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公安調査局長・公安調査事務所長会議における公安調査庁長官訓示

2013年4月24日 更新

                      公安調査庁長官訓示


我が国を取り巻く国際情勢を見ますと,まず,北朝鮮については,金正恩第1書記が,核戦力の保有及びその強化を戦略的路線として,国際社会に対する挑発を繰り返しており,金正恩第1書記の指導権の確立や国際社会における立場の強化を意図して,ミサイル発射実験や核実験など引き続き強硬な措置に出る可能性があります。

  また,中国については,「海洋強国」建設を標榜し,海洋法執行機関を統合して海警局を創設するなどの動きがみられ,今後さらに中国公船等の尖閣諸島海域への派遣が強化され,領海及び領空への侵入の常態化・長期化などが懸念されるところであります。中国においては,官僚の汚職と貧富の格差,環境汚染問題,言論の統制等に関して国民の不満が積もりつつあり,このような国内の状況が我が国に対して強硬姿勢を堅持する大きな要因となっているものとみられます。
 
  さらに,ロシアについては,アジア・極東重視の姿勢を強め,我が国との関係強化に強い意欲を示しつつも,北方領土においては政府要人の視察や外国企業の参入を得てのインフラ整備を進めるなど,その実効支配を一層強めようとしております。
 国際テロに関しては,我が国を再三テロの対象に名指ししている「アルカイダ」が「ジハード」継続を表明し,引き続き,その関連組織が各地でテロを実行しております。とりわけ,本年1月に発生し,深刻な被害をもたらした「在アルジェリア邦人拘束事件」は,改めて国際テロが我が国にとっても現実の脅威であることを示しました。
 
  このほか,イランや北朝鮮等の大量破壊兵器拡散懸念国による巧妙な手段を用いた関連物資や技術の調達については,引き続き警戒が必要であり,また,我が国政府機関・企業などを狙ったサイバー攻撃事案も発生し,我が国の公共の安全にとって現実的な脅威となっております。
一方,国内情勢に目を転じますと,オウム真理教に関しましては,昨年1月に教団に対する観察処分の期間更新が決定された以降も,主流派は“麻原回帰”路線を一層加速させながら勢力の拡大を図り,他方,上祐派は観察処分を免れるため“麻原隠し”を徹底しています。また,過激派や右翼団体等の諸団体が原子力発電所問題や我が国の領土に関する周辺諸国の動きなどを捉えて活発に活動しています。

 こうした現下の情勢に鑑み,当面,留意願いたい事項を申し述べます。

 第1は,北朝鮮・朝鮮総聯関連の情報収集の一層の強化についてであります。
 北朝鮮による軍事的挑発の兆候を迅速かつ的確に把握することが,我が国の安全を確保する上で,極めて重要であることは言うまでもありません。各局・事務所におかれましては,北朝鮮の「核・ミサイル」を始めとする軍事関連動向の把握に努めていただきたいのであります。加えて,金正恩第1書記及び党・政府・軍の相互関係や経済の実態など,体制の安定度を分析・評価し得る情報を幅広く収集するとともに,北朝鮮の対日動向の解明や拉致問題の解決に資する情報を迅速かつ的確に入手するよう努めていただきたいのであります。また,朝鮮総聯は,北朝鮮への従属姿勢を堅持しつつ,「厳しい情勢の中での結束強化」を強調していることから,思想教育を始めとした組織と活動の実態解明にも鋭意取り組んでいただきたいのであります。

 第2は,国際テロ関連調査の一層の推進についてであります。
テロの未然防止のための情報貢献は,情報コミュニティのコアメンバーである当庁の重要な責務であります。各局・事務所におかれてましては,テロの未然防止に向け,テロとの関わりが疑われる者や不穏動向の早期把握に努めるとともに,「在アルジェリア邦人拘束事件」を踏まえ,テロ懸念国・地域の関連情報の収集に鋭意取り組んでいただきたいのであります。

 第3は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施についてであります。
 教団は,主流派,上祐派共に,依然として麻原の影響下にあるなどその本質的な危険性にはいささかの変化もありません。当庁としては,引き続き,観察処分を適正かつ厳格に実施するとともに,観察処分の期間更新請求を念頭に置き,教団の組織活動の実態を浮き彫りにしていかなければなりません。また,麻原の死刑について危機感や不安感を抱いている信徒による不穏な動向も懸念されるところであり,麻原を盲信する信徒の動向把握にも万全を期す必要があります。

 第4は,公共の安全に影響を及ぼすおそれのある諸動向の把握についてであります。
 現在,我が国には,領土や震災復興,原発,在日米軍基地をめぐる問題など,重要政治課題が山積していますが,過激派などの諸団体は,これら問題を捉えて政府批判活動を展開したり,各問題に影響力を持つ勢力への介入を図るなど,自らの組織の拡大に向けた活動を活発に行っています。
 「公共の安全の確保」の観点から社会の動きを幅広く見渡すことは,当庁の責務です。特に公共の安全に影響を及ぼすおそれのある事象については,その全体像を総合的に捉えた上で,政府機関が必要とする情報を適時・的確に提供していくことが求められています。そのため,局・事務所においては,種々の事象とそれを巡る諸勢力の動きが我が国の公共の安全に与える影響に思いを巡らし,多様な視点から広範に情報を集めることが不可欠であることを改めて指摘しておきたいと思います。
 以上,当面の諸課題について申し述べましたが,当庁が,情報コミュニティのコアメンバーとして,また,団体規制機関として,その責務を十分に果たしていくためには,調査官の個々の能力を最大限引き出し,組織全体の力を一層向上させることが肝要です。調査活動の最前線である現場の最高責任者である皆様には,改めてこの点を強く認識した上で,部下職員の指導監督はもとより,当庁の将来を見据えた組織運営に御尽力いただきたいのであります。

 終わりに,皆様の平素の御労苦に心から敬意と謝意を表し,私の訓示といたします。

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