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公安調査局長・公安調査事務所長会議における公安調査庁長官訓示

2011年5月26日 更新
公安調査局長・
公安調査事務所長会議

尾﨑公安調査庁長官訓示

我が国を取り巻く国際情勢には,法務大臣訓示にありましたとおり,警戒・注目を要する事象が少なからず存在しております。

まず,北朝鮮は,国内で金正日総書記の三男・金正恩への権力継承に向けた準備を進める一方,対外的には,韓国哨戒艦沈没事件に続けて延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件を惹起するとともに,核開発継続の姿勢を示しつつ,米韓との対話を求める動きも見せるなど,硬軟織り交ぜた姿勢を示しております。

また,中国は,近年の国力増進を背景に軍事力の増強とも並行して,「海洋権益保護」の名の下に「海上における法執行」と称する活動の強化や尖閣諸島周辺海域への公船・軍用機派遣の活発化などの動きを見せております。さらに,ロシアについては,来年に大統領選挙が予定される中,我が国北方領土に関し,昨年メドベージェフ大統領が訪問を強行したほか,経済・社会基盤の開発に加えて,軍備充実の方針を示すなど,「ロシア領」としての既成事実化を図る動きが見られます。

国際テロに関しては,オサマ・ビン・ラディンが死亡したものの,世界各地におけるテロの脅威は拡散傾向にあって,依然として深刻であり,予断を許しません。

一方,国内情勢に目を転じますと,オウム真理教に関しては,主流派が“麻原回帰”路線を一段と加速させ,ますますその閉鎖性を強めています。また,上祐派は,“麻原隠し”を推進し,“脱麻原”を社会にアピールするなどの欺まん的な主張を浸透させようと躍起になっており,当庁は,これに適切に対処して,公共の安全の確保と国民の不安の解消に努めなければなりません。

このほか,東日本大震災の発生による社会不安を背景に,過激派等の諸団体が活動を活発化させる構えをみせていることにも,警戒が必要です。

こうした現下の情勢に鑑み,当面,留意願いたい事項を申し述べます。

第一は,北朝鮮・朝鮮総聯関連等の情報収集の強化についてであります。
朝鮮半島情勢の推移は,我が国の平和と安全に影響を及ぼし得る重大な問題であります。特に,現在のような権力の移行期には,我々の想定を超える事態が発生する可能性もあり,各局・事務所においては,北朝鮮の注目される動向・情勢の迅速かつ的確な把握に重点的に取り組んでいただきたいのであります。併せて,日本人拉致問題の解決に資する情報の把握や,北朝鮮への従属姿勢を頑なに続ける朝鮮総聯の組織と活動,我が国各界への働き掛けなどの実態解明にも一層注力する必要があります。このほか,我が国の公共の安全に影響を及ぼす周辺地域の諸動向も視野に入れ,政府の施策決定に資する情報の収集に取り組んでいただきたいのであります。

第二は,国際テロ関連調査の一層の推進についてであります。
当庁は,関係機関と協力し,我が国内における国際テロの未然防止のために今後とも全力を尽くしていかなければなりません。各局・事務所においては,国際テロをめぐる関連の情勢・状況なども十分に踏まえた上で,適切かつ効果的な調査の推進を通じて,国際テロとの関わりが疑われる人物や組織の有無及びその動向等に関する情報の収集に努めていただきたいのであります。

第三は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施についてであります。
オウム真理教については,団体規制法に基づく観察処分の期間が来年1月末で満了しますが,主流派,上祐派共に,依然として麻原の影響力の下にあり,本質的な危険性を保持しながら,新たな施設を取得したり,新規信徒獲得のための勧誘活動を活発に行うなど,組織の拡大に向けた動きを加速させております。そのため,当庁としては,引き続き,観察処分を適正かつ厳格に実施する必要があります。教団が当庁に対する組織防衛を強めており,調査が困難を増してきていることは承知しておりますが,本庁と緊密に連携し,教団の組織及び活動の実態解明や,観察処分の期間更新請求に必要とされる証拠の収集に,全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

第四は,国内の過激派など諸団体の動向の迅速かつ的確な把握についてであります。
我が国は現在,東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故という未曽有の国難に見舞われながらも,そこから正に国民が一つになって立ち上がろうとしているところであります。皆様も,日本の復興に少しでも貢献したいとの思いにあふれておられることと思います。一方,このような情勢の下で過激派など諸団体の一部は,震災や原発事故のもたらした社会不安に乗じて勢力の拡大を図ろうと活発に活動しております。今後,そのような動きがますます強まるとともに,これに関連した不法事案の発生も懸念されますので,皆様には,こうした過激派など諸団体の動向を迅速かつ的確に把握できるよう,調査に万全を期していただきたいのであります。

以上,当面の諸課題について申し述べましたが, 当庁がその責務を十全に遂行するためには,調査官の能力向上などにより,組織力を一層向上させることが肝要であります。調査活動の現場における最高幹部である皆様には,改めてこの点を強く認識した上で,部下職員の指導監督に当たっていただきたいのであります。また,調査活動の前提として,情報の保全が不可欠であることは自明のことでありますが,部下職員に改めてこれを徹底し,その情報保全意識を更に高めていただきたいと思います。

終わりに,皆様の平素の御労苦に心から敬意と謝意を表し,私の訓示といたします。

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