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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年8月1日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件として、2件の政令が閣議決定されました。
 続いて、私から2点、御報告があります。
 まず、ODRの社会実装に向けた実証事業についてです。
 この度、裁判外の紛争解決手続でありますADRの更なる利便性の向上を図るために、ADRにデジタル技術を活用したODRの社会実装に向けた実証事業を行います。
 本実証事業は、公益財団法人日弁連法務研究財団に委託しまして、一つのデジタルプラットフォーム上で法律相談からADRまでをワンストップで行うことができるサービスを提供する事業を行い、その効果、課題及び対応策の分析・検証を行うものです。
 この法律相談及びADRは、日本弁護士連合会ADRセンター運営の下で、弁護士が主にチャット機能を利用して行うもので、対象は養育費を含む金銭債権に関する紛争、利用料は無料、法律相談の受付開始は本年9月1日というふうにしております。
 ODRは、時間や場所の制約を受けないなどの点で、ADRの利便性を高めるものですが、我が国におきましては、ODRの導入が十分に進んでいるとはいえない現状にあります。
 ADR事業者等がちゅうちょすることなくODRを導入できる環境を整えるためには、多くの国民の皆様に、本実証事業のサービスを御利用いただいた上で、充実した分析・検証を行うことが極めて重要です。
 報道機関の皆様方におかれましても、このような趣旨を御理解いただきまして、本実証事業の周知・広報への御協力をお願いできたらと思います。
 次に、AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について、本日、ガイドラインを公表することとしましたので、御報告します。
 AIを始めとするデジタル技術は、その利活用により、業務の効率化等を図ることができるものであり、こうした技術を用いたリーガルテックについても、企業の法務機能の向上等を通じて、その国際競争力強化に資すると考えられます。
 こうした中、リーガルテックと、いわゆる非弁活動を禁止している弁護士法との関係を明確にしてほしいとの御指摘がありました。
 そこで、今般、リーガルテックの中でも比較的サービスが進展しております、契約書等関連業務支援サービスを取り上げ、これと弁護士法第72条との関係について、予測可能性をできる限り高めるためにガイドラインを公表したものです。
 このガイドラインが、リーガルテックの健全な発展につながるものと期待しているところです。

ODRの社会実装に向けた実証事業に関する質疑について

【記者】
 冒頭発言にありましたODRについてお伺いします。ODRの実証事業を進めるとのことですが、実証事業の意義、どういった人に利用してほしいかなど、ありましたらお伺いしたいのと、今後のODRの利用拡大のために法務省として具体的にどのように周知・広報に取り組んでいきたいと考えていますでしょうか。

【大臣】
 ODRは、ADRにデジタル技術を活用するということで、時間や場所の制約を受けずに、非対面で迅速に紛争を解決できる有用な手段であると考えておりまして、司法アクセスの向上に資する重要なインフラだろうと認識しています。
 法務省では、ODRの一層の推進を図るために、昨年3月に策定したアクション・プランに基づいて、ADR週間等を設定した上での広報、相談機関とADR事業者との連携強化など、ODRの社会実装に向けた環境整備のための取組を順次行ってきているところです。
 その取組の一環として、先ほど申し上げたODRの実証事業を行って、ODRを実装する上での課題、対応策等を検証・分析したいと考えています。
 こうした検証・分析は、今後のODR推進の在り方等の検討に当たって有意義であるだけではなくて、その結果の公表を通じて、今、御指摘がありましたように、ODR導入を検討する民間ADR事業者等への支援となるものと考えています。
 法務省としては、ADRが国民にとって、より利用しやすい紛争解決手段となるように、引き続き、デジタル技術の進展や国民のニーズを注視しながら、アクション・プランに従って必要な取組を積極的に進めていきたいというふうに考えています。

【記者】
 ADR・ODRについてですが、法務省さんが推進している中でもなかなか利用数、あるいはそもそもやはり周知がなかなか進まないという現状がかなり続いていますけれど、大臣なりにどういったところがボトルネックになっていると、何かお考えがあればお聞かせください。

【大臣】
 そもそも、ADRそのものをもっともっと推進していかなければならないという中で、対面することなくODRの形でできるということは、私は大きく前進させるきっかけになるのではないかというふうに考えています。いずれにしても、現状において、今ひとつ進んでいない、諸外国と比べても十分でないということを認識していますので、先ほど申し上げた実証試験を通じて、検証するだけではなくて広報もしっかりやっていきたいというふうに考えています。

 

いわゆる非弁活動に当たるサービスを提供するリーガルテックに関する質疑について

【記者】
 リーガルテックについて、法務省さんが把握されている限りにおいてという質問になりますが、現状、こうした非弁行為に抵触するようなサービスを提供しているリーガルテックは、今のところ把握されていないという理解でよろしいでしょうか。

