検索

検索

×閉じる

法務大臣閣議後記者会見の概要

令和6年7月26日(金)

 今朝の閣議では、法務省請議案件はありませんでした。
 また、私から2点、報告させていただきたいと思います。
 1点目は、保護司の安全確保の課題についてです。
 滋賀県で保護司の方が殺害された、大変痛ましい事案がありましたが、これを受けて、6月中に全国の保護観察所において、保護観察を担当している16,184名の保護司の方々から、不安等について状況を伺い、御意見を聴取させていただきました。
 その結果、1,480人の保護司の方々から、自宅で面接することなどを含めて、不安があるというお声が聞かれました。
 この聴取結果や、別途、保護司の活動環境に関するアンケート調査も実施しておりますので、両方を踏まえて、今月、保護局から更生保護官署に対して、次の6つの指示を行いました。
 1番目は、担当保護司の複数指名を積極的に運用すること。
 2番目に、保護観察官による直接処遇などの直接関与を強化すること。
 3番目に、地域における保護司への相談支援を始めとする地域援助の取組を強化すること。
 4番目に、自宅以外の面接場所の確保を推進すること。
 5番目に、保護司候補者の御家族に対する説明を実施するなど、保護司の御家族の方々への対応を充実していくこと。
 6番目、最後に、“社会を明るくする運動”等の広報啓発活動も含めて、地方公共団体の協力も得て、保護司活動や対象者の立ち直り支援に対する社会全体の理解促進を図るための広報を強化すること。
 こういった指示をいたしました。
 自宅以外の面接場所の確保については、各都道府県・市区町村に対して、総務省・法務省連名による協力依頼文書も7月12日付で発出いたしました。
 また、私からも、松本総務大臣にお会いして、直接、地方公共団体の理解と御協力をいただくようお願いしました。
 加えて、アセスメントの充実化策・保護観察付全部執行猶予者の保護観察強化策については、本年9月から試行して、令和7年度、来年度の本格実施を行うことを予定しております。
 アセスメントというのは、対象者の状況を、より客観的に専門的に把握し、それを活動の中に生かしていこうという新しい取組です。
 一定の知見を法務省も有しておりますが、試行段階を経て本格実施を考えていきたいと思います。
 こうした取組を着実に実行するとともに、本年10月に取りまとめられると聞いております「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」の最終報告書の内容等も踏まえて、保護司の安全確保等に関する対策を、これからも、中長期の視点も持ちながら絶えず見直し、現場の声も聞きながら、それをフィードバックして、しっかりと進めて行きたいというふうに考えております。
 2点目は、「全国中学生人権作文コンテスト」の募集についてのお知らせです。
 法務省のホームページでもお知らせしておりますとおり、毎年、この夏休みの時期ですけれども、全国の中学生の方々に、人権作文を是非書いていただきたいというお願いをしております。そして、そのコンテストを本年度も実施していこうということです。
 全国各地の地方大会を実施して、そこで優秀賞を取られた方に、中央大会でコンテストに参加していただくという形です。
 人権擁護委員の皆様が学校に赴くなどして、応募のお願いをさせていただいています。
 本コンテストは、次世代を担う中学生を対象に、人権問題について作文を書くことを通じて、人権尊重の重要性、また必要性についての理解を深めるとともに、豊かな人権感覚を身に付けることを目的として、1981年度から実施し、今回で43回目です。一般社団法人日本新聞協会やNHKなどの御後援をいただいています。
 昨年度(令和5年度)の大会では、全国6,400校を超える中学校から、中学生の4人に1人にあたる約76万編もの作品が寄せられました。
 地方大会における優秀作品は中央大会で推薦され、さらにその中で、来年1月になりますが、内閣総理大臣賞や法務大臣賞などが選出されます。
 私自身も昨年度、総理大臣賞の表彰式に出席しました。
 また、受賞作品も読ませていただきましたが、総理大臣賞受賞作品は、特別養子縁組をテーマに、御自身の経験を通じて相手の人権はもちろん、自分の人権を守ることの大切さを、大変みずみずしい感性のもとで訴えかける、説得力を持った、心を動かされる素晴らしい作品でした。
 法務省では、中学生の皆さんから寄せられた作品を一人でも多くの方に、今度は読んでいただく。今度は書いていただくだけではなくて、より多くの方々に読んでいただくということも大事なことだと思っておりまして、入賞作文集を刊行し、ホームページにも掲載しておりますし、一部受賞作品の英訳をホームページにも掲載して、世界にも発信をしていこうということです。多くの方々の応募を期待しております。
 若い方々の心の中に、人権に対する様々な良い芽が芽吹いていくということを、心から願っているところです。

保護司の安全確保の課題に関する質疑について

【記者】
 冒頭にありました保護司の関係でお伺いします。
 法務省が事件後行った、ケースを持っている保護司と持っていない保護司に対する、不安や環境活動に関する調査の取組状況と、どのような声があったか、また、大臣の受け止めについてもお願いいたします。

