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行刑改革会議 第3分科会 第3回会議

日時: 平成15年9月29日(月)
14時07分~16時37分
場所: 法務省第1会議室(20階)


午後2時07分 開会

〇高久会長 時間が過ぎておりますので,第3回目の第3分科会を今から始めさせていただきます。
 前回の第2回目のときに,お二人のドクター―お一人の方は行政の方ですが―からいろいろな問題につきましてヒアリングをいたしました。本日は,前回の議論でいろいろ問題になりました,例えば公務員の兼業の問題でありますとか,あるいは健康保険の問題,あるいはカルテの開示などについては,事務局の方で少しこの間に調べていただきまして,その結果を報告していただきたいと思います。
 もう一つ,被収容者が死亡した場合の手続につきまして,これは現在,矯正局の方で検討しているところと聞いていますが,今日はその点につきましても,事務局の方から進捗状況についてお話をお伺いしたいと思います。
 そこで,まず最初に,事務局の方から,保険制度との関係で,国民健康保険の仕組みがどのようになっているのかということと,公務員の兼業の規制,更にカルテの開示などについて調べたことについて説明をしていただきます。
○西田企画官 お手元にお配りしてあると思うのですけれども,ホッチキスでとめてある部分になります。
 まず一番最初に,「在監者に関する国民健康保険法の規定」というものがあるのですけれども,これは刑務所に収容されています受刑者に関する部分だけを抜粋して並べてございます。
 まず最初が,1として「被保険者の定義」というところがあるのですけれども,同法の第5条に「市町村又は特別区の区域内に住所を有する者は,当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする」という規定がございます。同じく第6条に「次の各号のいずれかに該当する者は,国民健康保険の被保険者としない」というふうにあるのですけれども,この1から8まである中に,刑務所の受刑者,在監者は該当しておりませんので,したがいまして,この第5条,6条で,刑務所に在監する受刑者については国民健康保険の対象となるということになります。
 その次に,真ん中から下あたりに「給付制限規定」というものがあるのですけれども,では次に在監者に対する給付についてはどうなっているのかということが,この条文でございます。第59条,ここに書いてあるようなことでございますけれども,この下の1,2,次の各号のいずれかに該当する場合は給付を行わないということになっておりまして,その2の方に「監獄,労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき」というものがございますので,国民健康保険の被保険者の立場,資格は喪失しないものの,給付されないという仕組みになっております。
 最後に,3の「保険料」のところですけれども,これも在監者についての特別な規定はございません。ただ,この第77条を見ると,「特別の理由がある者に対し,保険料を減免し,又はその徴収を猶予することができる」となっておりますので,各市町村における条例等の定めるところにより,保険料についてはこういった取扱いになっているということでございます。
 それがまず1点目の,在監者に関する国民健康保険法の規定でございます。
 次に,1枚めくっていただきたいと思います。ここには,国立大学の教員等の兼業制度,つまり,公務員でありながらほかの仕事をするという制度の概要について簡単にまとめました。
 まず,1のところですけれども,どういった内容の兼業が認められているかということを書いてございます。(1)が営利企業の役員の兼業について,(2)が営利企業における役員以外の兼業及び公益法人等における兼業について,(3)が教育公務員特例法に規定する教育関連事業,事務の兼業,この三つのやり方がございます。一つずつ御説明します。
 (1)が,営利企業の役員の兼業です。これは国家公務員法103条にございまして,基本的に兼ねてはいけない,原則としては,職を兼ねたり,みずから営利企業を営んではならないということになっているのですけれども,人事院規則の定めるところによりまして,人事院の承認を得た場合には,役員の兼業を行うことができるという規定になっております。文部科学省におきましては,この承認権限は,文部科学大臣,更に各大学の学長等の機関の長に委任されておりまして,現在の扱いは,各大学の学長等,機関の長が承認すれば兼業ができるという扱いになっております。
 次にイですけれども,では一体どんな役員について兼業しているのかというのが,ここでございます。いろいろな目的はあるのですけれども,研究成果の事業化促進でありますとか,企業の適法適正な経営の規律づけの充実とか,あるいは大学の社会貢献,研究教育の活性化といった目的から,ここに○で三つ入れてございますけれども,具体的にはこういったものが兼業として認められております。
 次に(2)でございますが,これは国家公務員法第104条に規定があるものでございまして,営利企業における役員以外の兼業及び公益法人等における兼業ということになっております。これも基本的には認められておりませんで,内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可を要するということにされております。ただし,兼業の実情としましては,産学連携推進の観点から広く認められておりまして,具体的には,この○で書いた三つほどが現在認められて,兼業が許可されております。
 次に(3)ですけれども,これは正に教育職の公務員の特例ということで,教育公務員特例法第21条によって認められているものでございます。簡単にどういうものが認められているかといいますと,教育公務員について,その知識,ノウハウを広く活用する範囲で,その趣旨で認められているということのようでございます。具体的には,イの「役員兼業の実情」のところに書いてございますが,国公立の学校,各種学校の非常勤講師等ということになっております。
 次のページをお願いいたします。
 それでは,兼業がどういった場合に認められるかという許可・承認権限ですけれども,これはいずれの場合も共通しておりまして,この(1),(2),(3)が,その承認・許可基準でございます。まず,職務の遂行に支障がないこと。これは,国家公務員あるいは公務員には職務専念義務がございますので当然ということで,(2)には,営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないということ,(3)が,公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないことというように決まっているようでございます。
 3ですけれども,今度はこれが勤務時間内についてはどうかということでございます。これは,勤務時間内,勤務時間外というような取扱い,今までは区別はしていなかったのですけれども,勤務時間内においては当然職務専念義務の範囲内ということで,議論はされずに来たと思われるのですが,今回,産学官連携のために,あるいは新技術,新産業の創出のためということで,特に勤務時間内の兼業活動の趣旨,取扱いを新たに定めたものでございます。つまり,これも一定の条件のもとで承認を得れば勤務時間内にも兼業ができるということになっております。兼業の実情は,さっきの1ページ目とダブるのですけれども,同じような職種,役職が認められております。
 最後に4ですけれども,その報酬がどういった形になっているのかということは当然考えなければいけませんので,ここで調べて整理しております。
 (1)のところは,「労務に見合った財産的価値」とされております。つまり,提供する労務の質と量に見合った,妥当なものでなければならないということでございます。