【大臣】
 現状どうなっているかということですので、今、突然の御質問で、調べないとお答えできないと思いますので、そこは差し控えさせていただきます。

検察官による広島市議への不起訴示唆等に関する質疑について

【記者】
 河井元法務大臣の選挙違反事件に関連して、東京地検特捜部の検事が当時の広島市議に対する取調べで供述誘導の疑いが浮上している問題に関連し、今後の調査のことについてお伺いします。前回会見で、齋藤大臣は、「裁判が係属中の個別事案に関することなので、コメントは差し控える。」とおっしゃいましたが、検察の今後の調査について、裁判との兼ね合いがあるとはいえ、検察のどういう立場の方が、どのような人を対象に、どんな調査をするのか。そういった報告というのは、既に受けられていますでしょうか。

【大臣】
 結論を申し上げますと、そういう報告は私自身は受けておりません。

拷問等禁止条約の解釈に関する質疑について

【記者】
 名古屋入管のウィシュマさんの事件についてお伺いします。この件の最終報告書には、ウィシュマさんの仮放免を不許可とした理由について、「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国を説得する必要あり」などという記載があります。このような恣意的な収容の運用は、拷問等禁止条約で定義されている拷問に当たるかと思われますが、大臣の見解はいかがでしょうか。現在、裁判係争中ということですので、お答えになれない場合は、一般論として御回答ください。
 また、関連してもう一つ質問ですけれども、改定入管法には強制送還に関する事項もあります。こちらの拷問等禁止条約の第3条の1に、拷問が行われるおそれがあると信ずるに至る実質的な根拠がある他の国への追放・送還・引渡しを禁じています。つまり、仮に入管法に基づいて強制送還が執行されるとなった場合でも、こちらの拷問等禁止条約の条項に反していないかどうか、こちらを別途検討する必要があるということかと思われますが、いかがでしょうか。

【大臣】
 まず、私は何度も申し上げていますが、ウィシュマさんが亡くなられたということに関しては、改めてお悔やみを申し上げたいというふうに思っています。
 その上で、お尋ねは、いずれも条約の解釈に関する事柄だろうと思いますので、法務大臣は所管外ですので、お答えすることは困難でありますけれども、その上で申し上げますと、御指摘の報告書については、仮放免許可申請に対する対応について、1回目及び2回目ともに仮放免を許可しなかったことが不当なものであったとは評価できないというふうにされています。
 すなわち、1回目につきましては、仮放免後の住居や医療費の支弁等に疑義があるなど、仮放免を不許可とすべき相応の根拠があり、不許可処分が不当なものであったと評価することはできないとされています。それから、2回目につきましては、より早期に仮放免や入院措置を行うことが望ましかったが、仮放免の環境を整えるには時間が必要な中、ウィシュマさんが亡くなってしまったことからすると、仮放免に至らなかったことにも相応の理由があり、仮放免を許可しなかったことが不当であったとまでは評価できないと記載されているところであります。
 もっとも、容態観察を要するなどの体調不良者について、身体の状況の的確な把握を踏まえた柔軟な仮放免を可能とすることが明確に示されてこなかった点ですとか、真に医療的な対応が必要な状況を見落とさないための教育や意識の涵養が不足していた点については、調査報告書でも指摘されているところでありまして、入管庁では、これらを踏まえて、健康状態を踏まえた仮放免判断等を指示する新たな仮放免運用指針の策定や、職員の意識改革を行い、運用を改善してきているところであります。
 これ以上の詳細につきましては、御指摘もありましたけれども、国家賠償請求訴訟が係属中でありますので、司法への影響に鑑みて、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに考えています。

【記者】
 二つ目の条約については、検討をされたことはあるのでしょうか。

【大臣】
 先ほど申し上げたように、条約の解釈については法務省の所管ではありませんので、お答えできないということであります。

難民審査参与員制度に関する質疑について

【記者】
 難民審査参与員制度の問題で、最近、入管庁の質問主意書、前回の国会での回答や、それから前回の国会で出した資料から、柳瀬参与員以外にも、臨時班について、大量に審査する参与員がたくさんいたと。2021年の場合だと、柳瀬さんが1,300件、その他の11人の参与員が平均940件。これは多分、常設班にも兼務していた場合はもっと多くなるという話だと思うんですけれど、一方で、2021年の場合は、口頭意見陳述をした人、対面審査をした人は、これ1割しかいなかったんです。700人しか。7,000人のうち1割だけだったと。こういった状況に対して、ほとんどが書類審査で臨時班でやっていたという状況に対して、現役の参与員の方たちからも、こういった形で対面審査をこれだけ少なくして、書類(審査)ばかりやるというのは、やはり形骸化しているんじゃないかと。この参与員制度というものがですね。という声がかなり出てきているんですけども、これについて、どういうふうに対応されますか。