【大臣】
 まず、6月は、保護観察を担当している保護司の方々の御意見を聴取しようということで、先ほども申し上げましたように、16,184人の保護司の方々にお話を伺うことができました。
 そして、1,480人の方々から、不安の声が出されました。
 具体的な内容としては、自宅で面接することや粗暴性がある保護観察対象者を担当することへの不安や、保護司のなり手確保が困難になるのではないかという懸念です。
 そして、保護観察対象者は危険だという風評が広まってしまい、その更生が困難になるのではないかといった、保護観察対象者への思い、そういったものも聞かれています。
 また、保護観察を今は担当していない保護司の方に対する聴取も今、進めているところです。
 もう一方で並行して、保護司の面接場所などの活動環境に関するアンケートも実施しています。
 保護観察を担当したことがあると回答した保護司に、最も多く面接を行う場所を確認しましたところ、速報値ではありますが、自宅が一番多い、次いで、保護観察対象者の側の自宅が多いという結果が出ています。
 これらの方々、つまり自宅を使っていらっしゃる方々に、自宅や保護観察対象者の自宅以外の面接場所の希望を尋ねたところ、大きな数字ではないのですが、自宅以外の場所を希望しないという方も約13%、一部いらっしゃいます。
 ただ、やはり大宗は、更生保護サポートセンターや、公的施設を希望される方、これが約71%です。
 大宗はやはり、公的施設などの、保護観察対象者の方の自宅や自分の自宅以外でやりたいという方が、7割を占めています。
 したがって、先ほど総務省にお願いしましたけれども、我々も繰り返し、現場でも努力し、市町村にも協力依頼をして、何とかいい場所・スペースや、時間帯を確保できるように、しっかりと取り組みたいというふうに思います。
 保護司の方々が、相当にこの不安の中でも頑張ってくださっているというのが、伝わってきました。
 この保護司制度をしっかり動かして保護観察対象者を守る、そういう強い使命感というものも感じました。
 それでもなお、やはり不安というのは当然あるわけですから、我々もしっかりとそれに対処し、改善するという大きな責任があると思いますので、この夏も含めて、着実に、アセスメントも含めて、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。

【記者】
 ちょっと聞き逃しかもしれないんですけれども、冒頭の保護司のところで、不安を感じているのが1,480人いたという、この数字に対する受け止め、この1,480人という数字に対しての大臣の受け止めとですね、あと、これまで、第1弾の対策を打って、そのさらに深めたものを第2弾として秋までに出したいみたいな話をされてきたかと思うんですけれども、今回の、さっきの6点プラスアセスメントの強化が第1弾で、また第2弾っていうのが、今後秋までに出されるのかどうか、そこを教えてください。

【大臣】
 まず、16,184人の中の1,480人の方が、具体的に不安があるということをおっしゃいましたので、その数字だけではなくて、個々のケースに応じて、我々が今時点でできるベストの改善策を実行し、提示しています。
 すぐに面接場所のスペースが見つからないというような制約はまだあるわけですけれども、まず、今抱えていらっしゃる不安を改善するということについて、こうして報告を皆さんに申し上げると同時に、並行して、現実にこういう方々の不安を解消する手段を現場で見つけて、早急にこれを実行するようにという指示を、私はずっと繰り返し出してきています。
 その上で、第一段階につながることなんですけれども、まだ保護観察を担当されていない方のヒアリングは続いています。
 そういう方々の意見も、より深く聞いてみる必要があるし、またアセスメントについても、まず9月から試行するということです。
 ですから、それを第2弾といえば第2弾なのかもしれませんが、今の時点で、いつごろ第2弾というスケジュールを組んでやっているわけではなくて、現場からそういう要望があり、また、より大きなアセスメントなどのステップを踏む必要があるとなれば、それをまとめて皆さんに第2弾としてお示しすることもあり得るというふうには思っています。
 また、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会での議論も並行して進んでいますので、10月の報告書の成果も取り入れていく必要があると思います。
 ですから、まず御意見を聞いて、できることは全力でスピーディーに取り組みながら、その次も当然考えていく。そういうものをまとめていく必要性があれば、直ちにそれは対応していく。そういう形で進めたいと思っています。

【記者】
 1,480って数字に対する受け止めは。

【大臣】
 大変大勢の方々が不安に思っていらっしゃるということを、やはり実感しました。
 強い使命感の下で、しかし本当に御家族も含めて、強い不安がある、そのことがひしひしと伝わってきました。

津久井やまゆり園事件に関する質疑について

【記者】
 相模原の知的障害者施設で、入所者の方々が殺害された事件から今日で8年となります。
 この事件をきっかけに「共生社会の実現」というものが掲げられることになりましたが、これがどの程度進んでいると考えますでしょうか。
 優生思想や障害者への差別などを根絶するとして、政府は対策推進本部を立ち上げましたが、法務大臣としての所感と、今後具体的にどのような取組を行っていくのかお答えください。
 あと、植松死刑囚はまだ刑が執行されていませんが、この処遇についてはどうお考えでしょうか。

