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行刑改革会議 第2分科会 第7回会議

日時: 平成15年11月10日(月)
13時58分~16時15分
場所: 最高検察庁小会議室(20階)


午後1時58分 開会

開会

○南会長 本日は,雨の中お集まりいただきまして,ありがとうございます。ただいまから第2分科会第7回会議を開催いたします。
 実は,本日は不服申立制度について私案をお出しして御議論をいただく予定でおりましたけれども,なお検討中でございますので,もう少しお時間をいただきたいと思います。
 そこで,本日は,これまでに御議論いただきました視察委員会,それから情報公開等及び内部監査について私案を作成いたしましたので,これをもとに御議論いただいて,当分科会の意見を取りまとめたいと思っております。その後で,外部交通について矯正局から説明をしていただいた上で,外部交通の在り方について御議論をいただきたいと思います。

1.透明性の確保(視察委員会,情報公開等及び内部監査)について

○南会長 視察委員会及び情報公開等につきましては,既に私案を提出いたしまして御議論をいただいたところでございます。今回,御議論の結果を踏まえまして修正案を作成いたしました。お手元の「行刑運営の透明性の確保(視察委員会(仮称)及び情報公開等)に関する私案(骨子)修正案」と題する資料を御覧いただきたいと思います。
 それでは,私が修正案を読み上げまして,若干のコメントを付させていただきたいと思います。
 題名は,「行刑運営の透明性の確保(刑事施設視察委員会(仮称)及び情報公開等)に関する私案(骨子)修正案」。
 1が「刑事施設視察委員会(仮称)」です。
 「目的」,「刑事施設視察委員会(仮称)は,行刑運営の透明性を確保するとともに,適正な刑事施設の運営を援助し,かつ,刑事施設と地域社会との連携を深めるため,各刑事施設ごとに,地域の市民及び専門家をもって組織する」と。
 前回の御議論を踏まえまして,刑事施設の運営の前に「適正な」と入れました。また,前回は「支援」という言葉を用いておりましたが,公権力の行使である刑事施設の運営を支援するというのはいかがかとの御指摘もございましたので,「援助」という言葉ではいかがかと考えました。なお,刑事施設法案の50条には「援助」という言葉が用いられております。
 全部,読み上げることにいたします。
 次は「構成」ですが,「委員は,刑事施設の規模に応じて,5名ないし13名の範囲内で,法務大臣が毎年委嘱する」ということです。ほとんど修正点はございませんが,視察委員会は市民参加を予定しておりますので,委員の負担も考えまして,委嘱は毎年としてはいかがかと考えました。
 「職務」,「委員は,いつでも,刑事施設視察委員会(仮称)の議を経て,刑事施設を視察し,被収容者と面接することができる」。久保井委員などの御指摘も受けまして,ここに「いつでも」という言葉を入れました。
 「刑事施設の長は,刑事施設視察委員会(仮称)による刑事施設の視察及び被収容者との面接の要請に協力するものとする」。
 それから,「刑事施設視察委員会(仮称)及び委員は,その職務を行うに当たり,規律に影響を及ぼすおそれのある事項については,刑事施設の長と協議するものとする」。
 その次は,「刑事施設内にメールボックスを設置するなど,被収容者が刑事施設視察委員会(仮称)に対し忌憚なく意見を述べられる環境を整える」。皆様から,被収容者が視察委員会に忌憚なく意見を述べたり,伝えられる環境を整えることが重要だとの御議論がありましたので,その点を明らかにするため,このような表現にしたわけでございます。
 なお,久保井委員から,委員が被収容者と話をする際には,刑事施設の職員が立会しないなどの配慮が必要であるとの御意見がございました。その際は,それは外部交通の問題だというふうにされたのでありますけれども,この委員は,篤志面接委員等と同様に外部の方ではないので,外部交通ではなく,篤志面接委員による面接と同様に面接としてとらえた方がよいのではないかと思います。
 また,一方で,委員から立会を求められた場合など,すべての場合に立会しないということも困難ですので,その趣旨は,「忌憚なく意見を述べられる環境を整える」という部分に当然含まれるというふうに理解いたしまして,その旨を本改革会議の提言の説明の中で明らかにし,議事録に残したいと考えております。
 それから,「刑事施設視察委員会(仮称)は,定期又は臨時に会合を開催して,刑事施設の運営全般について協議し,刑事施設の長に対し,意見を述べることができる」。
 「刑事施設の長は,刑事施設視察委員会(仮称)に対し,定期又は臨時に,刑事施設の運営全般について報告するものとする」。
 最後ですが,「刑事施設視察委員会(仮称)は,視察の結果について年次報告書を作成し,法務大臣に提出するとともに,適宜の方法によりその内容を公表する」。これも皆様の御意見を踏まえまして,視察委員会が毎年,法務大臣に報告することといたしましたが,委員の負担等も考えまして,公表については「適宜の方法による」こととしてはいかがかと考えた次第でございます。
 その次は「守秘義務」,「委員は,職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない」。
 ついでに,2の「情報公開等」についても申し上げます。
 「情報公開」,「行刑運営の透明性を確保するため,行刑に関連する情報の公開を進める。
 「主な訓令,通達については,ホームページに掲載するなどの方法により公開する」。
 「処遇関連情報については,適宜の方法により公表する」。
 「刑務所での死亡事案については,適宜の方法により全件を公表する」。
 最後に「地域との連携」ですが,「行刑運営の透明性を確保するため,刑事施設における行事への地域住民の参加,地域の有識者等からの講話の実施及び刑事施設の広報などを通じて地域社会との交流を更に活発化する」と。修正点は,刑務所長が地域社会に対して公表するなど,積極的な刑事施設からの広報も重要だと考えて,修正したわけでございます。
 以上でございますが,皆さんの御意見をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。
○曾野委員 素人の読者がこういうものを読むと思いますので,二つです。一つは,私はインターネットというものをやらないものですから全く無知なのですけれど,メールボックスというと,今はそれを思うのではないですか。電気的にというとおかしいのですけれど,そういうものをつくって,外界に全部発信できるようなものかなと思うのではないでしょうか。それは大丈夫でございますか。私どもが言うメールボックスというと箱でしょう,これは。
○南会長 箱です。
○曾野委員 その辺のところが少し……,私はよく分かるのでございますね。私は遅れた人間ですから,それしか連想しませんけれど,大丈夫かなというのが一つ。
 それから,職業上知ることができた秘密を漏らしてはならないというと,例えば私が新聞記者でございますとネタが欲しいわけでございます。そうすると,この委員になったことを公表するのかしないのか分からないのですけれども,もちろんこれは個人の名前とかそういうことだろうと思うのですけれども,例えばこの間みたいに高圧の水圧の,仮にあれが本当で,ホースをあれしてというようなことは,その話を知りたいわけでございます。そのこと自体は,職業上知ることができた秘密にはならないのですか。よく分からないのです,その辺が。
 そうしますと,その人たちが中で知って,そういうことがあったということをよくするには公表しなければならないわけでございますけれども,どういうことになるのでしょう。
○南会長 今おっしゃったのは,メールボックスという言葉が,おかしいのではないかと。
○曾野委員 はい。私は古い人間ですから,木箱だと思うのですけれども。
○南会長 普通は,例えば病院だとか学校なんかは意見箱と書いてありますね。メールボックスというと,いかにも郵便受けというような……。
○曾野委員 今,インターネットの何かで総理もやっていらっしゃいますよね……,あれはメールマガジンですか。大丈夫でしょうか。新しい方というのは,そういうものを想像しないで何か別のものを想像なさるかなと思ったのですけれど,大丈夫でございますかね。
○久保井委員 何とかなるのではないですか。
○南会長 よろしいですか。メールボックスでよろしいですか。
○久保井委員 分かりやすいじゃないですか。
○大平委員 そうですね。レターでも違いますからね。
○南会長 意見箱というのは,少しきつい言葉かなと考えたのです。
○曾野委員 よろしゅうございます。
○南会長 それから,最後の点,守秘義務のところですが,これは確かにおっしゃるとおりかも分かりません。人権擁護法案のことをそのまま見習って入れたのですけれど,ただ,一方で,個人情報の保護というのもありますので,それに違反してはならないわけですので,それは当然のことだという前提があるわけなのですが。
○久保井委員 刑務所視察委員として,ある刑務所に入って,いろいろ問いただしていると,いろいろな不祥事というか,そういうことが分かってきた。それを漏らしたらいけないということですね。
○南会長 そういうことでございます。その中には,今,先生がおっしゃったような,漏らすというか当然公表すべきようなこともあるのではないかということですね。
○曾野委員 つまり社会が注意を喚起して直すという面が今は常にあるだろうと思うのです。
○南会長 そうですね。
○曾野委員 黙って,その管理者にだけ,その筋にだけ通して直るということを,少なくともマスコミは期待していない。我々も参画して刑務所をよくするのだという腹はあると思うのです。その辺のところの線引きをどういうふうになさるのかなと思いまして。
○久保井委員 この上の「視察委員会は視察の結果について年次報告書を作成し,法務大臣に提出するとともに,適宜の方法によりその内容を公表する」というのが……。
○曾野委員 そうありますけれど,その範囲だけでいいわけですか。
○久保井委員 少しこれを,曾野先生がおっしゃるように,例えば視察委員会が一日の視察を終えて出てきたところに,パッとカメラマンが来たときに,何も答えられないのではいけないのではないかと。
○曾野委員 隠しているみたいですね。
○久保井委員 多少コメントぐらいしておかなければ……。
○曾野委員 誤解を招きやすいですね。
○久保井委員 我々が視察に行った際にもマスコミが来ていましたね。だから,職務上知ることができたものは漏らすことはできないけれども,コメントとか感想ぐらい言ってもいいのではないかと。そうでないと効果がないのではないかという御意見だとしたら,この上の方を……。
○南会長 上の方は,これは委員会としてということで,委員がどうこうということは述べていないのです。委員としては守秘義務となるわけです。
○曾野委員 これは,個人的な秘密ですね。だから「個人的」みたいな,何かそれを限定する言葉をお入れになったらどうでしょうか。つまり客観的,一般的事実はよろしいわけでしょう。それも言ってはいけないわけですか。
○南会長 だから,結局はプライバシーにかかわらないというようなことになります。
○久保井委員 これは,受刑者の個人的な秘密を漏らしてはならないという趣旨でしょうけれども,視察を終えた直後にマスコミから取材があった場合に,コメントすることも許されないということになると……。
○南会長 それが,この一番最後にありまして……。