 (2),勤務時間内兼業を行った場合には,当然,国から出ている給料とダブってもらうことになりますので,そこのところの調整がございまして,割かれた勤務時間については,他の業務をやり,それに見合った報酬が得られているわけでございますので,給与は当然減額される扱いとなっております。
 以上が兼業の関係の資料の説明でございます。
 次に,カルテ,診療情報の提供についての御質問がございましたので,厚生労働省が本年9月12日に出した通達をここに入れてございます。
 これは簡単に申しますと,まず1枚目が通達の鏡でございますので,次をあけていただきまして1ページ,「診療情報の提供等に関する指針」,いわゆるガイドラインとされるものなのですけれども,この下の方,3のところに一般的な原則を書いてございます。つまり,懇切丁寧に診療情報を提供するように努めなさいということが大きな原則。その情報提供のやり方については,口頭による説明,説明文書の交付,診療記録の開示等が考えられるというふうな扱いになっております。
 次のページをおあけください。2ページでございますが,ここの下,「7 診療記録の開示」のところに,具体的にどういうふうに開示をするのかということを書いてございますけれども,まず(1)が「診療記録の開示に関する原則」。この一番最初の○にございますように,原則としてこれに応じなければならないというふうになっております。それと(2),では診療記録の開示を求め得る者はだれかということなのですけれども,これも1行目にございますように,原則として患者本人とするというふうに決められております。
 3ページを御覧ください。これも下の方なのですけれども,診療情報の提供を拒み得る場合なのですが,これも抽象的ではありますけれども,一定の場合には提供しないこととされております。ここの○の(1),(2)のところにありますけれども,診療情報の提供が,第三者の利益を害するおそれがあるとき,あるいは診療情報の提供が,患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき,こういった場合には拒み得るという扱いになっております。
 それから,1枚だけ横の資料があると思うのですけれども,図になったような,1枚だけのものでございますが,これは,今日,矯正局保安課長の方から説明を受けるための資料でございます。
 あと1枚,弁護士会の方から,今日,配付してくださいというふうに来ました資料をお手元に置いてあると思います。
 配付した資料は以上でございます。
○高久会長 今,事務局の方から説明がありました,国民健康保険の問題,それから公務員の兼業の問題,カルテの開示について,何か御質問おありの方……。
○江川委員 診療情報の提供を拒み得る場合というところで,「第三者の利益を害するおそれがある」というのは,具体的にどういうことを想定しているのでしょうか。例えば,別の医者が訴えられるとか,そういうことも含めるということですか。
○西田企画官 3ページに,厚労省の方から括弧の中に〈(1)に該当することが想定され得る事例〉といって書いてあるのですけれども,こういったことだとされています。
○高久会長 よく分からないですね。どういう場合に第三者……。
○大橋課長 例えば,精神科の場合,いろいろ患者さんから話を聞くわけですね,過去のこととか何かを。そうすると,本人と本人の家族以外の人との関係についても情報が入ってくるわけですよね。そういったものを普通,カルテに書くわけです,精神科の場合は。その間に何があったかとか,そういったことも一応書いてあった場合に,これは本人のことだけじゃなくて,第三者のことについても書かれていることになりますね,情報が。それが開示された場合に,場合によってはその第三者の問題が,利益を害するということはあり得るんじゃないでしょうか。
○江川委員 そのカルテに書いてあることは,本人から調査したことですよね。だったら,開示するのは本人に開示するわけですから。
○高久会長 基本的には本人に開示するだけですからね。亡くなった場合には遺族に開示することもありますけれども。その場合には問題になることがあるでしょうね。
○大橋課長 あるいは,家族から情報を聞くこともありますよね。
○江川委員 家族から聞いた情報をカルテに盛り込むこともあるわけですか。
○大橋課長 精神科の場合はやはり,本人だけじゃなくて,家族関係とか,家族からも話を聞いて,本人についての情報を家族がこう言っているということを記載することはあるわけですね。それを患者が知った場合に,恨みを持ったりすることもあります。
○江川委員 つまり,これは医者を訴えたりするときには出さないよとか,そういうことではないわけですね。
○大橋課長 分かりませんが,少なくとも今の場合は一つの例ですよね,第三者の。
○高久会長 ほかに何か御質問おありでしょうか。

1.被収容者の死亡時の対応について(矯正局説明)

○高久会長 もしなければ,被収容者が死亡した場合の死因確定のための手続について,矯正局の澤田保安課長さんにお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○澤田保安課長 矯正局で保安課長をしております澤田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 御説明いたします内容は,被収容者が亡くなった場合の対応についての手続等を改めようとしているという内容を御説明しようということでございます。お手元に1枚の概念図のようなものでございますが,大体これで内容は尽きているというところでございます。
 行刑施設で収容されている人が亡くなりました場合には,所長による検視あるいは検察官等への通報,記録等の手続が監獄法施行規則というものに定められているわけですが,先般の名古屋刑務所事件を契機として,全国のこのような手続の実情等を調査いたしましたところ,基準は定められているものの,具体的な実施要領等を定めていなかったということがございまして,具体的な取扱い方法が施設によって相当ばらつきがあるということが分かりました。また,そのうちには,必ずしも適切でない取扱いも散見されたという状況でございます。そのため,今般,矯正局で,このような手続について改めようということでございまして,現在,関係部局等の調整もございますので,それを進めている段階で,近く実施したいという内容でございます。
 改めようとしている点は3点ございまして,所長検視,検察官等通報,記録ということがございますが,大別しますとこの三つに分かれます。
 所長検視というところで書いているところでは何を改めようかということでございますが,監獄法施行規則等の規定によって,被収容者が亡くなりました場合は所長がその死体を検視するというふうにされているのですが,この検視というのは,具体的な内容としましては,死亡の事実を確認して,身体における外傷等も含めまして異常の有無を調べるということでございますが,この検視を常態的に部長等に代行させている施設も一部にはございました。また,所長ができない場合に,これに代わって検視を実施する者のポストが施設によってばらつきがある。と申しますのは,所長ができない場合に,だれが代わってやるかという,その者が必ずしも統一されていなかったということでございます。ここを改めて,やはり原則は,監獄法施行規則にあるとおり,所長がみずから行うべきであるということをもう一度徹底しようということでございます。例外的に所長に代わってほかの者がやる場合の要件をはっきり定めて,これは,所長が不在であるとか,やむを得ない事情がある場合ということでございます。それから,だれがやるかということにつきましては,代行検視者の特定ということでございますが,これは処遇というものから通常は離れた立場にある総務部長がやる方が,内部牽制といいますか,手続の中立性,客観性にも資するのではないかということで,所長ができない場合は総務部長がやりなさいというふうにする予定でございます。
