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第1節 就労の確保等

第2章 就労・住居の確保等のための取組
第1節 就労の確保等
1 職業適性の把握と就労につながる知識・技能等の習得

(1)職業適性等の把握【施策番号1※1

(2)就労に必要な基礎的能力等の習得に向けた指導・支援【施策番号2】

 法務省は、矯正施設※2において、就労支援体制の充実のため、2006年度(平成18年度)から非常勤職員である就労支援スタッフ※3を配置し、2019年度(令和元年度)からは常勤職員である就労支援専門官※4を配置しているほか、2022年度(令和4年度)からは、就労支援の要となる統括矯正処遇官(就労支援担当)※5を新たに配置した。

 さらに、2020年度(令和2年度)からは、就労の確保及び職場定着に困難が伴う受刑者に対して、矯正官署(ここでは矯正管区及び刑事施設※6をいう。)及び更生保護官署(地方更生保護委員会及び保護観察所をいう。以下同じ。)が連携して、アセスメントに基づく矯正処遇、生活環境の調整及び就労の確保に向けた支援等を一体的に行う包括的な就労支援を実施している(2022年(令和4年)4月現在、札幌刑務所、川越少年刑務所、名古屋刑務所、加古川刑務所及び福岡刑務所の5庁を実施庁に指定)。

 刑事施設では、受刑者に対して、特別改善指導(【施策番号83】参照)として、就労に必要な基本的スキルやマナーを習得させるとともに、出所後の就労に向けて就労支援指導(資2-2-1参照)を実施している。2021年度(令和3年度)の受講開始人員は2,900人(前年度:2,952人)であった。また、2011年度(平成23年度)からは、受刑者に社会に貢献していることを実感させることで、その改善更生、社会復帰を図ることを目的として、公園の清掃作業などの社会貢献作業を実施している。2021年度(令和3年度)は、刑事施設31庁(前年度:25庁)が、45か所(前年度:26か所)の事業主体と協定を結んで実施した。

 さらに、刑事施設及び少年院では、受刑者等の職業意識をかん養し、就労意欲を喚起することを目的として、協力雇用主※7等の出所者等の雇用経験のある事業主等による職業に関する講話を実施している(2021年度(令和3年度)には、17庁(前年度:18庁)において延べ20回(前年度:19回)の講話を実施し、延べ2,230人(前年度:2,364人)の受刑者等が受講)。

 少年院では、就労先の職場への定着が出院後の再非行防止に有効であるとの観点から、在院者に対し、職業指導の一環として、就労及び職場定着のために必要な知識及び技能の習得を図ることを目的として、職業生活設計指導科を設けている。職業生活設計指導科では、受講者全員に対して統一的に行う必修プログラム64単元(就労支援ワークブック、ビジネスマナー、パソコン操作能力等)と、受講者個々の必要性に応じて選択的に行う選択プログラム30単元(安全衛生ベーシック講座、接客業ベーシック講座、成年就労ベーシック講座等)のうち12単元以上を組み合わせて行うこととしている。少年院における処遇の概要については【施策番号75】を参照。

 保護観察所では、ハローワークと連携して、保護観察対象者等のうち、就労体験の乏しい者、就労に必要な知識・技能が身に付いていない者等に対して、刑務所出所者等総合的就労支援対策(【施策番号5ア】参照)による就労支援を行っている。また、保護観察対象少年に対しては、必要に応じて、職業人として望ましい勤労観・職業観を醸成することを目的としたキャリア学習を実施し、社会的・職業的自立に向けた基礎となる能力や態度の育成に努めている。

資2-2-1 就労支援指導の概要就労支援指導の概要
就労支援指導の概要就労支援指導の概要

(3)矯正施設における職業訓練等の充実【施策番号3】

 法務省は、刑事施設において、刑務作業の一つとして、受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ、又は職業上有用な知識や技能を習得させるために、職業訓練を実施している。2021年度(令和3年度)には、建設機械科、介護福祉科、溶接科、ビジネススキル科等の合計56科目(前年度:53科目)の職業訓練が実施され、1万1,440人(前年度:1万1,827人)が受講した。そのうち、溶接技能者、自動車整備士、介護職員実務者研修修了証等の資格又は免許を取得した者は、延べ6,413人(前年度:6,249人)であった。また、職業訓練が、より出所後の就労に資するものとなるよう、有効求人倍率や企業からの受刑者雇用に係る相談件数、内定率、充足率等を考慮しながら、社会ニーズに沿った訓練科目等への見直しを行っており、2022年度(令和4年度)には、2021年度(令和3年度)に引き続き、建設・土木に関連する職業訓練を一部集約・統合して、同一施設において、より幅広い分野の資格を取得させるなど、訓練内容の更なる充実化を図っている。

 また、2018年度(平成30年度)から、イメージと実際の就労環境のかい離を解消させることで、出所後の就職先への定着を図ることを目的として、刑事施設在所中に内定企業や就労を希望する業種での就労を体験する職場体験制度を導入しているが、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した2021年度(令和3年度)には1庁で1人(前年:2庁2人、前々年:13庁35人)が職場体験を実施するにとどまった。

 また、一定の要件を備えている受刑者について、釈放後の住居又は就業先の確保等のために引受人※8や雇用主等を訪問するなどの必要があるときに、外出又は外泊を許すことがある(2021年度(令和3年度)は、外出19件(前年度:20件)、外泊0件(前年度:0件))。さらに、円滑な社会復帰を図るため必要があるときに、刑事施設の外で民間企業の事業所等に通勤させて、作業を行わせる外部通勤作業を実施しており、2021年度(令和3年度)末時点において、17庁において21か所の木工・金属・農業等の外部事業所がある。