○南局付 視察の後に例えばマスコミ等から取材があって,全く答えてはならないという趣旨ではございませんで,そこにありますように,秘密という言葉自体にプライバシーにかかわるものとかそういった趣旨がございますので,そういった公表をしてはならないという必要性の高いものについては,これは公表してはならない,漏らしてはならないという趣旨でございます。
○曾野委員 そんなの素人には分かりませんよ。それは,あなた方は分かる。でも,私なんかだったら,これがあったら絶対に新聞記者に言わないか,それとも,私は代表として見て,それを世間に,つまり透明性のために行くわけでしょう。透明にするには言わなければならないから……。
○久保井委員 だから,「みだりに漏らしてはならない」というのはどうですか。
○曾野委員 それは難しいですね,どこまで言ったらいいのか。
○久保井委員 でも,社会的な常識を超えて漏らしてはならないという意味で。
○南会長 超えてということなのですけれどね。
○曾野委員 でも,あのとき高圧ホースでやられたのですと言ったとしますね,だれかが。そうしたら,どうしたらいいのですか,出てきてから私は。
○南会長 いずれにしても,これは罰則も何もない,全く倫理規定みたいなものなのですけれどね。個人の責任においてということになるわけですけれど。
○久保井委員 これだと,何も言えなくなるではないかということを曾野先生はおっしゃっているわけですね。だから,それは常識的な範囲内で感想を言ったりするぐらいはいいじゃないかという御趣旨ですから,それをどういうふうに表現するか。
○南局付 そういったことは当然のことだと思いますので,例えば一つの案として,骨子に載せるのはなかなか言葉として適当なものが今あるのかどうか分かりませんので,行刑改革会議御提言の説明の中でそういった趣旨に触れるということではいかがでございましょうか。
○南会長 判例によっても,ここでの守秘義務というのは実質的に見るべきであって,形式的なものではないということは確立した判例がありますね。「みだりに」とでも入れますか。
○久保井委員 そういうことにでもしておいて……。
○曾野委員 では,高圧ホースの例でおっしゃってください。だれかが言ったとしますね。それで,私は聞くわけです,一人のおかみさんとして。それで,出てきたら新聞記者がいて,どういう話がありましたかと来るでしょう。それは言っていいのですか,名前とか何とかということは。
○久保井委員 名前はもちろん言ってはいけません。しかし,ホースで水をかけられて,けがをしたような事件が発生しているということが分かった場合に,それをマスコミにコメントしていいかどうかとなると,難しいですね。
○曾野委員 そういうことです。それなんです。
○久保井委員 でも,何も言えなかったら,何のために視察するのかということですね。
○曾野委員 そうです。私が新聞記者だったら,当然言うと思います。何も言わなかったら,何が透明ですかという話になりますから。
○南会長 結局ここも報道の自由だとかも関係してくるわけです。
○久保井委員 「職務上知ることができた秘密を必要以上に漏らしてはならない」とか,「みだりに漏らしてはならない」ということを入れておいて,あとは運用に任せる。今のこれだったら一切漏らしてはならないような感じになりますから。
○南局付 秘密という言葉の中に,限定する意義が入っておりますけれども。
○曾野委員 それは,素人は分かりません。だから,一般市民が入らないのならこれでいいのです。一般市民が入る場合だったら,一般市民が理解できる範囲の言葉遣いにしないといけないと思うのです。説明も,「秘密とは」と脚注を入れるとか,何かないと,言っていいのですか,言ってはいけないのですかとなります。でも,私がマスコミだったら,非難すると思います。何が透明ですかと,こうなるでしょう。それを防いであげないと,普通の奥さんたちだったら悩んでしまうと思います。
○久保井委員 職務上知ることができた秘密を……。
○曾野委員 そうなると,「個人の秘密」でしょうか。
○久保井委員 受刑者個人の秘密が多いでしょうけれど。
○曾野委員 では,水をかけたということは個人ではない。
○久保井委員 あるかも分からないですね。
○曾野委員 だったら,「一定の期間の調査を経た後でなければ」,みたいな,何かそういうようなものを……,はっきり調査できたらよろしいわけでしょう,答申にかけるように。
○南局付 最終の年次報告としてお出しになるようなことであれば,それは,適宜の方法ではありますけれども,公表すべきことがらですので。
○曾野委員 では,年次報告まではこれでいいわけですね,一切言わないと。年次報告までは言わないと。
○久保井委員 いや,それでは設置案に反するでしょうね。まず第一に,おかしなことがあったら,それに対して,こういうことがあったから,それをしかるべき官公署に届ける,告発するということもあるだろうし,場合によれば,年次報告を待たずに発表しなければならない場合もあるかも分からないですね。
○南局付 時期的には,年次報告を待つべきでない場合もあろうかと思います。
 ただ,例えば告発しなければならない場合というのは,その必要性が明らかに上回っている場合でございますので,そういった場合には守秘義務違反というような形で問われることはなくて,例えば違法性が阻却されるですとか,そういった場面になってくるのかなという感じはいたしますが。
○久保井委員 これは,委員と視察委員会と違うし,委員会が協議して発表するのと……,ここは,個々の委員が勝手に漏らしたらいけないという趣旨でしょう。
○南局付 そうでございます。
○久保井委員 だから,委員会が,これは重大な問題だからマスコミに発表する必要があると判断した場合は,それは発表できる場合もあり得るでしょうね。
○南会長 それは当然あり得ると思います。だから,それは委員の合議によって決まるわけですので。
○久保井委員 どうでしょうか,このままでは余りにもすべてが拘束されるのだったら,「みだりに漏らしてはならない」ぐらいにしておいて,あとは運用に任せたらどうでしょうか。
○南会長 それでは,本会議でこれを提出するときに,何か説明でもコメントしておいて議事録に残すとか,そのぐらいでいかがですか。
○曾野委員 私は,このままでもいいのですけれど,私は,ついマスコミの立場を考えてしまって。
○南会長 いえいえ,私は先生から必ずそういう御意見が出るとは予想しておりましたから,私もこれには確かに抵抗があるのですけれど。
○久保井委員 がっちりと守秘義務を課せられると,すごくしんどい感じがするから。これは,当然のことを注記しただけなのでしょう,本当は。
○曾野委員 あとは,個人の覚悟の次第で,「私はいいわ。どんな罰則を受けても言うだけは言うわよ」という人は,言えばいいわけでしょう。ですけれど,その辺の問題ですね。そう思う市民はそれほど多くないから。
○南会長 それでは,ここは,今日の御議論を踏まえまして私に御一任いただけませんか。
○曾野委員 どうぞ,結構でございます。
○南会長 なるべくいい方向でひとつ考えさせていただきます。
○曾野委員 別にこのままでも私はいいと思うのでございます。
○南会長 分かりました。事務局と相談いたしまして,御意見をできるだけ活かすというか,そういう方向で考えてみたいと思います。
○久保井委員 要するにがんじがらめにして何も言えないのでは,何のために視察したか分からないではないかとなりますからね。
○南会長 そうなのです。実は私自身も,これはそうなるだろうと思っておりました。
 それでは,情報公開等はいかがですか。
 それから,久保井先生がおっしゃっていた点はどうでしょうか。面接のところですが,面接としてとらえるという。
○大平委員 「忌憚なく意見等を述べられる」というところに集約されたということですね。
○南会長 要するに職員が立会しないというような配慮です。これは,「忌憚なく意見等を述べられる環境を整備する」というところでお考えいただけないかと思うのですけれど。
○久保井委員 結構です。
○南会長 それでは,御了承いただいたということにいたしまして……。
○久保井委員 説明の中で言っていただければ。
○南会長 説明でやはり言うべきでしょうね。この中に入るのだということですね。
○久保井委員 はい。
○南会長 それでは,2の情報公開等はいかがでしょうか。
○久保井委員 結構だと思いますけれど。
○南会長 これでよろしいですね。これは相当,私は進歩していると,進歩的な,前進的だと思いますので,特に訓令,通達の掲載,処遇関連情報,それから刑務所での死亡事案ということは非常に画期的だと思います。それから,地域との連携も,これも私は大事だと思います。
○久保井委員 はい。
○南会長 どうもありがとうございました。
 それでは,御異議がないようですので,この情報公開等についても,これを分科会意見として全体会に報告したいというふうに思います。
 次に,前回御議論いただきました内部監査につきまして私案を作成いたしましたので,お手元の「透明性の確保(内部監査)に関する私案(骨子)」と題する資料を御覧ください。これを読み上げます。
 「刑事施設の適正な運営を期するためには,その不適正な運営があればそれを自ら是正する自浄能力を高めることがまず重要であることを認識し,現行の巡閲制度の運用を見直し,内部監査の充実強化に努める。現行の巡閲の運用について,内部監査の業務と巡閲官情願の聴取の業務を切り離すこと。人員の増を図り,内部監査業務の専門職員を配置すること。内部監査の実施状況を明らかにすることによって,内部監査の質の向上を図るため,内部監査の結果について適宜の方法により公表すること。」,以上でございますが,これについて皆様の御意見をお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか。
○久保井委員 結構でございます。
○南会長 よろしいでしょうか。
○曾野委員 これはどこにお出しになるのですか。
○南会長 これは,本会議といいますか,行刑改革会議に分科会の提案として提出します。そこでまた御議論をいただくということです。
○曾野委員 つまり,私も何となく分かるのですけれど,内部監査の業務というのと,巡閲官情願というのは,何となく私も分かるのですけれども,これはやはり外へ分からせるのでしたら,ここの下に脚注というか,解説をおつけになる方が……。
○南会長 確かにおっしゃるとおりで,そもそも内部監査とは一体何なのかとか,それから巡閲官情願の意味も,これは特に外部の人には分からないと思いますので,正に骨子と書いてあるのはそういう趣旨で,私が分かりやすい文章に書き直します。また,それはファックスでお送りしますので,これでよろしいかということで。
○曾野委員 もし外の人も読むなら,きちんと……。
○南会長 もちろん外の人が当然読むと思いますので,普通の一般国民の人が見られて分かるような文章に私の方で……。
○曾野委員 うれしいものなのです,素人は,書いてくださると。知ったかぶりで,頭がよくなったような気がしますので。
○南会長 確かにおっしゃるとおりだと思います。
 それでは,ひとつ字句の修正につきましては,これはまた私に御一任いただきたいと思います。
 それでは,この骨子について,私が一般の方々にもお分かりになるような文言に修正いたしまして,また,皆様にファックスででも御意見を伺って,その上で御了承が得られれば,当分科会の意見として全体会に上程をしたいと思います。よろしゅうございますか。
 特に御異議がないようですので,この私案骨子をもとにして私がまた修正をいたしまして,これを分科会意見として全体に報告するということにさせていただきます。
 それでは,きりがよいようですので,ここで10分ばかり休憩をさせていただきたいと思います。では,40分から再開します。


