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内外情勢の回顧と展望(平成20年1月)

第1 平成19年の公安情勢の概況

1 国際情勢
 2007年(平成19年)の国際情勢を概観すると,ロシア,中国などが経済成長とともに存在感を高める一方,北朝鮮の核開発,国際テロの主体・手段の多様化,治安が悪く混乱が続くイラク,アフガニスタンや政情不安定なパキスタンなど,国際情勢は不透明化,混迷化の様相を深めた。
 我が国周辺の情勢を見ると,まず,北朝鮮については,核問題に関し,北朝鮮が5メガワット原子炉及び再処理施設など寧辺の3施設の「無能力化」と「核計画の完全かつ正確な申告」を受け入れ,それと引き替えに米国がテロ支援国家リストから北朝鮮を除外する作業を進めることなどを盛り込んだ共同文書に合意するなど,米朝関係の進展を印象付けた。また,韓国との関係では,6者協議の進展などを背景に7年振りに南北首脳会談に応じ,韓国から各種経済協力支援の獲得に成功した。一方,我が国との関係では,我が国の拉致問題への対応や対北朝鮮措置への反発を依然として強めている。国内では,年初から「経済重視」を標榜したものの,引き続き電力難などインフラ整備が進まず,水害の追い打ちで国民生活は深刻な打撃を受けた。また,北朝鮮指導部は,貧富格差の拡大など,体制不安定化要因の増大に危機感を持ち,国内統制に力を注いだ。
 中国では,党大会で第二期胡錦濤政権が発足し,江沢民前総書記の影響力を残しつつも,胡自身の出身母体である「共産主義青年団」出身の幹部が政治局委員などに多数起用されるなど,政権基盤強化の動きが見られた。国内的には,経済安定と成長を志向するも,環境問題,格差問題など,社会の不安定化要因は増大した。また,対外的には,「責任ある大国」として,北京オリンピックの開催を控え,全方位の協調外交を積極的に展開しつつ,国際社会での地位向上,中国脅威論の払拭に努めた。対日関係では,温家宝総理が「氷を溶かす旅」として訪日し,関係改善の姿勢をアピールしたものの,日中間の懸案事項をめぐっては,自国の立場を強く主張した。
 ロシアは,プーチン大統領自らの影響力を温存させる後継体制構築の動きを本格化させ,我が国との関係では,北方領土問題でこう着状態が続く中,北方四島のインフラ整備に着手し,ロシア領としての既成事実化を推進した。
 中東地域では,イラクの政権基盤に弱体化が進み,また,中東和平プロセスも難航するなど,一層混迷度を深めた。さらに,イランは,米国及び国連安保理など国際社会の圧力を強く受けながらも,ウラン濃縮活動を拡大した。
 国際テロに関しては,「アルカイダ」がテロ攻撃能力を回復しつつあるとして,欧米諸国が警戒を強める中,「アルカイダ」幹部らが世界に向けて米国及びその主要同盟国などへの「グローバル・ジハード」を呼び掛けるなど,特にイデオロギー面での影響力拡大を企図した動きが見られた。また,英国,ドイツなどの欧米諸国では,いわゆる「ホームグロウン(自国内育ちの)・テロリスト」によるテロ発生や大規模なテロ計画の発覚が相次ぎ,その危険性と脅威がより鮮明になった。

2 国内情勢
 オウム真理教は,観察処分を逃れるために“麻原隠し”路線を推進した正大師・上祐史浩を支持する上祐派とこれに反対する主流派との対立が決定的となり,上祐派が「宗教団体アーレフ」を脱会し(3月),“新団体”「ひかりの輪」を設立した(5月)。こうした中,主流派は,麻原への絶対的帰依の徹底を進める中堅幹部グループが台頭し,二ノ宮耕一を除く4人の正悟師を上祐派との共存を図ろうとしているとして排除する動きを強めた結果,正悟師2人が脱会した。組織運営の実権を掌握した同グループは,麻原の説法の映像を長時間連続して視聴させる修行を信徒に課すなど,組織の結束強化と麻原への絶対的帰依の徹底を押し進めた。一方,上祐派は,“新団体”設立後,対外的に“脱麻原”をアピールしつつ,上祐が全国の各施設で説法会を開催したり,インターネットを利用した布教・宣伝活動を行うなど勢力の拡大に取り組んだが,活動内容や新たに作成した教材などには,いまだに麻原の影響がうかがわれるなど,依然として麻原の影響下にあると認められる。
 共産党,過激派は,在日米軍再編計画に基づく米軍の機能や訓練の移転を始め,航空自衛隊によるイラク復興支援活動や海上自衛隊によるインド洋での給油活動に反対し,各地で集会・デモを実施したほか,憲法改正や教育改革,「年金」,「貧困・格差」などの問題をとらえ,政府・与党を批判・追及する活動に力を注いだ。また,過激派が主導する反グローバル化運動団体などは,北海道洞爺湖サミット(平成20年)反対行動に向けて,サミット反対を掲げる海外の団体と交流した。他方,右翼は,拉致問題や短距離ミサイル発射などの北朝鮮問題を始め,歴史認識や領土・領海など近隣諸国との諸問題を中心課題に据えて活発な活動を展開したほか,中国首脳・要人の来日の機会をとらえ,反中国を掲げた活動にも積極的に取り組んだ。

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