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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年6月17日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から報告があります。
 「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」について申し上げます。
 今週、6月14日(火)と16日(木)に勉強会を行い、東京大学名誉教授の養老孟司先生、政策研究大学院大学特別教授の西村清彦先生から、それぞれお話を伺いました。
 養老先生からは、巨大地震後の復興を例として、社会全体の在り方を考える視点、西村先生からは、外国人受入れに関する視点・意見、制度改定に向けた方法論などについてお話を伺いました。
 いずれも貴重なお話であり、大変有意義な意見交換ができたと考えています。
 次回は、多摩大学学長の寺島実郎先生から御意見を伺う予定です。 

医療観察法対象事件の被害者遺族への今後の対応等に関する質疑について

【記者】
 精神障害を理由に加害者の刑事責任を問えない医療観察法の対象事件についてお尋ねします。
 3年前に渋谷区の児童養護施設で起きた殺人事件の御遺族が「医療観察法と被害者の会」を立ち上げ、今月15日にシンポジウムを開催するなど、遺族らが情報提供の拡充を求める活動を本格化しています。
 最愛の人を突然失った御遺族には、事件の真実を知りたいという強い思いが生じます。しかし、現行制度上は、遺族の審判への参加、質問、心情陳述の機会などは一切与えられていません。また、対象者の情報の一部を通知する制度が2018年7月から始まっていますが、対象は氏名、入院の有無、その時期にとどまり、極めて限定的です。
 対象者のプライバシー権とも深く関わる問題とは思いますが、やり場のない無念さを抱える被害者遺族が生まれてしまう制度の現状と、今後の対応について、大臣の所見をお聞かせください。

【大臣】
 お尋ねのシンポジウムが開催されたことは承知しています。殺人などの重大な事件の被害者や御遺族の方々の切実な思いは、重く受け止めなければならないと考えています。
 その上で申し上げますと、いわゆる医療観察法は、心神喪失又は心神耗弱の状態で殺人、放火等の一定の重大な他害行為を行った者に対し、継続的に適切な医療を行い、また、医療を確保するために必要な観察と指導を行うことによって、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もって本人の社会復帰を促進することを目的とするものであり、刑罰に代わる制裁を科すことを目的とするものではありません。
 医療観察法に基づく審判について、被害者等が手続に参加したり、心情や意見を陳述するような仕組みを設けることについては、そのような制度趣旨との関係で、慎重な検討を要するものと考えられます。
 なお、御指摘の保護観察所による被害者等への情報提供の在り方については、第4次犯罪被害者等基本計画においても、一層円滑かつ適正な運用に努めるとともに、加害者の社会復帰の促進や個人情報の保護等を総合的に考慮しつつ検討を行うこととされており、様々な御意見にも耳を傾けながら、必要な検討を進めていきたいと考えています。

検事総長の交代人事に関する質疑について

【記者】
 本日の閣議で、検事総長に、甲斐行夫東京高検検事長が新たに就任するという人事が決定されました。大臣の御所感があれば教えていただけますでしょうか。

【大臣】
 林眞琴検事総長は、昭和58年の検事任官以来、39年余り法務検察で尽力してきました。林検事総長は、令和2年7月に検事総長に就任し、検察の様々な課題に対し、リーダーシップを発揮して、大きな成果を上げてきたものと承知しています。
 後任の甲斐行夫東京高等検察庁検事長は、検事として活躍することはもとより、法務行政にも精通しており、今後の検察運営についても、的確に手腕を発揮することを期待しています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 昨日、ウィシュマさんに関する入管庁の報告書に関して、補足説明が公表されました。国会の法務委員会には提出されているようですが、「うなずくなどした。」というところに関して、野党側としては「それはおかしいんじゃないか。」という指摘もあります。大臣としては、今回の入管の補足説明について、どう受け止めていらっしゃるか、また、この報告書が正しいかどうかというのは結構議論にまだ今後もなりそうですが、「こういう措置を執る。」ということをお考えでしたらお聞かせください。

