保証制度の見直しに関する要綱中間試案
(前注)保証制度は,様々な経済取引において利用されていることから,保証人保護の必要性の程度,そのための措置の要否も場面ごとに一律でなく,保証人保護のために採るべき措置についても様々なものが考えられる。そこで,個人である保証人が銀行取引その他の継続的な金銭の貸付け等に係る債務を主たる債務とする根保証をした場合につき,特に保証人保護の措置を講ずる必要性が指摘されていることを踏まえ,まず,保証人がア貸金債務について,イ根保証をした,ウ個人である場合を念頭において,保証人保護の方策を検討することとし(第1),その後に,当該保護の方策をアからウまで以外の場合にも及ぼすべきかどうかを検討することとする(第2)。
第1 貸金債務の根保証についての個人保証人の保護の方策
1 要式行為
根保証契約は,書面でしなければその効力を生じないものとする。
(注 )後記2による限度額及び後記3(1)による保証期間についても,書面に記載しなければ合意の効力を生じないものとする。
(注 )後記2による限度額及び後記3(1)による保証期間についても,書面に記載しなければ合意の効力を生じないものとする。
2 保証の限度額の定め
根保証契約は,保証の限度額を定めなければその効力を生じないものとする。
(注 1)保証の限度額は,元本のほか利息・損害金をも含むものとして定めなければならないものとする(民法第398条ノ3第1項参照)。
(注 2)保証人が,法人である主たる債務者の代表者である場合には,限度額の定めのない根保証契約も有効とすべきであるという考え方について,なお検討する。
(注 1)保証の限度額は,元本のほか利息・損害金をも含むものとして定めなければならないものとする(民法第398条ノ3第1項参照)。
(注 2)保証人が,法人である主たる債務者の代表者である場合には,限度額の定めのない根保証契約も有効とすべきであるという考え方について,なお検討する。
3 保証期間の制限
(1 ) 合意により保証期間を定める場合
合意により保証期間を定める場合には,その期間は,根保証契約の締結時から〔5年〕を超えてはならないものとし,根保証契約を更新する場合における更新後の保証期間についても,同様とするものとする。
(注 )法人である主たる債務者の代表者である保証人以外の保証人については,合意により〔3年〕を超える保証期間を定めた場合には,(1)の規律に加えて,根保証契約の締結時から〔3年〕を経過した後は元本確定請求権を有するものとするという考え方について,なお検討する。
(2 ) 合意による保証期間の定めがない場合
合意による保証期間の定めがない場合には,
A 案 保証期間は,根保証契約の締結時から〔3年〕とするものとする。
B 案 法人である主たる債務者の代表者が保証人であるときは,保証人は,根保証契約の締結時から〔3年〕を経過した後は元本確定請求権を有するものとし,それ以外の者が保証人であるときは,A案によるものとする。
(3 関係後注)
1 保証期間という用語は,その期間内に主たる債務の元本が発生したものに限り保証債務を負うという意味で用いている。
2 (1)及び(2)における期間をそれぞれどの程度とするかについて,なお検討する。
合意により保証期間を定める場合には,その期間は,根保証契約の締結時から〔5年〕を超えてはならないものとし,根保証契約を更新する場合における更新後の保証期間についても,同様とするものとする。
(注 )法人である主たる債務者の代表者である保証人以外の保証人については,合意により〔3年〕を超える保証期間を定めた場合には,(1)の規律に加えて,根保証契約の締結時から〔3年〕を経過した後は元本確定請求権を有するものとするという考え方について,なお検討する。
(2 ) 合意による保証期間の定めがない場合
合意による保証期間の定めがない場合には,
A 案 保証期間は,根保証契約の締結時から〔3年〕とするものとする。
B 案 法人である主たる債務者の代表者が保証人であるときは,保証人は,根保証契約の締結時から〔3年〕を経過した後は元本確定請求権を有するものとし,それ以外の者が保証人であるときは,A案によるものとする。
(3 関係後注)
1 保証期間という用語は,その期間内に主たる債務の元本が発生したものに限り保証債務を負うという意味で用いている。
2 (1)及び(2)における期間をそれぞれどの程度とするかについて,なお検討する。
4 期間の経過以外の事由による元本の確定等
(1 ) 元本確定事由
次に掲げる事由がある場合には,保証すべき債権の元本は当然に確定するものとする。
ア 債権者が主たる債務者又は保証人の財産に対する強制執行の申立てをしたこと
イ 主たる債務者又は保証人につき破産宣告(破産手続開始の決定)があったこと
ウ 主たる債務者又は保証人が死亡したこと
(注 )アは,主たる債務や保証債務以外の債務の履行を求める強制執行の申立てをした場合を含む趣旨である。このほか,債権者が主たる債務者又は保証人の財産について有する担保権の実行の申立てをした場合等をも含めることとするかどうかについて,なお検討する。
(2 ) その他
その他,貸金債務について根保証をした個人である保証人を保護するための方策につき,なお検討する。
