検索

検索

×閉じる
トップページ  >  政策・審議会等  >  省議・審議会等  >  過去の審議会等  >  過去のその他会議  >  オンライン登記申請制度研究会 >  我が国と諸外国の不動産登記制度における登記の真正担保のための方策について

我が国と諸外国の不動産登記制度における登記の真正担保のための方策について

国名 申請方式 申請書類の審査 登記の効力 登記の真正確保のための制度
ドイツ不動産登記制度
(土地登記のみ)
*登記簿への記載
申請と登記許諾
i)申請権者(登記によって不利益を受ける者と利益を受ける者)

ii)登記に必要な意思表示が公証人により公証・認証された場合:公証人
○形式的審査主義
(原因証書の公証→必要)
《補正》
 登記申請の障害
  →障害除去の猶予
○登記の効力
 a物権変動の成立要件
 b公信力あり

(債権行為と物権行為→無因)
●申請には,相手方の登記許諾が必要である(ドイツ登記法19条)。ただし,所有権譲渡aufulassung・地上権設定については,区裁判所又は公証人の面前での物権的合意が必要である(法20条)。

●登記許諾又はその他の登記に必要な意思表示が公の書類又は公の認証によって証明されていることが必要である(法29条)。

  *登記許諾とは,登記義務者が登記所に対して登記をすることを許諾する一方的な意思表示
 
フランス不動産登記制度
(土地登記のみ)
*提出された判決・公正証書の編綴
*抵当権・先取特権の明細書の編綴
申請(単独)・出頭又は郵送
i)証書・判決の場合:ノーテル,執行官
ii)抵当権・先取特権の場合:債権者
○形式的審査主義
(原因証書の公証→必要)
《補正》
 a形式不適式
   提出拒否→再提出
 b申請書類不適式
   補正命令→補正
○登記の効力
 第三者対抗要件(公信力なし)

(債権行為と物権行為→有因)
●登記は,提出された証書の謄抄本を帳簿に,提出した順に編綴してされる(抵当関係法225条)。
●公示に服する証書は,すべて公正証書の形式で作成される(1955.1.4デクレ4条a)。

●公示に服するすべての公正証書又は判決には,当事者の同一性に関する事項(当事者の姓,民事身分(証書)どおりの名,住所,生年月日,出生地及び職業,並びにその配偶者の姓),その書類を作成した公証人等による同一性の確認証明,不動産の台帳上の表示(区分・地図番号・字名等)等が表示されなければならない(デクレ5条~7条),

 
イギリス不動産登記制度
(土地登記のみ)
*所有権・定期借地権について登記
*登記簿への記載
申請
(1) 未登記土地に関する登記
i)自由保有土地の場合:単純不動産権者
ii)賃借土地保有権の場合:絶対的定期不動産権者
(2) 登記された権利の処分
i)土地譲渡の場合:買主
ii)譲渡抵当の場合:所有者
○実質的審査主義
 (司法機関の関与)
    ↓
 《補正なし?》
○登記の効力
 a物権変動の効力発生要件
 b公信力(確定力)あり

(債権行為と物権行為→有因?)
       (登記法52条)
●登記申請者及びその者のソリシタは,登記官の要求がある場合は,不動産権証書,遺言書,証書等が登記官の権原調査の過程ですべて開示された旨の宣誓供述書等を作成しなければならない(イギリス登記法14条a)。

●登記官は,土地の権原についての不動産権証書,証書又は証拠を提出させることができる。不動産権証書等の提出がされるまでは,登記は行われない(法15条a)。

●既登記の土地又は担保権の処分を登記するときは,既登記の土地登記証書又は担保権登記証書を登記官に提出する必要がある(法64条a)。土地登記証書又は担保権登記証書は,その中に含まれる事項について証拠能力を有する(法67条)。

