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CLMV諸国を対象とした「犯罪者の社会内処遇推進研修(JICA第三国研修)フォローアップセミナー」について

1 開催の経緯について

犯罪者の「社会内処遇」とは,罪を犯した人が再び罪を犯さない生活ができるように社会の中で指導などを行っていくもので,日本では「保護観察」がそれに当たり,犯罪者を更生させる方法として運用されています。

平成25年以降,アセアン10か国に中国,韓国及び日本の3か国を加えたアセアン・プラス3で社会内処遇の普及,発展を目的とした会議を開催していましたが,成人の社会内処遇が未整備のCLMV(カンボジア,ラオス,ミャンマー及びベトナム,アルファベット順)4か国への普及を目指して平成28年度から3年間の予定でJICA第三国研修(JICAの支援によって日本以外の国が主催者となり,同国で研修を行うもの。)がタイで開催されることになりました。

このJICA第三国研修で確認した課題への対策等の進捗状況を確認するとともに,日本での対策などを知ってもらうため,国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)では,平成29年7月25日から同月27日の3日間にわたって「犯罪者の社会内処遇推進(JICA第三国研修)フォローアップセミナー」を開催しました。

2 フォローアップセミナーについて

第1回JICA第三国研修において,CLMV4か国に共通する課題として①市民の理解を得る,②関係機関(政府機関,NGOなど)との連携を図る,③実態把握のための統計・データベースの構築の3つがあがりましたので,セミナーではこれらを中心に扱いました。参加者はCLMVから各3名ずつと第三国研修の実施国であるタイの保護局関係職員からの4名の合計16名でした。CLMVからは裁判所,検察庁,法務省や実際に社会内処遇を担当するとみられる省庁から参加者がありました。

セミナーでは第三国研修であがった3つの課題に対して自国でどのように共有し,対処しようとしているのかを確認するとともに,3つの課題に関してフィリピンの保護局長からフィリピンでの経験を,日本の大学教授から学術的な側面から考えていくべきことを,さらに日本の社会内処遇を担当している法務省保護局に過去の経験や現在の状況等について講義していただくとともに,更生保護サポートセンターを見学して日本の社会内処遇制度の実情に触れてもらいました。

いずれの課題もすぐには解決するものではありませんが,参加者は今回のセミナーをとおして今後の対策を考えることができました。第2回の第三国研修では,今回のセミナーを経てどのように課題への取組状況が進んだのか確認していくとともに,将来的な社会内処遇の導入に向けて実務的な側面を学んでいくことになります。

見学先の大田地区保護司会更生保護サポートセンターでの集合写真

見学先の大田地区保護司会更生保護サポートセンターにて

3 おわりに

犯罪をした人が責任を負い,罪を償うのは当然です。その一つが刑務所に入るというものですが,刑務所から出たあとに社会復帰がうまくいかず,再び罪を犯してしまうことが大きな問題になっています。こういった状況の中で社会内処遇は,犯罪をした人が犯罪をしない生活ができるように指導していく有効な方法の一つであり,世界的にも積極的な運用が求められています。

再犯を減らすために社会内処遇が有効なケースはたくさんあるものの,CLMVのように未整備の国がまだあります。アジ研では犯罪の減少を目指し,社会内処遇が未整備の国や地域に対して,その導入を円滑に進めていけるよう今後も協力していきます。