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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年7月5日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から4件報告があります。
 1件目は、タイ・ベトナムへの出張についてです。
 6月26日(日)から7月1日(金)にかけて、タイ・ベトナムの両国を訪問してまいりました。
 今回の訪問の目的は、来年、我が国で開催する予定の日ASEAN特別法務大臣会合への参加と協力の呼びかけ、技能実習生等を巡る問題についての意見交換や送出機関等の視察でした。
 まず、日ASEAN特別法務大臣会合については、タイでは、ソムサック法務大臣、ベトナムでは、フック国家主席、チン首相、ラム公安大臣、ズン労働・傷病兵・社会問題担当大臣、ニゴック司法副大臣とそれぞれ会談しました。
 本会合の開催に向けて力強い支援の言葉をいただくとともに、開催に向けて、あらゆるレベルで連携を取りながら準備を進めていくことを確認しました。
 次に、技能実習制度については、タイでは、送出機関の視察や技能実習生候補者との座談会を行いました。
 ベトナムでは、ズン労働・傷病兵・社会問題大臣との面会において、技能実習生の失踪問題や一部の送出機関による不適切な取扱いへの対応について率直に議論しました。
 また、他の国家主席等の要職の方々にも、これらの問題の解決に向けた協力を依頼しました。
 さらに、ベトナム海外労働者派遣協会(VAMAS)の会長と充実した意見交換を行ったほか、実際に送出機関を視察し、実情を直接知ることができました。
 このように、当初の目的について大きな成果を得たと感じていますが、今回の訪問では、その他にも、法務省と関係の深い機関を訪れ、連携を強化することができました。
 例えば、タイでは、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)やタイ法務研究所(TIJ)の所長らと会談し、京都コングレスのフォローアップについて引き続き協力していくことや、ASEAN地域における「法の支配」などの普遍的価値観の共有の促進について協力関係を深めていくことなどを確認しました。
 また、ベトナムでは、25年以上続く法制度整備支援について日ベトナム双方の関係者から生の声を聞き、厚く深い連携を実感しました。
 今後についてですが、まず、1つ目の目的である日ASEAN特別法務大臣会合については、津島副大臣、加田大臣政務官によるASEAN諸国訪問を通じて、全省一丸となった戦略的な司法外交を展開し、会合を成功に導くことができるよう取り組んでまいります。
 ASEAN地域における「ルールに基づく国際秩序」を一層強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現、ひいては我が国の安全保障に貢献してまいります。
 また、我が国の技能実習制度等の在り方についても、技能実習法の附則等において求められている検討の時期に差し掛かっているところ、現行制度の良いところ、悪いところを素直に認め、改めるべきは改めるという誠実さを旨として、出張の成果を存分に生かしながら、鋭意制度の見直しに向けた検討を進めていく所存です。
 短期間ではありましたが、タイ・ベトナムの両国で要人との意見交換や送出機関の現場視察など数多くの用務を行うことができ、一定の成果が得られたと感じています。
 2件目は、「刑法等の一部を改正する法律」の一部施行についてです。
 7月7日(明後日)、「刑法等の一部を改正する法律」のうち、侮辱罪の法定刑の引上げに係る部分が施行されます。
 侮辱罪の法定刑の引上げは、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に対する厳正な対処を可能とするものです。
 改正法の適正な運用により、時に人を死に追いやることさえある悪質な侮辱行為の根絶を図っていくことが重要と考えています。
 今回の法定刑の引上げは、もとより表現の自由を不当に制約するものではありませんが、表現の自由への影響を懸念する声があったことを踏まえ、今回の法定刑の引上げの趣旨や内容を広く国民の皆様に正確に御理解いただけるよう、当省のホームページにQ&Aを掲載したほか、全国の検察庁に対し、改正の趣旨や内容等を踏まえた適切な運用を求める通達を発出しました。
 今後とも、国民の皆様への丁寧な説明や関係機関への周知に努めてまいりたいと考えています。
 3件目は、“社会を明るくする運動”の強調月間及び「再犯防止啓発月間」についてです。
 今月は、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くことを目的とする第72回“社会を明るくする運動”の強調月間であり、また「再犯防止啓発月間」でもあります。
 月間の初日である7月1日には、法務省内において、“社会を明るくする運動”のフラッグアーティストである谷村新司さんや岐阜ダルク施設長の遠山香さん、吉本興業所属のお笑い芸人の方々に御参加いただき、キックオフイベントを開催しました。この模様は、近日中、YouTube法務省チャンネルで公開する予定です。
 次に、本年の「再犯防止啓発月間」のポスターは、昨年度実施した「再犯防止漫画大賞」で法務大臣賞を受賞した作品に基づくものです。この作品を15秒のショートムービーにして、YouTube法務省チャンネルなどでも公開します。
 さらに、この受賞作品も活用し、地方公共団体と協同して、再犯防止に係る様々な発信を行う予定です。
 また、本日の閣議では、私から閣僚の皆様に、本運動や再犯防止への御支援と御協力をお願いしました。
 閣僚の皆様には、本日から4日間、犯罪や非行のない社会づくりに取り組む決意のしるしである「幸福(しあわせ)の黄色い羽根」を着用していただいています。
 法務省では、引き続き“社会を明るくする運動”と再犯防止に向けた取組を積極的に進めてまいりますので、報道機関の皆様にも、周知・広報への御協力をお願いします。
 4件目は、「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」の実施についてです。
 6月23日に第11回の「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」を行い、多摩大学学長の寺島実郎先生からお話を伺いました。
 寺島先生からは、国際的な政治・経済・社会情勢等から見た出入国在留管理行政の在り方などについて貴重なお話を伺い、大変有意義な意見交換ができたと考えています。
 次回は、第12回の勉強会として、自民党元総裁の谷垣禎一氏から御意見を伺う予定です。

