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牧原法務大臣初登庁後記者会見の概要


初登庁後の記者会見の様子

令和6年10月2日(水)

 法務大臣を拝命しました衆議院議員の牧原秀樹です。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず始めですけれども、私は弁護士、ニューヨーク州弁護士としてキャリアをスタートさせていただいておりまして、この法務行政の大切さ、そしてまた、この法務省の大切さということは、従来からつくづく認識しているところです。こうした場所に立つことについて、非常に感慨深いものを感じているところです。
 法務省というのは、基本法制の維持や整備、また法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務を通じて、国民の安心・安全を守って、そして明るい社会を作っていくという重要な使命を担っている。もちろんみんなが知っているとおりですけれども、私はそれ以上に、世界中、色々な国を回る機会がありまして、また歴史も見てまいりましたが、自由と人権を守るということについて、ちゃんとした司法機能というのがあるということは、実は国民の幸せにとってものすごく大切なことだというふうに思っております。
 そういう意味で、私としては、国民の安心・安全、そして幸せを守るためにも、この法務省の皆様と一緒に活動していきたいと思っております。
 なお、昨日、石破総理大臣からは、5点の御指示をいただきました。
 1点目は、「国民に身近で頼りがいのある司法の実現に向けた取組を推進する。」。
 2点目は、「差別や虐待のない社会の実現を目指し、個別法によるきめ細かな人権救済を推進する。」。
 3点目は、「関係大臣と協力して、『世界一安全な国、日本』をつくるため、刑務所等出所者の再犯防止や社会復帰支援、犯罪被害者の支援、組織犯罪対策など、社会を明るくするための施策を総合的に推進する。」。
 4点目は、「我が国の領土・領海・領空の警戒監視について、関係大臣と緊密に連携し、緊張感を持って、情報収集を行うとともに、事態に応じて我が国の法令に基づき適切に対処する。」。
 最後に、「関係大臣と協力して、一定の専門性、技能を有する外国人材を円滑に受け入れるとともに、在留管理を徹底する。観光立国にふさわしい入国管理の実現を図るとともに、長期収容・送還忌避の課題解消及び難民に準じて庇護すべき者に対する適切な支援に取り組む。共生社会の実現に必要な環境整備を着実に進める。」です。
 これらは、いずれも国民生活に密接した重要な課題だと考えております。
 こうした総理の指示も踏まえてやっていきたいと思いますし、総理からは直接、「とにかくエキスパートなのだから、思う存分腕を奮って、法務行政を任せた」、こういう言葉をいただきましたので、こうした言葉を胸に、今日ここにいらっしゃる法務省の皆様、全国の法務省関係の皆様、そしてまた、副大臣や政務官などと一体となって、日本のために法務大臣としての重責を果たしていきたいと思います。

検察に対する指揮権に関する質疑について

【記者】
 まずは、大臣、御就任おめでとうございます。これからどうぞよろしくお願いします。
 幹事社から1点、指揮権についてお尋ねします。
 法務大臣は検察に対する指揮権を有しております。先ほども袴田巖さんを支援する議員連盟が法務省を訪れ、検察が袴田さんの無罪判決に控訴した場合は指揮権を発動して取り下げさせるべきだとする、支援団体からの要請書を提出に訪れました。こうした点なども踏まえて、指揮権の適切な行使の在り方についてお考えをお聞かせください。

【大臣】
 今の要請書については、そういう要請があるという話は聞いているのですが、本物はまだ見ていないので、この後、報告を受けると思います。
 その上で、私も法曹関係者として、法務大臣に指揮権があるのは知っておりますけれども、しかしこれは重大なものですので、軽々にお答えをすること自体について、極めて慎重であるべきだというふうに思っているところです。
 私にも、今、検察官になっている友人や知人などが沢山おりますけれども、やはりそうした人たちは、まさに崇高な使命感を持って、現場で一番その案件などについても詳しいという状況がありますので、私は、一義的にはそうした検察官が果たされている使命というものを、しっかりと重んじていきたい、こういうふうに思っているところです。

