に広範囲の提出義務を定めている。さらに,273条(弁論期日の準備)の2項2号は,「すべての期日を準備するために,裁判長又は受訴裁判所の裁判長が定める陪席裁判官は,」「官庁又は公職者に対して文書の提出又は職務上の情報の提供を求めること」ができるものとしており,例えば交通事故に基づく損害賠償請求訴訟では,裁判所がこの規定によって警察が作成した調書等を直接取り寄せている。
   ○行政裁判所法(1960年)における文書提出命令制度
     (行政裁判所の事件数)
      1994年における行政裁判所(第1審)の新受件数は24万9419件,同年の未済事件数は28万8533件である。なお,地方裁判所(第1審)の新受件数は約35万件といわれている。
     (行政裁判所法における官庁の提出義務)
      ドイツの行政裁判所法における証拠調べについては,同法98条により,原則として民事訴訟法の規定が準用されることになるが,行政庁による記録の提出及び情報提供については,同法99条として特別の規定が設けられている。同条1項は,「行政庁は,文書又は記録を提出する義務及び情報を提供する義務を負う。これらの文書又は記録の内容及びこれらの情報の内容を公にすることが,連邦若しくはドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合又は当該事実が法律により若しくはその性質上秘密に付されなければならない場合には,所轄の最高監督官庁は,文書又は記録の提出及び情報の提供を拒否することができる」ものとしている。同条2項は,提出の手続を定めたものであり,「当事者の申立てに基づいて,本案の裁判所は,文書又は記録の提出の拒否及び情報の提供について法律の定める要件が存在することの疎明があったかどうかについて決定で裁判する。第1項により拒否することを表明した最高監督官庁に対しては,この手続に呼び出さなければならない。裁判所の決定に対しては,抗告により独立して不服を申し立てることができる。高等行政裁判所が最初に事件に関与した場合には,連邦行政裁判所が抗告について裁判する」ものとしている。
 この規定の適用が問題となった著名なケースとして,連邦行政裁判所1982年10月29日決定(BVwGE66,233)がある。これは,ハンブルク・ベルリン(東独)国境間のアウトバーンをベルリンの交通網へ接続する連邦道路の建設計画の有効性に関する規範統制手続において,ドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国との間の交渉関係文書の提出が要求された事件である。行政庁側は,ベルリン高等行政裁判所がした記録提出処分に対して,記録に記載されている事項はドイツ民主共和国との政治的な接触及び意向探査に関係しており,その性質上秘密とすべきものであるとして,提出を拒否した。事案としては特殊であるが,裁判所は,一般論として,行政庁の記録の提出拒絶があった場合,行政裁判所法47条に基づく規範統制手続においても同法99条2項4文に規定する連邦行政裁判所への抗告は認められるとした上で,当該文書については性質上秘密とすべきものであるとして,抗告を棄却した。
     (99条の趣旨)
      行政裁判所法99条は,成立までに紆余曲折があった規定である。同法は,1949年から立法作業が始まり,51年には草案が公表されているが,草案当時の規定では,「官庁が情報の付与,記録若しくはその他の文書の提出又は当事者にこれらの閲覧を認めることを拒絶した場合には,裁判所は,重要な公的利益が拒否を正当化するか否かについて,最高監督官庁に判断を仰ぐこととする」ものとされており,裁判所の判断権が認められていなかった。
 同法99条の趣旨については,事案解明のための包括的な規定であり,記録の閲覧を認めた100条(同条1項は「関係人は,裁判記録及び裁判所に提出された文書を閲覧することができる」ものとする。)の規定とともに,訴訟の当事者に対し,すべての事実を知った上でこれに基づいて訴訟において主張する機会を与えるために官庁の文書等の提出義務を規定したものであると説明されている。また,連邦又はドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合には文書の開示を拒否することができるものとしている刑事訴訟法96条の規定に示唆を受け,これと平仄を合わせて,より高次元の公共の平穏又は正義を保護するためには開示を拒否することができるとの例外を設けたものであるともいわれている。なお,学説は,公務担当者の証言義務及びそのために必要とされる行政庁の許可についても,行政裁判所法99条の規定は類推適用されると解している。