タイ・ベトナムへの出張に関する質疑について

【記者】
 タイ・ベトナムへの出張についてお尋ねします。
 送出機関などを実際に視察されましたが、両国と交わしているMOCの相手国の履行状況についてどのような認識を持たれたか、また、具体的にどのような意見交換をされたかお聞かせください。
 また、ハノイでの記者会見で「制度見直しに関する論点を7月中に示す。」との御発言がありましたが、論点発表後、どのようなスケジュール感で見直しの議論を進めていかれるかお聞かせください。

【大臣】
 前段の御質問ですが、タイ及びベトナムにおいて、技能実習生の送出機関を視察し、直接教育の状況を見学したり、同機関関係者の生の声を聞くことができたことは、大変有意義でした。
 御指摘のとおり、タイとの間には平成31年(2019年)に、また、ベトナムとの間には平成29年(2017年)に、それぞれ技能実習に関するMOCを締結しており、これまでもMOCに基づいて不適切な送出機関への対応に努めてきたところです。
 その上で、特に技能実習生の失踪が多発しているベトナムについては、労働・傷病兵・社会問題を担当するズン大臣と会談し、失踪の背景にあると考えられる問題、つまり、不当に高額な手数料を徴収する送出機関等の問題について率直な意見交換をしました。
 ズン大臣とは、MOCに基づき、これらの不適正な行為を行う送出機関に対して、厳正な対処を行うことについて認識を共有することができました。
 なお、ズン大臣からは、ベトナムにおいて本年1月に施行された新法により、技能実習生の金銭的負担が従来よりも軽減される見込みとの説明があり、また、JICAが主導する技能実習生のためのプラットフォーム作りにも特段の賛意を示されました。双方とも、今後の技能実習制度の適正化に大変役立つものと考えています。
 今回の訪問により、タイ・ベトナム両国とも、MOCに基づき、技能実習制度を適正に運用していくことの重要性をしっかりと認識していることを実感したところです。
 後段の御質問ですが、法務大臣勉強会では、改めるべきは改めるという考えの下、しっかりと問題点を把握し、本格的な検討につなげていけるように、虚心坦懐に幅広く御意見を伺っています。
 その結果、着実に議論が深まり、論点が次第に浮かび上がっていると実感しており、先日、ベトナムで発言したとおり、7月中に論点を公表したいと考えています。
 スケジュールについて、まだ勉強会は継続中ですので、具体的な時期あるいは論点整理の内容について、確定的にここで申し上げる段階にはありません。
 しかし、法務大臣勉強会は非常に大事な意味を持っていると思いますので、しっかりと検討した上で、論点をきちんとお示ししたいと考えています。

日米地位協定に関する質疑について

【記者】
 参議院選挙が目前ですが、古川大臣の国会議員としての政治信条を確認したくなり、オフィシャルサイトを拝見しました。
 現在のウクライナ情勢や米中対立が強調される世界情勢の中で、日本政府の核兵器禁止条約の締結や敵基地攻撃能力保有の愚かさを訴えており、国連憲章に基づく平和外交や東アジアにおける日中関係においても、日中共同宣言の平和五原則の精神の重要性を訴えており、タカ派の発言が目立つ自民党の国会議員の中で、リベラルな政治理念をお持ちなのだなと思いました。
 そのような御持論の中で、日米地位協定の抜本的な見直しの必要性についても強調されており、「日米安保条約はすでに歴史的な役割を終えている。日本は卑屈になり過ぎている。」とまで書かれています。
 現職の法務大臣としても、入管法の適用を受けない駐日米軍の軍人軍属の法的地位の在り方や、刑事事件における裁判権の管轄権などについて、取り組むべき課題があると思います。沖縄県に過度に集中する米軍基地問題や辺野古新基地建設問題、日米地位協定の見直しについても、今回の参議院選挙で、もっと全国的に議論されるべき政治課題だと思いますが、古川大臣のお考えをお願いします。

【大臣】
 お尋ねの日米地位協定については、法務省の所管外の事柄ですから、法務大臣としてお答えは差し控えさせていただきます。
(以上)