 その他,調査事項等の特定としまして,被収容者が亡くなる場合,具体的場合には多岐にわたっておりますので,それぞれに応じて調査事項等も変わってくるところはあるのですが,最低限共通すると思われる調査事項を定めて,徹底しようということを予定しております。
 それが一番最初の所長検視に関する改善でございます。
 その次の検察官等通報というところで書いているところでございますが,これは通報基準が不統一ということもございまして,これも監獄法施行規則第177条第3項という規定なのですが,被収容者の死亡が自殺その他変死の場合には,その旨を検察官及び警察署に通報して,検視を受けるというふうにされておりますけれども,実際の運用としましては,ほとんどの施設では,自殺その他変死の場合に余り限らずに,もうちょっと幅を広げて,明らかに病死と認められるような場合でも検察官に対して通報しているのが実情でございます。
 他方,検察官には通報しているのですが,多くの施設では,検察官及び警察署となっておりますところの警察署には通報がなされていないというところもございましたので,これは現場の各施設において,検察官が刑事訴訟法上の第一次的な司法検視の権限主体でございますので,検察官に通報することでその監獄法施行規則の趣旨を満たしているだろうという判断で,また,検察官の方が刑の執行指揮とか勾留の執行等の関係では拘置所,刑務所と密接な関係にあるということもございましたので,検察官に通報する方が望ましいという判断であったろうかと思いますが,やはりこの場合は,施行規則にありますとおり,できる限り手続の透明性を図ることが望ましいという趣旨から,今後,その施行規則に書いてあるとおりではございますが,自殺その他変死の場合にはやはり検察官と警察署の双方に通報しよう,それを徹底しようということでございます。
 それが真ん中の検察官等通報ということで,改めようとしていることの内容でございます。
 3番目は記録についての改善でございまして,実は,ここにつきましては実施済みといいますか,既に通達を発出しておりまして,実施しております。
 ここは,死亡帳の記載内容が十分でないという点を改めたということでございます。監獄法施行規則第177条第2項,第3項の規定で,被収容者が死亡した場合には,病死のときは医師が病名,病歴,死因,死亡年月日時,それから,自殺又は変死のときは,これは検察官及び警察署による検視を受けることになっておりますので,その検視の結果,それから検視者,立ち会った者の氏名等を,死亡帳という帳簿を,被収容者が亡くなった場合に必ず作成することになっておりまして,その死亡帳に記載することになっているのですが,その具体的な記載要領も通達には定められていたのですが,記載の実情を見ますと,そのペーパーに書いておりますとおりでございますが,医師が記載しなければならない事項が特定されているのですが,それが必ずしも医師が記載していないものもありました。それから,死因等の記載が簡略に過ぎるものがございました。それから,これは全くの誤りなのですが,当然のことですが,保存期間を経過していないにもかかわらず誤って廃棄したものも若干あったという実情でございますので,その他,更に細かく言えば,部長等が代わって検視したものについて,この死亡帳の決裁を所長本人に上げていなかったという,そんな場合もございますので,そこも含めまして,このような不適切な記載等がないように,改めて周知徹底いたしまして,更に,記載内容の統一としましては,今般の名古屋刑務所事件等にかんがみまして,死亡時又は死亡前―死亡前はおおむね1週間以内でございますが―に保護房収容とか戒具の使用あるいは職員による制圧等があった場合には,必ずそれを死亡帳の方にも記載しておくようにということを,内容を明らかにいたしまして,そうした通達を発出しているところでございます。
 この3番目の「記録」については既に実施をいたしまして,1番目,2番目の,所長検視のやり方,それから検察官等通報の基準の統一については,これから近く通達等を出しまして徹底しようという内容でございます。以上でございます。
○高久会長 どうもありがとうございました。
 どなたか御質問はおありでしょうか。
○宮澤(弘)委員 拝見して少し驚いているのですが,所長の検視とありまして,そこで「実施方法の不統一等」と書いてあって,「一部に常態的に部長等に代行させている施設がある」と。監獄法ですか,施行規則ですか。そして,法律ですか。
○澤田保安課長 施行規則でございます。
○宮澤(弘)委員 まあ,規則にしても,いずれにしても命令ですね。常態的に部長等に代行させている施設があるというのは,明白に監獄法なり,その法体系に違反をしているわけでしょう。違うんですか。
○澤田保安課長 常にということになりますと,やはり不適正な運用だと言わざるを得ないと思います。
 常態的にといいましても,若干弁解がましくなるのですが,通常の勤務時間に被収容者が亡くなった場合は,所長もいることが多いということでございますので,そのときは所長がおそらく行くことが多いかと思いますが,亡くなります場合は,1週間で考えますと,24時間×7の168時間ですか,1週間は168時間になっておりまして,ただ,公務員の通常勤務時間はそのうちの40時間でございますので,亡くなる場合は,どちらかというと夜間とか,あるいは週末とかが多いものですから,それで所長に代わって部長が多くは検視をするというふうな運用がとられるに至ったのではないかとも推測はしておりますが,いずれにしましても,おっしゃるとおり,法令から見ますと正しい取扱いではないと思われます。
○宮澤(弘)委員 週末だって所長がやることを監獄法なりその体系は期待をしているんじゃないでしょうか。
○澤田保安課長 であろうかとは思います。
○宮澤(弘)委員 もう一つつけ加えますが,そこで,こういうふうなルールがあるけれども,どうもそのとおりやられていないので―これは実施済みですか。つまり,現状においては一部に常態的に部長等に代行させている施設はもうないのですね。
○澤田保安課長 これは,通達としてはまだ改めておりませんので,最終的な徹底はできておりませんが,今回の事件等を踏まえて,最近はやはり所長みずからができるだけ行くようにしている施設が多いのではないかというふうに承知はしております。ただ,まだ通達は発出しておりませんので,最終的な周知徹底はまだできてはおりません。
○宮澤(弘)委員 監獄法の建前があって,そのとおり行われていなかったわけでしょう。ですから,それを直していかなきゃいけないわけですね。それについては,それはすぐ直るものとそうでないものと,それはいろいろとあることは分かりますけれども,例えばこの問題なんていうのは,矯正局長の通達で,各地方のこういう機関に通達を出せばすぐできることではないでしょうか。
○澤田保安課長 今私,多少錯覚しておりまして,この所長みずからがやりなさいということにつきましては,この部分については7月に事実上指示をしておりますので,周知徹底は図っております。
○宮澤(弘)委員 これは実施済みですね。
○澤田保安課長 はい。
○宮澤(弘)委員 そうでしょうね。これはもう行われているわけですね。
○澤田保安課長 はい。
○広瀬委員 例えば,やむを得ず代行させたという場合は,理由などをちゃんと書くようになっていますか。例えば,週末遠くに旅行したためとか。つまり,代行者にやらせた場合には,所長がその理由を書くようになっていますか。
○澤田保安課長 今回改めまして,そのやむを得ない事情というのを記載しておくようにということを求めております。
○広瀬委員 それから,最後の「記録」のところですが,死亡の記録を書きますね。それは上部機関みたいなところにも行くのですか,その書類が。つまり,その書類はなくしましたというようなことで済まさないように,同じ記録が例えば法務省にも送られるとかあるのですか。記録はあくまでも刑務所限りなのですか。