     (提出の対象となる文書等)
      原則として,裁判所による包括的な事案解明及び当事者が訴訟を追行するための基盤を獲得するために役立つすべての文書その他の記録が提出義務の対象になると解されている。行政庁が自ら作成した文書であるか,他の行政庁や第三者から入手した文書であるかは,一切問わない。
     (提出義務者)
      訴訟の当事者である行政庁だけでなく,連邦,州,地方自治体その他の公法上の主体である行政庁はすべて,当事者に対する地位に関係なく提出義務を負う。公権を委託された者(例えば公証人)にも,提出義務は準用される。
     (提出すべき文書の裁判所による判断)
      行政庁は,裁判所からの要求があった場合に提出義務を負うが,裁判所としては提出すべき文書を個別的に特定するまでの必要はない。どの程度の特定をするかは基本的に裁判所の判断に委ねられており,特定の事件に関係する記録という程度の特定でも足りるといわれている。
     (提出義務の強制)
      行政裁判所法99条に基づく提出義務の履行は,強制することができない。したがって,不当な提出拒絶があった場合でも,自由心証の枠内で判断をするしかない。
     (提出拒否の事由)
      行政庁が文書及び情報の開示を拒絶することができるのは,行政裁判所法99条1項2文が定める2つの場合であるが,いずれも不特定な概念であるため,学説は,裁判所が事実的な側面と法律的な側面の両面から実質的な判断をすることができると解しているようである。
 「連邦又はドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合」とは,刑事訴訟法96条でも用いられている概念であり,国家及びその制度の存在及び機能を侵害し,又は危険にさらす場合がこれに該当すると説明されている。例えば,連邦又は州の内外の安全を侵害する場合,公の秩序を著しくかく乱する場合,他国や国際組織との友好関係を著しく損なう場合等がある。また,記録の提出によって憲法が保護している職務や使命を困難にしたり,人の生命,健康又は自由を危険にさらすような場合にも,安寧に対する不利益が認められると解されている。このほか,国家機構の機能及び国家の重要な任務の遂行が困難又は疑問になるような場合もこれに該当するとされている。
 「秘密に付されなければならない場合」とは,(1)人格権及びプライバシーの保護の下にある事実,(2)保護に値する営業秘密及び企業秘密,(3)憲法擁護庁の情報収集により得られた情報若しくはこれに類するものであって,その内容から憲法擁護庁の組織や活動方法等が察知されてしまうようなもの,(4)開示によって憲法が保護する職務,人の健康,生命,自由に危険を及ぼし得ることとなるもの等が含まれる場合を意味すると解されている。やや特殊なものとしては,一定の要件の下における機密情報,例えば,公に選任される鑑定人の職務に応募したという情報も,その性質上秘密性を保持すべきものであるとされている。警察に対する情報提供者の氏名,身元等の情報もこれに含まれるといわれているが,具体的な状況によってかなり幅があるようである。このほか,徴税官吏の守秘義務の対象となっているもの,人事記録であって,公的利益又は第三者の優越する利益が訴訟手続に持ち込むことを要請していないもの等も,秘密とすべきものとされている。
     (最高監督官庁の拒否判断)
      所轄の最高監督官庁が提出を拒絶する場合には,拒絶の理由を具体的に示し,かつ,これを明らかにしなければならないと一般に説明されている。この点について,判例は,「秘密保持の必要性を基礎付ける事情について最高監督官庁がした評価について,裁判所が法治国家の重要性を考慮した上で,そのように評価したことをもっともであると認めることができる程度に明白でなければならない」ものとしている。
     (裁判所の裁判)
      行政裁判所法99条2項は,提出拒絶事由について証明までは要求されず,疎明で足りること及び疎明責任が行政庁にあることの2点を定めているということができる。行政庁に疎明責任があることの理由は,提出拒絶が認められるのは例外であるという点にある。また,疎明で足りるものとしたのは,ドイツにはインカメラ手続がないため,証明を要求すると記録そのものに基づいて主張をする必要が生じ,その結果として秘密が暴露されることになってしまうからであると考えられる。
