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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年5月24日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から2件報告があります。
 1件目は、所有者不明土地問題解決に向けた取組についてです。
 法務省では、所有者不明土地問題を解決するための施策として、相続登記の一層の促進を図るため、令和6年4月から、相続登記の申請を義務化することとしました。
 本日、広報の一環として、俳優の高橋惠子さんや日本司法書士会連合会小澤会長と新しい相続登記制度をテーマに対談した動画を公開しました。
 また、法務省ホームページに「あなたと家族をつなぐ相続登記」と題する特設ページを開設し、相続登記や遺産分割手続、新たな制度についての解説を掲載しました。
 今回の取組は、そもそも相続登記の手続が分からない、新たな制度の分かりやすい解説がないといった声もあると聞き、そうした国民の皆様の声に丁寧に応えていくためのものです。
 こうした取組を通じ、相続登記の重要性や新たな制度の意義について、広く国民の皆様に御理解をいただきたいと考えています。
 2件目は、令和4年度「子どもの人権SOSミニレター」事業の実施についてです。
 今年度も、「子どもの人権SOSミニレター」の配布を開始いたします。本日から、全国の小中学校などの全児童・生徒約960万人を対象に配布する予定です。
 このミニレターは、身近な人に相談できない子どもたちの悩みごとを的確に把握し、問題の解決に当たるためのものです。子どもたちがミニレターに悩みごとを書いてポストに投函すると、人権擁護委員や法務局の職員が目を通し、その全てに返事をします。
 これまでもミニレターをきっかけに、いじめや虐待などから救われたという例がいくつもあります。
 報道機関の皆様方には、一人でも多くの子どもたちを救うことができるよう、ミニレターの周知広報への御協力をお願いします。

衆議院本会議における議員の発言に関する質疑について

【記者】
 立憲民主党の階猛議員が、19日の衆議院本会議で侮辱罪を厳罰化する刑法改正案の反対討論の際、「『細田議長が女性をもてあそんでいる。』と言い放ったら処罰されるのか。」と述べたことに対し、自民党からは、「品位を欠くのではないか。」との批判が上がっています。立憲民主党は「飽くまで法案の問題点を指摘するための例示だ。」と反論していますが、階議員の発言は、国会での発言として適当であったかどうか、大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 国会における議員の発言の当否などについては、法務大臣としてお答えする立場にはありません。

難民不認定処分の取消訴訟(札幌高裁判決)に関する質疑について

【記者】
 トルコ出身のクルド人男性が難民不認定処分の取消しを求めた訴訟の控訴審で、札幌高裁が20日の判決で札幌入管の不認定処分を取り消しました。この判決に関する大臣の受け止めと、上告するかどうかなど今後の対応についてお聞かせください。
 また、弁護団によると、クルド人難民は日本では一人も難民認定されていないそうですが、事実関係を教えていただけたらと思います。

【大臣】
 お尋ねの判決があったことは承知しています。
 裁判所の判断に対する所感を述べることは差し控えますが、上告も含め、今後の対応については、判決の内容を十分に精査し、適切に対応してまいります。
 入管庁の統計は国籍・地域ごとに集計しており、特定の人種ごとの統計はとっていません。
 難民の認定は、特定の国籍を有し、又は特定の民族に属することのみに基づいて判断しているものではありません。飽くまでも申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者かどうかを個別に判断するものです。
 難民認定者数は、このようにして個別に判断された結果の積み重ねです。
 なお、難民と認定できない場合であっても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可しており、トルコ国籍を有する難民認定申請者については、平成29年から令和3年までの5年間では、45人について、人道上の配慮が必要と認められるとして在留を許可しています。

