検索

検索

×閉じる

法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年6月10日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から2件報告があります。
 1件目は、奈良拘置支所及び奈良少年鑑別所の開庁式典についてです。
 明日11日(土)、奈良拘置支所及び奈良少年鑑別所の開庁式典が開催され、法務省からは加田大臣政務官が出席します。
 奈良拘置支所及び奈良少年鑑別所は、公共施設等運営権制度を利用した旧奈良監獄保存・活用事業の一環として、受託企業である旧奈良監獄保存活用株式会社によって整備されたものです。
 拘置支所と少年鑑別所を合築した施設は、全国初の試みであり、物的・人的な資源・機能を集約し、合理的・効率的な施設運営が期待されます。
 これら施設での収容業務の開始は、本年7月からを予定しています。
 また、本年11月には、旧奈良監獄保存活用株式会社により、国の重要文化財である旧奈良監獄をホテルとして活用するための改修工事が始まる予定です。
 引き続き、奈良県や奈良市を始めとした地域の皆様の御理解・御協力をいただきながら、この事業が円滑に進むことを期待しています。
 2件目は、特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会の実施についてです。
 6月8日、特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会を行い、菅野志桜里氏からお話を伺いました。
 菅野氏は、特定技能制度創設に係る入管法改正時に、国会議員として、外国人の受入れ政策について様々な御意見を示されており、現在は、我が国の人道外交の実践や国際相互理解の促進を目的とした団体の代表として、積極的に活動されています。
 勉強会では、菅野氏のこれまでの御経験等を踏まえ、入管法の問題、技能実習制度・特定技能制度の問題などについて、貴重なお話を伺い、大変有意義な意見交換ができたと考えています。
 次回は、養老孟司氏から御意見を伺う予定です。

侮辱罪の法定刑引上げに関する質疑について

【記者】
 侮辱罪の法定刑を引き上げる刑法改正案について、本日の参議院法務委員会で採決の見通しと聞いていますが、表現の自由を制約し、正当な批判などの言論が萎縮するという懸念がまだ残っています。こうした懸念をどう受け止め、法の適正な運用についてどのように周知・説明していくのかお聞かせください。

【大臣】
 表現の自由は、憲法で保障された極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。
 今回の法改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、構成要件を変更するものではありません。処罰の対象となる行為の範囲、すなわち、侮辱罪が成立する行為の範囲は全く変わりません。
 また、拘留・科料を存置することとしていますので、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨でもありません。
 さらに、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第35条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられます。
 これまで国会審議でも申し上げてきましたとおり、今回の法改正は、表現の自由を不当に制約するものでも、正当な批判などの言論を萎縮させるものでもないと考えていますが、この点を懸念する御指摘があることは真摯に受け止めたいと思っています。そこで、その趣旨・内容を広く国民の皆様に御理解いただけるよう、丁寧な説明に努めていきたいと考えています。
 私からは、刑事局に対し、例えば、分かりやすいQ&Aをホームページに公開するなど、広く周知・広報に取り組むよう指示したところです。
 併せて、捜査機関に対し、今申し上げた改正の趣旨や現行犯逮捕の考え方について、周知に努めていきます。

特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会に関する質疑について

【記者】
 特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会についてですが、これまで幅広い方々から御意見を聞かれていると思いますが、あとどれぐらい開催して結論を出したいといった御予定はありますか。

【大臣】
 様々な御意見があるということはよく承知していますので、この際、広く御意見をお聞きし、虚心坦懐に御指摘を伺っていこうということで、勉強会をスタートしました。
 有識者を始め、様々な分野の方からお話を聞くとともに、事務方において、各種団体あるいは技能実習生から様々な声を聞くなど、様々な作業を進めているところです。
 今後の予定ですが、いつまでに結論を出すということをあらかじめ決めているわけではありません。この勉強会を設置した目的は、制度見直しの時期が来ていたことが一つのきっかけですが、この際、しっかりと問題点を検証し、それに対して改めるべき点があるならば、それを誠実に改めていこうということで、本格的な検討につなげていくべく勉強会を行っています。
 現状、着実に議論が深まっており、様々な論点についても、次第に浮かび上がってきているという印象を持っているところです。ただ、具体的にいつまでにどのような結論をということは、今の段階では明確なことは申し上げられません。

