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人権擁護推進審議会会長談話 平成11年7月29日

 本日,人権擁護推進審議会は,法務大臣,文部大臣及び総務庁長官に対して,「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」答申を行いました。
 人権は,人間の尊厳に基づく権利であって,いかなる関係においても尊重されるべきものであります。しかし,我が国には,今なお,様々な人権課題が存在しております。その要因の一つに,国民に人権尊重の理念についての正しい理解が十分に定着したとは言えないことがあげられます。
 この状況を改善するには,国民一人一人に人権の意義やその重要性が知識として確実に備わるとともに,日常生活の中で人権上問題のあるような出来事に接した際に,直感的にその出来事はおかしいと思う感性や,日常生活において人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚が十分身に付くように,人権教育・啓発が進められなければなりません。
 学校や職場における人権教育・啓発はもとより,幼児期からの取組や家庭教育の役割が重要となります。さらに,ボランティア活動などの社会体験や自然体験,高齢者や障害者等との交流など豊かな体験の機会の充実等を図っていくことも必要です。
 このような人権教育・啓発の深さ,広がりにかんがみますと,人権教育・啓発に関する施策を推進する責務を有する国を始めとして,地方公共団体,学校等の人権教育・啓発の実施に当たるそれぞれの主体が,相互に連携協力して,人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進していくことが,極めて重要であります。
 以上のような要請に応えるために,本審議会は,人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進のための方策について,具体的な提言をした次第であります。
 本審議会としては,これらの提言を実行に移すべく,政府が速やかに所要の行財政措置を講ずることを切望するものであります。
 なお,今回の意見募集では,答申に人権教育・啓発に関する法的措置を盛り込む必要があるという趣旨の意見が各方面から寄せられました。審議会としては,答申に盛り込まれた諸施策については,いずれも行財政措置で十分対応が可能であるとの認識に至ったところであり,諮問第1号に関しては,今回の答申をもってすべてお答えしたものであります。
 ただ,今後の被害者救済の調査審議においては,被害者救済制度の法的枠組にも検討が及ぶことが考えられますが,その際,被害者救済を行う組織等との関係で,人権教育・啓発も議論となることが予想されます。その場合には,人権教育・啓発に関することであっても,議論をしていただくことになるかと思います。