CONTENTS

法制度整備支援の現場から

皆さんは,「法制度整備支援」と聞いて何を思い浮かべますか?
 多くの方は,日本が,これまで様々な国において,道路,鉄道,橋,ダム,水道,電気など,国の土台となる基盤の整備に協力してきたことをご存知だと思います。実は,法務省が行っている法制度整備支援もそうした協力の一つです。ただし,道路や鉄道であればそれが完成すればすぐに誰でも生活が便利になったことを実感できますが,法律が制定されたからといって,「この法律のおかげで便利になった!」などと実感する経験を持つ人はむしろ少ないでしょう。法は,どのような社会においても,人々の安全で豊かな生活を支える不可欠な基盤ですが,それが機能するにはこれを作るだけでは不十分であり,できあがった法をきちんと運用できる担い手を育成する必要がある上,その法が人々の意識,そして社会に根付くには,さらに長い時間がかかります。
 それだけ時間のかかる試みを日本がベトナムで開始してから,今年で約25年を迎えます。当初,ベトナムの市場経済化を支えるための民法,民事訴訟法等の個別法の整備支援から始まり,時代の変化に応じて,人材育成や組織強化が図られ,2015年から始まった現在のプロジェクトでは,制定された法令間の不整合の改善や,より適切な法運用を目指す活動が進められています。2020年の今年は,このプロジェクトの最終年であるとともに,2021年以降の支援の在り方を考える大きな節目を迎えているところです。

プロジェクトオフィスの長期派遣専門家やスタッフらの皆さん

プロジェクトオフィスの長期派遣専門家やスタッフらの皆さん

プロジェクトオフィスには,裁判官,検事,弁護士出身の専門家らが集まり,それぞれの立場で培った経験をもとに,日々悩みながらベトナムの人たちと議論しています。ベトナムにとってどのようなルールを作るのが一番よいのか,ベトナムの歴史,社会,文化を踏まえて重ねる議論は,国の枠組みや人づくりを支えるお手伝いにほかなりません。目に見えづらく,時間のかかる地道な活動ですが,法に基づく社会の発展が日本とベトナムの友好関係を一層深めることにつながることを願い,日々の業務に向き合っています。

ベトナム長期派遣専門家
検事 横幕孝介