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「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集の実施結果について(報告)

第1  意見数

29件(11団体(2件意見を寄せた団体あり) 個人17名)

第2  意見の概要

※ 寄せられた意見を以下のとおり3分類し,主なものの要旨のみを取り上げている。

一  具体性の審査を要しないとする意見に賛成するもの

1  目的の範囲は各会社の判断に委ねるべきである。
2  現行の目的の審査が新規事業の参入障壁となっている。
3  デラウェア(アメリカ)会社法などでは適法であれば目的は制限しないとの全目的条項(営業・目的は適法な行為・活動を行うことである旨のみを,またはその旨と他の営業・目的とともに記載すればよい)を規定している。
4  さらに抽象的な記載方法として「当会社の目的に関しては,範囲を限定しない。」とすることを認めて欲しい。

二  具体性の審査を要しないとする意見に反対するもの

1  実務が混乱する。
2  自己責任,規制撤廃としても行き過ぎである。
3  公開された登記簿の価値が減少する。

三  具体性の審査は要するが,基準を緩和すべきとするもの

1  「取引の安全と円滑に資すること」を目的とする商業登記の制度の趣旨に反する。
2  会社の目的を定款の絶対的記載事項としている会社法第27条の趣旨を没却する。
3  公示性を逸脱した目的が出現し,登記簿が広告媒体として使われるおそれがある。
4  登記簿の価値を減少させる。
5  目的をある程度具体的にしないと,他の審査基準(明確性,適法性)についても判断しづらい。

四  上記三に分類される意見のうち,審査基準に関してのもの

1  (注2)記載の考え方のとおり(目的を日本標準産業分類の大分類(大分類に多数の中分類が含まれる製造業,卸売・小売業及びサービス業にあっては中分類)に依拠したものとする。)とする。
2  基準を示した法令を策定すべきである。
3  目的の基準を法務省ホームページに記載すべきである。
4  登記官の裁量には任せるべきでない。

第3  意見に対する考え方

 目的における具体性の審査の在り方については,寄せられた意見を参考に検討しているところ,第2で取り上げた意見に対する当局の考え方は,次のとおりである。


 一1の意見については,登記官が目的の審査を行うことは(その考慮要素としての具体性については本件パブリック・コメントのとおり検討中であるが),会社法施行後も変わるところはないが,御意見のとおり会社の目的は定款記載事項であり,定款自治により,会社自身が決すべき性質のものである。
 一2の意見については,目的の具体性の審査が新規事業の参入の障壁となっているのであれば,当該事情も参考としたい。ただし,目的の記載が不明確なものは,目的として登記することは相当でなく,登記官によって却下される取扱いに変更はない。
 一3の意見については,諸外国の事例として,具体性のない目的の記載が認められている事情があることについて参考としたい。
 一4の意見については,目的を定款記載事項及び登記事項としている会社法の趣旨並びに登記事項を公示する商業登記法の趣旨から目的の記載として認めることは難しいと考えられる。
 二及び三4の意見については,具体性のないものを目的とすることについては,取引(官公庁等の許認可を含む。)に支障が生ずるおそれがあり,取締役の目的外行為の差止請求が困難になることから,当該定款変更について株主総会の決議を得ることができないおそれがあると考えられる。したがって,実際に,具体性を欠くものを目的とする会社は,その必要があり,かつ,そのことによる支障もない会社に限られるものと考えられる。なお,目的の審査における他の考慮要素である適法性や明確性の観点からの審査は会社法施行後も変わるところはなく,具体性を考慮要素としないことを検討しているものである。
 三1及び三2の意見については,目的を定款記載事項及び登記事項としている会社法の趣旨並びに登記事項を公示する商業登記法の趣旨に反しないよう検討していきたい。
 三3の意見については,会社の目的は定款記載事項であり,定款自治により,会社自身が決すべき性質のものであるが,登記官が目的の審査を行うことは会社法施行後も変わるところはなく,目的の記載に明確性や適法性を欠くものであれば受理されないこととなる。
 三5の意見については,目的の具体性を審査しない場合又は緩和した場合には,当該目的の審査は,明確性や適法性などを審査の考慮要素として行うこととなるが,特段の支障はないものと考えられる。
 四1及び2の意見については,具体性の審査を行う場合の基準としては,参考となるものと考えられる。しかしながら,1については,(注2)記載の問題がある。また,2については,当該基準に沿わない目的について登記の申請があった場合について却下するかどうか等,実際上の取扱いについてはなお検討すべき問題があるものと考えられる。また,具体的に記載される目的は多種多様なものがあるため,目的の審査を行う登記官に一定の裁量を与えざるを得ないという問題もあるものと考えられる。
 四3の意見については,仮に基準を設けた場合には,法務省ホームページ等によって広報していきたい。
 四4の意見については,仮に法令等によって基準を設けたとしても,具体的に記載される目的は多種多様なものがあるため,登記官が具体性があるか否かを審査せざるを得ない場合があるものと考えられる。