午後2時30分 休憩

午後2時37分 再開

2.行刑施設における外部交通について

○南会長 それでは,議事を再開いたします。
 最後の論点になりましたが,外部交通の在り方の検討に入りたいと思います。それに先立ちまして,外部交通に関する制度運用の実情等について矯正局から御説明をいただきたいと思います。矯正局の澤田保安課長,青山補佐官,よろしくお願いをいたします。
○澤田保安課長 澤田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今おっしゃいましたように「外部交通の制度と運用の実情」ということで説明させていただきます。説明予定は,そちらの資料にお配りしておりますように,大体の順番として,外部交通の概要を説明し,外部交通の相手方,3番が面会の立会について,4番が信書の検閲について,それから5番が電話の使用についてということを御説明申し上げまして,そのほか,また,面会や信書の発受の回数の制限等の問題もございますが,もしこれは必要でございましたら,また質問等にお答えさせていただくということで説明いたしたいと思います。
 最初に,「外部交通の概要」ということでございますが,改めて申すまでもなく,行刑施設に収容されますと,被収容者は行刑施設の外の人々との自由な交通が遮断されることになりますけれど,必要に応じて一定の制限の下に交通を行うことが認められている,このことを外部交通と言っているわけでございます。
 この言葉は,行刑施設の被収容者が,施設の外にいる特定の者と意思の疎通を図るという意味でとらえますと,監獄法上は,その方法として面会と,手紙とか電報等の信書の発受というのが挙げられます。また,厳密な意味で意思の疎通に限らず物の授受を介しての特定人との接触も含めますと,差入れ,宅下げということもございまして,差入れというのは外部にいる人が収容されている人に物などを入れる行為でございます。宅下げというのは非常に俗な言葉ですが,差入れの反対でございまして,中に入っている被収容者が外部の人に対して郵送するとか,あるいは施設の職員を介しまして物を外部の人に手渡すという,それを宅下げと言っておるのですが,この差入れ,宅下げなども外部交通の一態様と言えるのですが,そういう差入れ,宅下げも外部交通の一態様と言えるのですが,ここでは代表的な外部交通の手段である面会,信書の発受に限ってとりあえず御説明したいと思います。
 監獄法の規定で申しますと,そちらの資料にもつけておりますが,監獄法第45条第1項というところにごく簡素な規定がございまして,「在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス」となっておりますし,信書の方につきましては,46条の第1項というのは,これは次のページになるわけですけれど,資料の「被収容者の面会に関する監獄法令(抜粋)」というものがありまして,その次に「被収容者の信書の発受に関する監獄法令(抜粋)」というものが3ページにございまして,この46条1項に,これもまた簡素な規定でございますが,「在監者ニハ信書ヲ発シ又ハ之ヲ受クルコトヲ許ス」という規定がございます。要するに被収容者の面会及び信書の発受は,所長がその裁量により許否を決するべきものとしているということでございます。
 ただし,在監者といいましても,法的地位による相違がございますので,未決の被収容者については拘禁関係に伴う制約の範囲の外においては,原則として一般市民としての自由を保障されるべき立場にあり,外部交通の制限も例外的になされるべきと考えられておりますけれども,受刑者については,自由刑の執行を受けるという立場からすれば,未決の被収容者と異なり,外部交通について一定の制限を受けるというふうに,その違いが,大きな違いがあるだろうということです。
 この基本的な性格の相違に応じて,違ってきます相手方の問題とか,立会におけるその差異等については,後でまた御説明をすることになると思います。
 とりあえず(2)の信書の発受及び面会件数の統計で実際にどれだけの件数があるかという話でございます。2枚目のものでございますが,資料1というグラフがついております。この資料1によりますと,平成14年の1年間の全国行刑施設,74庁あるのですが,信書の発受件数は471万8,887件ございます。これは,平成12年に比べまして,その棒グラフのとおり伸びておりまして,約13%の増加となっております。それから,面会の実施件数は90万3,806件と,そこに書いてあるとおりでございまして,これも平成12年に比べますと10%の増加ということでございます。なぜ増えているかといいますと,やはり被収容者数が増加しておりますので,それと軌を一に件数が増えております。平成12年と14年を比べますと,被収容者の数でも15%ぐらい増えておりますので,それと軌を一にして面会の件数,信書の発受の件数も増えておるということでございます。
 そこにありますように,不許可でございますが,信書の発受を不許可とした件数は5万4,693件でございます。表の平成14年でございますが,不許可件数の計が平成14年で5万4,693件でございます。これは,発信全体の約1.2%になっております。この内容は,多くは,受刑者と親族外の者との発受信であると思われます。次に御説明しますように,受刑者は,原則として発受信の相手方が親族に限られておりますので,それ以外の人との手紙のやりとりが不許可となったのがその1.2%の不許可の大部分ということになろうかと思います。
 2番目,「外部交通の相手方について」ということで御説明いたします。
 1番目,監獄法令についてでございますが,先ほども見ていただきました資料2と資料3でございまして,先ほど見ていただきました監獄法45条の1項の次の2項でございますが,この2項を見ていただきまして,それから,46条の2項というところで,受刑者の面会と信書の発受の相手方は,要するに原則として親族に限っておりまして,例外的に所長において特に必要があると認める場合に限り,その所長の裁量によって親族以外の者との面会及び信書の発受を許すことができるという,要するにそのような規定になっております。
 なお,「行刑累進処遇令」というものがございまして,恐らくこれも既に御存知かと思いますが,そこの下の方にも規定を掲げておりますが,これは,受刑者に改しゅんを促しまして,その発奮努力に従って処遇を緩和して,制限を緩和して,漸次,だんだんと社会生活に適用させようという制度でございますが,この行刑累進処遇令の適用を受ける受刑者については,上級に行くほど制限が緩やかになるようになっておりまして,4級の者は原則として親族及び保護関係者に限り面会及び信書の発受を許すというふうにしております。第61条でございます。一番下の方にございます。それから,3級以上の者は,62条でございますが,教化に妨げがない範囲において親族以外の者との面会及び信書の発送を許すこととされております。
 なお,未決の被収容者については,監獄法令上,外部交通の相手方についての制限はございません。
 その次に,資料4でございますが,裁判例でございまして,受刑者の外部交通について裁判例がどのように判断をしておるかというところを若干御説明したいと思います。
 資料4の一番上でございます。昭和60年12月13日の最高裁判決でございますが,これは,受刑者の外部交通について,「懲役刑は,受刑者を一定の場所に拘禁して社会から隔離し,その自由を剥奪するとともに,その改善,更生を図ることを目的とするものであって,受刑者と外部との交通は一般的に禁止されているものである」というふうに判示をしております。
 その下の平成7年1月27日広島高裁松江支部判決は,これは受刑者の信書の発受についてでございますが,「法は」と書いてありまして,若干飛ばしますが,「受刑者と外部の者との信書の発受を一般的に禁止した上で,その許否を受刑者の処遇及び施設の管理,運営について専門的技術的知識と経験を有する刑務所長の裁量にゆだねる一方,法46条1項及び2項により,受刑者とその親族との間の信書の発受については原則としてこれを許可すべき旨,また,受刑者と非親族との間の信書の発受については原則として不許可とし,ただ,「特ニ必要アリト認ムル場合」においては非親族との間の信書の発受を許可すべき旨の信書の発受に関する許否の基準を定めているものと解される」というふうに判示をしております。
 また,親族を原則としている趣旨についてでございますが,平成5年11月30日東京地裁判決ですが,「この規定は,通常,親族との接見が受刑者の改善,更生に好ましい影響を及ぼすことが期待できることに基づくもの」という判断をしております。
 このような裁判例の理解といたしましても,自由刑の執行は,特に懲役刑でございますが,単に所定の懲役作業を科するとするにとどまるものではなくて,まず,受刑者の身柄を拘禁して社会から隔離し,身体的移動の自由,その他の自由を奪うことを前提とした上で,懲役作業やその他の教育等を通じて改善,更生及び社会復帰を図っていこうとするものであると考えられます。したがって,現行法制のもとにおきましては,受刑者の外部交通は一般的に禁止されますけれど,他方において,いずれ社会に復帰する受刑者に対して円滑な社会復帰を親身になって応援してくれるのは親族であり,これらの者との絆を維持することは,受刑者の改善,更生に資すると考えられることから,親族との間の外部交通を認めることとしているものと,そのように解されております。
 それで,受刑者の外部交通の相手方は原則として親族だということを申し上げてきたわけでございますが,例外はございまして,それが「受刑者と親族以外の者との面会,信書の発受の許可の例」でございますが,運用としては,教化上,その他の理由により所長において特に必要があると認める場合には例外的に親族以外の者との外部交通が認められております。具体的には個々の要件ごとの諸事情を所長が総合的に考慮して判断するものでございますので,一概には述べられませんけれど,運用としまして,例えば身元引受人,仮釈放に伴って必要になる人ですけれど,それから保護司,それから官公庁の職員,各種いろいろな手続があると思います。それから児童福祉施設や老人ホーム等の職員,特に受刑者の家族がこれらの施設に入所したりしている場合でございます。それから,社会にいたときの雇用主,賃金の支払いとか出所してからの就職に関するような相談がある場合があります。それから弁護士,訴訟代理人になっておられたり,不服申立ての調査の場合ということもございます。それから財産上の用務がある場合の知人等がございます。財産上の用務としましては,金銭,不動産の貸借関係でありますとか,相続関係とか,そういうことがあるかと思います。そのような場合には,面会又は信書の発受を許可しているという運用になっております。
 その次に,受刑者の外部交通の相手方ということにつきまして,刑事施設法案の規定はどうなっているかということでございますが,これが資料5という横長のものでございます。色刷りになっておりますけれど,ここに,面会,信書の発受の相手方を書いております。刑事施設法案は,御存知のとおり3回国会に上程されておるのですが,一番直近では平成3年に上程された法案でございます。受刑者の面会の相手方としましては,親族のほかに,そこに書いておりますように婚姻関係の調整,訴訟の遂行,家計の維持その他その身分上,法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面談をすることが必要な者。それから,面会により受刑者の改善更生に資すると認められる者その他の刑事施設の長が相当と認める者と面会することができるという,そういう規定を置こうと考えられておりました。
