シンポジウム「ビジネスに関連する人権の保護と今後の法制度整備支援」を開催しました。

　法務総合研究所国際協力部では、日ASEAN友好協力50周年を記念して、令和５年７月７日（金）、国際民商事法センター（ICCLC）、ジェトロ・アジア経済研究所、JICAとの共催により、ホテルニューオータニにて、「ビジネスに関連する人権の保護と今後の法制度整備支援」と題する公開シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、最高裁判所、日本弁護士連合会、外務省、経済産業省、国際機関日本アセアンセンター、国連開発計画（UNDP）に後援いただき、当日は、齋藤健法務大臣、中谷元内閣総理大臣補佐官（国際人権問題担当）、岡井朝子国連事務次長補兼UNDP危機局長にご挨拶をいただくとともに、会場及びオンラインで合計３８１名の方にご参加いただくなど、高い関心を集め、盛況のうちに終了しました。開催にご協力いただいた皆さま、ご来場・ご視聴いただいた皆さまに改めて感謝いたします。
 

　本シンポジウムでは、「ビジネスと人権」の分野の第一線で活躍されているユユン・ワニングラム氏（ASEAN政府間人権委員会（AICHR）インドネシア政府代表）、アニタ・ラマサストリ氏（元国連ビジネスと人権作業部会委員、ワシントン大学ロースクール教授）、アラン・ヨルゲンセン氏（OECD「責任ある企業行動センター」長）、ナリーラック・パイチャイヤプーム氏（タイ法務省権利自由擁護局国際人権課長）にご講演をいただいた後、法制度整備支援による取組と今後の課題について、当部の内藤晋太郎部長及び矢吹公敏氏（弁護士、一般社団法人ＪＰ－ＭＩＲＡＩ代表理事）による各講演があり、最後に、以上の海外ゲストに加えて、国内外のトップランナー企業より、ヴィラノン・フータクーン氏（タイのチャロン・ポカパングループ副社長）、渡邉廣之氏（イオン株式会社執行役副社長）、小山紀昭氏（株式会社ファーストリテイリンググループ上席執行役員）をお招きし、パネルディスカッション(1)「日本とASEANの企業によるグッド・プラクティスに学ぶ」を実施し、竹原成悦氏（JICAガバナンス・平和構築部次長）、山田美和氏（ジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センター長）、矢吹公敏氏にご参加いただき、パネルディスカッション(2)「ASEANにおける『責任ある企業行動』のため、日本の法制度整備支援が果たし得る役割は何か」を実施しました。国内外のゲストから、ASEANにおける今後の「ビジネスと人権」に関する法制度整備支援について、大変貴重な提言等をいただきました。

　本シンポジウムのプログラムは、別添のフライヤーをご参照ください。また、講演等で使用された資料は間もなく当部のホームページにアップロードする予定ですので、ご興味のある方はそちらからダウンロードください。

 
　当部は、２００１年の設立以来、法制度整備支援の専門機関として、「法の支配」や「基本的人権の尊重」、「司法へのアクセス」などの普遍的な価値を浸透させるため、関係機関と連携しながら、ASEAN諸国などとの間で、支援対象国の実情を踏まえた「寄り添い型」の支援による法・司法分野での国際協力活動を続けてきました。そして、本シンポジウムでは、「ビジネスと人権」に関する国連指導原則に掲げられた３つの柱のうち救済へのアクセスに焦点が置かれ、この新たな国際的な課題に取り組む上で救済へのアクセスを構築・強化すべきことの重要性が改めて指摘されるとともに、ASEAN地域におけるこの分野での当部の法制度整備支援が果たすべき役割について提言がされるなど、活発な議論が交わされました。当部は、本シンポジウムの成果を踏まえ、今後、「ビジネスと人権」という新しい分野でも、当部の強みである相手国の実情を踏まえた「寄り添い型」の支援の可能性を探求しながら、引き続き、関係者の皆さまと協力して、法制度整備支援を推進してまいります。


本シンポジウムのプログラムはこちら