【大臣】
 各法務委員会で御覧いただいたビデオ映像に関して、一部の委員から、調査報告書の別添部分の記載に虚偽があるのではないかという御指摘がありました。
 今回、入管庁がホームページに掲載した補足説明書面は、このような指摘に対し、調査報告書の内容を補完して説明したものであり、調査報告書の記載の趣旨を国民の皆様にも正しく理解していただくため、法務委員会理事会に報告するのみならず、ホームページにも掲載したものです。
 また、新たに掲載した調査報告書の別添・別紙は、ウィシュマさんの動静に関する詳細な情報等が記載されているため、従前は、不特定人が容易にアクセスできるホームページへの掲載は差し控えていたものです。
 しかし、今回、国会からの指摘の対象となった箇所を含むものであること、紙ベースでは報道機関等にも配布したものであることを考慮し、補足説明書面と併せて、ホームページにも掲載したものです。

【記者】
 名古屋入管で死亡したウィシュマさんへの殺人罪などで告訴・告発していた事件の処分結果が、本日出るとの報道もあります。まだ結果自体は正式に出る前ですが、捜査は尽くされていると考えるのか、受け止めと、こうした事案への再発防止策の進捗状況についても教えてください。

【大臣】
 お尋ねは、個別事件における捜査の具体的内容に関わる事柄ですので、お答えは差し控えさせていただきます。

難民認定制度の在り方に関する質疑について

【記者】
 15日で通常国会が閉会しました。今国会には、政府は入管法改正案を提出しませんでしたが、ウクライナ避難民の受入れや、ウィシュマさん死亡事件の国賠訴訟が始まったこともあり、関心は依然高いと思います。
 ウクライナ避難民の受入れは、難民認定制度による難民受入れとは別問題だというのが日本政府の立場ですが、市民社会では難民を受け入れるだけの素地は十分にあると見受けます。しかし、中長期的には、難民や避難民受入れのための司令塔というのが、政府にはありません。そもそも、難民認定制度において99パーセント以上が不認定になるような状況で、記者会見で大臣が「入管庁においては、制度と運用の両面から難民認定手続の適正性を確保している。」とおっしゃる根拠が全く理解できません。
 ミャンマーの難民申請者ですら多くが仮放免のままで、他の出身国の難民申請者の中には、他の国であれば難民認定されるようなケースであっても、日本で難民申請してしまったがために、20年も30年も非正規滞在のままで、入管長期収容の末に、現在も仮放免で苦しんでいる人がたくさんいらっしゃいます。3、4回にわたって難民申請している方の多くは、好き好んで難民申請しているわけではなく、そもそも難民認定しないし、人道的配慮による在留特別許可が年々厳しくなっていく状況があります。その中で何回も難民申請せざるを得ない状況があります。
 入管法改正で、「補完的保護」の新設という前に、現状の難民認定制度の在り方そのものや、国際人権基準に沿った人道的配慮による在留特別許可の在り方を検証し、運用を改善するようなことは考えていらっしゃるのでしょうか。
 入管法改正に向けて、大臣の考えを改めてお聞かせください。

【大臣】
 御質問の中で言及のありました我が国の難民認定制度に対する見解は、飽くまでも御質問者の見解として受け取らせていただきます。
 その上で申し上げますが、法務省では、難民の認定は難民条約等で定める「難民」の定義に従い、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、適切に認定してきています。
 また、難民と認められない方であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる方に対しては、我が国への在留を認めるなどして、適切に対応しています。
 法務省では、真に庇護を必要とする者に対して適切に保護ができる制度の在り方について、不断に見直し、改めるべきところがあれば改め、必要な制度があればその創設を目指すという誠実な姿勢で取り組んでまいります。
 出入国在留管理制度全体を適正に機能させ、真に庇護を必要とする方々を適切に保護するとともに、送還忌避・長期収容問題という喫緊の課題の一体的解決に必要な法整備を着実に進めるべく、検討・努力をしています。

【記者】
 そもそも99パーセント以上が、年によっては多少若干上がることもありますが、難民不認定になるような状況で、そもそも制度として機能していると大臣はお考えでしょうか。99パーセントが不認定になる行政手続は他にありますでしょうか。

【大臣】
 難民認定制度は、繰り返し申し上げていますとおり、個々の申請ごとに、具体的な状況から適正に判断をして行っているものです。数字はその結果だと認識しています。
(以上)