○澤田保安課長 被収容者が亡くなりました死亡の報告については,別途報告されることになっておりますが,死亡帳自体は各施設で保管をしておくということでございます。で,必要に応じて,矯正局ならば巡閲という制度もございますので,それで各施設の実情を調査等へ行きました際に,その保管状況についてもチェックするということになっております。
○高久会長 それは何年間保管することになっているのですか。
○澤田保安課長 これは10年間でございます。
○宮澤(弘)委員 今の御質問で,やむを得ない事情という「やむを得ない」が,つまり監獄なり,その系統の方々の「やむを得ない」というのと,世間一般の「やむを得ない」という観念というのが少しずれがあるようにお感じになりませんか。どうですか。つまり,一般的にいえばやむを得なかったと言えても,こういう場合にはやむを得ないということは世間一般になかなか通りませんよというようなことというのがあるのかもしれないと私は心配しているものですから伺っているのです。
○澤田保安課長 今回は,所長が不在であるということを明示しまして,所長が不在である場合等やむを得ない事情が認められる場合にはというふうに徹底をいたしますので,恐らく不在以外にはそんなにいろいろな場合は考えられませんので,常時所長官舎にいるというばかりでもありませんので,不在の場合はあろうかと思いますが,そういう例示も設けまして「やむを得ない」というふうに書きましたので,今後の運用でこちらの思っているところと対一般の国民の方が思われるところの食い違いはそんなにないのではないかというふうに思っております。
○高久会長 大体,亡くなるのは,早朝とかが一般に多いですね。ですから,件数にもよるのだと思います。非常に被収容者が多くて,たくさん死ぬところでは,頻度が非常に多くなって大変だろうと思いますね,ですから,件数によってかなり違うと思うのですが,一番多いところで何人ぐらい亡くなっているのか御存じですか。
○澤田保安課長 府中刑務所で,手元の資料では,10年間で93件です。
○高久会長 ということは,1年に9件だとすれば出てこれますね。真夜中でも,必要に応じて。
 ほかにどなたか御質問……。
○江川委員 亡くなった方の検視に法医学の人たちの関与をもう少しすべきではないかという意見が弁護士さんの方からも出ています。現在では当初の警察や検察官が必要と認めたときにはそういうふうになるということになっているんじゃないかと思うのですけれども,基本的に全件,法医学者が死体を改めるということにするとすれば,今の法律の中でそれができるのか,それとも新たに制度をつくらなければいけないのか,また,それについての見解があれば教えてください。
○澤田保安課長 検視のあり方につきましては,どちらかというと私どもの手を離れるものですから,私ども,監獄の職員による行政検視と言っているのですが,これが私どもの所管でございますけれども,そのほかの場合で,検察官に通報して,その後検視をされる,その内容,あり方については,検察官の方のお仕事になるものですから,私どもの方で直ちにどうということはちょっと申し上げかねますけれども。
○高久会長 ほかにどなたか御質問……。―よろしいでしょうか。
 それでは,課長さん,どうもありがとうございました。

2.議論

医療体制の在り方

○高久会長 それでは,医療の問題につきましては,今日で大体全体の方向性というか,大体のまとめをしたいと考えていますので,あと残された2時間ちょっとの時間でいろいろ御意見をお伺いしたいと思います。10月20日に全体会議で報告しなければなりませんし,この分科会には別の問題もありますので,今日は医療について皆様の御意見をお伺いします。
 まず最初に,ヒアリングをしたばかりでありますが,被収容者の死因確定手続につきまして,今,対応策等ということで矯正局の方から話がありましたが,何かこれにつけ加えるべきことがあるでしょうか。何か御意見ありましたら。
 新聞に法医学界の先生が全件司法解剖できると書かれましたが,現実には難しいと法医学の人達から聴いています。検察官が司法解剖をするかどうかを決めれば良い。現在でも地方によっては司法解剖がなかなか難しい。辛うじて行っている状況です。私がいます栃木県でも大学が二つありまして,一応やっていますが,スムーズにどんどんするというわけにはいかない。一時期,私どもの大学の教授がドクターでなかったものですから,自治医大は司法解剖をやらなかった時期がありました。それで,独協医大だけにお願いした。栃木県はそのままでは非常に困るということで,次の教授にドクターを選んでようやく県の要望に対応できるという状況になりました。もちろん調査をしなければ正確なことは言えませんが,刑務所で死亡した人をみんな司法解剖というのは現実的な提案ではないと私は考えていますが,何かこの問題について御意見がありましたら。検察官に通報して,必要あれば司法解剖するのは当然ですが,全員というのは難しいと思っています。
○宮澤(弘)委員 少し私は思い込み過ぎかもしれませんけれども,むろん,国民なり市民なりの意見にみんな従うようにやってやろうとすれば,それは大変な人間,いろいろな仕組みができることは分かっておりますけれども,さっき申しましたのは,やはり世間一般の常識と刑務所の中の常識とが大分食い違っているところがありはしないかと私は思うものですから,それで,刑務所の方が幾ら一生懸命やっても世間の常識に合わないこともある程度出てくるのはしようがないにしても,その辺は常識じゃないかということが,世間の常識と刑務所の中の常識がかなり食い違いがあるということを意識してこれから対応していく必要があると私は思います。
○高久会長 むしろカルテの記録の方が問題だと思います。この問題は後でも少し御議論いただきたいのですが,カルテの開示の問題がありますし,それから,遺族からの請求の問題があります。一般社会では請求できるようになっていますから。そうすると,カルテや死亡帳の記載をきっちり書いていませんと,これから大変だろうと思います。
○野﨑委員 監獄法施行規則によりますと,自殺その他変死の場合には通報することになっていますよね。結局,それを絞り込むか絞らないかということで,他人の目に触れる場合が増えたり減ったりしてくるわけですね。多分今までいろいろな議論がなされており,また,宮澤先生が世間の常識というようなことを言われたのも,絞り込み過ぎていないかということがあると思うのです。ですから,例えば記録を云々ということもありますけれども,記録はチェックしないとなかなか分からないわけですから,やはり死んだときにどれだけ,どういう範囲で他人の目でチェックしてもらうかということ。その点では,自殺その他変死というのは一つの基準なのですけれども,何をもって変死と言うかというところをかなり明確にし,できたらその疑問の部分も取り込んでおかないと,絞り込む方向にいってしまうと,やはりいつまでたっても問題のある事例が表に出ないということになりかねない,そういう問題だろうと思うものですから,この基準というものの立て方を考えていく必要があるのではないか。それをした上で,検察,警察に行ったときに,どこの医者が検視するのかとか,そういうことは今先生の言われたところに絡んでくるわけですけれども,まず,その点で疑われることのないようにしないと,せっかく制度の改革をした意味がなくなってしまうので,そこをきっちりすべきではないかというふうに思います。
○広瀬委員 府中で10年間で90人というのは,自殺又はそれに近い何らかの変死という数ですか。それとも病死も含めてですか。
○西田企画官 病死も含めてでございます。
○高久会長 93人だから,少ないですね。恐らく,重症になると八王子医療刑務所に送るのだと思います。だから予想外に少なかった。中で死ぬ人はそんなには多くないのではないかと思ういます。そうでしょうね。
○西田企画官 八王子医療刑務所で平均すると毎年50~60人。
○高久会長 多分そのぐらいの数だと思います。
○江川委員 今日,新聞のコピーを持ってこようと思って忘れてしまったのですけれども,病死であっても,治療の在り方がどうだったのかというのが問われることもあるわけですよね。そうすると,病死なんだから変死に入らないというふうにしてしまうというのもどうかなと思うのですけれども。