難民認定制度に関する質疑について

【記者】
 大臣は、以前の記者会見で「我が国は、締結している国際人権諸条約が定める義務を誠実に履行しており、我が国の入管制度が、それらに違反するものではない。」とお答えになりました。しかし、収容期間に上限がなく、司法審査の関与しない身体拘束が恣意的拘禁であることは、自由権規約委員会や拷問等禁止条約委員会などから、20年以上にわたり国連から指摘されています。
 その他にも、人権侵害をチェックする機能を持った政府から独立した国内人権機関も存在しませんし、それから難民認定制度については、一次審査では99パーセント以上が不認定である上、異議段階においても0.1パーセントしか難民認定しないような難民参与員制度が今完全に機能不全状態に陥っていると思います。
 このことについては、国連人権理事会からも日本政府に対して、いずれの分野に対しても是正するようにという勧告が出ていますが、このような状況が続いている中で、日本の入管難民制度は国際人権法に違反していないとか、独立した第三者の検証委員会や専門の難民認定機関が必要ないと、大臣はなぜ平然とおっしゃることができるのか。
 今日のニュースでも、日本政府が国連安全保障理事会の理事国に当選したというニュースもありましたが、日本は国連の人権理事会の理事国でもあります。国内の法制度の不備の問題と、国連を始めとする人権諸条約に対して、大臣は検証するというお考えがあるのか、お聞かせください。

【大臣】
 日本人と外国人が互いに尊重し合い、安心・安全な共生社会を実現するためには、外国人の人権に配慮しつつ、ルールに違反する者には厳正に対処していくことが原則です。
 我が国の入管制度は、入管法に基づき適切に運用されており、我が国が締結する人権諸条約に違反するものではないと考えています。
 難民の認定は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者かを個別に判断するものです。
 難民認定者数は、このようにして個別に判断された結果の積み重ねです。
 難民認定をめぐっては、各国、前提となる事情が異なっており、難民認定者数により、単純に、我が国と他国とを比較することは相当ではないと考えます。
 また、難民と認められない方であっても、今回のウクライナ避難民のように、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる方については、我が国への在留を認めるなどして、適切に対応してきています。
 難民認定手続については、その他の出入国在留管理行政上の様々な手続と密接に関連しており、難民の認定に関する業務を出入国在留管理庁において行うことには合理性があるものと考えています。
 入管庁においては、制度と運用の両面から難民認定手続の適正性を確保しています。
 具体的には、制度面において、不認定処分に対する審査請求では、外部有識者である参与員が3人1組で審理を行い、その意見を必ず聴いた上で、判断をしています。
 さらに、難民には当たらないとの判断に不服があれば、裁判所に訴えを提起し、司法判断を受けることも可能です。
 運用面においては、難民該当性に関する規範的要素の明確化、難民調査官の能力向上、出身国情報の充実を3つの柱とし、UNHCR等の協力も得ながら、運用の一層の適正化に取り組んでいます。
 その上で、出入国在留管理制度全体を適正に機能させ、真に庇護を必要とする方々を適切に保護するとともに、送還忌避・長期収容問題という喫緊の課題の一体的解決に必要な法整備に向けて、着実に検討を進めているところです。

【記者】
 国連から出ている勧告、恣意的拘禁・入管長期収容の問題にしても、独立した国内人権機関の問題にしても、出入国管理行政から独立した難民認定機関の問題にしても、いずれも国連から是正勧告が日本政府に対して求められていますが、それについては、大臣は今の国内法のままで良いとお考えなのか、検証する必要があるとお考えなのか、確認をお願いします。

【大臣】
 まず、我が国の出入国在留管理行政は、入管法に基づき適切に運用されています。そもそも我が国が締結する人権諸条約に違反するとは考えていません。
 様々な指摘がある中で、例えば、恣意的拘禁作業部会から、恣意的拘禁ではないかとの指摘があります。
 国連の自由権規約9条1は、恣意的な逮捕又は抑留を禁ずるものであり、法律に定める適正な手続による逮捕又は抑留を禁じているものではありません。
 また、作業部会の意見はそもそも我が国の入管行政に関する明らかな事実誤認に基づくものですから、昨年3月、誤解と不当な評価を正すため、作業部会に対して、詳細な事実関係とそれに基づく我が国の立場を既に伝達済みです。
 もとより、法務省としては、国際社会との対話は重要であると考えており、決して様々な意見をないがしろにするものではありません。しかしながら、我が国の行政は、法にのっとり、かつ、国際社会の理解を得られるようにきちんと説明をしながら進めていくべきものだと考えます。
(以上)