 それから,信書の発受の相手方でございますが,これは,2枚めくっていただきまして,「受刑者の信書の発受」と書いておるものでございますが,この信書の発受の相手方としましては,原則として制限なしということでございますが,ただし,犯罪性のある者,その他受刑者が信書を発し又は受けることにより,刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあり,又はその受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがある者については,信書の発受信を禁止することができるということにしております。
 このように,面会と信書の発受の相手方について取扱いが違う規定になっておるのですが,信書の発受の相手方の方が面会の相手方と比較して広く保障されるという,そういう仕組みになっておりますが,これは,面会は直接的かつ即時的な意思の疎通といいますか,その場で面談が進行してしまいますので,職員の立会をつけた場合でも,刑事施設の規律及び秩序等に対する危険防止のための対応措置を執ることが困難でございますが,信書の発受であれば時間的な余裕を持ってチェックもできるということがございますので,そのように制限が異なるという,そういう差異になっておるということでございます。
 その次に,受刑者の面会の相手方について,諸外国の状況ということでございます。これを資料6におつけしております。諸外国の状況につきましては,既に先生方が最近にも外国の施設を参観されましたので,先生方の方がお詳しいのではないかと思いますが,資料6,「諸外国の受刑者の外部交通」というものでございますが,調べました限りで資料をつけております。例えば米国の連邦刑務所の場合では,面会者のリストに掲載された者について面会を許可しており,リストに掲載することができる者は,親族,それから警備度というものによって,米国連邦刑務所の各施設が警備度というものを指定されておりますので,軽い警備施設に収容されている者については,施設の保安又は秩序を害するおそれがない者,中・重警備施設に収容されている者については,拘禁前に交流があった者であって,施設の保安又は秩序を害するおそれがない者で,犯罪歴等の調査を実施した上でリストに掲載すると,そのようにされております。信書の発受の相手方については,同じ表でございますが,施設の保安,秩序等を害するおそれがある信書の発受を行った場合は,リストに掲載された者に制限される場合があるとされておるようでございます。
 その次,2枚めくっていただきまして,英国でございますが,面会の相手方は,受刑者が選択して要請書を送付した相手となっているようでございます。また,信書の発受の相手方については,他の施設に収容されている者とその家族への発信は許可が必要とされているということでございます。
 その次はドイツでございますが,その次のページです。ドイツでは,面会,信書の発受について行刑法では,施設の保安又は規律が危うくされるおそれがあるとき,親族以外の者で受刑者に有害な影響を与え又は受刑者の社会復帰を妨げるおそれがあるときは禁止できるという規定がされております。
 それから,フランスでございますが,その次のページです。面会の相手方については,直系親族を除いて,事前の申請に基づいて施設側が相手方の犯歴等について調査し,許可,不許可を判断しているということでございます。また,信書の発受の相手方については,受刑者が選択した者と信書の発受ができますが,受刑者の社会復帰,施設の安全又は秩序に重大な損害を与えると考えられる場合は,親族以外の信書の発受を禁止することができると,そのような規定になっているようでございます。
 以上,主として受刑者を中心に外部交通の相手方でございましたが,その次に,3番目,「面会の立会について」ということでございます。
 これも監獄法令の御説明からいきますと,これは資料2でございますけれど,監獄法施行規則127条というものがございまして,この規定は,未決被収容者と弁護人との間の面会を例外としまして,それ以外の場合は原則として面会には職員が立会をすべきことということを定めておりまして,ただし,受刑者については,教化上その他の理由により所長において特に必要があると認める場合には立会を省略することができるという,そういう規定になっております。
 それから,行刑累進処遇令の適用を受ける受刑者につきましては,累進処遇級第2級以上の者は立会を省略することができるという規定を置きまして,累進処遇級が上級になるに従って,面会の立会という面においても制限が緩和されるべきであるという,そういう考え方を示しております。
 この立会の必要性ということでございますが,面会の際に職員が立会しますのは,逃走とか不法な物品の授受,その他の事故を防止するための監護上の措置として必要があるということでございます。
 更には,面談の状況を把握しまして,被収容者の処遇上の参考とする趣旨がございまして,このために,面会中に参考となるべき事項があれば,その内容の要旨を記録するということが監獄法施行規則にも規定されております。特に外部交通が被収容者の心情に及ぼす影響は非常に大きいところから,外部交通の面談の状況を把握しておくことは,処遇上,受刑者の改善,更生等の働きかけをする上でも非常に大事だというふうに考えられております。
 それから,この面会の立会という問題につきまして,裁判例を御紹介しておきますと,資料4の1枚目の一番下でございますが,平成12年9月7日という最高裁の判決が出ておりまして,これは,受刑者と民事訴訟の代理人である弁護士との間の面会に職員が立会した措置が,問題になったケースでございまして,受刑者とその民事訴訟の代理人である弁護士との面会に職員が立ち会うのは違法であるということで,国に対して損害賠償を求めた訴訟でございますが,この判決では,4行目からでございますが,「受刑者との接見に刑務所職員の立会を要するのは,不法な物品の授受等刑務所の規律及び秩序を害する行為や逃走その他収容目的を阻害する行為を防止するためであるとともに,接見を通じて観察了知される事情を当該受刑者に対する適切な処遇の実施の資料とするところにその目的がある」とした上で,その後でございますが,「具体的場合において」ということで,1行ぐらい飛ばしますけれど,「教化上その他の必要から立会を行わないこととするかどうかは,いずれも,当該受刑者の性向,行状等を含めて刑務所内の実情に通暁した刑務所長の裁量的判断にゆだねられているものと解すべき」と判断をしております。
 この判決の結果としましては,この本件面会には,具体的場合の面会について立会をしたことは違法ではないという結論に至っております。
 その次は,面会立会の実情ということで,これも,それでは立会しない面会がないのかということでございますが,例外はございまして,運用としましては,平成13年の1年間で見ますと,受刑者について見れば,全国74施設中の24の施設,約3分の1でございますが,これは主として累進処遇級が上級の者ですが,1級,あるいは2級以上の者について,あるいは仮釈放前に教育をするわけですが,その仮釈放前教育期間中の者等を対象にしまして,職員が立ち会わない面会というのが実施されております。現在の運用のもとでは,このように立ち会わない面会の受刑者を限定しておることもございまして,現在の運用の下では,特段の問題が生じたという例は承知はしておりません。
 立ち会ったことによる効果でございますが,面会に原則どおり職員が立ち会ったことによって,親族の訃報とか別れ話があったことを承知しまして,本人の動静に特に注意を払うことができて,効果が大きい場合は本人の自殺を図る行為を未然に防止できたりした場合もございます。
 それから,暴力団関係者が親族の氏名を偽りまして,受刑者と面会していたことが,立会していたことから分かるというケースもございます。面会に来られた相手方を,どういう人であるかを必ずしも確認するというのはなかなか簡単ではございませんので,立ち会わないと分からないというケースもやはりあります。
 その次に,この面会の立会ということに関します刑事施設法案の規定でございますが,これは,資料5の1枚目の紙でございますが,刑事施設法案では,受刑者の面会には原則として職員が立会をしますけれど,受刑者の正当な利益の保護又は矯正処遇の効果的な実施のため適当と認める場合には,職員の立会を行わないことができるという,そういう規定になっております。
 他方,被勾留者については,これはその次の紙にあるのですが,これは,面会の相手方には原則として制限はないのですが,やはり罪証隠滅の防止ということもございますので,弁護人等以外の者との面会には刑事施設の職員による立会を行うという,そのような規定になっております。
 次に,「諸外国の状況」ということでございます。これは,また資料6ということになりますが,面会の立会につきまして諸外国の例は,米国の連邦刑務所では,禁制品の授受を禁じるため,施設の保安及び秩序の確保のために職員は立会するとされているようでございます。
 英国等は実情を御視察になったことかと思いますが,監獄規則では,内務大臣の特別の指示がない限り,面会は職員の視線内でこれを行い,職員が会話を聞くことのできる状態で行うこととなっているということでございます。
 ドイツでは,弁護人との面会以外は,処遇又は施設の保安若しくは規律の理由から,面会の監督をすることができると行刑法において規定されております。聞き及んでおるところによりますと,例えばテーゲルの刑務所では,一般の面会は一室で集団で行われており,職員はガラス窓越しに部屋全体を監視する形態をとっていたというふうに聞きました。
 フランスでは,ポワシー中央刑務所を御覧になったことだったかと思いますが,一般の面会は一室で集団で行われており,面会室には監視カメラが設置され,職員はマジックミラー越しに部屋全体を監視して,必要に応じて室内を巡回するという,そういう形態であったというふうに聞いております。
 ただ,諸外国におきましては,面会時における麻薬等の持ち込みの問題が大分あるようでございまして,フランスのポワシー中央刑務所でも,面会所から出る際は,すべての受刑者について身体検査を実施し,ドイツでも必要に応じて面会後の身体検査を実施しているということでございます。それから,英国の刑務所などでも,やはり施設内にかなり薬物が出回るといいますか,そのような実情があるようでございまして,英国刑務所庁が業務指標で目標と掲げておる中で,刑務所内で抜打ちの薬物検査をするようでございますが,その刑務所内の抜打ちの薬物検査で薬物使用が認められる者の割合を10%よりも少なくするということを目標に掲げておるということでございますので,実情は10%以上の確率で薬物を施設内で使った者が発見されているということであろうかと思います。また,スウェーデンのあたりでも,刑務所内で年間,受刑者から,摘発され没収される薬物の量はかなりの量に及んでいるというふうに聞いております。
 次に,4番目,「信書の検閲」について説明させていただきます。
 これも,まず,監獄法令からでございますが,資料3でございまして,先ほども見ていただきましたように,監獄法第46条第1項は,文言上は単に許すということになっておりますけれども,これはやはり監獄法の言葉の用法からしまして無制限で許すということではなくて,所長の裁量により許すかどうか許否を決するということでございますので,そうであれば,どのような場合に信書の発受を許すか,許さないかという問題が生じますし,当該信書の発受を許すことによって,拘禁目的,受刑者であれば収容の確保とか改善,更生ということになりますが,そうした拘禁目的を阻害するおそれがある場合とか,監獄内の規律又は秩序の維持を阻害するおそれがある場合においては,所長がその裁量において信書発受の差し止め,削除,抹消をなし得るというふうに解されておりまして,これらの措置を適切に行うためには,やはり発受信の内容をあらかじめ検査しなければならないということになろうかと思います。
 監獄法第50条の委任を受けました監獄法施行規則第130条第1項というものでございますが,そこにありますけれど,所長において,受刑者等に限らずすべての種類の被収容者の発受信を検閲すべき旨を規定しております。もちろん未決被収容者と弁護人との間の信書も含めてということでございます。