○高久会長 たしか癌の末期の人でしたね。ですから変死にはならないですね。
○江川委員 今,告発をする人が出てきた時に刑務所側がちゃんと適切にやったのだと分かってもらうためにも,きちんと死体を専門家に見てもらったものがあった方が,刑務所側もそういう主張はしやすくなるのではないかと思うのですけれども。だから,今,野崎先生がおっしゃったように,第三者に目に触れるものをもう少し増やして,後からいろいろ問題になりそうなものは全部そこで一応ちゃんとだれかが見て記録をしているというふうにするには,どうしたらいいのでしょうか。
○高久会長 自殺,変死という判断は所長が原則行っていることになっているのでしょうね。ドクターがどれだけ関与しているのか分かりませんが,現実には両方で見ているのですか。
○西田企画官 今回,保安課長の説明が足りなかったかもしれないのですけれども,検察官通報あるいは警察に通報しようとしているものは,明らかに自殺,変死ではなくて,自殺又はその疑いのある者,それから犯罪による死亡又はその疑いがあるものも含めておりまして,それ以外にも自然死,これはいわゆる老衰,病死とか事故死であるとは断定できない場合も,通報しようと。つまり,実際に通達を施行してみて,どう運用されるかにもよるのですけれども,少なくとも今回やろうとしていることを見ると,明らかな病死以外は疑わしいわけですから,警察ないし検察に通報するという扱いになって,先生おっしゃった意味からいうと範囲は相当広げる予定なのです。
○江川委員 こういうことはできないですか。先ほど全件,解剖は無理だよとおっしゃいましたけれども,全件そうやって通報して,そこで第三者である警察官が判断するということは現実的ですか。先ほど全件解剖は非現実的だということだったので。
○高久会長 所長だけではなくて,検察官が最終的に判断して司法解剖にするかどうかを決めるということは可能でしょうね。せいぜい年間に9人ぐらいですから,八王子の場合でも。所長だけではなくて,死んだ場合に必ず検察官が一応チェックするというのも一つの方法ですね。
○西田企画官 通常,運用で考えられるのは,そこまで重篤になりましたら,そういった専門施設に送りますので,残った場合には多分,ほぼ通報するようなことになるのではないかと思います。
○江川委員 この間報道されたのはそうではなかったものですから,何十件だか何百件だか何千件だかに1件ぐらい,そういうトラブルになることがあるわけですよね。八王子とかそういうところに移送されていなくて。
○高久会長 一番あり得るのは,心筋梗塞です。心筋梗塞は,あっという間に死ぬ場合がありますから。しかも,監獄人権センターの報告を見ますと,心筋梗塞の原因が分からないのはおかしいと書いていますが,心筋梗塞はほとんどの場合,原因がわからない。例えばゴルフの最中にぱったり倒れたりする。1月ぐらい前に,東大の医学部の教授で51歳の人ですが,症状が出てから2時間ぐらいで死亡しました。そういう場合には検察官が見る必要があるでしょうね。心筋梗塞でしたが入院した大学病院に検察官が来ました。家族の人が,病理解剖を希望して,結局,行政解剖にはなりませんでしたが,そういう場合には検察官が見ることになります。
 ただ,高知で問題になった癌の末期の場合には,たしか,ほかの病院でずっと診ていたわけですね。記録が全部あるとすると……,それでも検察官が見ていいわけですね。
○江川委員 検察官がいいのか警察官がいいのかということなんですけれども,検察官だと,広い意味でいうと法務省の管轄で身内になるわけですよね。警察は組織は別だから,別だからどうということもないのかもしれませんけれども,一応違う組織なので,そういうことを含めてどちらがいいのかということも検討したらどうでしょう。
○西田企画官 先程,保安課で説明した対応策では,すべて検察と警察,両方に通報するというものですが。
○江川委員 だけどそれは,刑務所の方で,自殺その他変死若しくはそれに準ずるものとすると,刑務所側が判断したものですよね。そうではなくて全件,例えば警察に通報して,警察の方で解剖の必要があるとか,とにかく警察が検視をして,解剖に回すのか,これはこのまま進めてくださいということになるのか判断をしてもらう,そういうことは非現実的ですか。
○野﨑委員 恐らく,自殺又は変死の場合というのは司法検視との関係があるでしょう。つまり,自殺とか変死の場合には,一般の普通の自宅でそういうことが起きたとしても,警察に通報して,警察で検視するわけですよね。恐らくこれもそういうこととの,体系的には一環にあるのだろうと思うのです。そのときに,今,江川委員が言われるように,どのような死因で亡くなっても,自然死でも,自然死と書いたものを送り込んで,果たして警察や検察庁が調べるのかということになると,これは本業と言いますか,本来の捜査としてやりなさいといっても,なかなかこれはやらない。やらないというと非常に語弊がありますけれども,実際には余り機能しないところがありますね。これは自然死ですと,書かれたものを持ってこられて調べるということは,普通しません。検察庁や警察は,自殺,変死のときには非常に的確な機関だろうと思うのですけれども,自然死と言われるもののチェック機関として警察や検察庁が機能するかと言われれば,それは大体しないのではないですかね。
○高久会長 自然死を警察に持っていくと,警察は困る。
○野﨑委員 今言われるのは自然死かどうかをチェックしようということなのでしょう。だけど,自然死と書かれてくると……。
○江川委員 書かないで送るというのは。
○野﨑委員 そうすると,もう死亡原因は全部書かないと,全部同じように扱われる可能性すらあるわけですよね。だから,それはよく考えてみないといけない。私はチェックしてはいけないと言っているのではなく,機関として警察や検察庁がそういう機関になり得るとは僕は思わないですけどね。
○江川委員 だた,年間平均して,府中でも9件ですよね。だから,そんなにべらぼうに多い数ではない。でしたら,しょっちょう,しょっちゅう持ち込まれたら困るというのはあるかもしれませんが。
○高久会長 決めてしまうと医療刑務所は非常に困るでしょうね。大部分が病死になると思うのです。だから,自殺とかその他変死の範囲を広げるということが,現実的だと思いますが。
○野﨑委員 あとは,どうしてそれをまた外部的なチェック機能を設けるときに,そういうものを考える。自然死と言われているものに誤りはなかったかとか,そういうもののチェックの仕方を考えないと,それを全部,警察とか検察庁に送り込んでいくというのは非現実的だと思いますね。何で自然死まで捜査としてやらなければならないのかと思うと思いますよ。
○高久会長 刑務所,医療刑務所も含めてもいいと思うのですが,毎年,刑務所の中で死亡した者をチェックするシステムはあるのですか。まとめてでもやっているわけですか。
○野﨑委員 そうですね。だけどそういうものを考えるかどうか。
○高久会長 恐らく現場からかなり抵抗があるでしょうね。全部チェックされるわけですから。
○江川委員 検察官に通報しているということですよね。そうすると,検察官はその後何をしているのですか。
○高久会長 恐らく,検察官が来て,司法解剖をすべきかどうかということを決めているのではないですか。
○野﨑委員 司法検視に結びついているのですよね。
○高久会長 検察官が来れば,警察が来ても余り意味がないような気がするのですが,どうなんですか。
○杉山次長 司法検視をやるときに,検察官自らがやる場合と警察官に代行させてやる場合もございます。ただ,その場合に警察に独自に通報するという,その意味は,司法検視という立場からは,警察に独立に通報する必要は余りないかもしれません。
○高久会長 変死の場合に事件性の可能性があるからでしょうね。そういうことだと思いますが。
