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無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告(平成20年分)

2009年4月21日 更新

政府は,平成21年4月21日(火),無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号,以下「団体規制法」という。)第31条の規定に基づき,平成20年1月1日から同年12月31日までの間における団体規制法の施行状況について,国会に報告いたしました。同報告の概要は以下のとおりです。

第1 観察処分の決定と観察処分の期間の更新の経緯

公安審査委員会は,平成12年1月28日,団体規制法第5条第1項の規定に基づき,「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(以下「当該団体」という。)について,3年間の観察処分(公安調査庁長官の観察に付する処分をいう。以下同じ。)を行う決定を行った。さらに,同条第4項の規定に基づき,平成15年1月23日及び平成18年1月23日,それぞれ観察処分の期間を更新する決定を行った。

第2 観察処分の期間の更新請求

公安調査庁長官は,当該団体について,団体規制法第5条第1項各号に掲げる事項のいずれにも該当し,引き続きその活動状況を継続して明らかにする必要があると認め,団体規制法第12条第2項の規定に基づき,あらかじめ警察庁長官の意見を聴いた上,同条第1項後段の規定に基づき,平成20年12月1日,公安審査委員会に対し,平成18年1月23日付け同委員会決定によりその期間が更新された観察処分(以下「平成18年に更新された観察処分」という。)について,その期間の更新を請求した。
 公安審査委員会は,平成18年に更新された観察処分の期間の更新の請求を受け,団体規制法第26条第3項及び第4項の規定に基づき,当該団体に対し,更新が予定される処分の内容及び更新の根拠となる法令の条項,更新の理由となる事実並びに陳述書の提出先及び提出期限を通知し,意見陳述の機会を付与して,当該団体から陳述書の提出を受けるなどした。
 公安審査委員会は,公安調査庁長官による上記観察処分の期間の更新の請求につき審査を遂げた結果,同請求に理由があると認め,平成21年1月23日,団体規制法第5条第4項の規定に基づき,平成18年に更新された観察処分の期間を更新する決定を行った。同決定は,平成21年1月30日,官報で公示され,その効力を生じた。

第3 観察処分の実施等

1 観察処分に基づく調査等
 公安調査庁長官は,当該団体に対する平成18年に更新された観察処分の実施のため,団体規制法第7条第1項の規定に基づき,公安調査官に必要な調査をさせたことに加え,同条第2項の規定に基づき,平成20年中,合計20回にわたり,当該団体が所有し又は管理する土地又は建物延べ33箇所(実数30箇所)に公安調査官を立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させた。
 関係都道府県警察は,公安調査官による立入検査に際し,立入先周辺の警戒警備を実施した。
 公安調査庁長官は,団体規制法第5条第5項において準用する同条第3項の規定に基づき,平成20年中,三月ごと4回にわたり,当該団体から,当該団体の役職員及び構成員の氏名及び住所,当該団体の活動の用に供されている土地及び建物の所在及び用途,当該団体の資産,当該団体の収益事業の概要,各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所等の事項について報告を受けた。
 公安調査庁長官は,団体規制法第5条第6項の規定に基づき,これらの報告内容を警察庁長官に通報した。  
2 調査結果の提供
 公安調査庁長官は,団体規制法第32条の規定に基づき,関係地方公共団体の長の請求を受け,平成20年中,合計45回にわたり,延べ49(実数22)の関係地方公共団体の長に対し,これまでの観察処分に基づく調査の結果を提供した。  
3 観察処分の取消しを促す申立て
 当該団体のうち,上祐史浩(以下「上祐」という。)を中心とする一部の信徒(以下「上祐派」という。)が,「ひかりの輪」の名称で,平成20年9月5日,団体規制法第6条第2項に基づき,平成18年に更新された観察処分の取消しの職権発動を促す書面を公安審査委員会に提出した。
 これに対し,公安審査委員会は,平成21年1月23日,職権を発動しないこととした。 