 同条2項は,その検閲の事務のため,被収容者が発信する信書は封緘せずに提出させ,受信書はあらかじめ開被して検印を押すこととしているということになっております。
 面会の立会と同様でございますが,信書の検閲を通じて了知される事情を,被収容者に対する適切な処遇の実施に資するため参考となるべき事項があれば,その内容の要旨を記録することとされております。これは,監獄法施行規則139条にそのように書いております。
 次に,この問題につきましても,「検閲に関する裁判例」というものを御覧いただきますと,これは資料4というところについておりますが,御存知のように憲法第21条第2項が検閲の禁止を規定しておりますので,理論的には憲法が通信の秘密を保障していることとの関係が問題となるということでございますが,これは,監獄法令に基づく信書の検閲自体を違憲であるという裁判例は当然ながらございません。昭和36年9月18日の釧路地裁の判決や,昭和41年3月の東京地裁の決定等にその趣旨が書かれております。その詳しい内容は若干省略させていただきまして,その次に,平成4年12月15日札幌高裁判決というものがありますが,これは,検閲の必要性について言っておりまして,監獄法46条1項,50条,同法施行規則130条1項は,「未決勾留の目的のために必要かつ合理的な範囲において,また,監獄内部における規律及び秩序を維持し,その正常な状態を保持する必要があり,そのために必要な限度において信書の削除ないし抹消を認めたものと解するのが相当であり,そのように解して初めて憲法の条項との整合が保たれるというべきである」という,そのような判断が示されております。
 実際の運用でございますが,検閲によりまして問題が未然に防止できた実例にはどのようなものがあるかということでございますが,例えば受刑者についてですけれど,暴力団関係者と連絡をとるよう依頼する旨,記載していたことから,職員が指導し,書き直しをさせた事例。それから,親族というふうに偽って暴力団関係者あてに手紙を出そうとしたのを阻止した事例,内容を読んで分かったということでございます。それから,親族からの手紙の中に禁制品が入っていたのを発見,摘発した事例。禁制品といいますのは,例えば覚せい剤でありますとか,たばこ,たばこも完全なたばこ状のものでなくても,葉っぱが入りますと,紙などは中で調達することも可能ですので,そのような事例もございます。また,親族からの手紙の中に親族以外の者からの手紙を混入させていたというのは,これはかなり例が多いのですが,そういうものを見つけたという事例がございます。
 それから,未決の被収容者の発信についてですが,これは新聞紙上等でも最近は問題になるのですが,未決の被収容者から被害者等に対して脅迫めいた内容の手紙を出すというのがありまして,そういうものを検閲によって阻止したという,そういう事例などがあります。
 次に,この検閲の問題につきましても,刑事施設法案の規定を見ていただきますと,資料5の3枚目になりますが,「受刑者の信書の発受」,それから,その次の「被勾留者の信書の発受」というところでございまして,ここに,刑事施設法案は検閲という言葉は使いませんで,信書の内容の検査というふうに言っております。被収容者が発受する信書を,原則として刑事施設法案も,刑事施設の長又はその指名する職員により内容の検査を行うというふうにしておりますけれど,受刑者の矯正処遇の効果的な実施のため適当と認める場合は,この限りでないというふうにただし書きがしております。
 それから,国又は地方公共団体の機関から受ける信書,そちらから被収容者に入ってくる信書,それから,弁護人から被収容者が受ける信書でございますが,これについては,その旨を確認するため必要な限度においてこれを検査するということでございまして,内容の検査といいますか,書いてあるところの内容がどうのこうのということを問題にするわけではなくて,確かにその封書の中に入っておるものが国又は地方公共団体の機関からのものであるかどうか,弁護人からのものであるかどうか,それを確認する限度で検査をするということでございます。
 それから,国又は地方公共団体に対して発する信書,それから,弁護士との間で発受する信書については,制限要件を限定しておりまして,内容は多少ややこしくはなりますけれど,国又は地方公共団体の機関に対して発する信書であって,その機関の権限に属する事項を含むもの,弁護士との間で発受する信書であって,その被収容者に係る弁護士の職務に属する事項を含むものについては制限要件を限定しておりまして,その部分が,暗号の使用と,その内容が理解できないものであるとき,その発受信によって刑罰法令に触れることとなり若しくは刑罰法令に触れる結果を生ずるおそれがあるとき,その発受信によって逃走その他刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき又は被勾留者にあっては罪証の隠滅を図るものであるとき,これらのときを除いては差止めができないということにしておりまして,差止めができる場合を限定しておるということです。
 次に,諸外国の状況でございますが,信書の検閲につきまして諸外国の,また資料6でございますが,米国連邦刑務所では,受刑者が受信するすべての一般の信書は開封され,同封物の有無を検査するとされているようでございます。受刑者が発信する一般の信書については,軽警備施設では施設の運営を害する等と信ずる理由がある場合を除いて検閲はしない。ただ,中・重警備施設では検閲を行うとされ,大統領,連邦司法省,裁判所等あての特別の信書は,原則として受刑者が封をし,検閲を受けないとされているようでございます。
 また,英国では,これもセキュリティレベルの高い低いによって違いがあるようでございまして,セキュリティレベルの高い施設においては内容の検査が実施され,それ以外の施設においても,施設の長の判断によって内容の検査を実施することができる。裁判所,欧州人権委員会,欧州人権裁判所との間の信書については,不正な封入物が同封されていると信ずるべき合理的な根拠があると認めるときは開封することができ,信書の内容が施設の保安若しくは他者の安全に危険を及ぼし又は犯罪的な性質のものであると信ずるべき合理的な根拠があると認めるときは開封し,閲読し,差し止めることができるとされているようでございます。
 ドイツでは,処遇上又は施設の保安若しくは規律上の理由から必要である場合は検閲できるとされ,弁護人あての信書,連邦又は州議会及びその議員,欧州議会及びその議員,欧州人権裁判所,欧州人権委員会等あての信書は検閲されないと行刑法において規定されております。
 フランスでは,弁護士,一定の行政機関,司法機関に対する発信は,封をした上で発信できるとされております。信書は検閲され,信書の内容に,人又は施設の安全に対する具体的な脅威が含まれている場合は,発受が差し止められるとされているようでございます。
 5番目でございますが,「電話の使用について」ということでございまして,電話の使用は現行の監獄法令上は認められていないところです。これにつきまして,昭和55年に監獄法改正の骨子となる要綱というものが,これが法務大臣に答申されまして,これが刑事施設法案のもとになった答申でございますが,この要綱を答申しました法制審議会監獄法改正部会においては,開放処遇を受けている受刑者,その他一定の基準に合致する受刑者については,外部の者に電話をかけることを許すことをも考慮するという決議がなされておりまして,これを受けまして,刑事施設法案では,省令以下において外出又は外泊を許される受刑者等には電話の使用を認めることが検討されていたということです。外出又は外泊といいますのは,刑事施設法案で導入されます新しい制度で,受刑者が職員の戒護なしに単独で外へ出るのが外出でございまして,泊まりがけで一定の期間外に行って泊まってくることを許されるのが外泊でございますが,そういう受刑者等には電話の使用を認めるということが検討されておりました。
 この電話の使用につきましては,外国の例では,米国の連邦刑務所では,あらかじめリストに登載した者に電話をかけることができる。1回当たりの通話時間は少なくとも3分以上……。通常は1回の通話は15分以内,毎月300分以内ということです。それから,弁護士以外の者との通話は傍受できるとされているようでございます。
 英国でも,原則として許可された相手方のリストに掲載されている者とは,電話による会話を行うことができる。弁護士との会話以外は,セキュリティレベルの高い受刑者については内容はすべて傍受され,それ以外でも,無作為で内容の傍受をやるということでございまして,会話は録音され得るということになっておるようです。
 ドイツでは,電話の使用に関する事項は,面会に関する規定が準用されて,電話をかけることができる相手方の制限はなく,テーゲル刑務所では,これは御視察になったと思いますが,自費で1月50ユーロ分まで電話をかけることができるようでございます。それから,電話による会話の傍受については,必要な場合は会話の内容を傍受して,傍受する場合は,電話の接続直後に傍受されているということを告知すると行刑法では規定されております。
 フランスでは,原則として親族に対して電話による会話が認められており,ポワシー中央刑務所では月に6回まで会話を認め,内容の傍受はしていないというようでございます。
 このように欧米諸国の行刑施設では,制度はそれぞれ違うようですけれど,一定の制約のもとで電話の使用を認めているところも多いということでございますし,また,電話が一般社会において広く普及しておりますので,受刑者の電話の使用については,今後検討すべきテーマであろうと考えております。
 当面考えられる問題としましては,電話の場合は,特に相手方を十分確認することができないという問題がございますので,受刑者の場合は少なくとも外部交通の相手方に制限があるわけでございますので,これが,相手方に制限がある場合は,特に相手方本人であるかどうかの確認が,相手の姿も見えないで声だけということになりますと,本当にその人なのかどうかという確認が難しいという問題もありますので,解決すべき問題もかなりあるのではないかと,そういうふうに考えております。
 とりあえず説明として当初から予定しておりました事項は以上でございます。
○南会長 大変詳細な御説明をいただいて,ありがとうございます。
 それでは,外部交通について御質問がありましたら,この機会にどうぞお願いいたします。また,外部交通の在り方に関する御意見をも併せてお伺いしたいと思いますので,よろしくお願いを申し上げます。
 それでは,私から申しますが,この外部交通という言い方が,それこそ外部の者にとっては少しなじみにくい言葉だと思います。私が調べましたら,ドイツ語にあるのですね。恐らくドイツ語の翻訳かなと思うのですけれども,外部交通のきちんとした定義というのは,どういうふうにお考えなのか。先ほど外部との意思の疎通というようなことをおっしゃったけれども,それでよろしいのですか。外部交通の意味です。外部交通というのは,それこそ外部の一般市民にとってはなじみの薄い言葉なのです。
○澤田保安課長 外部交通は,必ずしも法令上に直接にこの言葉が出てくるわけではございませんので,定義もまちまちという点もございまして,ただ,広くとらえれば,刑務所,拘置所等に収容されている者と外部の人との交通という,当たり前ですけれど,そういうことでございますので,先ほどの面会,信書の手紙のやりとり,物の差入れ,宅下げとあるのですけれども。
○南会長 大体例を挙げるとよく分かるのですけれど,普通は交通というと,別の意味に取るでしょう,交通機関だとか何とかの交通と。ですから,少しなじみにくいかなと私は思っているのですが。
○澤田保安課長 面会と信書の発受ということであれば,先ほども言いましたように被収容者が施設の外にいる特定の人と意思の疎通を図るという定義になりますけれど,外部交通の一般的定義というのは,絶対的にこれだというものはありません。
○南会長 曾野先生,この言葉の感覚としてはいかがですか。