○野﨑委員 江川委員の言われたこととの関連で言うと,今のこの場合でも,検察庁に持っていくより警察にもっていった方がいいというのは,かなりドグマティックなところがあって,必ずしもそれはそうではないと思うのですよ。例えば,検察というものが法務省の中の事件を相当数やっているということは厳たる事実です。だから,検察がやるときに,これは我が省の事件であるから隠そうなんていうことは普通考えませんよ。むしろ,検察庁の方がそういうところの政治性はないと見た方がいいと思いますね。
○江川委員 実際の現場ではそうなっていると思うのですけれども,今回のあれは,いろいろ隠しているのではないかとかいうので,国会でも大分議論になりましたよね。
○野﨑委員 それは矯正関係で隠しているわけですからね。
○江川委員 だから,そういうある種の不信感からいろいろな議論がなされているところもあるので,実際問題,ちゃんとやっているところでも,所管を分けることで,ちゃんとやっていますよという形づくりというと変ですけれども,それも今の状況では必要かなと思います。
○野﨑委員 例えば入管などいろいろなところで起きた刑事事件というのは検察庁で立件しているんですね。それをしなくなったら検察というのは機能しなくなってしまうわけですよ。私は検察出身ではないのですけれども,ちゃんと独立性も保障されているし,そういう義務を今まで果たしてきているわけで,余り形式論で議論していくと,実際の解決にはならないと思うのです。例えば,刑務所の医師を厚生労働省にかえたらすべてがうまくいくとか,そういうものではないと思うのですね。本当にうまくいくのか,どれが一番ベストなのかということを考えていかないと,形では違ったものができたけれども,実際は機能しなかったということもあり得るわけですし。この問題について言えば,そこは余りお考えにならなくていい問題だと思いますよ。両方に持っていければそれで十分だと思います。
○高久会長 10月20日の全体会議のときにまたいろいろ問題が提起されると思います。
 次の,医師の確保の問題は前回もいろいろ問題になりました。この問題も国会やメディアで指摘されましたが,ある程度兼業を認めないと確保が難しいのではないか。この前のヒアリングでも話に出ましたが,もう少し医療機器のレベルを上げないと困ると,村瀬先生が言われてました。町の診療所よりはもっと低いレベルの機器しかないということですから,もちろん限度はありますが,せめて町の診療所並みの医療機器を整備する必要があるということがありますね。
 厚生労働省に移した方が良いという意見が出ていますが,実際に厚生労働省に移したから医師が確保できるという事は現実的ではないと思うし,簡単にはいかないと思います。厚生労働省の人に聞きますと,「とんでもない,勘弁してくれ,国立病院の医師の確保だけでも大変なのに」という言葉が出てきます。
○野﨑委員 その点は考えないといけないと思いますね。厚生労働省に移した国があるわけです。それがどう機能しているのか,よく見てみたいと思いますし,いいところがあれば取り入れていけばいいと思いますよ。ただ,軽々にやってはいけないわけで,日本には日本の今までの風土もあるわけですから。例えば簡単なことを申し上げると,刑務所で何か起きたときに安全配慮義務を尽くしたか,刑務所として被収容者に対してきっちりした配慮があったかというときは,一本立ての方がずっと楽なんですね。二本立てだと,「それは向こうですよ」「冗談じゃない,それはこちらではないですよ」ということにだってなりかねないわけです。この前から聞いておりますと,例えば患者として囚人が来たときに,医者をガードするのは保安がやらないといけないわけですし,入院したときに,誰が面倒を見るのかということになると,フランスでは警察とか軍隊ということですけれども,日本では「冗談じゃない」ということになりかねない。だから,いろいろなことを考えていかないと,ただ,どうも向こうではそうやったら,医者の供給がうまくいっているらしいよということだけでやってはいけないので,我々が制度をつつく時には,つついた結果,ちゃんとその翌日からきちんと,今まで以上に機能しないといけないわけですから,その保障というものをよく議論していかないといけない。ただ,検討課題ではあるというのが私の意見です。
○高久会長 ドクタープールをつくる。フランスにはドクタープールがあって,交代に来るという事が,この前の第1回目会合のときに,海渡さんから御紹介がありましたが,その場合には,厚生労働省の方がいいでしょうね。独立行政法人になっても,そこにドクターのプールをつくって,交代に送ってもらう。法務省ではドクタープールをつくるのは難しいでしょうね。ですから,そのような提案も将来的には考えられると思うのです。
○野﨑委員 そう思いますよね。ただ,今でもドクタープールから送ってきても,その人は送られた後も,厚生労働省の所管の人でないといけないかどうかというのはまた別ですからね。法務省に送り込んでもいいわけです。いろいろなことを考えないといけないと思いますね。それはよく考えていかないと,うまくいかない時の責任というのは非常に大きいことになりますから,これはよく検討してみなけばいけないと思いますね。
 一番の問題は,刑務所に行くと,もう医学的水準がとまってしまう。下がりかねないということ,だから,そこへ来て働くのは,医者としての自分の水準を保ち,向上させるためではなくて,あそこに行くと週に2日間,エキストラの日をもらえるんだとか,そういうことで来られると,そうしたとしても,余りいい結果にはならないですね。いいお医者さんが来るとは思わないわけです。
○高久会長 そうなのですね。精神科の人は別かもしれませんが。
○野﨑委員 その点はどうすればいいのか。
○広瀬委員 医療装置の非常に高度なものを導入すれば,それが魅力になって医者が集まってくるかというと,これはかなり問題だと思いますね。あくまでも入所している連中の医療水準の話であって,医者を集めるために装置の立派なものを入れるというのは本末転倒ですよね。
○高久会長 医療水準の問題かもしれませんが,せめて普通の診療所並みの,例えば内視鏡なども定期的に新しいものにかえるとか,これは医師の確保の問題ではなくて,むしろ医療水準の問題になりますね。
○広瀬委員 使われているもの,透析の装置だとか,そういうものが足りないとかというのなら,それを入れるのはいいのだけれども,医者が刑務所の医療でもって自分の水準を上げていこうなんていうのはちょっとおかしくて,週2日なり3日の大学病院に勤める,その間にきちんとやればいい。でないと,全国の開業医はそんな,高度な施設なんてなしでやっているわけですから。
○高久会長 ですけど,せめて開業医並みのと。もっと悪いところがあるという話なものですから。
○広瀬委員 開業医の方が相当下ではないですか。
○高久会長 いや,そうでもなくて,例えば超音波でも,ポータブルの簡単なものがあるとか,結構良い機器を持っている,もちろん,ドクターによってさまざまなだと思いますが,余り古い機器があるとがっかりするだろうと思います。その程度ですね。
○広瀬委員 実際の現場からいくと,医者もさることながら,看護婦さんだとかそういう実際に注射したり,手伝う人の方がむしろ重要で,充実を図るべきかもしれないなという気もしますね。プライベートな,民間の資金で刑務所をつくるかという時代だから,そういうところに例えば外国人もどんどん入れていくとか,看護師あたり,それで医者の作業環境をよくしていく,そういう全体として医療勤務がしやすくなるような環境を作ってやるという方が現実的かもしれないですね。今や,老人施設でさえ外国人を入れようかという時期だから,刑務所にそういう方々を採用するというのは決しておかしいことではないと思うのですけれどもね。
○高久会長 看護師の場合,資格が要りますね。外国人の場合はどうなるのかな。おっしゃるように,これも医療水準の問題になると思うのですが,刑務官を兼ねた准看護師や薬剤師の数が非常に少ないですね。特に薬を毎回毎回,一人ずつ1日3回に分けて渡すというのは大変な労働だと思います。そういうことを考えてみますと,コメディカルのスタッフが非常に少ないことは事実ですね。
