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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和6年7月5日(金)

 今朝の閣議ですが、法務省請議案件はありませんでした。
 続いて2件、報告させていただきたいと思います。
 1件目は、今週、石川県内の視察に行ってまいりました。
 7月3日から4日までの2日間、能登半島地震による被災状況の視察等を中心として、このエリアの法務省関係官署と、また、関係企業等を訪問してまいりました。
 まずは、能登半島地震の発災から半年が経過した被災地ですけれども、まだまだ震災の傷跡は、深く残っていまして、重機も十分入っていない、本当にこれから復興が待たれる厳しい状況であるということを強く感じました。
 改めて、お亡くなりになられた方々に対し、哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。
 現地では、7月1日に、県を中心とする6市町、またその他の関係者による、能登創造的復興タスクフォースが立ち上がりました。我々もこのタスクフォースに最大限協力していこうという考え方で臨んでいるところでもあります。金沢地方法務局輪島支局では、当時300人の被災者の方を受け入れたということも、大きな役割を果たしてくれたというふうに思いますが、今後は、復興に向けて、金沢の法務本局または、輪島支局において、法務実務の面から、サポートができるというふうに考えています。
 その一番の眼目は、被災して、瓦れきになってしまった建物もありますけれども、半壊の状態であったり、補修すれば使えるかもしれないというような骨格が残った建物などもあるわけです。様々な形で被災の状況がありますので、それを壊して更地にしないと復興は進まないのですけれども、その所有者がいれば、同意を求める必要がある。様々な方が、色々なところに避難されていますので、なかなか同意を得るのも困難で、そこから復興がなかなか進まないという問題点の指摘がありました。
 法務省も様々な知恵を巡らせまして、5月28日に事務連絡を発出しました。いわば、建物性の喪失に着目した公費解体加速化スキームというようなものを各自治体に周知しているところです。建物性が失われ、構造上の大きな毀損がある場合には、その物件に対する所有権が成り立たず、消滅する。そうすると、所有者の同意を求めることなく解体を実行することができる。今まで様々な震災がありましたけれども、初めて今回、通達で公表され、発動されるという大切なスキームだと思いますので、このことは輪島市長にも改めてよくお話をしてまいりました。そういった我々ができることについて、この創造的復興タスクフォースの中でも、こういったことをよく周知し、役割を十分果たしていきたいというふうに思います。
 また、金沢刑務所も救援物資の搬入の拠点となってくれました。名古屋、岐阜、富山、こういった刑務所から金沢刑務所に物資を集めて、そして輪島に送り届けるというところまでを刑務所の職員、あるいは管区の機動隊の皆さんの力で頑張ったわけです。温水シャワーの設置というようなこともやりました。そういったオペレーションについての報告を改めて受けて、職員の方々をねぎらってきたところです。また、激励もしてまいりました。
 法テラス石川にも伺いまして、被災者に対する無料法律相談の実施状況について聞いたところ、色々工夫されていました。法テラス号という、テーブルと椅子がある車で、法律相談をするというような工夫もなされていたところです。
 また、技能実習実施先の工場にも伺うことができました。これはちょっと震源地から距離があるので工場自体は大きな被害はなかったようです。様々な形で専門的な技能に取り組む実習生の方々とゆっくりお話をすることができました。こうした様々な成果や課題といったものをしっかりと把握しながら、2日間、回ってまいりました。
 引き続き、各地の法務官署の視察を続けていきたいというふうに思っています。
 2件目は、司法外交を推進するための国際会議についての御報告です。
 6月24日、25日に、アジア太平洋地域の23の国・機関から、刑事司法実務家の参加を求め、捜査共助、あるいは犯罪者処遇の分野における、アジア太平洋地域内の国際協力の深化に向けた、実務者レベルの充実した議論が行われました。3回目のアジア太平洋刑事司法フォーラム(Crim-AP)の開催でありました。
 また6月26日から5日間、7月2日まで、「第1回ASEAN・G7ネクスト・リーダーズ・フォーラム」が開催されました。これは18の国・機関から、約60名の方が参加してくれました。開会式に伺いましたけれど、本当に多士済々で皆さん楽しそうでした。同世代だからか、同じ仕事をしているからか、とても笑顔で活気があり、5日間もいたら本当に親しくなるのだろうなというふうに思いました。横のつながりと世代を超えた縦のつながりの人間関係、人的ネットワーク、そういったものを醸成するのが目的ですけれども、こういう方々ならば、大きな成果をもたらしてくれるだろうという力強さを感じることもできました。人事院総裁や芦屋市長、それからフィリピンの検事、こういった方々の講演も行われたようです。大きな成功を収めたというふうに言えると思います。大事なことはこれを継続すること、そしてこれを縦のつながりにつなげていくことだというふうに思います。

