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第216回国会(臨時会)衆議院法務委員会における鈴木馨祐法務大臣所信表明

令和6年12月6日(金)
 
はじめに

 おはようございます。
 法務大臣に就任いたしました鈴木馨祐であります。皆様、どうぞよろしくお願いをいたします。
 最初に、委員長を始め、理事及び委員の皆様方には、法務行政の運営について格別の御理解と御尽力を賜り、心より御礼を申し上げます。
 法務行政を取り巻く様々な課題が正に山積している現下の情勢において、法務大臣という職責を担うこととなり、その重責を改めて痛感しているところであります。
 法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、出入国及び外国人の在留の公正な管理などの任務を通じて、国民の安全・安心を守り、国民生活の基盤を維持・整備をするという重要な役割を担っています。そして、これらの役割を果たすことで我が国の社会正義を実現し、さらには、一たび社会正義が失われた場合には、困難を抱える方々に手を差し伸べて社会正義が保たれた状態に戻すことが、法務省に課された使命であると考えております。
 私は、法務省に課されたこれらの崇高な役割と使命を果たすため、法務行政における具体的課題に文字どおり全身全霊で取り組んでまいります。
 それでは、法務行政における具体的課題への取組について述べてまいります。

法務行政の具体的課題への取組

1 困難を抱える方々への取組や国民の権利擁護に向けた取組
 まず、困難を抱える方々への取組や国民の権利擁護に向けた取組についてです。

(犯罪被害者等の方々への支援等)
 いわゆる「闇バイト」による強盗・詐欺の被害が相次いでいる中、これらの被害者を含む犯罪被害者等の方々に対しては、被害から回復し、平穏な生活を取り戻せるよう、「第四次犯罪被害者等基本計画」及び政府の会議体が決定した「犯罪被害者等施策の一層の推進について」に沿って、きめ細やかな支援を実施いたします。
 先の通常国会で成立した総合法律支援法改正法により導入される「犯罪被害者等支援弁護士制度」について、早期に円滑かつ充実した運用を開始できるよう準備を着実に進めます。
 また、いわゆる被害者等の心情等の聴取・伝達制度について、引き続き犯罪被害者等の方々に寄り添い、適切に運用いたします。犯罪被害者等の方々の思いに応える保護観察処遇等の充実に取り組みます。

(性犯罪・性暴力対策の推進)
 性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けます。「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」等を踏まえ、昨年6月に成立した改正刑法等による厳正な対処及び再犯防止施策の更なる充実強化等を図り、引き続き、性犯罪・性暴力対策を進めます。 

(困難を抱えるこどもたちへの取組等)
 児童虐待について、政府で取りまとめた「児童虐待防止対策の更なる推進について」も踏まえ、関係機関と連携し、その根絶に取り組みます。
 父母の離婚等に直面するこどもたちの利益を確保するため、先の通常国会で成立した民法等改正法について、関係府省庁等と連携しつつ、円滑な施行に向けた準備を着実に進めます。

(様々な人権問題等への対応)
 いじめや虐待、障害のある方やマイノリティの方々に対する偏見や差別、インターネット上の人権侵害など、様々な人権問題への対応については、一人ひとりがお互いを尊重し合える社会を目指して、関係省庁等と連携し、人権相談や調査救済活動を充実強化するとともに、人権啓発活動等の取組を推進します。

(総合法律支援の充実・強化)
 様々な困難を抱える方々が、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるよう、多様化する法的ニーズを的確に把握し、法テラスによる総合法律支援の一層の充実に取り組むとともに、そのために必要な体制の強化に努めます。 

(令和6年能登半島地震への対応)
 令和6年能登半島地震の被災地において、被災自治体のニーズに応じ、災害やその後の公費解体により滅失した建物の職権滅失登記を推進します。

(「旧統一教会」問題への対応)
 「旧統一教会」問題について、関係省庁等と緊密に連携しつつ、法テラスにおいて、総合的対応窓口による一元的な相談対応を行うとともに、特定不法行為等被害者特例法に基づく支援を着実に実施し、被害者の迅速かつ円滑な救済に万全を尽くします。

(性同一性障害特例法の違憲決定への対応等)
 昨年10月、最高裁判所において性同一性障害特例法に関する違憲決定がされたことについて、厳粛に受け止める必要があると認識しています。立法府の動向等を注視しつつ、関係省庁と連携して、引き続き所要の検討を進めます。夫婦の氏の在り方について、多様な考え方があることを踏まえ、国民の間はもちろん国会でも御議論いただけるよう、情報提供を行ってまいります。 

