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「公安調査局長・公安調査事務所長会議」及び「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連特別調査本部会議」における公安調査庁長官訓示

2019年7月8日 更新

 中川公安調査庁長官訓示 

 本日,ここに公安調査局長・公安調査事務所長会議及び2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連特別調査本部会議を開催するに当たり,当面,皆様に留意していただきたい事項を3点申し述べます。

 第一は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全開催に向けた取組の推進についてです。
 これまで当庁は,我が国の情報コミュニティを構成するインテリジェンス機関として,東京大会の安全開催に向け,全庁一丸となって関連情報の収集・分析機能を強化するとともに,出入国在留管理庁,警察,税関,海上保安庁などの関係機関との連携強化を進めてきました。東京大会が約1年後に迫る中,大会関連調査の総仕上げに向けて,諸団体の動向やサイバー攻撃を始めとする各種脅威に関する集中調査を推進していただきたいと思います。
 また,東京大会に先立って本年9月のラグビーワールドカップ2019や来年4月の京都コングレス等の大規模国際イベントも控えていることに加え,今後のインバウンドの増大も見込まれており,より一層の緊張感を持って,テロ等の未然防止に向けた取組を進めていく必要があります。
 国際テロ情勢については,依然としてISILを始めとする国際テロ組織に関係したテロが世界各地で発生しているほか,シリアなどでの戦闘経験を有する外国人戦闘員が世界各国に拡散し,ISIL等の過激な主義主張に感化されたホームグローンの「一匹狼」型テロリストなどがテロを起こす現実的な脅威が存在しております。特に,本年4月には,スリランカにおいて邦人がテロ被害に遭う事件が発生しており,テロの脅威を身近なものととらえ,引き続き,厳重な警戒を行うことが必要であります。
 さらに,過去の大会に際しては各種抗議活動等が過激化し,違法行為が生じた事例もあったところ,過激化の兆候を細大漏らさず把握することが肝要です。
 また,我が国の政府機関,企業等を標的としたものを含め,国内外において,サイバー攻撃が常態化・多様化・深刻化しております。東京大会の安全開催に向け,その攻撃主体や方法等に関する情報収集・分析を一層強化しなければなりません。加えて,大規模国際イベントにおいては,懸念国等の情報機関関係者が,報道・観光など,様々な名目で入国し,情報網の構築を図る可能性があります。これら関係者が東京大会に乗じて不審な活動を行っていないかなど,その関連動向を注視していく必要があります。
 皆様におかれては,当庁が担う重責を今一度自覚し,最前線に立つ指揮官として,引き続き,関係機関との連携を密にしつつ,東京大会等の安全開催に向けた取組を積極的に推進していただきたいと思います。
 
 第二は,我が国の外交・安全保障に関する各種動向の迅速かつ的確な把握についてです。
 北朝鮮は,トランプ米大統領の申し出に応じる形で,3回目となる米朝首脳会談を電撃的に行い,非核化に向けた実務協議を再開することで合意したものの,北朝鮮の非核化をめぐる米朝間の立場の違いは歴然としており,交渉は紆余曲折を経るものとみられ,その過程では,北朝鮮が再び軍事的示威行為を行う可能性も否定できません。北朝鮮は米朝交渉において,自らは譲歩しない姿勢を示していることから,今後,北朝鮮がどのような方針で交渉に臨むのか,その狙いと戦略を慎重に見極める必要があります。北朝鮮の真意と戦略の解明に資する情報,更には,米国,北朝鮮,韓国の動きに対応する中国,ロシアの動向に関する情報を全力で収集しなければなりません。
 このように,先行きが不透明な情勢の中,当庁としては,拉致問題の解決を始めとする我が国の対朝鮮半島政策に寄与し得る情報の収集に注力する必要があります。また,「瀬取り」などの制裁回避の動き,朝鮮総聯の動向に関する情報収集についても,引き続き重点的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に,中国は,米中貿易摩擦や経済減速などの動きを受け,政治的リスクの高まりを意識しており,内政面ではイデオロギーによる思想・行動統制を強化し,外交面では,「一帯一路」構想沿線国や太平洋島しょ国などを政治的・経済的な影響下に置くべく,各国との関係を強化する動きがみられます。また,我が国との関係においては,関係改善を進める一方で,尖閣諸島周辺への公船派遣など,力による現状変更の試みを継続しています。
 続いて,ロシアは,中国との連携を強化しつつ,北朝鮮,イランなどと地域問題での影響力の拡大を追求しています。我が国との関係では,首脳間で北方領土問題を含む平和条約締結交渉の加速化で合意する一方,北方領土において政府事業に加え民間投資も促して社会インフラの整備を進めるとともに,現地の軍備強化の動きもみられます。
 さらには,これら懸念国等による我が国の先端技術・物資の不正流出の脅威も高まっています。
 以上のように,周辺国・地域の動向は我が国の安全保障に極めて重大な影響を及ぼすものであり,政府の諸施策立案に資する情報を,迅速かつ的確に把握していただきたいと思います。

 第三は,オウム真理教に対する観察処分の適正かつ厳格な実施についてです。
 オウム真理教は,現在,「Aleph」(アレフ)及び「Aleph」と一定の距離を置いて活動するに至った「山田らの集団」並びに「ひかりの輪」を中心に活動していますが,依然として麻原の影響下にあり,その危険な本質に変化は認められません。特に「Aleph」については,立入検査に対する様々な対抗策を講じたり,執ような抗議を行ったりするなど,従前にも増して,当庁への敵対姿勢を強めています。
 教団施設を抱える地域住民を始めとする国民の恐怖感・不安感を解消・緩和するべく,教団の組織及び活動の実態解明を進めることは,当庁に課せられた重大な責務です。こうした厳しい状況に臆することなく,観察処分の適正かつ厳格な実施に全力で取り組んでいただきたいと思います。
 
 以上,当面の諸課題について申し述べましたが,東京大会後も我が国を取り巻く内外諸情勢は厳しい状況が続くものと予想されます。当庁に課せられた責務の重大性に改めて思いを致しつつ,我が国の公共の安全がその双肩に掛かっているという矜持を胸に,引き続き各人の職務にまい進していただきたいと思います。
 また,組織運営を担う皆様におかれましては,人の役所である当庁の調査を支えているのは個々の調査官であるとの認識の基,部下職員が日々能力向上を図りながら,高いモチベーションを維持して,執務に精励できるよう,適切な指導・監督をお願いします。そして,働き方改革を推進する政府方針に則り,職員の心身の健康保持のためのワークライフバランスの推進に配慮し,明朗・闊達な職場環境の醸成に努め,令和の時代にふさわしい公安調査庁の構築を目指していただきたいと思います。
 終わりに,皆様の平素の御労苦に,心からの敬意と謝意を表し,私の訓示といたします。

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