○曾野委員 連絡でしょう。外部との連絡というと,市民は分かります。
○南会長 それで分かりますか。
○曾野委員 人的,それから機械的,電気的,すべて連絡ですね。
○南会長 連絡ということですね。
○曾野委員 難しく難しく言おうとするといけないですね。
○南会長 分かりました。これでよろしいですか。私は少し違和感があったものだから,一般の感覚としてどうかなと思ってお聞きしたのですが。
○曾野委員 やはりおかしい言葉です。法律というのはこういうものだと思っていますから,分からないでもありませんけれど。
○南会長 はい,それでは結構です。ほかにどうぞ。
○大平委員 今,弁護士会とか弁護士に対する発信は,特別発信ということですね。
○澤田保安課長 受刑者の場合はそうです。
○大平委員 弁護士会とか人権救済とか,特別発信ということですね。特別発信の場合は,どれぐらいの期間がかかりますか。受刑者が申し立てて,実際にその手紙を出せるまで,どれぐらいの期間がかかっていますか。
○澤田保安課長 それは個々の場合によって違うと思うのですが。
○青山補佐官 ケースバイケースですけれど,1日や2日で許可になる場合もありますし,数日かかる場合もあろうかと思います。
○大平委員 その,数日かかる理由というのは何ですか。
○青山補佐官 内容の量にもよりますし,それから,これは役所の手続の問題ですけれども,やはり特別に発信を許可するかどうかは,やはり所長の裁量ですから,決裁という手続を要するのにやはり数日かかってしまう場合もあるかもしれません。
○大平委員 これまでに弁護士会とか,あるいはそういうところに人権救済の特別発信の許可を得て,それが出せないという事例はありますか。
○澤田保安課長 全くそこが問題になったというのは,最近は余りないのではないかというふうに思いますが。
○大平委員 以前はあったのですか。
○澤田保安課長 それが皆無ということはやはりございません。所長の裁量でございますので,所長の裁量の適否をめぐって,必要性がないと判断したものが,そこの必要性の有無について後に紛争になったというものもあります。
○大平委員 ということは,受刑者が弁護士会に手紙を出すという場合に,所長の裁量でそれを不許可にできることもあったということでいらっしゃいますか。
○澤田保安課長 はい,それは,先ほど申し上げた所長の裁量にかかりますので,それはあり得るということです。
○大平委員 分かりました。
 もう1点ですけれども,現在ですけれども,親族に内縁関係は含まれますか。
○澤田保安課長 はい。内妻であるということが確認されれば,含まれます。ただ,実際の問題としましては,ここは難しいところがございまして,内妻であると称して,そのような実態のない人を申告してくる例はございますので,その辺をどうやって判断するかというのは,なかなか実際には問題がございますが,社会生活上において内妻と言われる実態があるという者であれば,親族に該当するという,そういう解釈運用にしております。
○久保井委員 受刑者の面会について,親族以外の者との面会も実情としてはかなり認めていらっしゃるようなことで,例えば身元引受人とか保護司とか,あるいは雇用主とか,あるいは財産上の関係のある知人というようなお話でしたけれど,受刑者が非常に親しくしている友人知人とか,そういう者は認めていないのですか。収容されるまでに非常に親しくしておる友人とか知人が来た場合は,財産上の関係とかそういうものはないですけれども,そういうものは一切認めていないのですか。
○澤田保安課長 一切ということはございません。それもケースバイケースですので,財産上の用務が特になくても,その人が非常にその受刑者にとって,これからの社会復帰にとっても大事な人というふうに,そういう判断ができましたら許可をしている例もあると承知しております。
○久保井委員 親族に限定する法律は,これは随分古い法律だと思うのですけれども,これをもし原則としてだれでも面会できるようにした場合は,どういう不都合が出てきますか。面会の件数が増えて立会が面倒くさいということですか。
○澤田保安課長 それはあるかも分かりませんが,一つには,やはりどういう人と面会をさせるのがいいのかという問題がありまして,受刑者の交友関係というのを,知人を無限定に認めますと,やはり暴力団関係者が一番社会においては交友関係が広いということでございますので,友人もそういう関係者になってくるということもございますし,暴力団関係者というのは,そうしたらどこまでなのかということになりますと,今は違うのだという人もいるでしょうし,仮に実態がそうでなくても,今は暴力団とは縁が切れているのだという主張はいつでも成り立つということもございますし,本当に社会復帰に大事な友人であれば,もちろんそこが確実に認定できれば,受刑者とその人との面会も許可すれば,あるいは手紙のやりとりも許可すればということになるのでしょうが,一概には申せませんし,立派な友人を持っている受刑者も相当数いるかと思うのですが,受刑者一般としては,社会にいるときからいい友達に恵まれてきたという人がかなり多いということは,概して言えば,大ざっぱに言ってしまえばないかと思いますので,その知人の選別というか,その辺の問題がなかなか難しい問題となって出てくるというふうに考えます。
○久保井委員 管理面からいうと,おっしゃるとおりだと思うのですけれど,やはり受刑者が社会復帰した場合に,今までの人間関係をすべて失った状態で社会復帰すると,刑務所を出た後,軟着陸しにくいというところがあるので,やはりなるべく刑務所に入ることによってすべての友人関係,人間関係を失ってしまわないような,そういうことをしないと,やはりいけないのではないかという感じがするのですけれど,少し厳しすぎるように思うのですけれど,実際の運用では,今おっしゃった刑務所長の裁量で一応認めることができることになっているけれども,非常に例外的にしか認めていないのですね。
○澤田保安課長 はい,そうではありますが,ただ,先ほどおっしゃいました社会復帰に向かって必要な人ということにつきましては,先ほども申しました身元引受人という制度がございまして,受刑者が刑開始当初に保護観察所と施設が連絡をとりまして,その人の帰っていくところの環境がどうであるかという環境調整という,法律上の言葉でもあるのですが,そういうものをやります。必ずやりますので,その過程で,この人の帰っていく中に身元引受人が,大体一番はやはり何といっても親族ですけれど,親族以外にそういう身元を引き受けてくれる人が,出所後に身元を引き受けてくれる人があれば,そうした人が身元引受人となって,仮釈放の許可を与えるかどうか,刑務所側にとりましては,仮釈放の許可申請をするかどうかでございますが,その判断の要素になりますので,そういう意味で社会復帰に役立つ人を把握するという仕組みはできておるかなと。そういう身元引受人になれば,その人との面会なり信書の発受は,むしろ奨励するぐらいにやっておるという実情でございます。
○久保井委員 この間,行刑改革会議でアンケート調査を受刑者にしていただきましたが,その受刑者アンケートの結果は御覧になりましたか。
○澤田保安課長 はい。
○久保井委員 それを見ると,かなり面会の回数とか時間とか,そういうものをふやしてほしいという希望が多かったように思いますけれど,そこはこれからどうするかが問題ですけれども。
○南会長 面会を許すか許さないかということの基準は,これは法務省令,省令か何かで定まっているのですか。それとも,訓令,通達か何かですか。
○久保井委員 親族以外は,監獄法になっているでしょう。
○南会長 そのときに,裁量があるわけですね。その裁量の基準なのですが,もう少し細かい規定があるかということなのですけれども。
○澤田保安課長 ここに書きました以上には,細かい規定はありません。
○南会長 細かいものはないわけですか。フランスでは,かなり厳しくて,犯歴があるかどうかの身元調査をするなどと言っておりましたが,やはりそこまではできないのでしょうか。その上でということは。リストか何かをつくってありましたけれども。
○澤田保安課長 現在も運用としましては,面会の外部交通の相手方を……。
○南会長 今,運用とおっしゃたけれども,全くその運用基準というのはないのですか。
○澤田保安課長 通達として出ているようなものもありません。
○南会長 例えばリストをつくるとか,その中からとか,そういうふうなものはないのですね。
○澤田保安課長 運用としましては,親族の申告表というのを,おおむねどの施設でも,本人が親族を書き上げてきますので,そういうふうなものがリストになっているという実情ではございます。
○南会長 そういうことですか。
○曾野委員 親族というのも,もちろん母親とか父親とか仲のいい兄弟というのはいいと思いますけれど,親族というのは,私が受刑者だったら余り会いたくないですね。やはり友達に会いたい。それで,親族も嫌がっている場合とか,居所が分からないとか,そういう場合はどうなさるのですか。親族がいなかったら,現実に。戸籍上はいても,到達できなかったら,どうなさるのですか。
○澤田保安課長 中には,親族と全く音信不通で,だれも面会や手紙のやりとりをする相手もほとんどいないというふうな受刑者もありまして,それほど多くはないですけれど,仮に親族があったとしましても,かなり行き来が途絶えているので,余り面会も手紙のやりとりもしたくないという受刑者も,特にB級といいますか,犯罪傾向が進んでいるクラスですけれど,端的に言いますと累犯というか,何回も刑務所に入っている者がそれに該当するのですけれど,そういう者の場合は,親族との面会,信書の発受が途絶えてくるという者もやはりおります。
○曾野委員 その場合に代替は認めないのですか。例えば外国だったら,牧師とか神父というのは非常に大きな存在になると思うのですが,それを認めないというのは相当な人権無視だと外国では思われますけれども。
○久保井委員 NGOの人権センターぐらい認めてもいいだろうと思うのだけれど。
○澤田保安課長 直ちに代替してくれる人が,その各個人についてあるかどうかも問題ではあるのですけれども。
○曾野委員 それは,あると言ったらの話です。あると言った場合にどうなさるのか。
○澤田保安課長 あるとすればですね。
○曾野委員 はい。容易に身元は調べられますね,神父とか牧師とか,仮にお坊様とか。そういうものを調査なさらないというのは,私はやはり怠慢なように……。
○澤田保安課長 調査しないということは一般的にはないと思います。親族が全くいないのであれば,いずれにしても受刑者は社会に帰っていく人ですので,その際にどういう人に身元を引き受けてもらうのか,そういう人がいないのかどうか,そういう人があれば,むしろ積極的に……。
○曾野委員 いや,こういう人たちは身元引き受けはしません。なぜかと申しますと,財産がないのですから。私は,それで法務省で国籍を取るのにひどい目に遭ったことがあるのです。つまり日本に何年もいるシスターが日本国籍を取りたいと言ったのです。そうしたら,財産証明をしろというのです。財産を捨てることが修道会に入ることですから,私はしましたけれども,そういうとんちんかんをおっしゃるのです。だから,この人たちは身元引受人はできないと思いますけれど,魂のサポートはするのです。そういうことに対する理解が全くないと困ると思います。
○青山補佐官 面会の対応ではないのですけれども,宗教教誨という制度がございまして,施設に登録というか,施設に御協力いただいている各派の宗教家の方が,個々の受刑者にいろいろ説教をしていただいたり,お話を聞いていただいたり,それから,篤志面接委員制度というものもございまして,これも厳密にいえば面会の制度ではないのですけれども,それぞれの分野の著名というか専門の方に,いろいろ相談事に乗っていただくような制度はございます。