【記者】
 今の関連で誤魔化さないでいただきたいのですが、クルド人難民認定を、日本政府は一度もこれまでしたことがありません。これは常識ですのではっきり答えていただきたいと思います。これまでの訴訟で、判決でクルド人の難民認定該当性が認められ、不認定処分が取り消されたという事例がありました。しかしその時も、法務大臣が再び不認定にしてきたという非情な過去がありました。これまで他の裁判でも、難民認定性を認めたにもかかわらず認めなかったという事案が、ネパール2件、スリランカ・タミル1件、アフガン1件、クルド1件、トータル5例あります。これは訴訟では勝っても、その後も難民認定せず、ただし人道配慮に基づく在特許可を与え、訴訟するなというやり方を繰り返してきました。今回再びこれが出たわけですが、これまでの大臣の判断のように、再び高裁判決が出てもクルド人の難民としてこれを認めないつもりでしょうか。2019年1月、入管が通知を出しています。スリランカのタミル人の判決でも法務大臣に難民認定を義務付ける判決が出ています。こういったこれまでを踏まえ、更に踏み込んだ法務省の判断が注目されますが、いかがでしょうか。

【大臣】
 個別の事案についてお答えすることは差し控えます。
 改めて申しますが、入管庁の統計というのは国籍や地域ごとに集計しており、特定の人種ごとの統計はとっていません。
 難民の認定は、飽くまでも申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定するかどうかを個別に判断しています。

相続登記の申請義務化に関する質疑について

【記者】
 相続登記の関係で教えていただきたいのですが、所有者不明土地問題の解消に向けた施策だと思いますが、今回ホームページの開設に当たって、法改正で土地の登記を義務化する意義、重要性について、改めて教えていただけますか。

【大臣】
 相続登記の重要性、それから義務化を伴う新たな制度の意義ですが、所有者不明土地の主な発生原因として、相続が発生しているのに確実に登記に反映されていないという、相続登記の未了が問題となっています。
 相続登記が着実に実施されることで、土地の基本的な情報を公示する不動産登記の機能を高めることになると期待します。さらに、相続登記の義務化によって、所有者不明土地の発生の防止に向けて大きく踏み出すことができると期待しています。

入管行政から独立した第三者機関の設置に関する質疑について

【記者】
 来月8日に、名古屋入管で死亡したウィシュマさんの国賠訴訟の第1回期日があります。一度帰国した妹のワヨミさんも今月末に再来日する予定です。
 今国会においても、ウィシュマさんの監視カメラのビデオ開示については、この裁判の証拠保全の手続を受けて、衆参の法務委員会の国会議員が6時間半余りを視聴し、その内容と法務省・入管庁の最終報告書の間に矛盾点が多いため、入管行政から独立した第三者委員会を設置して報告書の検証を求める発言が、衆参の国会質疑でもありました。これ以外にも、2007年以降だけでも入管収容施設で17名が死亡していますが、真相究明はほとんど行われていない実態です。
 真相究明については、独立した国内人権機関があればそこが主体になって行うのでしょうが、日本政府は国連人権条約から様々な勧告を受けていますが、いまだに国内人権機関は設置されていません。それは法務省人権擁護局のホームページにも記載されています。
 入管収容問題のケースの人権侵害事件においても、全てをこれから始まる裁判に丸投げするのではなく、独立した検証委員会を設置するよう国会に要請する対応も考えられると思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。

【大臣】
 収容に関する国連の恣意的拘禁作業部会からの意見について、自由権規約9条1は、「恣意的」な逮捕又は抑留を禁ずるものであり、法律に定める適正な手続による逮捕又は抑留を禁じるものではありません。我が国においては、入管法が定める適正な手続に基づき、適切に収容が行われており、恣意的拘禁には当たりません。
 恣意的拘禁作業部会の意見は、そもそも、我が国の入管行政に関する明らかな事実誤認に基づくものでもあったため、昨年3月、誤解と不当な評価を正すため、作業部会に対し、詳細な事実関係とそれに基づく我が国の立場を伝達済みです。
 入管収容に関する第三者機関が必要ではないかという御質問でしたが、現行法下でも、入国者収容所等視察委員会が存在しています。
 同視察委員会は、学識経験者、法曹関係者及び医療関係者等により構成され、その運営は同視察委員会によって決定されています。独立した立場で委員が被収容者から直接意見を聞くことも可能であり、各収容施設に設置された提案箱を通じて、同視察委員が直接被収容者の意見等を把握できるなど、国とは一線を画した第三者機関であり、専門性・第三者性は十分に担保されているものと認識しています。
 そのため、これとは別に新たな機関を設ける必要性があるとは考えていません。
(以上)