 それから,テーマの一つのカルテ開示ということになりますと,カルテをきっちり書かなければならない。そうしますと,ドクターが一日に見れる患者の数が減る。現在1日40人位診ているのが半分ぐらいの数になる可能性がある。それをどうカバーするのか。外国では医師がテープに吹き込んで,クラークがタイプを打つ事をしています。医師が言った所見を書くような人でもいれば一日にたくさん診て,きっちり病歴を書くことができるのですが,その様なサポーティブなシステムを含めて人を増やさないと,カルテをきっちり書くのはなかなか大変だろうと思います。予算の問題は当然あると思いますが,コメディカルの人をかなり大幅に増やす必要がある。その方法としては,一番簡単なのは,刑務官で准看護師の人を養成しているわけですから,それを増やすということはできないのですか。
○大橋課長 定員があれば。
○江川委員 今は定員が少ないのですか。この間のドクターの方も,薬剤師と准看護師の問題を言っていらっしゃいましたね。それは定員が少ないがために。医者の確保が難しいというのと違って,看護師の把握が難しいというわけではないわけですね。そういう問題が出ているわけではない。では,これはもう圧倒的に定員を増やすべきだというふうに。
○高久会長 薬剤師は結構,地元の人がいますし,准看護師そのものは全体的に減りますが看護師の人は増えていますから,ドクターの場合とはちょっと違うと思います。
○江川委員 これは具体的に施設に応じて拡充を図るというふうに得られれば,かなり質は上がるわけですね。
○高久会長 はい。それから,ドクターの場合でも複数のドクターがいるところでは,これも努力目標になりますが,精神科のドクターを確保するようにということは言えると思います。ただ,その他の専門の医師については,広瀬委員がおっしゃったように,そこで技術を上げるというのは無理で,むしろ下がる。そのために兼業を認めるというか,勤務時間をある程度緩やかにするということ以外は,かなり難しいと思います。
○野﨑委員 何年か勤めることによって,自分の医療水準が上がらないというのは深刻な問題だと思うのですよね。そのほかに,被収容者を診察するというのはなかなか難しいと思うのです。医者にとっては大変なことだと思います。できれば,一般社会の人を診ている方が楽だ。自分の腕も上がらない,患者も厄介な人が多い。精神科の場合はちょっと違うのかもしれませんけれども,内科とか精神科以外のお医者さんはそういうことを感じるでしょう。施設の機械の水準もよくない,予算も少ないということであれば,どこから見てもないない尽くしでうまくいかないわけですから,そういうところであるにもかかわらず,犠牲的精神でもって一遍行ってやろうという人を少しでも見つけようとするならば,客観的な施設あるいは人的・物的施設の充実というのは大切なことだろうと思います。それぐらいのことをしないと,なかなか来てくれないのではないかという気はします。
○高久会長 そうなのですね。やりがいがない。僻地の医療ですと,ドクターが少ないと言われていますが,行っている医師はやりがいがあると言っています。地元の人達の健康を守るとか,皆さんに信頼されて一緒にやっていく,住民の人と一緒にいろいろな行事に参加するなど,自分の医療技術は下がるのですが,それなりにやりがいがあるのですが,刑務所の医療では自分の技術水準は下がる,余りやりがいがないというのも問題だと思います。
○広瀬委員 それはありますけれども,しかし,やりがいということを言い出すと,では刑務官のやりがいはどうかということで,刑務所の医者のやりがいはつくりました,しかし刑務官のやりがいのことはだれも考えませんでしたというのはいけないと思うんですね。
○野﨑委員 それはよく分かりますよ。私はやりがいがないとは思わないのですけれども,しかし人を集めるときに,ここへ行こうか,あそこへ行こうかという選択の問題ですから,医者の中から刑務所の医者を見つけるのと,一般の人の中から看守を見つけるのとはかなり難しさは違うと思いますよ。
○高久会長 医師の場合にはライセンスがありますから,ある意味では自由業ですから,ほかのところで働けばいいという考えがあって,結構,かわる人が多い。看護師もそうですけれども。刑務官の場合とはちょっと違うと思いますね。
○広瀬委員 よくすることに反対は全くないのですけれどもね。
○野﨑委員 私は刑務所医療に生きがいが感じられないとは思わないのですけれども,生きがいを感じられるように,感じたいと思っている人に少しでもその意を強くさせるような客観的条件はつくってあげないといけないかなと思います。
○宮澤(弘)委員 実際には増える傾向にあるのですか。
○高久会長 実際には数としては増えているのですが,都会には多いのですが,地方に行きますといない。それから,江川委員がいらっしゃいますが,女医さんが増えますと,家庭を持つことを考えて選択する科目が限られてきます。ですから重症の患者が多くて仕事が大変なところには非常にドクターが少ない。一番深刻なのは麻酔のドクターがいないことです。
○宮澤(弘)委員 一時,医学部を大分絞ったわけでございましょう。
○高久会長 数からいうと多い。日本医師会からの声もありまして,文部科学省が一時期,医学生を減らせということで,10%以上減らしたのです。しかし現実には,これは余談になりますが,東北地方や北海道で医師の名義貸しが行われて,問題になっていますが,医師の数が規定よりも少ないと,診療報酬を削られるということで,公立の病院までもが名義借りをした社会的に見ると非難されるべきことだと思いますが,病院の生き残り策としてやらざるを得なかったという事が地方で起こっていますから,場所によっては医師不足が非常に深刻な問題になっています。特に麻酔のドクターが非常に少なくて,外科の手術ができない。私の大学から十何キロ離れた小山市民病院という公立病院がありますが,日本医大から麻酔科の医師が3人来ていたのですが,みんな大学に引き上げてしまった。卒後,研修の必修化の問題もあるのですが,麻酔医が一人もいなくなって,全部非常勤で夜間の手術はできない,緊急の手術が難しいという事で,外科を縮小しています。地域によって違いますが,かなり深刻な問題になっていることは事実ですね。ですから厚生労働省に移しても,刑務所のドクターの状況は変わらないと思います。
 あと,保安からの独立性については,医療に関しては独立すべきだということは言ってもいいと思うのですが,100%独立することは難しいと思います。特に病院に連れていくときには刑務官が一緒に行かなければなりませんし,入院させるのもですね。しかし,基本的に医療に関しては独立した判断をするということでよろしいですね。これは余り問題ないと思うのですが。
○野﨑委員 今でも保安が,診療の内容についてこういうふうにやれというようなことを言っているとは思わないですね。だから診療そのものについてはちゃんと独立しているのだと思うのです。その接点となるところでせめぎ合いがある場面があるということですね。
○高久会長 それから,例えば薬や医療機器についても,どうしても予算が絡むものですら,最終的にそれは所長までいくかどうか分かりませんが,総務部長か,その辺のレベルで判断することになるのでしょうね。
○野﨑委員 予算はどうか。費目などみんな違うから,保安の方が,うちはこちらでいだたきますというわけにはいかないでしょう。できないでしょう。つまり喫緊の予算とか医療予算は別立てですよね。だからそれは問題ないと思います。
○高久会長 透明性の確保ということは記録をちゃんとつくるということですから,恐らく,今までは手書きで,手書きは仕方がないと思うのですが,電子化にするわけにはいきませんから手書きにしても,きっちり書くようにする。カルテの開示ということも本当に全部できるかどうかという問題はあるにしても,原則的には開示ということでしょうね。