《通知要請登録制度》
 未登記の土地の処分に対して異議を申し立てることができる権益を有し又は主張する者は,自己の権利に影響を与える権益の登記申請の通知を,規則で定める書式・方法で送達を受ける権利を有する旨の通知要請登録を登記官に申請することができる。この場合には,通知が通知要請登録者に送達され,かつ,一定期間経過後又は通知要請登録者の出頭があるまでは,不動産の登記をしてはならない(法53条)。

《制限登録制度》
 既登記の土地又は担保権の権利者は,土地の譲渡若しくは担保権設定,又は担保としての登記証明書の寄託に制限を加えようとする場合には,以下のすべての事柄又はそのうちで権利者が指定した事柄がされない限り,当該申請に示された取引は効力を有しない旨の登録を登記簿にすることを,登記官に申請することができる。(a)権利者が登記官に対して指定した住所に,郵便によって,取引の通知がされること。(b)権利者によって指名された者の承諾が取引に与えられること。(c)申請によって要求され,登記官によって承認されたその他の事項がされること。(法58条)
 
アメリカ不動産登記制度(1)
<証書登録制度(recording system)>
(土地登記のみ)
申請 ○形式的審査主義
(提出書面の綴込み)
○登記の効力
 第三者対抗要件(公信力なし)

※権原保険制度の充実
●売主から買主に対して物権移転の意思をもって交付されるディード(deed=不動産物権譲渡証書)と呼ばれる書面を登録所へ提出し,その謄本が年代順に編綴される。
●不動産の買おうとする者は,売買契約締結後,売主から「権原要約書(abstract of title)」を受取り,これを手掛かりに売主が真の所有者であるかなどの「権原調査」を行う。権原調査は通常は専門の弁護士や権原保険会社によって行われる。登録簿については,人名別検索簿(譲渡人検索簿及び譲受人検索簿)によって検索して調査する。
●権原調査にもかかわらず発見することのできなかった瑕疵のために権原保険制度が充実している。

 
アメリカ不動産登記制度(2)
<トレンス・システム(Torrens System)>
(土地登記のみ)
申請 ○創設登記は実質的審査
(訴訟手続による)

○その後は形式的審査
○登記の効力
 第三者対抗要件(公信力なし)

※権原保険制度の充実
●自分の土地をトレンス・システムによって規律されることを望む者が,登記申請訴訟を提起し,権原調査官の実質的審査によって所有者の申請に間違いないことが確認されると,裁判所から登記官に対し登記命令が発せられ,これにより創設登記がされる。
●創設登記の際に,登記官は同じ証書を2通作成し,一通(正本)は登記簿を構成し,もう一通(副本)が所有者に手渡される。その後,当該土地を譲り受ける者は,その副本と譲渡証書を登記所に提示することを要する。

 
オーストラリア不動産登記制度
<トレンス・システム(Torrens System)>

(土地登記のみ)
申請 ○創設登記は実質的審査
○その後は形式的審査
○登記の効力
 a物権変動の効力発生要件
 b公信力あり?
●登記権利者が登記の際に交付を受けた登記証明書を受け,後に自己が登記義務者となるときにその登記証明書を提出させる制度。

《保証基金》
●既登記の権原を奪われ,あるいは登記簿上の記載を信頼したために損失を被った者は,保証基金によって補償を受ける権利を有する。例えば,詐欺,文書偽造,登記所の過失等で権利者・受益者が損害を被った場合,この基金から真実の権利者に対して保証金が支払われることになっており,これにより真実の権利者の金銭的な保護をはかるとともに,登記に表示どおりの効果を付与することによって登記に公信力を実質的に与える形になっている。