 少年院では、在院者の勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させるために、原則として全ての在院者に職業指導を実施している。2022年(令和4年)4月1日には、少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)(【施策番号80】参照)の施行に合わせて、職業指導の再編(資2-3-1参照)を行い、製品企画科、総合建設科、生活関連サービス科やICT技術科を設け、時代のニーズに対応した能力の取得を目指している。なお、再編前の2021年(令和3年)には、情報処理科、介護福祉科等の職業指導を実施し、コンピューターサービス技能評価試験、介護職員初任者研修等、何らかの資格を取得した在院者は、延べ3,093人(前年:2,770人)であった。

 保護観察所では、刑務所出所者等に対する就労支援を推進するとともに矯正施設における職業訓練の充実にも資するよう、地元経済団体・業界団体、主要企業、産業・雇用に関わる行政機関、矯正施設、更生保護関係団体等が参集する刑務所出所者等就労支援推進協議会を毎年主催し、刑務所出所者等を各産業分野の雇用に結び付けるための方策や人手不足等の産業分野に送り出すための方策等について情報交換や協議を行っている。

資2-3-1 少年院における職業指導種目の再編
少年院における職業指導種目の再編

(4)資格制限等の見直し【施策番号4】

 法務省は、2018年度(平成30年度)に協力雇用主に対して、アンケート調査※9を実施したほか、2019年度(令和元年度)に各府省庁に対して、前科による資格制限の見直しに関する業界団体からの要望の有無等についての調査を実施した。2021年(令和3年)5月に成立した少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)(【施策番号80】参照)に係る衆議院及び参議院法務委員会の附帯決議※10において、若年者の社会復帰の促進を図るため、前科による資格制限の在り方についての検討等が求められた。

 これらを踏まえ、2021年(令和3年)6月以降、「再犯防止推進計画等検討会」の下で、外部有識者を構成員とする「前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキンググループ」※11を開催することとし、同ワーキンググループにおいて、少年院在院者等に対して、制限を緩和すべき資格に関するニーズ調査や、資格を所管する関係省庁からのヒアリングを行うなど、所要の検討を進めている。

  1. ※1 再犯防止推進計画
    https://www.moj.go.jp/hisho/saihanboushi/html/ns120000.html参照)との対応状況を明らかにするために付したもの。再犯防止推進計画のqr
  2. ※2 矯正施設
    刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。
  3. ※3 就労支援スタッフ
    キャリアコンサルティング等の専門性を有する非常勤職員。受刑者等に対する面接・指導のほか、ハローワークや事業主との連絡調整業務等を担っている。2022年(令和4年)4月現在、刑事施設75庁(前年:76庁)、少年院42庁(前年:44庁)に配置されている。
  4. ※4 就労支援専門官
    キャリアコンサルタント等の資格を有する常勤職員。就労支援対象者のうち、特に配慮を要する受刑者等に対する面接・指導のほか、就労支援スタッフ等に対する助言指導等を行っている。2022年(令和4年)4月現在、刑事施設18庁(前年:13庁)、少年院4庁(前年:3庁)に配置されている。
  5. ※5 統括矯正処遇官(就労支援担当)
    刑事施設内での就労支援を担当する幹部職員。就労支援スタッフや就労支援専門官を指導・監督するほか、関係機関及び団体との連絡調整業務等を担っている。2022年度(令和4年度)に、刑事施設12庁に新たに配置されている。
  6. ※6 刑事施設
    刑務所、少年刑務所及び拘置所をいう。
  7. ※7 協力雇用主
    保護観察所において登録し、犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪をした者等を雇用し、又は雇用しようとする事業主をいう。
  8. ※8 引受人
    引受人とは、刑事施設、少年院に収容されている者が釈放された後に同居するなどしてその生活の状況に配慮し、その改善更生のために特に協力をする者をいう。
  9. ※9 協力雇用主に対するアンケート調査
    協力雇用主の実情、ニーズ等を把握し、協力雇用主に必要な支援策等を検討するために実施したもの。調査内容は、雇用経験の有無、協力雇用主に対する支援として望むもの、協力雇用主に対する各種支援制度がどの程度周知されているか、雇用に当たっての問題点(資格制限、住居確保)等多岐にわたっている。
  10. ※10 少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)に係る附帯決議
    衆議院法務委員会における附帯決議(抜粋)
      政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
    • 一・二 (略)
    • 三 罪を犯した者、とりわけ十八歳及び十九歳などの若年者の社会復帰の促進を図るため、前科による資格制限の在り方について、対象業務の性質や実情等を踏まえつつ、府省庁横断のしかるべき場を設けるなどして、政府全体として速やかに検討を進め、その結果に基づいて、法改正を含め必要な措置を講ずること。
    • 四・五 (略)
      参議院法務委員会における附帯決議(抜粋)
      政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
    • 一~三 (略)
    • 四 罪を犯した者、とりわけ十八歳及び十九歳などの若年者の社会復帰の促進を図るため、前科による資格制限の在り方について、対象業務の性質や実情等を踏まえつつ、府省庁横断のしかるべき場を設けるなどして、政府全体として速やかに検討を進め、その結果に基づいて、法改正を含め必要な措置を講ずること。
    • 五~八 (略)
  11. ※11 前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキンググループの開催状況
    https://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho04_00050.html前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキンググループの開催状況のqr