2 安全・安心な社会の実現に向けた取組
 次に、安全・安心な社会の実現に向けた取組についてです。

(再犯防止に向けた取組)
 刑法犯で検挙された者の約半数が再犯者という状況が続いています。国民が犯罪による被害に遭うことを防止し、安全で安心して暮らせる社会を実現するためには、再犯を防止することが重要です。「第二次再犯防止推進計画」に基づき、国、地方公共団体、民間協力者がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に連携することで、再犯防止に向けた取組を強力に推進します。
 地方公共団体や保護司、更生保護事業者、協力雇用主等の民間協力者への支援などのほか、更生保護に関する地域援助等の適切な運用を通じて、地域における支援ネットワークの一層の充実強化に努めます。また、保護司の安全確保対策を含め、持続可能な保護司制度の確立に向けた取組を着実に進めます。

(拘禁刑時代における新たな処遇の実現に向けた取組)
 令和7年6月に拘禁刑が導入されます。拘禁刑は、個々の受刑者の特性に応じたきめ細かな処遇の実施により、効果的な改善更生と円滑な社会復帰を図ることを目的としています。その導入に向けて、運用の検討を進めるとともに、刑務所等における適正な処遇の実施に努めます。

(公共の安全の確保)
 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、公安調査庁においては、人工知能(AI)等の新たな技術も活用しつつ、公共の安全を脅かし得る偽情報の拡散を含む影響工作や経済安全保障、サイバー空間上の脅威、国内外におけるテロ関連動向に関する情報の収集・分析にも努め、政府の施策に更に積極的に貢献いたします。
 北朝鮮に関しては、核・ミサイル関連の動向、日本人拉致問題を含む対外動向や北朝鮮内部の状況等について、関連情報の収集・分析を進めます。
 東シナ海や台湾海峡を始めとする我が国周辺地域の安定が極めて重要であるとの観点から、我が国の領土・領海・領空の警戒警備に関しても関係機関と連携し、適時の情報提供を行うなど、適切に対処してまいります。

 いわゆるオウム真理教について、団体規制法に基づく観察処分の適正かつ厳格な実施や「Aleph」に対する再発防止処分の実効性の確保等を通じた公共の安全の確保に努めます。

3 出入国及び外国人の在留の公正な管理を実現するための取組
 次に、出入国及び外国人の在留の公正な管理を実現するための取組についてです。

(外国人との共生社会実現のための取組)
 外国人との共生社会を実現していくために、「外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行うとともに、ルールに反する者に対しては厳正に対応する」ことを基本として取り組みます。
 引き続き、外国人支援コーディネーターの育成・認証制度や外国人在留支援センター(FRESC)における支援等の取組を推進します。

(外国人材の適正かつ円滑な受入れのための取組)
 先の通常国会で成立した入管法等改正法によって導入される育成就労制度により、技能実習制度で指摘されていた様々な課題を解決し、我が国が外国人材から「選ばれる国」となるための魅力ある制度を構築いたします。また、育成就労制度の導入と併せて、特定技能制度の適正化を図ることとしており、両制度を通じて、長期にわたり我が国の産業を支える外国人材が確保されるよう努めます。育成就労制度等の円滑な実施に向けて、その準備に万全を期すとともに、関係者に対して丁寧な広報・周知に努めます。

(観光立国の実現に向けた円滑かつ厳格な出入国管理の実現)
 一層円滑かつ厳格な出入国審査を実現するため、地方空海港の出入国審査環境を整備するとともに、入管・税関手続に必要な情報を同時に提供することができる「共同キオスク」の本格運用の開始や、我が国にとって好ましくない外国人の入国を未然に防止するのみならず、審査の円滑化を可能にする電子渡航認証制度(日本版ESTA)の導入の準備等、デジタル技術等の活用による出入国審査業務の更なる高度化に取り組みます。
 一方で、不法滞在者等退去強制すべき者を早期に送還することが重要であり、長期収容・送還忌避の課題解消に努めるとともに、引き続き、ウクライナ避難民等、難民と同様に保護すべき者に対する適切な支援に取り組むなど、国際状況の変化に応じて適切に対応いたします。

4 法務行政における国際貢献に向けた取組等
 次に、法務行政における国際貢献に向けた取組であります。

(法の支配の定着に向けた司法外交の推進)
 国際情勢が引き続き緊迫する中、「法の支配」や「基本的人権の尊重」といった価値を国際社会に浸透させるべく、司法外交を一層強力に展開いたします。
 昨年、我が国が主催した「司法外交閣僚フォーラム」において設置が合意された「ウクライナ汚職対策タスクフォース」やASEAN・G7「ネクスト・リーダーズ・フォーラム」を引き続き開催するほか、これまで長年にわたり続けてきた法制度整備支援を、ASEAN地域のみならず、太平洋島しょ国、中央アジア、ウクライナ等にも戦略的に拡大するとともに、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)による国際研修等を通じた各国の刑事司法実務家の能力構築支援を拡充するなどして、法の支配の定着に向けてリーダーシップを発揮していきます。
 京都コングレスの成果の一つである「京都保護司宣言」を踏まえ、我が国が誇る保護司制度を世界へ発信・普及させる取組を推進いたします。