《予告記載》
 登記されない権利を有する者等土地上の財産的権利を主張する者は誰でも,その権利を守るために予告記載を申請することができ,この予告記載と相容れない登記が申請されたときは,予告記載者に通知がされ,予告記載を維持するための法定手続を開始することができる。一定の期間内にこの法定手続が開始されない場合は,当該予告記載は,登記申請と矛盾する限りで失効し,登記が実行される。ただし,「相当な根拠」なしに予告記載を申請した者は,その結果損失を被った者に対して賠償する責任を負う。この予告記載は,土地の既登記権利者が,登記済証が盗まれたり,その他別の理由で詐欺や偽造を恐れる場合にも利用されている。
《未登記事項検索システム(U.R.D.S(Unregistered Dealing System))》
 登記申請書類が提出・受理されながらまだ登記にいたらない未登記事項(dealing)について検索するシステムで,,登記所の受付で書類を提出・受理された時,受付係官(Receiving Clerk)が直ちにコンピュータに打ち込み,所定の手数料を支払えば,誰でもこの「未登記事項」の案件リストを取得することができる。
 
韓国の不動産登記制度
(土地・建物の登記)
*登記簿への記載
申請(共同)・嘱託*出頭主義
i)登記権利者・登記義務者
ii)嘱託者
○形式的審査主義
(原因証書の公証→検印)
《補正》
 申請の欠けつ
  補正通知→補正
○登記の効力
 a物権変動の効力要件(公信力なし)
 b相続・公用徴収等については,その後の物権変動の処分要件
(債権行為と物権行為→有因)
●共同申請主義・当事者出頭主義の採用

●所有権移転が「契約」の場合には,a市長等の検印を受けた登記原因証書,登記畢証,第三者の許可又は承諾書等,所有権登記名義人の印鑑証明書(用途欄に,買受人の姓名等が記載)の添付が必要となる(韓国不登法40条,同法施行規則53条)。

《登記原因証書に対する検印制度》
 所有権移転登記が「契約」を原因とするときは,不動産登記特別措置法により,市長等の検印を受けた契約書(原本)を登記申請書に添付しなければならない。
《印鑑証明書》

 印鑑証明を申請する者は,用途を指定しなければならない。その用途が不動産の売渡しの場合には,用途欄に,買受人の姓名・住所・住民登録番号を記載しなければならず(印鑑証明施行令13条b),印鑑証明書にこの用途の記載がされる。

《登記畢証》
 我が国の登記済証と同様のもの。ただし,登記畢証を滅失したときは,確認制度による(韓国不登法49条)。
 (登記済証を滅失したときの確認制度)
    本人申請の場合 → 登記義務者が登記所に出頭した際に,直接登記官の確認を受ける方法
      *登記官は,住民登録票,旅券,自動車運転免許証によって本人確認をし,その証明書の写しを添付した「確認調書」を作成・捺印する。
    代理申請の場合 → 委任を受けた代理人(弁護士・法務士)が,登記義務者から委任を受けたことを明らかにする書面2通を申請書に添付する方法
      *当該代理人において,住民登録票,旅券,自動車運転免許証によって本人確認をし,その証明書の写しを添付した「確認書面」2通を作成・捺印する。一通は申請書・附属書類綴込帳に編綴し,残り一通に登記済・登記所印を押して,義務者に返還する。
    申請書又は代理権限証書中の登記義務者の作成部分に関して,公証(署名の認証又は公正証書の作成)を受けて,その副本一通を登記申請書に添付する方法
 
日本の不動産登記制度
(土地・建物の登記)
*登記簿への記載
申請(共同)・嘱託*出頭主義
i)登記権利者・登記義務者
ii)嘱託者
○形式的審査主義
(原因証書の公証→不要)
《補正》
 申請の欠けつ
  取下げ→再提出
  補正の促し→補正
○登記の効力
 第三者対抗力(公信力なし)

(債権行為と物権行為→有因)
●共同申請主義・当事者出頭主義の採用
●所有権移転が売買等の場合には,登記原因証書,登記済証,第三者の許可証等,所有権登記名義人の印鑑証明書の添付が必要となる(不登法35条,施行細則42条)。
《登記原因証書》
 登記原因証書の提出が不能の場合は,申請書副本を添付することが必要(不登法40条)。
《登記済証》
 登記済証を滅失した場合には,登記を受けた成年者2名の「登記義務者に間違いない」旨の保証書(印鑑証明書付き)2通を申請書に添付することが必要(不登法44条)。