死刑制度に関する質疑について

【記者】
 今のお話にもありましたけれども、法務大臣の重大な職務の一つである死刑の執行について伺います。9月26日に袴田事件の再審無罪判決もあり、死刑制度について注目が集まっています。
 死刑制度の在り方と、また2022年7月から未執行の状態が続いている死刑執行について、大臣自身のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 死刑制度については、我が国の中で様々な意見もありますし、また、世界的にも色々な意見があるということは、十分存じ上げておりますけれども、この存廃というのは、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題ですので、慎重に考えていくべき問題だと思っております。
 その上で、日本の国民の世論というのは、やはり極めて悪質で凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないということが、世論の多数として考えられておりますので、やはり、まだこうした凶悪犯罪が後を絶たないということを考えますと、私は、この死刑を科すということについても、やむを得ないというものであり、これを廃止するのは適当ではないというふうに考えております。
 その上で、執行につきましては、人の生命を絶つという極めて重大なことになりますので、その執行については、慎重に、ものすごく真摯に考えたいというふうに思っております。
 他方で、法治国家におきましては、確定的な裁判の執行というのは、厳正に行わなければならないということも事実です。
 この間までの総裁選で、私は上川議員の推薦人を代表しましたけれども、上川議員とも、この死刑制度について、大臣時代の思いというのもかなりお伺いすることがありました。
 やはり、法の支配ということについて、大臣としてどう在るべきかということは、ものすごく考えて、死刑についてのことも含めて、しっかりと考えていきたいと思います。

再審制度に関する質疑について

【記者】
 先ほど幹事社からの話もありました、再審の議連の関係、超党派の議連の関係でですね、議連の方はですね、再審に関わる早期の法改正を、前の法務大臣に求めています。議連には石破新総理も名を連ねているっていうこともありますけれども、再審法のですね、法改正を含めた是非についてはどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 再審制度につきましては、当然今、多くの議論がなされているということについては、認識もありますし、私も、議連に入らないかとお誘いを受けたこともありますので、そうした議連のメンバーやその思いというのは、よく存じ上げているところですが、確定判決による法的な安定性というのが一方であり、また個々の事件における是正の必要性もありで、その調和をどう求めていくのかというのは、様々な観点から慎重かつ丁寧な検討が必要だというふうに思っております。
 その上で、この在り方については、今法務省の方で、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」において協議が行われておりまして、ここにその分野の知見が非常に豊富な方が集まって現在協議しているところですので、この協議会において充実した議論を重ねていただくことを重要視しているということです。また立法府は立法府として、様々な動きをされているということは存じ上げていますので、そうしたところから、こういう情報が欲しいというような要請があれば、誠実に対応していきたいというふうに思っています。

検察の取調べの適正化に関する質疑について

【記者】
 2019年の参院選の中の大規模買収事件をめぐる東京地検特捜部の供述誘導をめぐって、最高検が「不適正」とする調査結果を出してます。また、大阪地検特捜部が手掛けた業務上横領事件をめぐっても、違法な取調べをしたとして、担当検事を特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開く決定が出てます。小泉法相は取調べの適正化を図るために、「高検の視察」をやってこられたと思うんですけれども、牧原さんご自身はそれを続ける考えがあるかと。
 あともう一つは、適正化確保のために大臣として行うべきことについて、何か問題意識があれば教えてください。

【大臣】
 当然ながらまず一般論としてになりますけれども、検察の捜査や公判活動というのは、適正に行われなければならないというのは、当然のことです。
 そして、この検察の活動というのも国民の信頼があって成り立つものですので、国民の信頼を確保するために、疑いが生じたときにはどうすべきか、ということは、法務大臣としてしっかり考えてやっていかなければいけないと思っています。
 その観点から、小泉前法務大臣が、高検を周って、緊張感を高め、また訓示をされるということをされていたということは、私は素晴らしいことだと思いますので、現在、八つのうち六つ行っているということで残り二つあるそうですので、目の前、臨時国会があったりしますので、そうした日程を見ながら、残り二つは、行くように考えていきたいと思っております。
 さらに、私は検察の現場について、今まで司法修習のときに見たり、あるいは色々な友人から話を聞いたりしていますけれども、何よりも働く環境について、もう少しやはり配慮して、そしてしっかりと判断できるような、そういうことも私は整えていきたいなと思っております。
 そういう意味で職場環境や、様々な環境の整備というような観点も、今後、私としては、整備できるところは整備していきたいなというふうに思っています。

拘禁刑の導入に関する質疑について

【記者】
 懲役刑と禁錮刑を一本化する拘禁刑の導入について伺います。
 大臣は従来の刑罰や、刑事施設の処遇について、どのような部分に課題があったというふうにお考えでしょうか。それを踏まえて、来年6月の新制度の導入に向け、取り分け重視して取り組みたいと考える事柄についてお聞かせください。