旧優生保護法の違憲判決への所感と今後の対応に関する質疑について

【記者】
 岸田文雄首相が3日、最高裁大法廷が旧優生保護法規定を憲法違反とみなし、国の賠償責任を認める判決を出したことを受けて政府として謝罪しました。首相は新たな補償の在り方の検討を小泉大臣と加藤大臣に指示しましたが、判決への所感と今後の対応についてお聞かせください。

【大臣】
 旧優生保護法の規定を憲法違反とした上で、国家賠償法上の違法を認める判決が言い渡されました。そのことを大変重く受け止めております。昭和23年制定の旧優生保護法に基づいて、あるいは旧優生保護法の存在を背景として、平成8年に優生手術に関する規定が削除されるまでの間、多くの方々が、特定の疾病や障害を有することなどを理由に生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたわけです。このことに対して、政府の一員として真摯に反省をし、手術等を受けることを強いられた方々に心からお詫びを申し上げたいと思います。
 また、総理からは指示がございました。7月3日、私の代理として、門山法務副大臣が岸田総理に旧優生保護法に係る最高裁大法廷判決の概要を御説明しました。その折に総理から判決内容の精査を行うとともに、加藤こども政策担当大臣とともに、国会ともよく相談しながら、新たな補償の在り方について、可能な限り早急に結論が得られるよう、検討を進めるようにという御指示をいただきました。早速検討を始め、早期に結論が得られるよう、全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。

【記者】
 人権擁護を所管する法務省として、今後の障害者に対する差別防止など再発防止に向けたお考えがありましたらお聞かせください。また、昨日、加藤大臣が一部の原告と面会して直接謝罪をされましたが、法務大臣の立場で原告の方から直接お話を聞くなどのお考えはありますでしょうか。

【大臣】
 人権擁護を担当する法務省としても、このような事態が二度と繰り返されることのないように、全ての国民が、疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現に向けて、各種人権擁護活動を引き続きしっかりと取り組んでいきたいと思います。
 また、原告の皆様方に、総理もお会いになるということです。法務委員会でもそういうやりとりをさせていただいておりますので、適切な機会を得ることができるならば、面会するということは考えていきたいと思っております。

ASEAN・G7ネクスト・リーダーズ・フォーラムの成果と今後の展望に関する質疑について

【記者】
 ネクストリーダーフォーラムが開催されましたが、この成果と今後の展望について改めてお考えをお示しください。

【大臣】
 G7と、日本が橋渡しをしたASEANの法務関係の、次世代を担う若い優秀な方々に集まっていただくことは、素晴らしいアイディアですが、実際にやってみると、本当にやってよかったなと思いました。参加してくださっている方々が非常に意欲的で、人間関係を作ろうというそのパワーに溢れていて、この二日間、頑張ってくださった方々の感想をまだ直接は伺っていませんが、おそらく法の支配、法制度、法制度が実現しようとしている価値、そういったものを、抽象的ではなくて、このメンバーは、同じ基盤の上にいるのだ、法の支配という同じ基盤の上で仕事をしているのだということをおそらく強く感じ取っていただけたのではないか。その国その国の制度があり、その国その国で頑張っているだけではなくて、気が付くとそれは、国際的に共通の基盤になっている。多分若い方々の感性はそういうところまで、理解が伸びたのではないかと思っています。それはすごく大事なことで、1つの普遍的な価値、法の支配が普遍的な価値になるということで、この大勢の方々の有能なリーダーたちの心の中で基盤ができ、共通のものに乗っかっているのだ、日本もASEANもG7も同じところにいるのだという感覚が、我々が求めている、縦のつながり横のつながりなのです。ですから、そういう深いところで成果が少なくとも芽生えたと思います。大事なことは、これを継続することです。反省点もしっかり押さえながら継続していくということが非常に大事だというふうに思いました。
 また繰り返しになりますが、芦屋市の高島市長、フィリピン司法省のアルヴォア検事、人事院の川本裕子総裁といったそうそうたるメンバーが、講師として参加していただきましたので、そういった新しいリーダーにはまた新しい講師を次々と呼んできて、回を重ねていければ、どの国にとっても、大きな資産になるというふうに思います。引き続き取り組みたいと思います。
(以上)