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公安調査局長・公安調査事務所長会議における公安調査庁長官訓示

2010年5月31日 更新
公安調査局長・
公安調査事務所長会議

北田公安調査庁長官訓示

本日,ここに公安調査局長・公安調査事務所長会議を開催するに当たり,所懐の一端を申し述べます。

我が国の治安等に影響を及ぼす国際情勢を見ますと,北朝鮮は,核問題をめぐり,いまだ6者協議復帰を明言しないばかりか,核兵器の増産を重ねて表明するなど,依然として核開発を継続する構えを見せております。さらに,韓国哨戒艦沈没事案の惹起等により朝鮮半島情勢に一層の緊張状態を生じさせており,今後更に強硬姿勢を強めることが懸念されます。また,拉致問題については,一昨年に日朝間で合意した調査のやり直しにいまだ着手していないなど解決に向けた具体的な行動をとっておりません。

国際テロに関しては,中東,アジアなど世界各地でテロが発生する中,昨年12月には,「アルカイダ」系組織による米国籍航空機爆破テロ未遂事件が発生するなど,その脅威は拡散傾向にあります。

一方,国内情勢を見ますと,オウム真理教に関しては,「麻原脱却」を標榜する上祐派は,本年が地下鉄サリン事件15年の節目に当たることから,マスコミ各社の取材に積極的に応じ,教団の現状として“脱麻原”をアピールするなど,その欺まん的な主張を浸透させようと躍起になっております。また,“麻原回帰”路線を推進する主流派は,組織勢力の拡大に向け,青年層を主な対象に巧妙な勧誘活動に取り組むとともに,麻原の“平和的影響力”なる独善的な主張を展開するなど,同路線を正当化し強化しようとしています。こうした教団の動きに対して,地域住民の不安感は払拭されていないのが現状であります。

このほか,改善の兆しを見せない経済状況などを背景に過激派等の諸団体が活動を活発化させております。

こうした現下の情勢にかんがみ,当面,留意願いたい事項を申し述べます。

第一は,北朝鮮関連情報の収集強化についてであります。

北朝鮮による核・ミサイル問題や日本人拉致問題及び緊張の高まる朝鮮半島情勢は,我が国の平和と安全にかかわる重大な問題であります。各局・事務所においては,思想・組織強化と民族教育強化を標榜しながら,北朝鮮への従属姿勢を強める朝鮮総聯の動きにも十分注視しつつ,これら諸問題をめぐる北朝鮮の動向や今後の対応方針を迅速かつ的確に把握するなど,政府の施策に資する情報の収集に重点的に取り組んでいただきたいのであります。

第二は,国際テロ関連調査の更なる推進についてであります。

国際テロの脅威が依然として拡散傾向にある中,当庁としては,日本国内における国際テロの未然防止のため全力を尽くしていかなければなりません。各局・事務所においては,要員等を適切に配置・運用し,国際テロ組織とのかかわりが疑われる人物や組織の有無及びその動向等に関する情報の収集を更に進めて,国際テロ組織関係者の発見や不穏動向の早期把握に努めていただきたいのであります。特に,本年は,日本APECが開催されますので,その安全な開催に向け,関連情報の収集に遺漏なきを期していただきたいと思います。

第三は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施についてであります。

オウム真理教は,現在,主流派,上祐派が,それぞれの立場から独自の活動に取り組んでおりますが,その実態は,両派共麻原の絶対的とも言える影響力の下にあり,依然として本質的な危険性を保持していると認められます。当庁としては,引き続き観察処分を適正かつ厳格に実施して,その危険性の増大を抑止し,観察処分の次回更新請求,再発防止処分の請求も視野に入れ,教団の組織活動の実態解明に努めるとともに,地域住民らの不安感・恐怖感の解消を図るため,関係地方公共団体への調査結果の提供や地域住民との意見交換会の内容を充実・強化させるなど,なお一層努力していく必要があります。

第四は,国内治安動向への警戒についてであります。

過激派等の諸団体は,長引く景気の低迷や雇用情勢の不安定化など国民の不満や不安感に乗じて,社会の各層各分野に対する働き掛けを強化して勢力拡大を図りながら,普天間基地移設問題など重要政策をとらえて,政府批判を活発化させるなどの動きを見せています。また,日本APEC首脳会議及びその関連会合の開催地においては,国内外の諸団体,諸勢力による妨害活動や抗議活動なども懸念されます。各局・事務所においては,これら不穏動向に関して,必ず事前に把握するという強い使命感を持ち,調査に当たっていただきたいのであります。

以上,当面の諸課題について申し述べましたが, 御承知のとおり,当庁が置かれている予算・定員事情には厳しいものがあります。このような状況下において,当庁が団体規制機関として,また,情報機関として,その責務を十全に遂行するためには,次代を担う若手調査官を適切に指導監督し,現場での足腰が強い調査官として育成する一方,人的物的資源を効率的に活用するなどして,組織力を一層向上させることが極めて肝要であります。調査活動の現場の最高幹部である皆様には,改めてこの点を強く認識した上で,部下職員の指導監督に当たっていただきたいのであります。

終わりに,皆様の平素の御労苦に心から敬意と謝意を表し,私の訓示といたします。

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