アスベスト訴訟
訴訟の概要
本件は,石綿(アスベスト)工場の元労働者や近隣住民,建設業等の元労働者及びその遺族の方々が,石綿による健康被害を被ったのは,国が規制権限を適切に行使しなかったためであるとして,健康被害又は死亡による損害賠償を求めている事案です。
原告は,国が,石綿粉じんの発生飛散と曝露を防止することが極めて重要な責務であったにもかかわらず,労働関係法規,大気汚染防止法及び建築基準法に基づく権限の行使を適切に行わなかったこと,などを理由に身体的・精神的・社会的被害を受けたと主張しています。
このうち,石綿産業が集中していた大阪府南部・泉南地域の工場の元労働者や近隣住民及びその遺族らが提訴した大阪アスベスト訴訟(第1陣)において,第1審の大阪地方裁判所は,平成22年5月19日,原告の請求を一部認容し,国の規制権限の不行使の違法を認める判決を言い渡しました。この判決に対して,原告・被告双方が控訴しましたが,控訴審の大阪高等裁判所は,平成23年8月25日,国に規制権限不行使の違法はなかったとして,1審判決を取り消し,原告の請求を全て棄却する判決を言い渡しました。この判決に対し,原告は上告及び上告受理申立てをし,現在,最高裁判所に係属しています。
同じく大阪府南部・泉南地域の工場の元労働者らが提訴した大阪アスベスト訴訟(第2陣)において,第1審の大阪地方裁判所は,平成24年3月28日,原告の請求を一部認容する判決を言い渡しました。この判決に対し,原告・被告双方が控訴し,現在,大阪高等裁判所に係属しています。
一方,元建設労働者及びその遺族らが提訴している,いわゆる屋外型の横浜アスベスト訴訟について,横浜地方裁判所は,平成24年5月25日,原告の請求を全て棄却する判決を言い渡しました。この判決に対し,原告は控訴し,現在,東京高等裁判所に係属しています。
また,兵庫県尼崎地域に所在する工場の付近に居住等していた者の遺族らが提訴した神戸アスベスト訴訟(第1陣)について,神戸地方裁判所は,平成24年8月7日,原告の国に対する請求を全て棄却したが,企業に対する請求を一部認容する判決を言い渡しました。
アスベスト訴訟をめぐっては,平成23年4月以降,札幌,京都,大阪及び福岡の各地方裁判所に,建設業の元労働者やその遺族らを原告とする集団訴訟が相次いで提訴されています。
国側の主張
最高裁の判例(筑豊じん肺訴訟最高裁判決等)上,規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるのは,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,当時の具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに限られます。
国は,戦前から,石綿についても粉じんの一つとしてその衛生上の有害性を認識し,その時々の医学的知見,工学的知見に応じ,使用者に一定の義務を課すなどの措置を講じ,適時,措置を強化してきたものであり,国の規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められず,国家賠償法上の違法は認められないと主張しています。
係属裁判所
最高裁判所,東京高等裁判所,大阪高等裁判所,札幌地方裁判所,東京地方裁判所,静岡地方裁判所,京都地方裁判所,大阪地方裁判所,神戸地方裁判所,福岡地方裁判所