少年法等の一部を改正する法律案要綱
第一 少年法の一部改正
第二 裁判所法の一部改正
第三 家事審判法の一部改正
第四 附 則
一 | 観護措置期間の延長 | ||
1 | 第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行ったものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、現行の一回を超えて、更に四回を限度として、行うことができるものとすること。(第十七条第四項関係) | ||
2 | 第十七条第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて十二週間を超えることができないものとすること。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、1の事由がなければならないものとすること。(第十七条第九項関係) | ||
3 | 少年、その法定代理人又は付添人は、第十七条第一項第二号の措置をとる決定又はその期間を更新する決定に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の申立てをすることができるものとすること。ただし、付添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、異議の申立てをすることができないものとすること。(第十七条の二第一項関係) | ||
4 | 3の異議の申立ては、審判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできないものとすること。(第十七条の二第二項関係) | ||
5 | 3の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならないものとすること。この場合において、その決定には、原決定に関与した裁判官は、関与することができないものとすること。(第十七条の二第三項関係) | ||
6 | 第三十二条の三、第三十三条及び第三十四条の規定は、3の異議の申立てがあった場合について準用するものとすること。この場合において、第三十三条第二項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとすること。(第十七条の二第四項関係) | ||
7 | 第三十五条第一項の規定は、5の決定について準用するものとすること。この場合において、第三十五条第一項中「二週間」とあるのは、「五日」と読み替えるものとすること。(第十七条の三第一項関係) | ||
8 | 6及び第三十二条の二の規定は、7による抗告があった場合について準用するものとすること。(第十七条の三第二項関係) | ||
二 | 検察官及び弁護士たる付添人が関与した審理の導入 | ||
1 | 家庭裁判所は、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件において、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させることができるものとすること。(第二十二条の二第一項関係) | ||
2 | 家庭裁判所は、1の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聴かなければならないものとすること。(第二十二条の二第二項関係) | ||
3 | 家庭裁判所は、1の事件において、その罪が被害者の死亡の結果を含むものである場合で、検察官の申出があるときは、明らかにその必要がないと認める場合を除き、1の決定をするものとすること。(第二十二条の二第三項関係) | ||
4 | 検察官は、1の決定があった事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問し、並びに意見を述べることができるものとすること。(第二十二条の二第四項関係) | ||
5 | 家庭裁判所は、1の決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならないものとすること。(第二十二条の三第一項関係) | ||
6 | 5により家庭裁判所が付すべき付添人は、最高裁判所規則の定めるところにより、選任するものとすること。(第二十二条の三第二項関係) | ||
7 | 6により選任された付添人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができるものとすること。(第二十二条の三第三項関係) | ||
8 | 7により付添人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例によるものとすること。(第三十条第四項関係) | ||
9 | 家庭裁判所は、少年又はこれを扶養する義務がある者から6により選任された付添人に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができるものとすること。(第三十一条第一項関係) | ||
10 | 6により選任された付添人については、第四十五条第六号の規定の適用がないものとすること。(第四十五条第六号関係) | ||
三 | 保護処分終了後における救済手続の整備 | ||
1 | 保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁判所は、決定をもって、その保護処分を取り消さなければならないものとすること。ただし、本人が死亡した場合は、この限りでないものとすること。(第二十七条の二第二項関係) | ||
2 | 保護処分の取消しの事件の手続は、その性質に反しない限り、保護事件の例によるものとすること。(第二十七条の二第六項関係) | ||
四 | 被害者等に対する少年審判の結果等の通知 | ||
1 | 家庭裁判所は、第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る事件を終局させる決定をした場合において、最高裁判所規則の定めるところにより当該事件の被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)から申出があるときは、その申出をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとすること。ただし、その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認めるものについては、この限りでないものとすること。(第三十一条の二第一項関係) | ||
(一) | 少年及びその法定代理人の氏名及び住居 | ||
(二) | 決定の年月日、主文及び理由の要旨 | ||
2 | 1の申出は、1の決定がされた日から三年を経過したときは、することができないものとすること。(第三十一条の二第二項関係) | ||