第4 当該団体の現状

1 組織の概況
 当該団体は,平成20年12月31日現在,国内に信徒約1,500人(出家信徒約500人,在家信徒約1,000人),ロシア連邦内に信徒約200人を擁している。国内の信徒約1,500人のうち,出家信徒のほぼ全員,在家信徒のおよそ7割が「地下鉄サリン事件」以前に入信した者で占められている。また,国内に15都道府県下30箇所の拠点施設及び約80箇所の出家信徒居住用施設,ロシア連邦内に数箇所の拠点施設を確保している。 なお,当該団体においては, 平成19年3月,上祐派が,当該団体の中心として活動してきた「宗教団体アーレフ」(以下「アーレフ」という。)から脱退した旨を表明し,同年5月,「ひかりの輪」の設立を表明した 。しかし,「ひかりの輪」においては,①「アーレフ」の代表を務めていた上祐を始めとした当該団体の信徒を中心に組織されており,その参加者のほとんどは当該団体の信徒として長年活動してきた者であること,②代表役員として活動する上祐を始めとして,その幹部は主に当該団体において上位の位階を有する者によって構成されていること,③「Aleph」(平成20年5月,「アーレフ」から改称)及び「ひかりの輪」の双方の活動に参加する信徒が存在すること,④現在もその参加者が「松本サリン事件」及び「地下鉄サリン事件」(以下「両サリン事件」という。)の関与者の支援活動に参加していること,⑤その中心的活動場所は以前から当該団体の主たる事務所として用いられていた場所であること,(6)上祐を始めとした「ひかりの輪」で中心的に活動する者が,その設立前後に,その設立目的等について,組織維持のため組織を二つに分けるべきだなどとする,両サリン事件の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫(以下「松本」という。)の言動やタントラ・ヴァジラヤーナに関する松本の言動等を引用しつつ,観察処分を免れて,松本の意思を実現するためである旨を繰り返し述べていたことなどが確認されている 。こうしたことから,「ひかりの輪」は,松本に対して帰依し,松本の説くオウム真理教の教義に従う者によって,観察処分を免れ,松本の意思を実現することを目的として組織されたもので,依然として,松本及び松本の説くオウム真理教の教義を共通の基盤としつつ,当該団体の重要な一部を構成していると認められる。  
2 活動の概況
( 1) 松本の影響力
 当該団体においては,①幹部信徒らが,各地における説法や機関誌を通して,信徒に対し,松本を,主神であるシヴァ神の化身であり,かつ,教祖であると位置付け,「尊師」,「グル」と尊称し,松本及び松本の説くオウム真理教の教義への絶対的帰依を強く指導したり,松本の説く「衆生救済」を実現するように強調していること,②松本がかつて行った説法を収録したDVDを用いて信徒に教学させたり,松本への絶対的帰依を誓う詞章を唱え続けさせるなどのマインドコントロールの手法を用いた儀式・修行を行うなどして,自己の意思や思考を捨て,松本及び松本の説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を強化していること,③殺人を暗示する内容の危険な教義等を説いた松本の説法を収録したDVD等を保管し続けていること,④死刑判決が確定した松本の死刑執行延期,延命を祈願するよう日常的に指導していること,⑤松本の子を「王権」の後継者として扱っていることなどが確認されている。
  こうしたことから,当該団体は,現在においても依然として,松本及び松本の説くオウム真理教の教義がその存立の基盤をなしていると認められ,松本が,その活動に絶対的ともいえる影響力を有していると認められる。
( 2) 閉鎖的・欺まん的体質
 当該団体は,出家信徒を当該団体管理下の拠点施設等に集団居住させて,一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築しているほか,公安調査官の立入検査におけるパソコンの検査に際し,電源の切断による隠ぺい工作や種々の非協力的な行為をしたことなどが確認されていることから,その組織体質は依然として閉鎖的であると認められる。
  また,当該団体は,公安調査庁長官あての報告において,構成員の一部を報告せず,活動に関する意思決定についても実態に即した内容を報告していないほか,対外的には,閉鎖的体質を改め,社会との融和を目指す旨主張したり,両サリン事件を反省する旨主張しているものの,実際には,社会との対決姿勢を示したり,幹部信徒らが両サリン事件を教義の実践であったとして正当化する発言を行うなどしていること,当該団体の活動拠点として用いる意図を秘して不動産を取得していることなどが確認されていることから,その組織体質は依然として欺まん的であると認められる。
( 3) 資金及び信徒獲得に向けた諸活動
 当該団体は,従前と同様,一般企業に就業する出家信徒の給与等を上納させるとともに,在家信徒からは幹部信徒による説法会において参加費や布施を徴収したり,「集中セミナー」を年3回(年末年始,5月連休,夏季)実施して高額な布施を徴収したりするなど,多額の資金を獲得している。
 また,当該団体は,在家信徒が精神世界に興味を持つ者等に声掛けした上で出家信徒が身分を秘匿して勧誘しているほか,インターネットを利用した勧誘活動を行うなど,信徒の獲得に取り組んでいる。  

※ 昨年のオウム真理教の活動概況等について,平成21年「内外情勢の回顧と展望」を参照

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