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本部事件の捜査


東京地方検察庁検事
経歴
 平成11年に任官後,東京,千葉,秋田,横浜,水戸,名古屋の各地方検察庁で勤務。
 その他,東京法務局,司法研修所で勤務。

 

本部係検事とは

 携帯電話の着信音が鳴る。捜査一課の管理官からの電話だ。緊張が走る。
 「検事さん。今,お電話よろしいですか。事件の発生です。今朝,○○で…」

 警察から,このような連絡が入るのは,犯人不明の殺人や強盗殺人等の凶悪重大事件が発生し,警察が犯人の早期検挙と真相解明に向けて,捜査本部を設置するような場合です。
 本部係検事は,こうした連絡を受けると,立会事務官と一緒に,大至急,事件現場等に出向き,現場観察,検視,情報収集,令状請求等の初動捜査を開始し,以後,警察と共働して捜査を進めます。本部係検事とは,警察が捜査本部を設置する凶悪重大事件(検察では,これを「本部事件」と呼んでいます。)の捜査を担当する検事です。

本部係検事の役割と醍醐味

 どうして,検事が,本部事件の発生当初から関与する必要があるのでしょうか。警察だけで捜査するものなのではないかと思う方もいるかもしれません。
本部事件は,特に被害を受けた方々を深く悲しませ,社会をも不安にさせるものですから,少しでも早く犯人を検挙する必要がある一方で,裁判で有罪となれば,極めて重い刑罰を科されることとなるので,真犯人でない人を逮捕,勾留,起訴することは決して許されません。ですから,真犯人の早期検挙から適正な科刑の実現まで,これらを,適時,正確に手抜かりなく行っていくことが求められます。
 だからこそ,検事も,捜査・公判手続を知る法律家として,事件の発生当初から,警察と共働し,犯人としていかなる人物がいかなる経緯で捜査線上に浮上したのか,それ以外の人はなぜ犯人ではないのか,この人物が犯人だと裁判で立証するのに十分な証拠があるのかなどについて適時適切に把握し,これを慎重に考察し,必要な捜査を検討・実施していくのです。
 この種事件の解決への道のりは決して平坦なものではなく,壁にぶつかることも少なくありません。そこで簡単に諦めず,被害を受けた方々の思いに少しでも応えるべく,検事と警察とで,互いに知恵を出し合い,労をいとわず,さまざまなトライをし,何とかその壁を乗り越えて,適正な事件処理ができたときには,何ともいえない達成感と同時に,ほっと肩の荷が下りる感じがします。
 本部係検事は,警察と連絡を取り合うため,常に携帯電話を持ち歩き,事件が発生すれば,昼夜を問わず,平日休日を問わず,これに対応しなければなりません。本部事件は,テレビや新聞等で報道されて,社会の強い関心を引くものも多く,この捜査処理に当たる検事としての職責には重いものがありますが,正義感を持って,誠実かつ献身的に事件に向き合うことで,これを果たすことができるのではないかと思っています。
 最近では小説や映画でも,本部係検事が登場するものもありますが,皆さんも検事になれば,現実の本部事件を手掛ける機会が巡ってくるかもしれません。