記者が行く!
~刑務所作業製品について取材しました~
みなさん,刑務所でいろいろな製品が作られていることをご存知ですか?
今回はそれらの製品について,法務省矯正局成人矯正課作業係の担当者にお話をお聞きしました。
- 記 者:
こんにちは。今日は刑務所作業製品についてお話を伺いにやってまいりました。
まずは,刑務所作業製品について,読者の方にわかりやすく教えてください。
- 担当者:
はい。刑務所作業製品とは,全国の刑務所などで,受刑者が刑務作業として製作したものをいいます。受刑者は,刑務作業をとおして,就労に必要な知識や技術を習得し,社会復帰に備えているんですよ。また,売り上げの一部は,犯罪被害者支援団体の活動に役立てていただいています。
- 記 者:
-
そうだったんですね。刑務所作業製品にはどんなものがあるんですか?こだわりのポイントも含めてぜひ紹介してください。
- 担当者:
全国で本当にたくさんの種類の製品を製作しているので,全部は紹介できないのですが,伝統的な技を刑務所が受け継いでいるというユニークな製品もあるので,ご紹介しますね。
- 記 者:
- 伝統の技ですか!わくわくしますね~!お願いします!
- 担当者:
- まずはこちらをご覧ください。

七宝焼の製品写真(笠松刑務所)
- 担当者:
- こちらは,日本伝統の「有線七宝焼」です。岐阜県にある笠松刑務所で製作しているんですが,特に見ていただきたいのはこの透明感です!女性の受刑者が,磨きに磨いて丹精を込めて仕上げた自慢の一品です!この輪郭は,本物の銀線で描いてあるんです。受刑者は,こうしたとっても繊細な技術を身につけるんですよ。
- 記 者:
- 本当にきれいですね。思わず見とれてしまいました。特に色使いがすてきです!どうやって作っているんですか?
- 担当者:
- 濃淡が美しいですよね。釉薬を使っているんです。銀線で描いた輪郭の中に釉薬を入れるので,はっきりした輪郭になり,きれいな色づけができるんです。ちなみに,この釉薬は,笠松の地を流れる木曽川の清水で溶いているので,「美濃七宝焼」と命名しています。
- 記 者:
- その土地の川の水を使っているんですか?こだわりにロマンすら感じます。
- 担当者:
- 次はこちらをご覧ください。

藍染製品写真(徳島刑務所)
- 記 者:
- これは,藍染めですね?
- 担当者:
- さすが記者さん,お目が高い!こちらも伝統的な作業工程を経て製作されています。徳島刑務所で製作されているんですよ。
- 記 者:
- なんだか素朴でかわいらしい模様ですね。見ていて落ち着きます。
- 担当者:
- そうですよね。この色は,植物から作った「すくも」という染料で染めているんですが,生地を絞ったり,染料につける時間を変えて色合いを調整しているんです。
- 記 者:
なるほど。そうやってこの模様がつけらているんですね。
あ!こっちのゴーヤ模様の壁掛けも味わいがあってすてきですね。これも何か伝統的なものなんですか?

琉球紅型写真(沖縄刑務所)
- 担当者:
- はい。こちらは沖縄刑務所で製作している琉球紅型と呼ばれる,伝統的な染色技法で製作した染物です。沖縄を代表するもので,紅型の「紅」は色全般を,「型」は模様を指しているんです。
- 記 者:
- 鮮やかな色が使われていて沖縄らしい製品ですね!刑務所の中でその地域の伝統の技術が引き継がれていること,知りませんでした!実際の作業工程も今度取材させてください。
- 担当者:
- ちょうど,5月31日から6月1日に開催の「第61回全国矯正展」で,刑務作業実演・体験コーナーを実施しますのでぜひ来てください。
- 記 者:
- 伺います!
~「第61回全国矯正展」当日~
- 記 者:
- やってまいりました~。
- 担当者:
- いらっしゃい!ようこそ!
- 記 者:
- 全国矯正展に来るのは初めてなんです。大盛況ですね!

全国矯正展の会場の様子
- 担当者:
- おかげさまで毎年たくさんのお客様にお越しいただいています。昨年は2日間で15,600人の方に来場いただいたんですよ。
- 記 者:
- 15,600人!?すごいですね!それもきっと,刑務所作業製品の品質向上や新しい商品開発の努力のたまものですね。
- 担当者:
- それではさっそく紹介しますよ!こちらが七宝焼の体験コーナーです。こちらの釉薬を猫の形のプレートに乗せていってください。

七宝焼に使用する釉薬
- 記 者:
- できました!青い目の白猫にしてみました。次は専用の窯で焼いていくんですね。
- 担当者:
- はい。1時間ほど焼きます。

釉薬を乗せたところ(左)と専用の焼き窯(右)
- 担当者:
- できましたよ~!

焼き上がり
- 記 者:
- こんなにかわいく仕上がりました。これは一生の宝物です!
- 担当者:
- 目が青くてきれいですね。次は藍染!こちらも体験して行ってくださいね!
- 記 者:
- 白いハンカチに輪ゴムをとめて,染まらない部分を作るんですね。出来上がる模様を想像しながらの作業なので,センスが問われる気がします。

藍染の模様を作るための作業の様子
- 担当者:
- 次は染料に浸けていきます。浸けたあとに生地を広げて空気に触れさせることで,色がしっかり染まるんです。これを何回か繰り返します。

生地を「すくも」に浸けている様子
- 記 者:
- なんだか不思議なにおいがするんですが。
- 担当者:
- 「すくも」は醗酵させている染料なので,独特なにおいがするんですよ。

染めたあとの模様の様子
- 記 者:
- できました~!丸い模様にしたかったのに少しカクカクになっちゃいました。しかし,私のワイシャツの袖口も藍色に染まっております。(涙)
- 担当者:
- 次は琉球紅型です。染料でコースターに色を付けていってください。最初は薄い色を塗って,少しずつ濃い色を塗っていきますよ。
- 記 者:
- 絵心に自信はないですが,がんばります!

琉球紅型製作作業の様子

出来上がり
- 担当者:
- 今日はいかがでしたか?
- 記 者:
どの製品も美しいだけでなく,丹精を込めて作られていることが分かりました。実際の作業を体験すると,その製品が作られるまでの過程が,よりリアルにイメージできて,感動すら覚えました。こういう美しい製品を毎日丁寧に作っていたら,受刑者も社会に復帰することへの意欲が強くなるのではないかと感じました。
今日は実際の作業工程を取材させていただきありがとうございました!なんだか刑務所作業製品に愛着が沸きました。
- 担当者:
- こちらこそありがとうございました。またいつでも取材にきてくださいね!
その後,会場を回っていると,こんなかわいい製品を見つけました。
広島刑務所とカープがコラボした「刑務官カープ坊や」の缶バッチで,なかなかのレア商品らしいですよ。広島の平和記念公園に寄贈された折鶴を再生させた紙を使用しているとのことでした!

カープ坊やバッチ