 提出拒絶があった場合,裁判所は,「法律の定める要件が存在することの疎明があったかどうかについて」判断するものとされている。
   ○その他の裁判所における官庁の提出義務
      財政裁判所法では86条が,社会裁判所法では119条が,それぞれ行政裁判所法におけると同様の官庁の記録提出義務及び情報提供義務を定めており,これらの規定においても,連邦又はドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合と秘密を保持すべきものである場合には提出拒絶が認められている。また,財政裁判所法では,納税秘密(公課法30条)についても開示義務が免除されている。
 なお,各州の行政裁判所に適用される各州の行政裁判所法にも,連邦の行政裁判所法と同趣旨の提出義務規定がある(例えば,バイエルン州行政裁判所法99条)。
   ○改正の動き
     (民事訴訟法委員会報告書における文書提出義務)
      改正に向けた議論の契機となったのは,1977年に連邦司法省が公表した「民事訴訟法委員会報告書」である。この報告書は,一般の文書提出義務についても見直しを提案しているが,提案419条の内容は,我が国の新民事訴訟法220条の構造に類似している。すなわち,提案419条1項は,「相手方は,次の各号に掲げる場合に,文書の提出を義務付けられる」ものとし,1号として「挙証者が,民法の規定に基づいて文書の返還又は提出を求めることができることを疎明したとき」を,2号として「相手方が,挙証のために自ら文書を引用したとき」を掲げており,ドイツの現行民事訴訟法とほとんど変わらないが,同条2項は,「相手方は,その他の場合であっても文書の提出を義務付けられる。ただし,次の各号に掲げることを疎明した場合はこの限りでない」ものとし,1号として「提出することにより裁判の限度を逸脱する結果を生ずるため,相手方に提出を期侍することが不可能であること」を,2号として「相手方が提出することにより,第三者の優越すべき保護に値する利益,特に人格権,営業秘密又は守秘義務を侵害するであろうこと」を掲げている。2項1号は,訴額と比較してあまりに一方当事者に不利益な事態が生ずるような場合等を想定しているのではないかと思われる。
 報告書の提案理由によると,官庁の文書提出義務については,「重要な証拠としての文書を保管している官庁も,文書提出義務を負う第三者である。官庁については,相手方又は第三者として提出を拒否することができるための要件は規定されていない。けれども,文書の提出が,連邦若しくは州の安寧を害する場合,又は文書の性質上秘密を保持すべきものである場合には,提出を拒否できるとしなければならない。民事訴訟という衣の中で,秘密保持を必要とする事実を公開にさらそうとする試みを防ぐことが必要である。そして,そのための要件が満たされているか否かについては,当該文書を保管しているそれそれの部署ではなく,最高監督官庁が,判断すべきである。もっとも,拒絶についての要件が満たされていることについて疎明があったかどうかについては,受訴裁判所が裁判すべきであり,従来行なわれていたような,行政裁判所が判断するものではない」との説明がされている。
 また,報告書は,証拠調べの総則中に,提案363条の1項として次のような規定を設けることを提案している。すなわち,「次の各号に掲げる拒絶がなされた場合には,拒絶のための要件が存することの疎明があったか否かについては,受訴裁判所が裁判する」ものとし,1号として「連邦政府若しくは州政府の構成員,裁判官,公務員,連邦国防軍の軍人及びその他の公務従事者が,証言すること又は鑑定を行なうことを拒否したとき」を,2号として「官庁又は公務担当者による検証の受忍,文書の提出又は情報の提供を拒否したとき」を掲げている。提案理由によると,「委員会は,このような提出義務の拡大に対して,当事者の正当な利益を奪うことなく,挙証者の負担を軽減し,正当な裁判及び手続の満足機能を促進することを期待する」との説明が付されている。
 さらに,報告書は,書証に関する規定(提案422条)として,「最高監督官庁は,官庁又は公務担当者による文書の送付により連邦又は州の安寧に不利益がもたらされるであろう場合又は文書がその性質上秘密を保持すべきものである場合には,この文書の送付を拒否することができる」旨の規定を設けることも提案している。
     (行政訴訟法草案における文書提出義務)
