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「公安調査局長・公安調査事務所長会議」及び「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連特別調査本部会議」における公安調査庁長官訓示

2018年5月29日 更新

中川公安調査庁長官訓示

 本日,ここに公安調査局長・公安調査事務所長会議及び2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連特別調査本部会議を開催するに当たり,厳しさを増す現下の内外諸情勢を踏まえ,皆様に留意していただきたい事項を3点申し述べます。

 第一は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全開催に向けた取組の推進についてです。
 当庁は,我が国の情報コミュニティを構成するインテリジェンス機関として,東京大会の安全開催に向け,全庁一丸となって関連情報の収集・分析機能を強化するとともに,入国管理局を始め,警察,税関,海上保安庁などの関係機関との連携強化を進め,テロ対策の強化に努めてきたところです。東京大会の開催に先立ち,G20大阪サミットやラグビーワールドカップ2019,コングレスなどの大規模イベントの開催も控えており,より一層の緊張感を持って,こうした取組を進めていく必要があります。
 現下の国際テロ情勢を見ると,ISILを始めとする国際テロ組織に関係したテロが世界各地で頻発するとともに,アジア地域を含む世界各地への,いわゆる「帰還戦闘員」の拡散についても強く懸念されることから,国際テロ情勢に対し,引き続き最大限の警戒を行っていく必要があります。
 また,過去の大会においては,各種抗議活動等が過激化し,違法行為が生じた事例も認められるところ,東京大会開催の阻害要因となる動向については,細大漏らさず把握することが肝要です。
 さらに,我が国の政府機関,企業等を標的としたサイバー攻撃が年々多様化・深刻化し,東京大会がその標的となるおそれがあるところ,その攻撃主体や方法等に関する情報収集・分析を一層強化しなければなりません。
 皆様におかれては,東京大会等の安全開催に向けて,当庁が担う重責を今一度自覚し,最前線に立つ指揮官として,引き続き,関係機関との連携を密にしつつ,取組みを推進していただきたいと思います。

 第二は,北朝鮮情勢を始めとする我が国の外交・安全保障に関する動向の迅速かつ的確な把握についてです。
 北朝鮮は,最近,核実験と大陸間弾道ミサイル発射の中止や核実験場の廃棄を発表し,先の南北首脳会談を経て,6月12日には米朝首脳会談の開催が予定されていましたが,先週木曜日に米国が同会談の中止を通告しました。これに対して,北朝鮮は,会談を臨む旨の談話を発表し,急遽,南北首脳会談を開催するなどしましたが,過去の経緯に鑑みると,その真意と戦略は,慎重に見極める必要があります。北朝鮮の真意と戦略の解明に資する情報,更には,米国,朝鮮,韓国の動きに対応する中国,ロシアの動向に関する情報を全力で収集しなければなりません。
 このように,朝鮮半島情勢が大きく変化する中,拉致問題の解決を始めとする我が国の対朝鮮半島政策に寄与し得る情報の収集に注力する必要があります。我が国近海における「瀬取り」などの制裁回避の動き,朝鮮総聯の動向に関する情報収集,さらには,北朝鮮の調達対象となっている我が国の先端技術・物資の不正流出の防止に向けた関連情報の収集についても,引き続き重点的に取り組んでいただきたいと思います。
 中国は,習近平総書記が,国家主席の任期無制限化や大幅な党・国家機構改革を断行するなど,政権長期化をにらんだ動きを見せるとともに,「一帯一路」構想の拡大などを通じて新たな国際秩序の構築に向けた動きを示しています。我が国との関係においては,関係改善の動きを見せる一方で,尖閣諸島周辺へ恒常的に公船を派遣するなど,力による現状変更の試みを継続しています。
 ロシアは,第四期プーチン政権が発足し,外交面では,「指導的大国」としての地位確立という目標に向け,米国への対抗姿勢を一層強める中,我が国との関係では,経済問題を中心に官民による各種対話を活発化させる一方,北方領土の駐留軍近代化や経済開発を着実に進め,「自国領」としての既成事実を積み上げ,実効支配を一層強めようとしています。
 このように,周辺国・地域の動向は,我が国の公共の安全に極めて重大な影響を及ぼすことになりますので,政府の諸施策立案に資する情報を,迅速かつ的確に把握していただきたいと思います。

 第三は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施についてです。
 オウム真理教は,現在,「Aleph」(アレフ)の名称を用いる集団,「Aleph」内部での対立を機として「Aleph」と一定の距離を置いて活動するに至った「山田らの集団」及び「ひかりの輪」の名称を用いる集団を中心に活動しています。このうち「Aleph」及び「山田らの集団」は,麻原への絶対的帰依を明示的に強調して活動する中,特に「Aleph」については,近年,多数の新規信徒を獲得したり,資産を増加させたりするなど,組織勢力を拡大させています。また,「ひかりの輪」においては,観察処分を免れるべく,“麻原隠し”の取組を徹底して継続しています。
 公安審査委員会は,本年1月,これらの集団につき,依然として麻原の影響下にあるなど,危険性を保持しているとして,第6回目の観察処分の期間更新を決定しました。各局,事務所におかれましては,本庁との連携を図りつつ,引き続き,教団への観察処分を適正かつ厳格に実施し,公共の安全の確保と国民の不安感の解消・緩和に尽力していただきたいと思います。

 以上,当面の諸課題について申し述べましたが,皆様におかれましては,我が国の公共の安全がその双肩に掛かっているという誇りと責任感を強く持ち,部下職員の指導・監督にあたっていただきたいと思います。公安調査庁は人の役所であり,当庁の調査力は,職員一人一人によって支えられています。組織運営にあたっては,個々の調査官が,自身のモチベーションと能力を高め,持てる力を余すことなく発揮できるよう,ワークライフバランスの推進に配慮しつつ,風通しの良い,働きやすい職場環境を醸成していただくようお願いしたいと思います。
 終わりに,皆様の平素の御労苦に,心からの敬意と謝意を表し,私の訓示といたします。

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