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法制度整備支援の現場から
~国際協力部教官を経験して思うこと~

「法制度整備支援」という言葉から,どのような活動をイメージするでしょうか。法務省の法制度整備支援活動は,法律制定の支援,司法関係の制度構築支援,法律を運用する人材育成の支援を中心としています。

例えば,カンボジアでは,日本の支援の下,民法や民事訴訟法が制定されました。しかし,新しい法律が定着したといえるためには,全国の実務家が,新しい法律に沿った運用をできるようにならなければいけません。そこで,引き続き,普及のための活動が必要になります。さらに,民事訴訟に関連する分野の制度構築や人材育成も必要になります。このように,法制度整備支援の活動は法律の制定にとどまりません。

法制度整備支援活動の一環として,現地に出張してセミナーを開催することや,対象国の司法関係者を日本に招いて研修を実施することがあります。例えば,私は,平成28年度だけで3回,カンボジアでのセミナーにおいて講師を務めてきました。セミナーには,毎回,現地の裁判官,裁判所書記官,弁護士等の司法関係者が約200名出席します。出席者は,講義をとても熱心に聴いてくださり,質疑応答の時間も足りなくなるくらいです。

外国の方に講義をするようになり,教えることの難しさを痛感するようになりました。対象国の方々は,日本の講師から多くのことを得ようと期待してセミナーに出席し,あるいは来日しているはずですので,その期待に応えなければいけません。言語,文化,制度等の違いに起因する難しさもありますが,日本から現地に派遣されている長期専門家や各国の担当教官と十分に協議し,先方のニーズや実情を踏まえ,必要なことを分かりやすく伝えるよう心掛けています。

日本の法律家としてこのような国際貢献に関与できることに大変やりがいを感じ,日々の仕事に取り組んでいます。

(法務総合研究所国際協力部教官 東尾和幸)

カンボジアでのセミナーで講義している様子
カンボジアでのセミナーで質疑応答している様子

カンボジアでのセミナーの様子(平成28年8月)