内外情勢の回顧と展望(平成17年1月)
第4 平成16年における公安調査庁の取組と今後の課題
1 国際調査
公安調査庁では,我が国及び国民の平和と安全の確保に寄与すべく,国際テロや北朝鮮問題等に重点を置いた情報の収集・分析と関係機関への提供に庁を挙げて取り組んだ。
4月には,本庁において課長相当職である公安調査管理官1人を国内調査部門から国際調査部門に移し替え,同職及びそのスタッフ組織を国際テロ調査の専門部署として新たに立ち上げるとともに,同部署を核に国内調査部門も組み込んだ特別調査本部を再構築し,これを軸に広範なテロ関連情報の収集に努めた。また,イラクにおける4月,10月の邦人人質事件の発生に際しては,それぞれ特別調査本部内に特別調査室を設置し,集中的な情報の収集に取り組んだ。
一方,北朝鮮問題に対しては,調査現場における調査要員を大幅に増員するとともに,国際テロ調査同様に国内調査部門の調査力も活用して情報収集力の向上を図った。
2 国内調査
国内調査においては,引き続き公安調査庁長官の観察処分に付されているオウム真理教に対する調査を最重点に取り組み,1月以降11月末までに17都道府県延べ36か所の教団施設に対する立入検査を実施するなどして,教団の実態や危険性の解明に努めた。この間,2月の判決公判に際しては,不法事犯の未然防止に向けて特別体制を組んで主要11施設一斉立入検査などを実施し,不穏分子や不穏動向の発見に努めた。
また,自衛隊のイラク派遣をめぐる過激派の反対行動や,拉致問題や尖閣諸島をめぐる右翼団体の北朝鮮,中国批判活動に注目した調査活動を展開した。
3 今後の課題
既に述べたような国内外の公安情勢の下において,我が国及び国民の平和と安全を確保するとともに,国際社会に対する責務を果たすためには,治安関係情報の収集体制を整備・強化することが不可欠である。公安調査庁では,引き続き,情報収集体制の整備・強化に努めるとともに,その情報収集機能を最大限に活かして,国際テロや北朝鮮問題を始めとする我が国の治安に直接,間接に影響を及ぼす諸情勢に関する関連情報の収集に全力を挙げて取り組むこととしている。そして,そのために必要な情報網の拡充・強化と内外の関係機関との緊密な協力体制の構築を推進していきたいと考えている。
特に,国際テロを未然に防止するためには,水際でのテロリストの入国阻止と国内における不穏動向の把握が重要であるので,国際機関や外国情報機関等との連携を強化して,テロリストに関する情報その他テロ関連情報の収集を強化するとともに,テロリストの隠れみのとなり得る国内の組織や団体等に対する情報網を拡充して不穏動向や不審者の把握に努力していきたい。
また,国際テロに関しては,内閣に設置された国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において,その防止策について法整備も含めて検討が行われているが,公安調査庁は,米英その他の国のテロ対策等についても調査の上,その検討に積極的に参画しており,関係省庁と協力して,実効性あるテロ防止体制の確立に努めたいと考えている。
一方,オウム真理教は,依然として危険性を有しており,周辺住民は今なお不安感を訴えており,規制強化を求める声も寄せられている状況にあるので,再発防止処分の適用も視野に入れた,徹底した調査,検査を推進するとともに,情報提供を拡充して住民の不安の解消に努める考えである。
また,国内外の諸情勢の影響を受け,過激派や右翼団体などが抗議・批判活動を展開することも予想されることから,引き続き,これらの団体等の様々な活動を注視していく必要があると考えている。