○曾野委員 何にせよ,牧師や神父であればだれでもいいというわけではないのです。私たちは,長いこと,告悔という罪の告白までやっている人が,私はないのですけれど,いるわけです,普通は。そうすると,その人に全部言いたいということがあるのです。だから,牧師さんならだれでもいいだろうというのは,日本人の宗教に対する感覚が粗っぽいということだろうと思います。ですから,それはきちんと届けて,それは各教会で簡単にその人が実在する人がどうか調べられることでございますから,その人が来るときだけ,写真を登録したり,指紋を登録したり,そして,会わせるという方法が,特定のものがあってもいいだろうと私は思います。
 もう一つ,信書,手紙を余り出してはいけないと。例えば終身刑とか死刑の場合,手記というのは何なのですか。手で記録するという手記,それは信書ではないのですか。どのように扱われるのですか。
○澤田保安課長 手記を書いて,社会に発表するとか。
○曾野委員 はい。それを外部に出したりする。手紙と違って,手記は特定の相手はないわけでございますね。その場合はどういうふうに扱っていらっしゃいますか。
○澤田保安課長 これは,特定の者が相手方でなければ信書ということになりませんので,著作物の発表ということになるのですけれど,これも施設の長の判断によって,それを発表することが本人の処遇だとか施設の管理運営に支障がなければ,そういうものを発表することを許すということもございますし,ただ,場合によっては,それを発表することによって本人の心情が乱れたり,あるいは,いろいろ施設の管理運営上支障が生じるというふうな事態であれば許可しないと,そういう運用です。
 それから,先ほどの面会で,全く親族がいない人となりますと,これも身元引受人という話になるのですけれど,やはり帰っていく場合に更生保護施設というものがありますので,御存知かと思いますが,そういうところに帰っていけるような人であれば,更生保護施設の職員の方が,この人を取ってもらえるかどうかという,それを保護観察所を通じて連絡いたしますので,そういう更生保護施設の職員の方が刑務所に来られて,その人間と面接をして,社会に出てもきちんと働ける意思がない人は更生保護施設でも取れませんので,そういうところが大丈夫かどうかを面会に来て確かめられたり,そういうことはございます。
○曾野委員 もう一つは魂の問題です。皆様方は,魂の問題ということになると所属がなくなってしまうのです。魂の問題というのは非常に重大でございます。出て行ってから,例えばその人は受け入れ先がなくて,その日からのたれ死にしてもいいのです,魂が救われていれば。極端に申しますと,そういう発想です。これを言うとすごく極端になりますけれども,信仰の面からはそうなのです。ですから,魂というものは本当に大事なものだから,その間に無理して探すのではなくて,その人が会いたいと思う人がいたら,本当に一人とかそこらでございましょうから,限って会わせるということに対する畏れを抱いていただかないと,私は困ると思います。単に出ていったときから,どこに寝かせて食べさせるかという問題とは少し違うと思います。
○久保井委員 外部とのつながりを,なるべく切ってしまわないように,やはりつないでいって,出てからもスムーズに社会生活に戻れるようにするというふうにしないと,完全にすべての自由を奪ってしまって,それで,例外的に少しだけ外部との接点を認めるということでは,外に出た後,生活できる能力を失ってしまうというふうに思うので,だから,少し古い考えからすると,管理優先だからやむを得ないと思いますけれども,今の時代に合わないように思いますけれどね。これは評価の問題だから,質問しても仕方がないと思いますけれども。
○南会長 ここで親族というのは,現密に民法上の親族に限られているわけですか。例えば内縁だとか,それは入らないのですか。
○澤田保安課長 先ほど,内縁も含めてということを申し上げましたが。
○南会長 含めるのですか。
○久保井委員 恋人は入らないのですか。
○南会長 それから,友人とか,あるいはフィアンセとか……。
○澤田保安課長 恋人やフィアンセは,内妻と認められなければ一応親族には入らないということです。
○南会長 そこは弾力的に運営なさっているのですか。
○澤田保安課長 内妻についてでございますか。必ずしも弾力的には……。
○青山補佐官 夫婦としての実態が認められれば,法律上の婚姻であろうが,内縁関係であろうが,許可している運用です。
○南会長 友人までは行っていないですね。
○澤田保安課長 行っておりません。
○南会長 親しい友人とか,そういうものまでは行っていませんね。
○澤田保安課長 民法上の親族の中で,特に難しい問題は養子縁組がございまして,養子縁組は自由にできますので,特に暴力団関係者が,受刑した後も外部交通の相手方を確保するために養子縁組をするということがございまして,それが親子になったり,子供を取ったり,あるいは親分のところの戸籍上養子に入ったりするようになりますので,これらは形式的には民法上の親族ではございますが,やはり監獄法の趣旨にのっとって,それは制限する場合もございますし,裁判例にも,そういうふうにした所長の判断が支持された裁判例もございます。
○南会長 面会室ですが,私どもが視察してきたのは複数の者が面会をして,面会室が何かパーラーみたいな,そういうふうな感じになっているわけですが,日本ではそういうふうな例はございますか。例えば交通刑務所などは,私は行っていないのですけれども。
○澤田保安課長 交通刑務所などでは,屋外で面会するというところもあります。ただ,それほど集団のところという,外国のああいう形ではありませんけれども,あるいは屋外の庭にしつらえたようなところに座って面会するものもありますし,交通刑務所でなくても,累進処遇級の上級の人には仕切り板のないところで面会をするというところはございます。ただ,こういうところで一斉に面会をして,職員がそれぞれにつかないで,一つところだけで監視するという,そういうところの光景は今のところありません。
○南会長 そうすると,原則としては仕切り板のあるところで,そして,立会をしてということになるわけですか。
○澤田保安課長 はい。
○南会長 それで,例外的には仕切りのないところもある。その場合も立会がある。
○澤田保安課長 そうですね。
○南会長 要するに外国のようにガラス張りで外から見ているというようなものではないということですね。
○澤田保安課長 はい。
○南会長 これは,私よりも先生の方がお詳しいので。
○久保井委員 弁護士の面会は別として,一般の面会についても少し厳しいのではないかという感じがしますが,このアンケート調査の中に,職員の立会があるので自由に会話ができないということを言っている人が非常に多いのだけれど,別に横から差し止めるわけではないのでしょうけれども。
○曾野委員 それから,手紙について,私はやはり大変友達は大事だと思うのです。別に脱走を示唆したり,中に麻薬が入っているというのではなくて,頑張ってやってこいというような手紙も渡せないのですか,親族でなければ。
○澤田保安課長 そうですね。それは個々の施設長の裁量ですので,原則としては,受刑者であればだめなのですけれど,そういういい手紙であれば,かえって読ませてあげる方がいいじゃないかという判断になる場合もあるかと思います。一概には申せないと思います。
○曾野委員 外側の者が,全く友達ですが,親族ではない人が入っていて,その人に外から手紙を出しても届かないということは,私なんかの程度では知られていないのです。悪いことを書かなければ,もちろん検閲を受けるだろうけれども,届くと思っているのです。でも,届かないわけでございますね。私も体験があるのですが,ですから,びっくりしてしまうのです。それでしたら,差し戻して,こちらに郵送料金を払って,渡していないということをおっしゃっていただきたい。届いていると思っているわけです,私の場合などは。金の受取りでございますから。未決なのでしょうが,その人から幾らかの金を寄附されているわけです,私にではなくて,私がやっているNGOに。そのお金の授受というのは,私はやはりすぐ報告して,ありがとうございましたと。私のことですから,別に脱走して来いとは書いていないのです。それで,その機会に,元気で,いろいろお疲れになっているところ休んで,読書もおできになったらなさって,出ていらしてくださいというようなことしか書かないわけでしょう。でも,それは全然届けられない。届けられなかったら,私の方に郵便料をつけて返すというふうなことはないのでございますね。
○澤田保安課長 原則としてはありません。施設で留めておくということです。
○曾野委員 それを何とか,それでしたら逆に,友達には手紙を出しても届きませんよというキャンペーンをしなければいけませんね。そういう感じがあるのです。
○大平委員 今度の刑事施設法案でも,面会ではなくて,信書の方は原則として自由になっていますね。今度の刑事施設法案の信書の方です。これは非常に進歩していると思うのです,信書に限りましては。ただ,先ほども言いましたように弁護士会に対して受刑者が発信するものについても,これは一応中身を見るということになっていますよね。最近もありましたけれど,大阪拘置所でまたございまして,マスコミ報道ですけれども,あれは前からあったのだという一部情報もありますよね。前からあったことが,これまで外部に分からなかったのは,やはり受刑者とか,あそこは未決拘禁者ですけれども,外部に言うのをためらってしまうのですね。もし外部に信書を発信すれば,拘禁する側に中身を見られますから,やはり躊躇するのは当たり前ですよね。だから真実の発見が遅れるというところがあると思うのです。だから,受刑者から弁護士会などに発信する場合は,検閲は一切しない,そういう手続が原則となるべきだと思うのです。ただ,受信する場合は,それが本当に弁護士会から発したものか分かりませんから,それは,本当にそうなのかという意味での確認は,それは必要だと思います。その1点だけは,やはりこの機会に申し上げたいと思います。
 面会の方ですけれども,やはりイギリスとフランスとを視察してまいりましたけれども,我々一般国民側がどれだけリスクについて了解できるかということの問題だと思うのです。あちら側は,脱走するのは当然起こり得ることで,そのリスクを何パーセント内に抑えるという,そういう発想がやはり逆なわけです。だから,私たち周りもそういう発想になって,そのリスクはあるかもしれないけれども,やはり中で拘禁されている方の自由を優先するとか,そこの兼ね合いだと思うのです。それを,外部の方は余り御存知ないと思うのです。そういうメッセージも,やはりそういうリスクとかそういうこともすべて公表する必要があると思うのです。その上で皆が納得,公表した上で納得して,では,もう少し緩めましょうという議論になれば,それはいいことだと思います。ただ,現在は余り知られていないということが問題だと思います。
○曾野委員 全く知られていません。だから,塀の中に入っている方に対する我々のつき合い方というパンフレットをつくってほしいぐらいです。だれならしてもいいし,だれならいけないのだということが全く分からないです。
○大平委員 先ほどの信書も,出所するときに全部パッと受け取りますので,こういう手紙が来ていたのかということが出所するときに分かるのです。それでは遅いと思いますね。
○曾野委員 はい。
○南会長 それでは,電話の使用も含めて,どうぞ御意見がありましたら。
 先ほど,これは刑事施設法案には書かれていないわけですね。
○澤田保安課長 法案自体には書かれていませんが……。
○南会長 ただ,法案自体にはないけれども,議論の中で出ていたとおっしゃいましたね。それは,何か記録に残っているものがありますか。
○澤田保安課長 はい,これはございます。
○久保井委員 大方30年前のことですからね。今その基準ではいけないでしょうけれどね。
○南会長 一応そういう議論がされたわけですね。これについて何か御意見は。
○久保井委員 ヒアリングはヒアリングとして,何でしたら打ち切っていただいて,あとは,こちらの議論をしたらいかがですか。
○南会長 では,そういうことで,長時間にわたってありがとうございました。どうも御苦労さまでした。

