平成14年商法改正に伴う「商法施行規則」の改正に関する意見募集
第154回国会において,商法等の一部を改正する法律(平成14年法律第44号。以下「改正法」といいます。)が成立し,平成14年5月29日に公布されました。改正法は,商法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成14年政令第216号)により,平成15年4月1日から施行されることとされています。
改正法においては,財産価額の評価方法等の規定が法務省令へ委任されたほか,連結計算書類制度,委員会等設置会社制度等が導入されましたので,その施行に伴い,商法施行規則(平成14年法務省令第22号)の一部を改正する必要が生じました。
さらに,改正法の施行に伴う一部改正に関連して,関係各界からの要望が強い財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。以下「財務諸表等規則」といいます。)等のいわゆる証券取引法会計に関する諸規定との調整や,株主総会の招集通知に添付すべき参考書類に関する規定の整備等を行うことも検討しています。
その内容は,後記5のとおりですので,これに対する皆様の御意見をお寄せください。
なお,いただきました御意見につきましては,当参事官室において取りまとめた上,規則制定の際の参考にさせていただきますが,その内容を公開する可能性があること,個々の御意見に直接回答することはないことをあらかじめ御了承願います。
意見募集要領
1 意見募集期間
平成14年11月12日(火)から平成15年1月5日(日)まで
2 意見送付要領
住所(市区町村までで結構です。),氏名,年齢,性別,職業を記入の上(差し支えがあれば一部の記載を省略しても構いません。),電子メール,郵送又はファックスにより意見募集期間の最終日必着で送付して下さい。
なお,電話によるご意見には対応することができません。
3 あて先
法務省民事局参事官室
・郵送:〒100−8977
東京都千代田区霞が関1−1−1
・FAX:03−3592−7039
・電子メール:minji29@moj.go.jp
4 問い合わせ先
法務省民事局参事官室
TEL:03−3580−4111
5 改正案
6 上記改正案の要点等
(前注)条文の番号について法令名を記載していないものは,改正案の条文の番号です。
(1)平成14年商法改正に伴う改正
ア 財産価額の評価方法等の規定の省令委任
(ア)財産価額の評価方法の規定の省令委任(27条~33条関係)
商法285条及び有限会社法46条1項に基づき,商法34条2号,旧商法285条ノ2から285条ノ7までに対応する規定を,平仮名口語体化して新設しています。
(イ)貸借対照表に記載又は記録すべき事項の省令委任(35条~43条関係)
商法281条5項及び有限会社法43条5項に基づき,旧商法286条から287条まで(繰延資産)及び287条ノ2(引当金)に対応する規定を,平仮名口語体化して新設しています。
(ウ)純資産額から控除すべき額の省令委任(124条~126条関係)
商法290条1項4号,293条ノ5第3項4号及び有限会社法46条1項に基づき,配当可能限度額及び中間配当限度額の算定に関する規定を,平仮名口語体化して新設しています。
その際,91条1項1号及び同条4項として新設した新株式払込金又は申込期日経過後における新株式申込証拠金の金額(後記(2)・イ・(イ)(3)参照)を純資産額から控除すべき額に加える等の手当てをしています。
イ 計算書類
(ア)連結計算書類(142条~179条関係)
商法特例法19条の2第1項の規定により商法特例法上の大会社(改正法附則9条2項により,「当分の間」は証券取引法において有価証券報告書を提出すべき会社に限られています。)が作成すべき連結計算書類は,連結貸借対照表及び連結損益計算書とし,その記載方法等については,作成する会社の事務負担を考慮して注記事項等の簡素化を図った上で,連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」といいます。)に倣って規定することとしています。
(注)連結財務諸表規則では,連結の範囲等を画する「子会社」に該当するか否かは,いわゆる支配力基準によっており,「総株主の議決権の過半数」という形式基準によっている商法上の「子会社」とは異なっています。
そこで,改正商法施行規則においては,連結財務諸表規則上の「子会社」と一致する「子法人等」概念を創設し(2条1項18号),同概念によって連結の範囲等を画することとすることにより,連結財務諸表規則によって作成される連結貸借対照表等と商法施行規則によって作成される連結貸借対照表等の作成基準を同一のものとすることとしています。
商法特例法1条の2第4項2号の「連結子会社」についても,「子法人等のうち(商法上の)子会社以外のもの」と定義し,連結財務諸表規則の作成基準と齟齬が生じないよう手当てしています(142条)。
(イ)連結計算書類の監査(180条~184条関係)
商法特例法19条の2第3項に基づき,連結計算書類の監査について,
(1)取締役は,定時総会の会日の6週間前までに連結計算書類を監査役会及び会計監査人に提出する
(2)会計監査人は,連結計算書類の受領後4週間以内に監査報告書を監査役会及び取締役に提出する
