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第1節 就労の確保等

3 新たな協力雇用主の開拓・確保

(1)企業等に対する働き掛けの強化【施策番号7】

 法務省は、コレワーク(【施策番号5イ】参照)において、刑務所出所者等の雇用に興味がある企業等に対して、刑務所出所者等の雇用に関する制度等について説明する雇用支援セミナー(写真2-7-1参照)や、同セミナーと矯正施設の見学をセットにしたスタディツアー等(【コラム2】参照)を開催するなど、刑務所出所者等の雇用に関する働き掛けを積極的に実施しており、2021年度(令和3年度)には、2,036件(前年度:2,630件)の広報活動を実施した。

写真2-7-1 雇用支援セミナーの様子
写真2-7-1 雇用支援セミナーの様子

 保護観察所では、各都道府県の就労支援事業者機構※15や更生保護関係者、矯正施設、労働局、ハローワーク、地方公共団体、商工会議所等経済・産業団体その他関係機関・団体等と連携して、新たな協力雇用主の開拓・確保に努めている。2020年度(令和2年度)には、法務省幹部が経済界に対し、刑務所出所者等の就労施策について理解を求めるなど、協力関係の構築に努めた。

 加えて、保護観察所や更生保護就労支援事業所(【施策番号5ウ】参照)では、協力雇用主募集のパンフレット※16の配布、協力雇用主募集ポスターの掲示※17、事業所への個別訪問、説明会の開催等を通じて協力雇用主に係る広報活動を積極的に行い、多くの企業等に保護観察対象者等の雇用について理解と協力を求めている。

 これらの取組により、協力雇用主の数は順当に増加しており、2021年(令和3年)10月現在、2万4,665社となっている(【指標番号6】参照)。

 なお、保護観察所において協力雇用主を登録する手続は、警察庁及び厚生労働省と協議した上で2018年(平成30年)8月に作成した「協力雇用主登録等要領」に基づいて適切に運用している。

(2)各種事業者団体に対する広報・啓発【施策番号8】

 農林水産省は、2016年度(平成28年度)から、農林漁業の関係団体のほか、個別の事業者に対しても、新規雇用に関する補助事業の説明会等において、協力雇用主制度の周知・登録要請等を行っている。なお、農林漁業関係の協力雇用主の数は、2021年(令和3年)10月1日現在、471社(前年:460社))であった。

(3)多様な業種の協力雇用主の確保【施策番号9】

 保護観察所では、ハローワーク、就労支援事業者機構等の関係機関・団体等と連携し、協力雇用主募集のパンフレット及びポスターを活用した広報活動、協力雇用主に関心のある事業所への個別訪問及び説明会の開催(【施策番号7】参照)等を通じて、協力雇用主の少ない業種を含め多様な業種の協力雇用主の確保に努めている(協力雇用主数の推移は【指標番号6】、業種別協力雇用主数は【特集第3節-③-(2)】参照)。

Column02 矯正施設における就労支援~スタディツアーによる理解促進~

山口刑務所

 2021年(令和3年)12月13日、山口刑務所(山口県山口市)においてスタディツアーを開催しました。本スタディツアーは、再犯防止及び受刑者の円滑な社会復帰に向けた就労支援の一環として、出所者の就労先の拡充につなげるとともに、出所後直ちに就労できる環境づくりの重要性について、就労支援の関係者や民間協力者から理解を得ることを目的としたものです。

 今回のスタディツアーでは、主に介護福祉関係者を対象として、山口刑務所の職業訓練の1つである介護福祉科の実施状況を中心に見学していただきました。これは、介護福祉科の修了者の就労先として、介護福祉施設が考えられるため、受刑者が改善更生及び社会復帰を目指して資格取得に励んでいる状況を実際に見ていただくことで、出所後の就労に対する理解を得られるようにしたいと考えたためです。当日は、山口県内の社会福祉関係者(15法人)及び山口市役所職員の合計27名に参加いただきました。本スタディーツアーでは、介護現場の業務に照らし合わせるように御覧いただき、参加者からは、自身の研修時代を思い出したとの感想もあるなど、特に興味を持っていただくことができました。

 また、本スタディツアーでは、上記の職業訓練のほかに、刑務所内の施設見学も行いました。一般の方々にとっては刑事施設の内部は未知の世界であることから、どのような形で刑務作業等が行われているのかについて正しい認識を持ってもらうため、企画したものです。ふだん見ることのできない、受刑者が社会復帰に向けて取り組む姿を見ていただくことで、刑事施設や受刑者に対するイメージが変わるきっかけになり、出所後の雇用に対しても抵抗感が減ったのではないかと感じました。加えて、コレワーク中国(広島矯正管区矯正就労支援情報センター)(【施策番号5イ】参照)から、再犯防止のための就労の確保の大切さや、出所者の雇用に関する制度等(協力雇用主等)について説明を行いました。出所者の雇用については、不安を感じている事業主も多いものと思われますが、この不安を少しでも解消するため、コレワークでは各種サポート体制を整えています。これらのサポートが出所者の雇用について前向きに検討していただくきっかけになれば幸いです。

 今回は、介護福祉関係者を対象にスタディツアーを実施しましたが、介護福祉関係の業務は、人と人が接する業務であり、出所者を雇用することをちゅうちょしてしまうこともあるかもしれません。一方で、スタディツアー実施前後に参加者に対して実施したアンケートの結果からは、スタディツアー実施前に約4割であった「出所者の雇用は困難」と考える意見が、実施後は約1割にまで減少しており、刑事施設内の見学や、出所者雇用に係る支援制度等に関する説明の場を設けることにより、出所者の雇用について、前向きに検討してもらうことにつながっていくのではないかと感じました。今後もこのような取組を継続して行い、出所者の雇用について、社会全体の理解が得られるよう努力していきたいと思います。

コレワーク室長による説明
  1. ※15 就労支援事業者機構
    犯罪をした人等の就労の確保は、一部の善意の篤志家だけでなく、経済界全体の協力と支援により成し遂げられるべきとの趣旨に基づいて設立され、事業者の立場から安全安心な社会づくりに貢献する活動を行う法人。認定特定非営利活動法人全国就労支援事業者機構(全国機構)と50の都道府県就労支援事業者機構(都道府県機構)がある。
    全国機構は、中央の経済諸団体(日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会)や大手企業関係者が発起人となり設立され、都道府県機構等に対する助成や協議会の開催等全国的なネットワークでの事業推進を図っており、都道府県機構は、協力雇用主等を会員に持ち、保護観察所等の関係機関や保護司等の民間ボランティアと連携し、具体的な就労支援の取組を行っている。
  2. ※16及び17 協力雇用主募集のパンフレット及びポスター
    https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo02_00030.html協力雇用主募集のパンフレット及びポスターのqr