      ドイツでは,かねてから,裁判所の負担軽減を図るために行政裁判所法,財政裁判所法及び社会裁判所法を統一して行政訴訟法を制定しようという動きがあり,1982年と85年には,連邦政府が行政訴訟法草案を議会に提出している。この草案は,前述した民事訴訟法の改正の動きに同調する形で作成されたものと考えられるが,行政訴訟法の制定に向けた動きは,現在でも続いているようである。
 ドイツ行政訴訟法草案では,一般的な提出及び受忍の義務を定めた草案108条を受けて,草案110条が官庁の提出,受忍及び情報提供の義務を定めている。すなわち,草案108条は,1項で「当事者及びその他の者は,裁判所の命令により,帳簿,記録,業務用書類及びその他の文書を提出する義務を負う。ただし,これらが特定して示された事項に関係しているときに限る。すべての事情を考慮して提出が期待できないときは,この義務は生じない」ものとし,3項で「当事者及びその他の者は,裁判所に動産を提出し又はその検査を受忍しなければならない。ただし,裁判所が命じた検証の実施に必要な場合に限る」ものとしている。この規定を受けた草案110条は,1項で「官庁は,108条による提出及び受忍並びに記録の提出及び情報提供を義務付けられる。ただし,法律が秘密保持を規定している場合は,この限りでない」ものとするとともに,2項で「所轄の最高監督官庁は,提出,受忍又は情報提供が連邦若しくは州の安寧に不利益をもたらすであろう場合又は当該事項がその性質上秘密を保持すべきものである場合には,これを拒否することができる」ものとしている。また,同条3項は,「当事者の申立てに基づき,本案の裁判所は,拒否の要件が存することの疎明があったか否かについて,決定により裁判する。裁判所は,この手続を職権でもすることができる。提出,受忍又は情報提供を拒否した官庁は,この手続に参加しなければならない。裁判所の決定に対しては,独立して抗告により不服を申し立てることができる。高等行政裁判所又は地方社会裁判所が最初に事件に関与した場合又は連邦法による控訴がとざされている訴訟において決定がなされた場合には,連邦行政裁判所又は連邦社会裁判所が抗告について裁判する。民事訴訟法第390条が準用される」ものとしている。
 草案理由書は,草案110条3項について,民事訴訟法委員会報告書の提案363条に類似するものであり,疎明の有無について職権でも審査することができるものとしたのは,職権探知主義に基づくとの説明を付している。
   ○公務員の証言拒絶権について
     (民事訴訟法)
      我が国の新民事訴訟法191条(現行法272条~274条)に相当する規定がドイツ民事訴訟法376条である。同条は,「裁判官,公務員及び公務に従事するその他の者の職務上の守秘義務に関する事項について,証人として尋問すること及び証言を許可することについては,公務員法上の特別の規定が適用される」ものとしている。公務員法上の特別の規定としては,我が国の国家公務員法100条,地方公務員法34条に相当する規定として,守秘義務を定めた連邦公務員法61条がある。すなわち,同条1項により,「公務員は,公務関係が終了した後においても,その職務活動の際に知った事項について秘密を守らなければならない」ものとされ(ただし,公知の事実や秘密とする意味のないものは除外されている。),同条2項により,「公務員は,承認なくしてそのような事項について裁判所においても裁判所外においても証言し又は陳述することを許されない。承認は,服務上の上官が付与し,また,公務関係が終了した後においては,最後の服務上の上官であった者がこれを付与する」ものとされている。
 証言の承認については,同法62条1項により,「証人として証言することの承認は,証言が連邦若しくはドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合,又は公的任務の遂行に重大な危険を及ぼし若しくは著しい支障となる場合に限り,これを拒絶することができる」ものとされている。また,同条3項により,「公務員が裁判手続の当事者若しくは被疑者であるとき又はその者の主張が自己の正当な利益の擁護に役立つときには,第1項の要件が満たされる場合であっても,職務上の配慮から不可避とされる場合に限り,承認を拒否することができる」ものとされ,さらに同条4項により,「承認の拒否については,最高監督官庁が判断する」ものとされている。
     (行政裁判所法)
      行政裁判所法には公務員の証言拒絶権についての直接の規定はなく,同法98条により民事訴訟法376条が準用されている。財政裁判所法82条及び社会裁判所法118条も,同じく民事訴訟法376条を準用している。
