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オウム真理教に対する観察処分の期間更新決定の概要(平成18年1月)

2006年1月23日 更新
公安審査委員会

決定の概要



【 被請求団体】

 麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体


【 決定主文】
1  平成15年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を,更新する。

2  被請求団体は,法第5条第5項において準用する同条第3項第6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
 (1 ) 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
 (2 ) 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
 (3 ) 被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録媒体の保管場所)

【 決定理由の要旨】
1  観察処分の期間の更新の要件を満たすと認められること
 被請求団体においては,両サリン事件の首謀者である松本が,主神であるシヴァ神の化身であり,かつ,教祖であると位置づけられ,構成員に対して同人への絶対的な帰依が説かれており,依然として松本の存在がその存立の基盤を成している上,現に,被請求団体は,松本の意思を推し量り,これに基づいて活動していることから,松本は,現在も,被請求団体の活動に絶対的な影響力を有しているとともに,その代表者たる役員であり,かつ,構成員であると認められる(法5条1項1号ないし3号)。
 また,被請求団体においては,両サリン事件に関与した土谷正実,新實智光,横山正人,渡部和実及び角川知己が,団体加入者として認知された構成員であると認められ(同項2号),現在,被請求団体の役員と認められる上祐史浩,杉浦茂及び野田成人は,両サリン事件当時も,それぞれ,ロシア支部,文部省,車輌省の統括責任者の地位にあるなど,被請求団体において枢要な役割を果たす役員であったと認められる(同項3号)。
 さらに,被請求団体の教義は,政治上の主義が枢要な一部をなし,かつ,殺人を暗示的に勧める内容を含む危険なものであるところ,被請求団体は,現在も,かかる危険な教義を保持し,かつ,これを構成員の行動規範としているから,殺人を暗示的に勧める綱領を保持していると認められる(同項4号)。
 上記に加え,被請求団体においては,前回期間更新決定以降,松本の絶対的な影響力がより一層強固なものとなっていること,両サリン事件を正当化する構成員の言動が多数認められること,依然として構成員をマインドコントロールする修行・儀式が行われていること,松本を「王」とし,松本の子を「王権」継承者とする動きが認められることなど,現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実がある(同項5号)のはもとより,その体質は未だ閉鎖的・欺まん的で,その活動状況を把握するのが困難な実情にあり,引き続きその活動状況を継続して明らかにする必要性がある(同条4項柱書)と認められるから,被請求団体について観察処分の期間の更新の要件を満たすと認められる。

2  被請求団体の主張には理由がないこと
 被請求団体は,「法5条1項各号の要件には該当せず,教団改革により無差別大量殺人行為を繰り返す危険性は既になくなっているから,本件観察処分の期間を更新する必要性はない。」旨主張するが,被請求団体においては,教団改革が行われたと認められる証拠はなく,上記1のとおり,法5条4項,同条1項各号の各要件に該当する事由が認められ,松本若しくは同人の影響を受けた者の言動又は同人に対する刑事被告事件の推移によっては,被請求団体が再び無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を否定できない。

【 公安調査庁長官に報告させる事項】

 法5条5項,同条3項6号に基づく報告事項について,当委員会の裁量により,従前のものに加え,被請求団体の営む収益事業の概要等(決定主文2(3)参照)を新たに報告させることとした。



【 参 考】
○  決定に至る経過等
 平成17年11月25日 公安調査庁長官から当委員会に対し観察処分の期間の更新の請求
   18年 1月10日 被請求団体から,書面の内容の口頭による陳述を聴取
       23日 観察処分期間更新決定

○  関係条文
 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号)
 第5条(観察処分)
   第1項  (略)
     一  当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。
     二  当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。
     三  当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
     四  当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。
     五  前各号に掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。
   第2項  (略)
   第3項  第1項の処分を受けた団体は,(中略)次に掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。
     一  当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所
     ( 中略)
     六  その他第1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項
   第4項  公安審査委員会は,第1項の処分を受けた団体が同項各号に掲げる事項のいずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新することができる。
   第5項  第3項の規定は,前項の規定により期間が更新された場合について準用する。この場合において,第3項中「当該処分が効力を生じた日から」とあるのは,「期間が更新された日から」と読み替えるものとする。

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