(3)監査役会は,(2)の監査報告書の受領後1週間以内に監査報告書を取締役に提出し,謄本を会計監査人に交付する
こととしていますが,当事者(取締役,監査役会及び会計監査人)による提出期限の合意も認めることとしています。
(ウ)連結計算書類の監査結果の定時総会への報告(185条関係)
商法特例法19条の2第3項に基づき,連結計算書類の監査結果の定時総会への報告について,会計監査人及び監査役会の監査報告書の概要を報告すべきこととしています。
ウ 委員会等設置会社
(ア)監査委員会の監査の遂行のために必要な事項(193条,104条1項1号関係)
商法特例法21条の7第1項2号に基づき,委員会等設置会社の取締役会が決議すべき監査委員会の監査の遂行のために必要な事項を,「監査委員会の職務を補助すべき使用人に関する事項」,「執行役及び使用人が監査委員会に報告すべき事項その他の監査委員会に対する報告に関する事項」等としています。
また,商法特例法21条の29第2項において,委員会等設置会社の監査委員会の監査報告書には,上記取締役会決議の内容の相当性についての監査委員会の判断が記載され,株主に開示されることとされていますが,改正案においては,株主への開示をより充実させるため,委員会等設置会社の営業報告書には,上記取締役会決議の概要を記載しなければならないこととしています。
(イ)委員会等設置会社の監査報告書の記載方法(135条~139条)
商法特例法21条の28第4項(同法21条の29第3項で準用)に基づき,委員会等設置会社の会計監査人及び監査委員会が作成すべき監査報告書の記載方法について,大会社の監査報告書に倣って規定することとしています。
(ウ)監査委員会から取締役に対する計算書類等の提供(140条関係)
商法特例法21条の30第1項に基づき,委員会等設置会社の監査委員会の取締役に対する計算書類等の提供の時期及び方法について,監査委員会が監査報告書を商法特例法21条の26第1項の執行役に提出後速やかに,書面の写しの交付等をしなければならないこととしています。
(エ)定時総会において報告すべき事項(141条関係)
商法特例法21条の31第1項に基づき,委員会等設置会社の定時総会において報告すべき株主の議決権行使の参考となるべき事項として,「利益の処分又は損失の処理に関する中長期的な方針」「売上高又は経常利益その他の利益若しくは損失が著しく増減したときは,その原因」等としています。
(オ)委員会等設置会社の連結計算書類の監査等(186条~192条関係)
商法特例法21条の32第2項,3項及び4項に基づき,委員会等設置会社の連結計算書類の監査及び定時総会における監査結果の報告等について,上記イ・(イ)及び(ウ)と同様の規定を設けることとしています。
エ 株券喪失登録関係(194条関係)
商法230条2項に基づき,株券喪失登録の申請の際に添付しなければならない資料を,(1)株主名簿に記載されている取得の日以後に当該株券を所持していたことを証する資料,(2)当該株券を喪失した事実を証する資料及び(3)申請者の印鑑証明書等としています。
オ 債権者保護手続関係(195条関係)
商法376条1項等に基づき,資本減少等に伴う債権者保護手続において公告すべき貸借対照表に関する事項として,官報等で公告をしている場合には,官報の日付及び当該公告が掲載されている頁等を,公告に代えてインターネット公開をしているときは,商法188条2項10号に掲げる事項(商法施行規則8条によりウエブサイトのアドレスとされています。)を,それぞれ公告しなければならないこととしています。
カ 商法33条ノ2第1項の電磁的記録について規定する現行商法施行規則2条に,重要財産委員会の議事録を電磁的記録により作成できる旨を規定する商法特例法1条の4第3項を準用規定として新たに加える等の整備をすることとしています。
(2)平成14年改正に伴う改正に関連する改正
ア 参考書類(現行商法施行規則の明確化。11条~23条)
株主総会の招集通知に添付すべき参考書類等に関し,種類株主総会,創立総会(各種類の株式引受人の総会を含む。),有限会社の社員総会についての規定を加える等の整備をしています。
イ 証券取引法会計に関する諸規定との調整
(ア)連結計算書類作成会社についての調整(103条1項3号,105条2項及び3項,107条3項,108条5項関係)
連結計算書類作成会社(連結貸借対照表及び連結損益計算書を作成すべき会社をいいます。2条1項17号参照)の営業報告書への記載について,一定事項の連結ベースでの記載を可能とするほか,附属明細書への記載についても,一定事項の省略を可能としています。
(イ)その他の調整
(1)金額の表示の単位(49条関係)
貸借対照表等の金額の表示の単位について,財務諸表等規則と同様,四捨五入方式等の切り捨て方式以外の単位表示を認めることとしています。
(2)用語の調整(51条,89条,91条,100条等関係)
企業会計における一般的な用語の使用例に倣い,「投資等」を「投資その他の資産」に,「減資差益」を「資本金及び資本準備金減少差益」に,「税引前当期利益(損失)」を「税引前当期純利益(損失)」に,「当期利益(損失)」を「当期純利益(損失)」に変更することとしています。
(3)資本の部の表示(91条1項1号及び4号関係)