【大臣】
 拘禁刑導入のときにも当然私も関わっておりましたし、また刑務所もかなりの場所に行ったことがあります。今までは、判決の段階で、それを懲役刑にするか禁錮刑にするか、そうした形で決めてしまうわけですが、実際には、それぞれの施設に入られた方の状況に応じて、柔軟かつ適切に処遇をしていくということが大切であるわけです。例えば懲役刑だと作業がマストになる前提でしたので、そうした柔軟性が少しないのではないか、という指摘もあったわけです。このため、拘禁刑になれば、そうした前提がなくなるわけですから、それをやはりちゃんと生かして、受刑者の個々の特性に応じて、作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇を実施していき、そして、より効果的な改善更生というのはどう在るべきか、ということを突き詰めて、私は実現していくようなことをやっていきたいと思っております。
 加えて当然ながら、矯正処遇等に当たる職員の方の意識も、今まで作業させるということだったのが、必要であれば作業させ、指導もするということを考える意識の改善もやはり私は必要だと思っています。そうしたことにも取り組んでまいりたいと思います。

選択的夫婦別氏制度に関する質疑について

【記者】
 選択的夫婦別姓制度について伺います。
 総裁選でも一つの大きなテーマとなりました選択的夫婦別姓をめぐっては、法制審議会では平成8年に導入を提言する答申が行われていますが、いまだ議論は平行線のままの状態となっています。石破新総理は前向きな姿勢も見られていますが、大臣のお考えと、どのように議論に向き合っていかれるのかについて伺います。

【大臣】
 私もこの総裁選の議論を全て見て、特に選択的夫婦別氏の話というのは、この議論で大きなテーマだったことは見ておりました。石破総理が、個人的にはとおっしゃって、そうした発言もされていた一方で、やはりこの制度を改正するについては、国民の広い理解とコンセンサスが重要になってくるという話をされていたというふうに思います。
 そうした議論を踏まえましても、現在でも国民の間に色々な意見があり、その世論調査をすると何かが2割、何かが4割というデータを出されていた候補もいらっしゃいますけれども、私としては、こうした議論が起こって、非常に国民の間で関心が高まっていくことは、ものすごく重要なことだと思っております。
 他方で、上川議員もおっしゃっていましたが、これをある意味強引に進めることによって、国民の間に分断が生まれてしまうようなことは、避けなければならないというふうに思っています。このため、こうしたことについて、まずは立法府の方で、この動きをしていらっしゃる方も沢山いらっしゃるので、我々としても、情報提供等についてはしっかり協力をしながら、丁寧な議論に資するようにしていきたいというふうに思います。

性同一性障害特例法に関する質疑について

【記者】
 性同一性障害特例法をめぐり、議員立法による改正や政府を中心とした改正を求める意見が出ておりますが、大臣として、法整備が必要とお考えかお聞かせください。

【大臣】
 これは、いわゆる4号要件、5号要件というのがあり、まず最高裁において、この生殖不能要件の方については去年の10月25日に違憲だという判断が出ております。
 また、先日高裁の方で、5号の外観の方の要件だと思いますけれども、それについても違憲的な判断が出ており、これが出揃いましたので、立法府の方でどうすべきか、という議論が行われていて、それについて様々な議論が、まだ集約するような段階ではないものの、色々されているということも、存じ上げているところです。
 自民党の中には、このことに関して、女性側の視点から対応するような議員連盟もできて、そうしたことを議論しているということも、私も参加したことがあるので承知しております。そうした議論を、一方で立法府で行っていって、法務省において必要な情報提供があるのであれば、真摯に協力しますし、それから関係省庁ともきちんと連携しながら、また立法府とも連携しながら、必要な対応について、適切に考えていきたいというふうに思います。

育成就労制度に関する質疑について

【記者】
 外国人労働者の受入れ新制度「育成就労」について質問いたします。
 労働者の来日時の手数料負担の在り方と制度の詳細はこれから主務省令で定めると思いますが、国際的に人材獲得競争が激しさを増す中で、大臣はどのような方向性を打ち出したいと考えていらっしゃるでしょうか。
 また、大きな議論となってきた転籍について、転籍可能となるまでの年数は、今後分野ごとに決めていく方針となっていますが、大臣御自身はどのような点を重視して、決めていくべきだとお考えでしょうか。