 文献によれば,公務員の証言については,「公務員法61条以下の規定及び公務員大綱法39条に基づいて,かつ,行政裁判所法99条を類推して,公務員の証言について承認を与える要件が満たされている場合には,官庁はこの承認を与えなければならず,その場合には,官庁の裁量について裁判所による審査の問題は生じない」と説明されている。なお,ドイツでは,訴追された者が警察への情報提供者の証人尋問並びに証人の身元の公表及び証人への質問を求めるケースが多いようであり,このようなケースについての裁判所の判断は,事案に応じて異なっているようである。
     (民事訴訟法委員会報告書)
      ドイツ民事訴訟法委員会報告書は,公務員の証言拒絶権について,提案385条の1項において「職務上の守秘義務が関係する事実に関して裁判官,公務員,連邦国防軍の軍人又は公務に従事するその他の者がする証言については,特別の服務規定(besondere dienstrechtliche Vorschriften)が適用される」ものとすることを,同条2項において「連邦政府又は州政府の構成員については,これらの者が準拠する特別の規定が適用される」ものとすることを,同条3項において「証言のためにこれらに基づいて必要とされる承認は,受訴裁判所を通じてこれを求めなければならず,かつ,証人にこれを知らせなければならない。承認を求めることについて,呼出状と共に証人に通知することができる」ものとすることを,同条4項において「連邦大統領は,証言することが連邦又はドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろうと宣言した場合には,証言を拒否することができる」ものとすることを,そして同条5項において「これらの規定は,尋問される者が公務にすでに従事していない場合であっても,その公務期間中に生じ又は知り得た事実に関する場合にも適用される」ものとすることを提案している。
     (行政訴訟法草案)
      ドイツ行政訴訟法草案は,公務員の証言拒絶権について,草案102条(特定の職業上の秘密を保護するための証言拒絶権)の4号において,「公務,職業又は公的利益活動のために,その者に対して事実が開示され又は公にされる者であって,守秘義務が関係している事実であるために,秘密保持がその性質上又は法律の規定により命ぜられている者」は証言を拒絶することができるものとするとともに,「第1号に掲げる者(連邦大統領)は,この者が守秘義務を免除された場合又は係争法律関係について行政庁に対して情報の提供を義務づけられている場合には,証言を拒むことはできない」ものとし,民事訴訟法376条を準用しない方向を打ち出している。
   ○質疑応答
     (民事訴訟法の文書提出義務と実体法上の情報請求権との関係について)
     ・  ドイツでも,我が国と同様に,民法典(1900年)よりも民事訴訟法典(1877年)が先に制定されている。それにもかかわらず,なぜ民事訴訟法の中に民法等の実体法上の請求権を前提とした規定があるかは必ずしも明らかでないが,民事訴訟法典が制定される以前から存在した各州の実体法を前提にしたのではないかと考えられる。なお,民法810条の規定は,契約関係又は法律関係がある場合における提出義務を定めたものであり,民法典の中では契約関係について定めた規定の最後の方に置かれている規定である。
     ・  実体法上の情報請求権は,もともと訴訟において文書提出命令を用いて実現することができるものと扱われていたわけではない。かつては,損害賠償請求を提起する段階で,損害原因は特定されているが損害額が明らかでないため,請求を特定することができないような場合に,いわゆる段階訴訟(Stufenklage)により,実体法上の情報請求権に基づく訴えを損害賠償請求の訴えに併合することができるとされていたものである。ところが,判例は,いつのまにか,民事訴訟法の文書提出命令に実体法上の情報請求権をリンクさせて提出義務を拡大する運用をするようになった。したがって,判例はかなりラフな運用をしているということができる。もっとも,このような運用をしているのは,主として医療過誤訴訟においてであり,実体法上の情報請求権があるからといってストレートに民事訴訟法422条の提出義務と連動させることを全面的に認めているわけではないと思われる。少なくとも,著作権法上の情報請求権については文書提出命令とリンクさせていないようである。