(経済活動の国際化を支える環境整備)
 国際仲裁が国際取引から生ずる法的紛争の解決手段として世界的に利用が進んでいることに鑑み、国際的な法の支配の促進に向け、我が国における環境整備を進めるとともに、東南アジア地域等における普及を図ります。国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)等の国際機関におけるルール形成を主導してまいります。
 また、国際商取引を円滑化し、対日投資を促進する基盤として、関係省庁等と緊密に連携し、AI翻訳を活用するなどして、我が国法令の外国語訳の整備を一層推進いたします。

5 時代に即した法務行政に向けた取組等
 最後に、時代に即した法務行政に向けた取組等についてです。

(法務・司法のデジタル化に向けた取組等)
 刑事手続等において情報通信技術を活用することで、手続に関与する国民の負担軽減や手続の円滑化・迅速化を図るとともに、情報通信技術の進展等により生じている新たな犯罪事象に厳正に対処できるようにして国民生活の安全・安心を確保することは、重要かつ喫緊の課題です。そのため、刑事手続等において取り扱う書類の電子データ化に関する規定の整備などを内容とする刑事訴訟法等改正法案について、国会に早期に提出することができるよう、速やかに検討を進めます。当該技術の活用に不可欠となるシステムの整備についても、関係機関と緊密に連携しながら、スピード感を持って進めます。
 令和7年5月から、戸籍の記載事項に「氏名の振り仮名」を追加することを主な内容とする改正戸籍法が施行されます。戸籍において氏名の振り仮名を公証し、これを官民の手続で利用可能とすることは、各種情報システムにおける検索や管理等の効率化に資するものであり、デジタル社会における重要なインフラを構築するものであることから、施行に向けて必要な準備を着実に進めます。
 また、司法試験及び司法試験予備試験について、受験者の利便性の向上、試験関係者の負担軽減等を図るため、令和8年に実施する試験からCBT方式による試験の導入等を目指すなど、試験のデジタル化に向けた取組を進めます。
 さらに、司法アクセスの更なる向上を図るため、デジタル技術を活用した裁判外紛争解決手続であるODRを推進するとともに、法テラスにおいて、法律相談等へのデジタル技術の利活用や各種業務のデジタル化に取り組みます。
 保護司活動を含めた更生保護行政のデジタル化について、情報セキュリティに十分に配慮しつつ、スピード感を持って進めます。

(所有者不明土地問題への対策等)
 所有者不明土地への対策は、将来を見据えて政府全体で取り組むべき課題です。本年4月に施行された相続登記の義務化や令和8年4月に施行される住所等変更登記の義務化は、この対策の中核をなすものであり、関係機関と連携し、国民各層への周知・広報などに取り組みます。
 また、今後急増することが見込まれる老朽化マンション等においても所有者不明土地と共通の課題があることを踏まえ、区分所有法制の見直しに向けた関連法案を国会に早期に提出することができるよう、所要の整備を進めます。
 土地に関する重要な情報基盤である登記所備付地図の整備については、全国において法務局の地図作成事業を推進するとともに、令和7年度以降の次期地図整備計画の策定に向けた検討を進めます。

(法教育の推進)
 自由で公正な社会を実現するには、社会を形づくる一人ひとりが自らの考えをしっかりと持つこと、そして、お互いの考え方を尊重して生きていく力を身に付けることが重要です。その基盤となる諸原理や法の役割を理解し、法的なものの考え方を身に付けられるよう、法教育を積極的に推進してまいります。

(法務省施設の耐震化・老朽化対策等の強化)
 矯正施設を始めとする法務省施設の耐震化・老朽化対策については、中長期的な視点に立ち着実に推進いたします。また、災害発生時の避難場所としての機能確保にも努めてまいります。

(高度・複雑化する法務・司法制度を支える人材育成等)
 高度・複雑化する法的需要に的確に応え、司法制度を支える人材を確保・育成するため、関係機関等と連携し、新たな法曹養成制度や法曹の魅力についての情報発信等の取組を推進いたします。

(裁判官・検察官の報酬等)
 裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額を改定するための「裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案」及び「検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案」につき、今国会での速やかな成立を目指します。

結び

 高村正大副大臣、神田潤一政務官、そして全ての法務省の職員と一丸となり、様々な課題に着実に取り組んでまいりますので、委員長を始め、理事の皆様方、そして委員の皆様方におかれましては、一層の御理解と御協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願いを申し上げます。