企業会計における貸借対照表の資本の部の記載方法についての会計基準が形成されたことに伴い,自己株式の処分に係る払込金又は申込期日経過後における申込証拠金について,自己株式払込金又は自己株式申込証拠金の部を設けることとしたほか,現行商法施行規則では手当てがされていなかった新株式払込金又は申込期日経過後の新株式申込証拠金について,新株式払込金又は申込証拠金の部を設けることとしています。
(4)附属明細書の記載事項の調整(107条1項1号及び3号関係)
商法施行規則の附属明細書に記載すべき事項の一部について,財務諸表等規則における附属明細表との様式の一致を可能としています。
(5)有価証券報告書を提出すべき大会社等の事務負担軽減のため,それらの会社が作成する貸借対照表等について,子会社等に対する金銭債権等を,財務諸表等規則と同様,「関係会社」(財務諸表等規則8条8項)単位で記載又は記録することを可能とする(55条,70条,73条,80条,97条関係。なお48条1項参照)ほか,財務諸表等規則等の「用語及び様式」を用いることができることとしています(197条関係)。
ウ 会計監査人に対する報酬等の開示(105条1項関係)
昨今の国内外における外部監査の信頼確保に向けた取組みを踏まえ,連結特例規定適用会社(商法特例法上の連結特例規定の適用がある会社をいいます。2条1項16号参照)に対し,営業報告書において,会計監査人に対する報酬額を,非監査報酬額等と併せて開示しなければならないこととしています。
なお,これについては,改正案の立案の過程において,監査報酬額の非監査報酬額に対する「比率」のみを開示しなければならないこととするべきとの意見がありましたので,両論を併記しています。
エ 貸借対照表等の注記の整理(109条,103条1項11号イ関係)
(1)貸借対照表の当期利益等の付記(現行商法施行規則71条2項)を削除し,また,一株当たりの当期利益等の注記(現行商法施行規則74条)を損益計算書の注記事項とし(102条),いずれについても,損益計算書の公告を行わない場合には貸借対照表への付記等を義務づけることとしています。いずれも本来,損益計算書の注記事項等として位置付けられるものであることによる手当てです。
(2)現行商法施行規則73条において貸借対照表の注記事項とされている新株予約権の注記について,同条を削除し,営業報告書において,記載事項を明確化した上で,有利発行された新株予約権と合わせた開示事項としています。
(参考) 改正法の省令委任事項と商法施行規則との対応表
改正法の省令委任事項 | 対応する商法施行規則 の規定 |
|
規定 | 内容 | 規定 |
商230条2項 | 株券喪失登録申請の添付資料 | 194条 |
商263条6項 | 電磁的記録で作成された株券喪失登録簿の表示方法 | 7条 |
商281条5項 | 貸借対照表等の記載事項及び記載方法 | 5章1節~3節 |
商283条6項 | 公告すべき貸借対照表の要旨の記載方法 | 5章4節 |
商285条 | 会計帳簿に記載等すべき財産に付すべき価額 | 4章 |
商290条1項4号 | 配当可能限度額算定の際の純資産額からの控除額 | 124条 |
商293条ノ5第3項4号 | 中間配当可能限度額算定の際の控除額 | 125条 |
商374条ノ4第1項 | 新設分割の際の公告すべき貸借対照表に関する事項 | 195条 |
商374条ノ20第1項 | 吸収分割の際の公告すべき貸借対照表に関する事項 | 195条 |
商376条1項 | 減資の際の公告すべき貸借対照表に関する事項 | 195条 |
商412条1項 | 合併の際の公告すべき貸借対照表に関する事項 | 195条 |
有43条5項 | 貸借対照表等の記載事項及び記載方法 | 5章1節~3節 |
有46条1項(商290条の準用) | 配当可能限度額算定の際の純資産額からの控除額 | 126条 |
特1条の2第4項2号 | 連結子会社の定義 | 142条 |
特1条の4第2項2号 | 電磁的記録で作成された重要財産委員会の議事録の表示方法 | 7条 |
特19条の2第1項 | 連結計算書類 | 8章2節 |
特19条の2第3項 | 連結計算書類の受けるべき監査 | 180条~184条 |
特19条の2第4項
|
連結計算書類の監査結果の定時総会への報告 | 185条 |
特21条の7第1項2号 | 監査委員会の監査の遂行のために必要な事項 | 193条 |
特21条の28第4項 | 委員会等設置会社の会計監査人の監査報告書の記載方法 | 135条,136条 |
特21条の29第3項(特21条の28第4項準用) | 委員会等設置会社の監査委員会の監査報告書の記載方法 | 135条,137条~139条 |
特21条の30第1項 | 委員会等設置会社の計算書類の取締役への提供方法・時期等 | 135条,140条 |
特21条の31第1項 | 委員会等設置会社の定時総会において報告すべき株主の議決権行使の参考となるべき事項 | 135条,141条 |
特21条の32第2項 | 委員会等設置会社の連結計算書類の受けるべき監査 | 186条~190条 |
特21条の32第3項 | 委員会等設置会社の連結計算書類の受けるべき取締役会の承認 | 186条,191条 |
特21条の32第4項 | 委員会等設置会社の連結計算書類の監査結果の定時総会への報告 | 186条,192条 |