(注 1)法定の又は合意による保証期間中であっても,ア主たる債務者と保証人との関係,イ債権者と主たる債務者との関係(取引態様),ウ主たる債務者の資産状態のいずれかに著しい事情の変更があった場合等,一定の特別な事由がある場合には,保証人は,保証すべき債権の元本の確定を請求することができるものとすべきであるという考え方については,考慮すべき様々な要素を的確に法文上表現することが困難であるという問題があることを踏まえて,なお検討する。
(注 2)債権者に対し,主たる債務の額の変動,不履行の発生等の一定の事由について保証人に通知すべき義務を課すべきであるという考え方については,その通知義務を怠った場合にどのような私法上の効果を付与するかという問題があることを踏まえて,なお検討する。
(注 3)法人である主たる債務者の代表者である保証人以外の保証人に対し,期間の経過による元本確定請求権を付与するという考え方(3(1)(注)参照)を採る場合には,保証人が元本確定請求権を行使するかどうかを判断するのに必要な情報を得られるようにするため,債権者に対し,(注2)のような通知義務を課し,債権者がその義務を怠ったときは,保証すべき債権の元本は当然に確定するものとするという考え方についても,なお検討する。
次に掲げる事由がある場合には,保証すべき債権の元本は当然に確定するものとする。
ア 債権者が主たる債務者又は保証人の財産に対する強制執行の申立てをしたこと
イ 主たる債務者又は保証人につき破産宣告(破産手続開始の決定)があったこと
ウ 主たる債務者又は保証人が死亡したこと
(注 )アは,主たる債務や保証債務以外の債務の履行を求める強制執行の申立てをした場合を含む趣旨である。このほか,債権者が主たる債務者又は保証人の財産について有する担保権の実行の申立てをした場合等をも含めることとするかどうかについて,なお検討する。
(2 ) その他
その他,貸金債務について根保証をした個人である保証人を保護するための方策につき,なお検討する。
(注 1)法定の又は合意による保証期間中であっても,ア主たる債務者と保証人との関係,イ債権者と主たる債務者との関係(取引態様),ウ主たる債務者の資産状態のいずれかに著しい事情の変更があった場合等,一定の特別な事由がある場合には,保証人は,保証すべき債権の元本の確定を請求することができるものとすべきであるという考え方については,考慮すべき様々な要素を的確に法文上表現することが困難であるという問題があることを踏まえて,なお検討する。
(注 2)債権者に対し,主たる債務の額の変動,不履行の発生等の一定の事由について保証人に通知すべき義務を課すべきであるという考え方については,その通知義務を怠った場合にどのような私法上の効果を付与するかという問題があることを踏まえて,なお検討する。
(注 3)法人である主たる債務者の代表者である保証人以外の保証人に対し,期間の経過による元本確定請求権を付与するという考え方(3(1)(注)参照)を採る場合には,保証人が元本確定請求権を行使するかどうかを判断するのに必要な情報を得られるようにするため,債権者に対し,(注2)のような通知義務を課し,債権者がその義務を怠ったときは,保証すべき債権の元本は当然に確定するものとするという考え方についても,なお検討する。
第2 適用範囲
1 要式行為について
根保証であるかその他の保証であるか,保証人が個人であるか法人であるか等を問わず,すべての保証契約につき適用するものとする。
2 根保証における限度額の定め,保証期間の制限等(第1・2から4まで)について
(1 ) 保証人の範囲
保証人が個人である場合に限り,適用するものとする。
(2 ) 主たる債務の種類
根保証契約において定められる主たる債務の範囲に貸金債務が含まれている場合について,適用するものとする。
(注 )主たる債務が,ア継続的な商品売買に係る代金債務である場合,イ不動産賃貸借に係る賃借人の債務である場合等については,金銭の貸付け等との違いを踏まえながら,なお検討するものとする。
( 2関係後注)
主たる債務の範囲に貸金債務が含まれている根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権につき,個人が保証する場合についても,当該個人が直接に根保証をした場合と同様の保護を受けられるようにする措置を講ずる方向で,なお検討する。
保証人が個人である場合に限り,適用するものとする。
(2 ) 主たる債務の種類
根保証契約において定められる主たる債務の範囲に貸金債務が含まれている場合について,適用するものとする。
(注 )主たる債務が,ア継続的な商品売買に係る代金債務である場合,イ不動産賃貸借に係る賃借人の債務である場合等については,金銭の貸付け等との違いを踏まえながら,なお検討するものとする。
( 2関係後注)
主たる債務の範囲に貸金債務が含まれている根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権につき,個人が保証する場合についても,当該個人が直接に根保証をした場合と同様の保護を受けられるようにする措置を講ずる方向で,なお検討する。