3.外部交通の在り方について

○南会長 それでは,ただいまの御説明を踏まえました上で御議論をいただきたい,御意見をいただきたいと思います。
○久保井委員 私は,これはやはりこの改革がずっと遅れて放置している部分の一つだと思うので,今の時代の在り方としては,もう少し開いていく方向にすべきだと。それは,考え方としては,やはり受刑者の持っている知人,友人,人間関係を,刑に服することによって完全に終わらせてしまうというか,なるべくそれが,できることであればそういう人間関係を維持して,出た後,また,スムーズに社会復帰できるような方向で考える。全面的に自由というわけにはいかないでしょうけれども,どこまで緩めるかという問題はあるでしょうけれど,考え方の根本はやはり変えていくべきではないかと思いますけれども。だから,今の未決については普通の市民と同じように扱う,既決はもう拘禁されているのだから,すべての自由を,外部交通を全部禁止して,例外的に少しずつ成績のいい者については緩めるという,その考え方が少し厳しすぎるのではないかと思いますけれども。
 だから,具体的に言うと,今の面会の相手は親族に限定しないで,だれでもいいということまでは言えないかも分からないけれども,また,チェックする必要性はあるでしょうけれども,やはり友人,知人,そういうものも認めていく方向に行くべきだし,それから,面会の立会の仕方にしても,全く立会のない状態というのも管理上困るでしょうけれども,だけど,余り厳密な立会ではなくて,もう少し緩やかな立会でいいのではないかと思いますし,信書などについても,回数制限とかいろいろ,面会にしても回数制限が非常に厳しいですね。だから,回数制限を緩和するとか,そういうことも考えていかなければいけないのではないかと思いますけれども,どの程度がいいかは,これはちょっとあれですね。
 電話については,韓国などではかなり自由に認めているようですし,そうだとするならば,これは全体会議でも認める方向に雰囲気としてなってきていますから,具体的にどういう条件をつけて認めるかですね。
○南会長 どういう条件のもとで認めるかということですね。
○久保井委員 はい。55年の法制審議会の答申というのは,成績のいい者に例外的に認めるということですけれど,当時としてはそれでも思い切った改革だったと思いますけれど,今はそれから30年近くたって,世の中の意識が変わってきていますから,やはり成績のいい者に対して御褒美としてということではなくて,外部交通としてある程度認めることにすべきではないかと思いますけれど,常に,今おっしゃった暴力団との,悪い友達との連絡を促進することになりはしないかという心配があるので,それをどうコントロールするかということを考えなければいけないのですけれども。
○南会長 大平委員は何か。
○大平委員 同じです。今,すごく治安が悪化しておりまして,治安の悪化の原因はいろいろ言われておりますけれども,外国人犯罪ということは除きまして,やはり再犯率なのです。一度刑務所,二度刑務所に入った者が,やはり再犯,また再び刑務所に入ってしまうというのは,社会との接点が,最初に入った刑務所のところで途切れてしまう,それがものすごくハンデだと思うのです。そこできちんとつながっていれば,もう二度とこんなところには来ないと思ったときに,きちんと受け入れ体制がある,そこで再出発が図れますので,やはり外部交通というのは重要だと思います。
○南会長 曾野委員はいかがですか。
○曾野委員 私も大事だと思うのですけれども,先ほどおっしゃったように相手を確認することは義務のような気がします。ただし,私は,この間,奇妙な例を聞きまして,いなくなってしまった女の子がいるのです,27歳の。それで,親はもう本当に……,奄美大島なのですが,車ごと消えてしまったのです。フェリーにも一切記録がなくて,それで,その娘から,1か月ぐらいたってから,「お父さん助けて」という電話がかかってきて,それは何かするとプツッと切れてしまうのです。それで逆探をつけたら,あるところのきちんとした電話が出てきたのです。そこへ行ったら,同じ奄美大島の人がそこにいて,電話もきちんと登録して,年寄り夫婦がいるのです,余り若くない。それで,おたくから電話があったと言っても,うちはそういう電話をかけることはありませんと。設置されている電話なのです。それで,要するに泥棒が入ったり,空き巣が入ったこともありませんと。施錠はきちんとしているから何でもありませんと。いろいろなことをやっても,それの一点張りなのです。そうすると,突きとめられませんね,事実上。電話番号は分かっても,そうではないとしらを切られると。今のは,しらを切ったのか何なのか,本当に悪くないのかもしれないのですけれど,でも,そこの番地のその電話からかかっていることは間違いないのです,「お父さん助けて」と。でも,その言葉は奄美大島にいるようなふりをしているのです。ですから,そういう問題があると,ほとんど相手の確認というのは不可能になってくるかもしれませんね。
○大平委員 イギリスでも言っていました。本当に相手方が登録した相手方なのか,事実そういう確認はできないと。それでもう終わりだと。
○久保井委員 ドイツは放棄してしまっています,相手の確認は。もう金額の制限で,月に50ユーロ,5,000円ぐらいでしょうか。その範囲内でカードで自由です。でも,やはりいつでも保安上の必要からチェックが入れられるようにするとか,そういうことはしないといけないでしょうね。
○大平委員 それは必要だと思います。
○曾野委員 それから,親族よりもしばしば,私だったら友達の方が大事だし,言うことを聞く気にもなるし,という感じはいたします。ですから,その線を断ち切らないでいただいて,親族だけというのは何か古い感じですね。
○久保井委員 やはり古い明治41年にできた監獄法だから,その当時の人間関係の基礎は非常に狭い親族関係,それから家族制度,それから小さなコミュニティが基礎ですから,それが今は形骸化しておって,ふだん生活しているのに大事な友達の方が本当は大事だということが多いですから。だから,社会の在り方が変わってきているのだから,ここも少し見直さなければ仕方がないのではないでしょうか。
○南会長 私も,外部交通を広く自由にある程度認めるということになると,保安上のリスクはありますけれども,また一方,社会との接点を打ち切るということによるマイナス面も非常に大きい。やはり社会復帰の可能性を閉ざしてしまうというような気がしますね。
○久保井委員 親族の面会でも時間が短い,回数が少ないと言っているでしょう。やはり仲のいい夫婦というか,片方が犯罪を犯しているから愛想を尽かされかけているものを,やはりなるべく離婚にならないようにするとか,多少のそういう配慮は要りますよね。そのためには,やはり親族の面会でも,それほど厳しく内容をチェックしたり,あるいは回数を制限したりせずに,もう少し緩やかにして,人間関係を維持しやすい環境づくりをしてやらないとね。
○大平委員 子供は,今,未成年者は何歳から何歳までが面会できないのですか。
○青山補佐官 制限はありません。
○大平委員 では,中学生でも,小学生でも,面会はできるのですか。
○青山補佐官 できます。
○南会長 面会室の在り方であるとか,いろいろございますね。電話の問題とかもございますが。
○久保井委員 面会室も少し工夫をしないと,楽しい面会にならないでしょう。
○南会長 やはり仕切りで面会ということについても,少し考える必要があるかも分かりませんね。
○久保井委員 これは,第1分科会の在り方と絡んでいますね。
○南会長 これは大いに絡んでいるのですね。だから,私は本当に,確かに脱走なんかを,外国などを見まして……。
○久保井委員 第2分科会の問題なのかどうか,第1分科会に回してもいいぐらいですね。
○南会長 それぐらいの問題ですね。外国のを見まして,確かに脱走を防ぐためとか,暴動を防ぐために多重防護のいろいろ厳しいものがあることはあるのですけれども,中では案外一般社会と同じぐらいの自由があるみたいなので,そういう意味でも余り接点が切れていない。それから,今度は外部とのつながり,連絡と。
○久保井委員 自信を回復,取り戻させるというか,反省させるというか,力で押さえつけるのではなくて,自主的に自分の心を入れかえて生きていこうという気にならせるような,そういう刑務所にしなければいけないと思うのです。
○南会長 先生がおっしゃるように,時代が大きくこういうふうに変わってきておりますので,それに適応した処遇の在り方というのも必要ではないでしょうか。
○久保井委員 徐々にやらないと,一遍にはできませんので。
○南会長 一遍にはいきません。それはやはり,その中に入っているというのは,それだけの反社会的な行為をしたわけだから,それは制限があるのは当然ですけれども,だから,ステップバイステップで1回,あるいは試行的に,試行錯誤で考えてみるということが必要ではないかなと思いますけれどね。
 それでは,どうもありがとうございました。外部交通の在り方につきましては,おおむね御意見を伺うことができましたので,本日はこの程度にさせていただきたいと思います。
 本日の御議論を踏まえまして,私の方で外部交通の在り方に関する私案を作成いたしますので,次回はそれをたたき台に御議論をいただければと思います。
 また,不服申立制度につきましても私案をお出しいたしますので,それをたたき台に御議論をいただきたいと思います。
 内部監査については,多少字句の修正等も加えまして,また私案の修正案を提出いたします。

4.その他

○南会長 それでは,次回の分科会は12月2日,火曜日の午後2時から,14階の矯正局会議室となりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,本日はこれにて閉会いたします。
 事務局から何かございますか。
○南局付 お疲れさまでございました。
○大橋補佐 よろしいですか。資料の件で,電話の関係ですが,法制審の答申の方には入っておりませんで,その審議の過程で,開放処遇を受けている受刑者,その他一定の基準に合致する受刑者について,外部の者に電話をかけることを許すことを考慮するというような話がでてきております。審議の過程での話でございます。しかしながら,答申そのものには出てきておりませんし,刑事施設法案にも規定はされておりません。
○南会長 では,どうもありがとうございました。お疲れさまでした。


午後4時15分 閉会