     ・  ドイツでは,医療過誤訴訟の事件数が多く,以前からレントゲン写真等の提出が問題となっており,この分野についてはなぜか提出義務の範囲が広く認められている。しかし,日本とは異なり,診療録について,ドイツ民法810条の利益文書や法律関係文書に該当するか否かといった議論は全くされていない。この場合には民法810条を根拠とはしないで,同法242条の信義則等に基づいて情報請求権を認め,これを根拠として提出義務を基礎付けている。なお,医療過誤訴訟における因果関係の立証の軽減についても,信義則が一つの根拠とされているようである。
     (民事訴訟法の釈明処分について)
     ・  釈明処分による文書提出命令については提出拒絶に関する規定がないので,提出を拒絶された場合には,裁判所の自由心証の範囲内で考慮することができるにすぎないと考えられる。
     (行政裁判所が取り扱う事件について)
     ・  ドイツでは,日本で行政事件とされているもののうち,租税関係事件は財政裁判所の管轄であり,年金の賦課決定を巡る事件等の社会保障関係事件は社会裁判所の管轄であるから,その他の事件が行政裁判所の管轄になる。また,国家賠償といってもいろいろなものがあり,公務員個人に職務責任が帰属することを前提にその責任を国が代位する類型に属するものは,もともと公務員個人に対する損害賠償請求である(ドイツ民法839条)から,通常裁判所の管轄となる。他方,公法上の損害賠償の類型に属するものの中には,行政裁判所に管轄が認められるものもある。
     ・  国家賠償事件のうち通常裁判所が管轄するものについては,当然,民事訴訟法が適用されることになる。
     ・  民事訴訟法が適用される通常裁判所の事件では,文書提出義務が限定義務とされるが,行政庁の所持文書の提出については行政裁判所で争われることになるため,実務においては,行政裁判所法99条が民事訴訟法の文書提出命令の規定を間接的にサポートする役割を果たしているという話を聞いたことがある。
     ・  行政処分によって損害を被った場合,行政処分を取り消さなくても損害賠償請求訴訟を提起することはできる(損害賠償請求に行政処分の公定力は及ばないので,抗告訴訟の排他的管轄は及ばない。)。したがって,損害賠償請求訴訟を提起するための資料の入手だけを目的として抗告訴訟を提起しても,それだけでは抗告訴訟の訴えの利益がないということになると思われる。行政処分に対する抗告訴訟を提起するとともに,違法な行政処分に基づく損害賠償請求訴訟を提起することは可能である。
     (疎明資料の取扱い)
     ・  ドイツにはインカメラ手続がないから,当事者は,行政裁判所法99条2項によって提出される疎明資料を閲覧することができると思われる。文書の一部開示という運用はあるが,行政訴訟法草案の検討においてもインカメラ手続を導入しようという発想はないようである。
     (行政裁判所以外の裁判所における取扱い)
     ・  労働裁判所(第1審)の新受事件数は,年間約5万件という相当な数に上っているが,労働裁判所における行政文書の取扱いははっきりしない。もっとも,一般的には,労働裁判所は民事裁判所の系列と考えられているので,どちらかというと民事訴訟法の取扱いに近い取扱いがされているのではないか。
     ・  社会裁判所法の119条は,官庁の記録提出義務及び情報提供義務について,「所轄の最高監督官庁が,その文書,記録又は情報の内容を公にすることが連邦若しくはドイツの州の安寧に不利益を与えるであろうこと又は当該事実が法律により若しくはその性質上秘密を保持すべきものであることを宣言した場合には,官庁は,文書又は記録の提出及び情報提供の義務を負わない」ものとし,行政裁判所法とは異なる「....を宣言した場合」という書き振りになっている。
     ・  行政裁判所法99条1項についても,「連邦若しくはドイツの州の安寧に不利益をもたらすであろう場合又は当該事実が法律により若しくはその性質上秘密に付されなければならない場合」という要件についての完全な判断権が裁判所にあるわけではなく,裁判所は,この要件について疎明がされたかどうかについての判断権を有するにすぎないと説明されているから,行政裁判所法と社会裁判所法とでは書き振りが異なるが,裁判所に完全な判断権がないという点は共通しているのかもしれない。
6 次回研究会の開催予定  平成9年7月8日(火)午後1時30分から(場所:法務省第1会議室)