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社会復帰支援


東京地方検察庁検事(筆者は右端)
経歴
 平成18年に任官後,東京,横浜,山形,大阪の各地方検察庁に勤務。
 その他,外務省で勤務。また,アメリカで在外研究を経験。

社会復帰支援の取組

 「もう二度と犯罪はしません。」
 そう言って社会に戻る被疑者・被告人が,その決意を持ち続け,再度罪を犯さず,社会を構成する一員として暮らし続けることができるように支援することは,検察が社会を安全・安心なものとするためにできる一つの方策であり,これを社会復帰支援と呼んでいます。
 不起訴処分や,罰金,執行猶予の判決が見込まれる被疑者・被告人の中には,高齢,障害等の事情を抱えていたり,生活困窮者であったりするために,その社会復帰に福祉的・医療的支援等が必要である人たちがいます。しかし,利用可能な制度があることを知らなかったり,制度の存在は知っていても,自分では利用のための手続ができない人も少なくなく,釈放後に以前と同じ生活に戻ってしまい,その結果,再度罪を犯してしまう人もいます。
 そのようにして再犯に及ぶことのないよう,釈放後,社会に復帰するに当たり,その人が抱える課題を克服するのに最善と思われる支援策を考え,これをスムーズに実施できるように支援するのが,私の所属する社会復帰支援担当部署です。
 この部署は,平成25年に東京地検内に設けられたものであり,現在は,検事である私と検察事務官数名に加え,社会福祉士等の資格を有する社会福祉アドバイザー数名が所属しています。
 捜査や公判を担当している検察官からの連絡を受けて,私たちは支援策を考え始めます。事件処理とは異なる観点から記録を読み込み,支援の対象となる者の人生を丁寧に振り返り,抱える福祉的課題をあぶり出していきます。その上で,その課題を解決するために何が必要か,そのために使える制度等は何か,取り得る支援策が複数あるなら,対象者の経歴や性格等からどれが最適かを検討し,いわばオーダーメードの支援策を立てます。
 提案した支援策を使って社会復帰したいとの思いを対象者が持つのであれば,その同意を得て,関係機関に連絡し,支援策の実施に向けて調整します。これを,「つなぐ」と呼んでいます。つなぎ先は,対象者の抱える課題に応じて,保護観察所,福祉事務所,医療機関等と様々です。つなぎ先との事前調整は,関係機関における対象者の理解をより正確なものとし,実際の支援実施の基礎となる重要なものです。また,対象者本人の社会復帰したい,再犯はしないという意思は必須ですので,対象者が支援策の利用をちゅうちょしている場合には,面談を行うなどして,社会復帰への意欲を高めることもあります。さらに,説明がうまくできないために支援を受けることを諦めてしまわないよう,釈放日に対象者に同行して関係機関に赴き,手続等のサポートをすることもあります。
 心理面でも,制度面でも,社会復帰のスタートを後押しすることで,対象者の自立に向けた第一歩への橋渡しをしています。
 また,特に,児童虐待,高齢者虐待,家庭内暴力等の加害者と被害者との間に特殊な関係があるために再犯・再被害のおそれが高い事案においては,当庁の犯罪被害者支援室や地域の関係機関とも連携し,総合的な再犯・再被害防止策を講じています。
 社会復帰支援は,一人でも多くの人が二度と犯罪を起こさないための環境を調整することで,新たな被害が生じない安全・安心な未来を作る仕事と感じています。