【大臣】
 まず、一般論になりますけれども、難民審査参与員は、あらかじめ定められた3人の参与員によって構成された常設班に所属しているところではありますけれども、他の常設班への応援ですとか、迅速な審理が可能かつ相当な事件を重点的に配分している臨時班に掛け持ちで入ることに御協力いただける場合には、他の参与員よりも当然、担当する処理件数が多くなることは通常あります。その反面、参与員としての職務以外の職務の状況ですとか、御本人の体調ですとか、御家族・御家庭などの状況ですとか、異なる専門分野の難民審査参与員によって班が構成されるよう配慮するですとか、そういった事情から処理件数が少なくなる方もおられるわけであります。そして、臨時班について、これも何度も御質問を受けているわけでありますが、我が国においては、就労等を目的とする濫用・誤用的な難民認定申請が急増して、真の難民の迅速な保護に支障が生じる事態となっていたわけであります。そこで、平成28年以降、行政不服審査法上の手続を円滑に進めるとともに、迅速かつ公正な手続を促進するために、臨時的措置として、難民認定制度に関する知識又は経験豊富な3人の参与員によって編成される臨時班に、口頭意見陳述を実施しないことが見込まれる事件等、迅速な審理が可能かつ相当な事件を重点的に配分するという取組も行ってきているわけであります。そして、この迅速な審理が可能かつ相当な事件ということにつきましては、審査請求人が口頭意見陳述を放棄している事案などの書面審査が可能なものが大半でありまして、これによって迅速な審理が可能になっているということであります。また、迅速な審理が可能かつ相当な事件につきましては、経済的理由から難民該当性を主張するなど、難民に該当しないことを書面で明白に判断できる事案が大半でありまして、難民認定に関する知識又は経験が豊富な3名の参与員が参集して協議をすれば、短時間で結論の一致を得ることができるものも多いわけであります。したがって、このような措置をとっているわけでありまして、これも、この間記者さんから言われましたけれど、直近5年間に、行政訴訟で難民不認定処分の適否が争われて、これに対する判断がなされたものが109件。そのうち5件のみ国が敗訴しているという裁判結果になっています。私は、5件だからといって軽視するつもりは全くありませんので、この5件についても、なぜ国の判断、我々の判断が裁判で変わったかという点については、しっかりと検証してきているわけでありまして、より一層適切な判断がなされるように努力していきたいということに尽きるわけであります。参与員の方の御発言の話がありましたけれども、そういう制度の仕組みの中で行われているということを是非御理解いただきたいと思っています。

【記者】
 今の質問に関してですが、臨時班にかかったもの、それから常設班にかかったものについて、大臣が最終的に難民認定されたケースというのはあるのでしょうか。

【大臣】
 難民認定そのものを大臣がすると。そもそも難民認定をするかしないか、大臣がすることになっていますけれど、今、急な御質問なので手元にデータがありませんけれども、3人の参与員が判断したことを、大臣が覆すということは、ここ何年かなかったのではないかと記憶しております。

日本人と外国人の共生社会のための方策に関する質疑について

【記者】
 先日、7月22日に令和臨調主催の集会に岸田首相も参加して、人口減少社会で素晴らしい現実に合った外国人との共生社会、暮らしやすい地域社会にする必要があるというふうな御発言をしました。「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の取組についても言及されました。この関係閣僚会議は、2018年から今まで16回開催されていますが、これの中で、関係省庁の具体的施策が並んでいますけれども、その法的基盤になるような、外国籍住民の人権基本法、難民認定、あるいは難民受入れのための法整備の必要性、あるいは国連から勧告されてきた国内人権機関の設置ですとか、個人通報制度への加入、それから包括的な差別禁止法などの制定については、全く検討されていません。今後、人手不足の解消のために、技能実習生や留学生の受入れを拡大するということの応急対策だけではなく、総合的なこういった法整備の必要性というのは、大臣は考えていらっしゃるのでしょうか。あるいはこの関係閣僚会議で検討していくという可能性があるのでしょうか。岸田政権の基本的な姿勢を伺いたいのでよろしくお願いします。

【大臣】
 当然のことですけれども、我が国において、日本人と外国人が互いを尊重して、安全・安心に暮らせるというのが、共生社会を実現していくためには極めて大事だというふうに思っています。
 したがって、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行っていくこと、そして、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくこと、これが極めて重要だと思っています。もし、ルールを守れない違法な外国人が周りにいっぱいいるということになりましたら、日本人が外国人に対する信頼というものが失われて、共生社会の実現というものが程遠いものになってしまうと思いますので、ルールをしっかり守っていただくという基盤を作るということが、私は共生社会を実現していく上で極めて大事だと思っていますので、前国会の入管法改正もそのための重要な一歩であるというふうに考えています。
 そして、昨年6月に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において決定された「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」では、在留資格を有する外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立って、日本語教育の取組ですとか、情報発信・相談体制等の強化、ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援等の重点事項に関する施策を掲げています。
 関係閣僚会議において基本法の制定を検討することなどについて、今、お尋ねがありましたけれども、法務省におきましては、外国人材の受入れ環境整備に関する総合調整機能を発揮しながら、関係省庁と連携して、関係閣僚会議において決定されたロードマップがありますので、そのロードマップ等に基づき、外国人の受入れ環境の整備を進めていくということであります。
 また、在留資格を有しない仮放免者への対応につきましては、個々の様々な事情がありますので、それらを踏まえつつ、関係法令に従い、所管省庁において適切に対応していくことが適切であるというふうに考えています。
(以上)