【大臣】
 まず、御指摘の事件、相模原の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者の方々45人が殺傷された事件から8年ということです。
 お亡くなりになられた方々に、改めて心から哀悼の意を表しますとともに、御家族の方々にも心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 また、御指摘の事件で被害に遭われた方々や御家族に、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 「共生社会の実現」に関しては、この大きな事件の後、取組が行われましたけれども、この検討チームというのが構成されて、検討を行い報告書が出されました。「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書において、共生社会の推進に向けた取組、これが再発防止のための提言の筆頭に、一番最初の項目として挙げられているわけです。
 事件の再発防止策の検討に当たって、このチームが重視した3つの視点として、まず、共生社会の推進というのが挙げられています。
 2つ目に、退院後の医療等の継続的な支援を通じた地域における孤立の防止、3つ目に、社会福祉施設等における職場環境の整備が挙げられています。
 それに向かって、政府も法務省も取り組んできているところです。
 現時点でどれぐらい進んでいるかということを、客観的、具体的に評価するというお答えは難しいのですが、法務省の人権擁護機関においては、共生社会の実現に向けて、障害を理由とする偏見・差別をなくそう、この命題を啓発活動強調事項の一つとして掲げて、各種の人権啓発活動、調査救済活動に取り組んでいるところです。
 また、御指摘があった旧優生保護法に係る今月3日の最高裁の判決を受けて、本日の閣議で優生思想及び障害者に対する偏見や差別の根絶に向け、これまでの取組を総点検し、教育・啓発等を含めた取組を強化するため、内閣に「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」が設置されました。
 法務省の責任も重大なものがあるというふうに思っています。
 我が省では、先に述べた検討チームの提言を常に原点に置きながら、今般の最高裁の判決を重く受け止め、また、障害を理由とする偏見・差別のない共生社会の実現のために、様々な方法を駆使しながら、人権擁護活動に最大限の効果を上げられるように取り組んでいきたいと思いますし、また、対策推進本部の取組にも、積極的に政府を引っ張るような心構えで参画し、取り組んでいきたいと思っています。
 個別の死刑執行、そして個々の死刑確定者の処遇、これについては、お答えすることを差し控えざるを得ないことを、御理解いただきたいと思います。

黒川元検事長の定年延長に係る文書開示訴訟に関する質疑について

【記者】
 東京高検検事長だった黒川さんの定年延長に関する文書の開示をですね、国に命じた大阪地裁の判決が、先月6月21日に判決が出た件なんですけれども、大臣はですね、7月12日の会見で、判決は否定せず受け止め、控訴しないと述べたということだと思います。
 しかしですね、判決は否定しないのに、一方で黒川さんのためではなかったというですね、従来の主張を訂正するわけではないということで、ここにちょっと矛盾がやっぱりあるような気がしてですね。
 そこで、判決は受け入れるという意味で否定しないが、認定については否定する、あるいは不服があるというかですね、そういう趣旨ということなのでしょうか。

【大臣】
 これは、情報公開請求という裁判ですので、もちろんそれまでの様々な経緯も議論の対象にはなってきているのですが、最終的には、この情報公開請求に我々が応じるか応じないかという、その判断が求められたわけです。そういうふうに認識しています。
 そして、前回も申し述べたような理由で、これは控訴する実益に乏しいという判断から、既に別の訴訟で公開されたという事情もあり、また一般的には開示対象となり得る文書と思われる要素もしっかり持っていますので、控訴せずに、判決を受け止めて、そして情報公開請求に応じていこうという結論に至りました。それが我々の立場です。

【記者】
 それでですね、ちょっとまだ分からないんですけれど、もしかしたら今後、こういったところがですね、また国会とかでも追及があるかもしれない。
 そのときに、改めてですね、この認識について聞かれたときに、今後もやっぱり、黒川さんのための改正ではなかったというふうに言い続けるのか、それともそれを訂正する可能性はあるのか、ということです。
 そこについて伺いたいのと、もし言い続けるっていう場合にですね、司法の一翼として法務省がですね、裁判所という司法機関の判断に控訴すらせず、このまま意見を繰り返すっていうことが、国民の理解を得られるかというふうに、大臣が思われるかどうかということを、併せて伺いたいと思います。控訴しないで、司法で判断を最後までやらずに、このまま従来の主張を続けられるということが、理解を得られるかという、そういった御見解も伺えればと思います。

【大臣】
 黒川さんのための改正案であったかどうかという点については、当時、法務省としても法務大臣としてもお答えさせていただいておりまして、今回の、控訴しないという我々の判断の中に、それを変更するということを申し上げているわけではありません。
 ただ、今回の情報開示請求という訴訟の枠組みの中で我々が判断した結果、これは控訴する実益が乏しい、したがって情報公開請求に応じていこう、そういう立場に今立っているということです。
 今後、今おっしゃったように、国会等様々な議論があるかもしれませんけれども、基本的にこの立場を御説明することになるのだろうと思います。
(以上)