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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年3月3日(金)

 今朝の閣議におきまして、法務省案件として、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」及び「第13次地方分権一括法案」が閣議決定されました。
 ただ今申し上げました「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」は、保釈中の被告人や刑が確定した者等の逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するため、所要の罰則の整備のほか、位置測定端末(いわゆるGPS端末)により保釈された者の位置情報を取得する制度の創設等を行うとともに、刑事手続におきまして被害者等の情報を保護するため、被害者の氏名等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達する措置の創設等を行うものです。
 この法案は、安全・安心な社会を実現し、被害者等をより一層保護する上で、大変重要な意義を有するものと考えております。
 国会におきまして十分に御審議いただき、速やかに成立させていただきたいと考えております。

刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関する質疑について

【記者】
 冒頭御発言がありました、刑訴法の改正案についてお尋ねします。保釈中の被告人に対して、GPSが装着されるという制度が初めてになるかと思うのですが、その必要性、意義についてお聞かせください。
 また、プライバシー侵害など、様々な指摘がこれまでもあったかと思うのですが、海外逃亡防止の必要がある場合というケースに限定された理由を改めて教えてください。

【大臣】
 まず、現行法上は、保釈中の被告人が逃亡したときは、保釈を取り消して被告人を収容することが可能であるわけですが、被告人が国外に逃亡してしまった場合には、被告人を収容して公判期日への出頭等を確保することが極めて困難となると。つまり、国外に逃亡した場合に出頭等の確保が困難になるということを防止するために、人工衛星信号等を用いた測位技術を活用して、空港への接近等の国外逃亡の兆候を検知し、国外逃亡を防止するために必要な措置を速やかに講じると、そういうことが有効であるという観点から、今回法整備を行おうとするものでありますので、飽くまでも国外に逃亡した場合には、出頭を確保することが困難となるというところに対応するものです。

【記者】
 刑訴法の改正に関して教えてください。法制審などでは、GPSの件で、対象を拡大して、むしろ保釈につなげるような動きを期待する声もありました。それについて、大臣の御見解を教えてください。

【大臣】
 繰り返しになってしまいますけれども、刑事手続において、いわゆるGPS端末を用いて被告人の位置等を把握する制度というのは、我が国初の制度となりますので、その運用には混乱を生じさせないようにするということが大切であると思っておりまして、本制度を活用する必要性が特に高く、運用に伴う困難も少ないということが考えられる保釈中の被告人による海外逃亡を防止する必要がある場合に、位置測定端末装着命令をすることができるというふうにしているわけであります。

再審制度に関する質疑について

【記者】
 先日、大阪高裁がいわゆる日野町事件の再審開始を認める決定をしたことを受けて、その後、日弁連や専門家からは、再審請求事件における全面的な証拠開示の制度化など、再審規定の改正を求める声が上がっています。これは、これまでも指摘されてきた点ではありますが、改めて、現状の再審規定の課題、改正についての大臣の考えを伺います。

【大臣】
 再審制度は、確定判決の存在を前提として、主として、事実認定の不当を是正し、有罪の言渡しを受けた者を救済するための非常救済手続でありますが、その在り方につきましては、様々な御意見があるということであります。
 現時点におきまして、現行法の規定に、直ちに手当てを必要とするという不備があるとは認識していませんが、いずれにしても、再審制度の在り方は、確定判決による法的安定性の要請と、個々の事件における是正の必要性との調和点をどこに求めるかに関わる、そういった性格のものでありますので、様々な角度から慎重に検討すべきものであると考えています。

入管法改正法案に関する質疑について

【記者】
 入管法改正法案に関連してお聞きします。法務部会等々で説明されている資料等をたまたま入手したんですけれども、法務省としては、送還できない、送還忌避をしている方たちが、令和3年12月末時点で3,224人いるという説明をされています。イコールこれらの人をできるだけ速やかに送還したいということが趣旨としてあるのだと思うんですが、この中には、一昨年、「東京クルド」という、クルド人の難民認定というのが、今、一人しかされていない状況で、これは個々、別々に判断しているというお話ですけれど、やはり外交上の問題等があるのではないかという声が出ております。こういったクルド難民、認定されていないクルド人の御家族、特にこどもたち、親に連れられてこちらに来てもう20年以上住み、日本語や日本の文化に親しんでいるような、このこどもたちも、オザンさんとかラマザンさんとか、映画にも「東京クルド」で出ましたが、こういったこどもたちも送還強制罪の対象になってしまうんです。数字で出すのは簡単ですけれど、一人一人の、特にこどもさんたちの状況も含めて、大臣はこういった今回の法案を通すことで、彼らが送還忌避の対象になるということを理解した上で、これを通そうということなのか。その点、取材をしていると、特にこどもたちの声をたくさん聞くので、大臣としてどうお考えかお聞かせください。

【大臣】
 まず、今回の法案、まだ検討中の法案を前提として私がここでお話しすることは避けるべきだと思っていますが、難民の認定につきましては、特定の国籍を有し、又は特定の民族に属することのみに基づいて、まず判断しているということはなく、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者かを個別に判断をするものとなっております。
 お子さんの件もありましたけれど、難民とは認定できない場合でありましても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可するなどしておりまして、法務省としては引き続き、真に庇護を必要とする方々の確実な保護に取り組んでいきたいというふうに考えているところです。

【記者】
 真に庇護する人を庇護するために人道上の配慮によって在留許可を出しているんだという言い方ですが、「東京クルド」を見ていただければ分かりますが、庇護されるべきこどもたちが、今、庇護されていません。在留許可が出ていないため、インフルエンザのワクチンの予防接種でさえ、家族で受けると5万ということで、みんなかかったまま苦しんでいる、そういう一人一人の状況に、私としては大臣にもっとしっかり目を向けていただきたいです。庇護する人が庇護できていない、多くの与えてもよい在留許可を与えられるべき人に与えられていない、この中で、なぜ3回目以降の強制送還罪が適用対象となるような法改正にいくのか。ここが非常に問題視されているので、そこを答えていただきたいのと、あと、国連からも再三、もう10年、20年にわたって言われています、収容上の上限期間の設定がない、ここも法務省が作っている資料を見ますと、アメリカもある、オーストラリアはありませんが、欧州はイギリス以外は全て上限があります。イギリスについては、上限設定はないものの、期限に関して判例法の規制があり、判断についてもしっかりとした行政裁判所が迅速にやるということになっている。こういったところですね、国連の指摘があるにもかかわらず、そこに関しても見直しする様子がない。これは本当に問題だと思うのに通そうとしている点を、再三にわたって質問させていただいているんですが、この点について、2点お答えいただけますか。

【大臣】
 まず、繰り返しになりますけれど、まだ固まっていない法案を前提として、お話しすることは避けたいと思いますので、固まってからの話だと思います。
 それから、一人一人にきちんと目を向けるというのは、そのとおりだと思いますので、先ほども申し上げているように、庇護すべき方々については、しっかりと保護するということは、もちろん当然やっていかなければならないと思っています。
(以上)