【大臣】
 この問題は筆頭理事として、法案の成立にも尽力し、また野党の皆様とも、相当な議論を重ねて、色々な方の御意見も伺った、非常に私としても思い入れのある制度改正ですので、しっかりこれが進むように、見ていきたいというふうには思っております。
 その上で、外国の方にとって、日本が魅力のある国として映るかどうかというのは、非常に重要だと思っております。選ばれる国という表現がありますけれども、この間、ネパール等にも行ってきましたが、やはりネパールの人からすると、中東や、韓国、日本があったりする中で、日本の良さはどういうところですか、躊躇するとしたらどういうところですか、という話なども、若い、これから海外を目指したいという皆さんとも意見交換をしたところです。
 この法改正は、まさにそうした日本側の視点と、そして色々な選択肢がある中で、日本を選ぼうと思うという人の視点をしっかり取り入れてくということが大事だというふうに思っております。
 例えば、負担の軽減や、それから高額な手数料等の、これは技能実習で指摘されたことですが、こうした問題が、様々委員会でも出ました。
 こういうところについて、しっかりと改善できるようにしていきたいと思っております。
 転籍につきましても、これも自民党の部会のときから、ものすごく激しい議論がありました。一方で、特に地方の方を中心にだと思いますけれども、せっかく雇用して、様々な研修も積み、資格も取得していただくために尽力したのに、給料が高いからといって都会に行ってしまうのではないか、こうした懸念があるので、転籍をそんなに簡単に認めてしまうとそれは困る、という意見と、外国の皆様から見た、先ほど言った選ばれる国になるための魅力の向上や、人権の問題等を考えると、やはり転籍は自由にすべきだという考えが、色々あったということです。
 この両方のバランスを含めて、この法案や政府決定、附帯決議等にもそうしたことが入っておりますので、いずれにしても、そこは法務省の入管庁と、それから、それぞれの業界を所管している官庁との緊密な連携のもとに、適切な制度の在り方を決めていくということになろうかと思います。

司法外交に関する質疑について

【記者】
 司法外交についてお伺いします。
 法務省は8月、ウクライナ司法省と覚書を交わし、法務・司法分野における連携を合意しました。今後、ウクライナの支援に大臣としてどのように取り組んでいくのか。また、司法外交の重要性についてどのようなお考えであるのか、お聞かせください。

【大臣】
 ウクライナの問題の一つとして指摘されているのは、やはり汚職の問題があったりします。そうすると支援をしても、ちゃんとした支援の先に行かないのではないかという疑念があったりします。私は、アフリカを中心に議員として活動しているんですけれども、アフリカの外交などでもよくあることなんですね。このため、やはりその支援をしたものがちゃんと適正に使われるのだという信頼感を世界中に持ってもらうというのは重要なので、法務省としてはこうした汚職対策や、法の支配、基本的人権の尊重というような、基本的価値がその社会に浸透して、全ての人がルールのもとで、安心・安全に暮らせる社会を実現するということを踏襲してまいりたいというふうに思っています。

過去のSNSの投稿に関する質疑について

【記者】
 過去のSNSの投稿についてお尋ねします。
 大臣は過去に「SNSで誹謗中傷した人物は全て逮捕すべき」という趣旨の投稿をされています。
 こうした投稿の趣旨や、現在もこの立場に変わりないのかお聞かせください。

【大臣】
 今は法務大臣としての答弁なので、一議員として、個人として投稿したものとは、必ずしも立場を一にするものではありませんが、私の趣旨としては、全体としてそう言っているわけではく、特定の場合について言っているものです。この間の総裁選でも何人かの候補者が、やはりこのネット上の誹謗中傷というものについては、問題視されておりました。小泉議員や高市議員など、何人かの方です。
 発信する方はそれほど重くなくても、それを受ける方は場合によってはそれで命を失ってしまう。あるいは、例えば、何かを一生懸命やってきたことを、これはオリンピックだったのですが、これについて、4年も、あるいは人生をずっと、すごく努力してやってきたことについて、そうした発言によって、その静謐で集中すべき環境が失われるというようなこともあったので、それを心配するがあまりに、ちょっとそういうことを書いて、何とかそういうのを止めたいという思いがありました。いずれにしても、それは一個人としてのことであって、あくまで逮捕とか何とかというのは警察行政の話ですので、法務大臣としては、全体としての法務行政が適正に行われるようにしていきたいと思っております。

(以上)