五 | 検察官に対する事実認定及び法令の適用に関する抗告権の付与 | ||
1 | 検察官は、二の1の決定がされた場合においては、保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し、二の1の決定があった事件の非行事実の認定に関し、決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り、二週間以内に、抗告をすることができるものとすること。(第三十二条第二項関係) | ||
2 | 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれている事項に限り、調査をするものとすること。(第三十二条の二第一項関係) | ||
3 | 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれていない事項であっても、抗告の理由となる事由に関しては、職権で調査をすることができるものとすること。(第三十二条の二第二項関係) | ||
4 | 抗告裁判所は、決定をするについて必要があるときは、事実の取調べをすることができるものとすること。(第三十二条の三第一項関係) | ||
5 | 4の取調べは、合議体の構成員にさせ、又は家庭裁判所の裁判官に嘱託することができるものとすること。(第三十二条の三第二項関係) | ||
6 | 抗告裁判所は、検察官から抗告がされた場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならないものとすること。(第三十二条の四関係) | ||
7 | 2から6までのほか、抗告審の審理については、その性質に反しない限り、家庭裁判所の審判に関する規定を準用するものとすること。(第三十二条の五関係) | ||
8 | 検察官は、二の1(7において準用される場合を含む。以下この項において同じ。)の決定がされた場合においては、抗告裁判所のした抗告を棄却し又は原決定を取り消す決定に対し、二の1の決定があった事件の非行事実の認定に関する判断について、憲法に違反し、若しくは憲法の解釈に誤りがあること、又は最高裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由とする場合に限り、最高裁判所に対し、二週間以内に、特に抗告をすることができるものとすること。(第三十五条第二項関係) | ||
9 | 抗告審に関する規定は、最高裁判所に対する抗告がなされた場合に、これを準用するものとすること。この場合において、第三十三条第二項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消さなければならない。この場合には、家庭裁判所の決定を取り消して、事件を家庭裁判所へ差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送することができる」と読み替えるものとすること。(第三十五条第三項関係) | ||
六 | 決定の効力 | ||
1 | 二の1の決定がされた場合において、当該決定があった事件につき、審判に付すべき事由の存在が認められないこと又は保護処分に付する必要がないことを理由とした保護処分に付さない旨の決定が確定したときは、その事件についても、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することはできないものとすること。(第四十六条第二項関係) | ||
2 | 1は、第二十七条の二第一項の規定による保護処分の取消しの決定が確定した事件については、適用しないものとすること。ただし、当該事件につき三の2によりその例によることとされる二の1の決定がされた場合であって、その取消しの理由が審判に付すべき事由の存在が認められないことであるときは、この限りでないものとすること。(第四十六条第三項関係) | ||
七 | その他所要の規定の整備を行うこと。 |
第二 裁判所法の一部改正
一 | 家庭裁判所は、審判又は裁判を行うときは、二の場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱うものとすること。(第三十一条の四第一項関係) | ||
二 | 次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱うものとすること。ただし、審判を終局させる決定並びに法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従うものとすること。(第三十一条の四第二項関係) | ||
1 | 合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件 | ||
2 | 他の法律において合議体で審判又は審理及び裁判をすべきものと定められた事件 | ||
三 | 二の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とするものとすること。(第三十一条の四第三項関係) |
第三 家事審判法の一部改正
一 | 家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、合議体の構成員に命じて終局審判以外の審判を行わせることができるものとすること。(第五条第一項関係) | ||
二 | 一により合議体の構成員が行うこととされる審判は、判事補が単独ですることができるものとすること。(第五条第二項関係) | ||
三 | その他所要の規定の整備を行うこと。 |
第四 附 則
一 | 施行期日 | ||
この法律は、平成十二年一月一日から施行すること。(附則第一条関係) | |||
二 | 経過措置 | ||
1 | この法律の施行の際現に係属している事件についてとられる少年法第十七条第一項第二号の措置における収容の期間の更新及び通算した収容の期間の限度については、第一による改正後の同法(以下「新法」という)の規定にかかわらず、なお従前の例によるものとすること。(附則第二条第一項関係) | ||
2 | 新法第十七条の二の規定は、1の少年法第第十七条第一項第二号の措置及びその収容の期間の更新の決定については、適用しないものとすること。(附則第二条第二項関係) | ||
3 | 新法第二十二条の二の規定(新法において準用し、又はその例による場合を含む。)は、この法律の施行の際現に係属している事件の手続並びにこの法律の施行後に係属する当該事件の抗告審及び再抗告審の手続については、適用しないものとすること。(附則第二条第三項関係) | ||
4 | 新法第二十七条の二第二項の規定は、この法律の施行後に終了する保護処分について適用するものとすること。(附則第二条第四項関係) | ||
三 | その他関係法律について所要の整備を行うこと。(附則第三条及び第四条関係) |