○広瀬委員 矯正局の説明でやや分かりにくかったのですが,死亡の記録等は矯正局にもちゃんと送られてくると,刑務所限りではなくて他にも送られますかというのは,そのとおりになっているのですか。
○西田企画官 ここで説明がありましたのは,死亡帳という帳簿の話でございますので,現場の方で書く帳簿が死亡帳でございます。それ以外に緊急報告ということがあって,死亡した場合,あるいは外部の病院に移送した場合には矯正局に報告しなければならないことになっておりますので,それは別途,必ず本省の方には報告はございます。
○広瀬委員 誤って廃棄されても,こちらには記録は残りますか。
○西田企画官 残ります。
○高久会長 死亡帳というのはどの程度の詳しさで書くのですか。それも透明性の問題になりますね。
○宮澤(弘)委員 「帳」というのは古臭いですね。
○高久会長 そうですね。死亡記録ですね。帳というのは江戸時代を感じさせるような言葉ですね。
○西田企画官 一枚の帳票なんですけれども,当然,死因とか死亡した場所ですとか,かなり詳しく書くものです。
○高久会長 それを書くのは医師ですか。医師が書くのでしょうね。
○西田企画官 はい,医師が書かなければいけないところがあります。
○大橋課長 医師の欄があって,死因とか病気の経過に関しての部分は医師が書くことになっています。ですから,1枚のA4ぐらいの紙で,もちろんたくさんは書けないわけですね。局の方に上がってくる死亡報告に関しては,ワープロ化したものがきちんと送られてきます。
○高久会長 それから健康保険の適用の問題は,第2回のときに,谷前局長から健康保険のレベルという話がありましたが,私も先週の土曜日に,以前厚生省にいた方にいろいろお伺いしましたが,健康保険のレベルというのはないのです。健康保険で審査をするのは適用外の治療をしていないかどうかとか,チェックするのは主に過剰診療です。健康保険の患者には保健で決められた以上のことをしてはならないという事で最低のレベルはない。それはドクターの裁量権ということです。健康保険の枠内で運営する,経済的な問題で,例えばリハビリテーションを週に2回となっているのを5回にしていたら,3回分は削るとか,そういう形のことをしているので,健康保険のレベルというのはなかなか難しい。谷前局長も,私が聞いた厚生省に以前おられた方もそうおっしゃっていましたので。医療水準ということと健康保険への適用ということとはマッチしないと思います。
 ほかに何が議論をしておくことがあれば。
○江川委員 先ほどのカルテの開示というか,医療記録の開示の問題なのですけれども,それは原則としてするという方向でよろしいわけですね。
○高久会長 一般の病院では,患者さんから開示を求められたら開示します,その時に院内で審査をするのですかね。
○大橋課長 すると思います。
○高久会長 審査する委員会があって,それがゴーサインを出したときに開示する。ですから原則は開示になると思います。
○江川委員 原則開示というのをきちんと記しておいた方が。
○高久会長 一般の病院の場合には,そんなに多くないと思いますが,刑務所の場合に,開示せよという要望がたくさん出てくる可能性はあるでしょうね。どうなんですかね。
○江川委員 でも,それがあったとしても,原則は開示でしょうね。
○高久会長 その場合に,開示するかどうかということを,病院の場合には委員会がある。開業医の場合はどうしていますか。
○江川委員 これは一般の医療機関のことでしょうけれども,厚生労働省の方のあれでも,原則開示となっていますね。それに準じる同じような形でやる必要があると。
○高久会長 ええ,原則は開示にせざるを得ないと思います。ただ,どこかでチェックをしなければ。全部開示ということは病院でもやっていないみたいですから,刑務所の中で開示するしないをどこかでチェックできるのですかね。病院の場合ですと恐らく主治医ではなくて,委員会みたいなところで検討すると思うのですが,刑務所の場合には主治医しかいないわけですね。開業の先生の場合に何かルールみたいなものがありますか。
○宮澤(弘)委員 矯正医療の保安からの独立性という言い方がよく分からないのです。もう少しいい言い方がないのかなと。
○高久会長 矯正医療の保安からの独立性は,監獄人権センターの方などがよく書いておられる言葉をそのまま持ってきたのだと思うのですが,現実には協調してやっていかないと出来がないわけですね。何という表現にすればいいのでしょうか。。
○宮澤(弘)委員 「協調」とか「調和」とかの方が,まだ何となく分かると思います。
○野﨑委員 独立性云々をされているときに何に対して独立性がないと言われているのかということだと思うのですよね。診療そのものについて保安が,医者にこういうふうにしろなんて言うことはあり得ないことですから,その点についてはもう絶対の独立性を持っていると思います。そうすると,独立性があるないと言っているのは何なのかということになる。
○高久会長 例えば刑務所の中で実際に40人ぐらいしか外来を診れないのに,その数倍の希望者がいた場合に,保安がセレクトしていると思いますね。
○野﨑委員 そうですね。そういう問題なんですね。
○高久会長 そういう問題があると思います。
○野﨑委員 そうですね。それは医療の独立性がないと言うのかどうかということになると,ちょっと違うと思いますよね。だから,キャッチフレーズとしてボンと出ているのだけれども,もっと具体的に見ていかないといけない。保安が必要以上にチェックしていたら,それはいかんのですよ。だから,独立性がないことになるのかどうかになると,それは違うと思いますね。
○高久会長 言葉を考えた方がいいですね。
○野﨑委員 言葉を少し考えないと,いらぬ誤解を与えてしまうと思います。
 それから情報開示の問題ですが,「診療情報の提供等に関する指針」というのがあって,それに出ているわけで,それと同じ程度のものに持っていかないといけないという趣旨を言っておられるわけでしょう。それはそのとおりだと思いますね。今度,それに争いが起きたときにどうするのかという問題は,この指針の立場だとどうなるのですかね。例えば一般の開業医に見せてくれと言ったと。そうすると,これは記載事項の中に例えば例外とされる事項を含んでいて,お見せするわけにはいきませんと言ったときに,どこかに苦情申立ができるのかという…
○高久会長 ここにあります,これは日本医師会が出しました「診療情報の提供に関する指針」がありまして,この中に苦情処理機関を医師会の中に設置すると書いています。受付の窓口を地区医師会の中につくっているのだろうと思います。
○野﨑委員 そうですね。そうすると今度は,刑務所の場合に情報を開示してくださいといったら,これは開示できないとされたときに,それについて苦情の申立ができないということになると,バランスがとれないわけですね。それを医師会に持っていくというのは違うと思うのですね。そうすると,これはどうするかという問題を考えないと,二つのバランスがとれないではないかという批判には耐えられないと思います。ですから,苦情処理機関を,これは当然第三者の機関になりますよね。刑務所外になると思います。
○野﨑委員 だからそれは,刑務所行政全般について何かチェック機能を設ける機関をつくるかつくらないかというのがあるわけですけれども,そういうものを考えたときに,その中に置くのか,あるいはこれは問題が専門的なものだから別に置くのかというようなところで議論していくことだと思います。
○江川委員 第2分科会の方で透明性のことで,そういうことを検討されていますよね。
○高久会長 そういうチェック機関をつくるときに医療部門をつくる事になるのではないでしょうか。
○野﨑委員 普通のチェック機関では判断できないと思いますね。医療問題ですからね。
○高久会長 例えば,医療刑務所を除くか除かないかの問題はありますが,死亡した症例については,チェックするとすればそういう機関がチェックするということになると思います。おっしゃるとおりだと思います。医師会の例がこの場合には一番当てはまるのだろうと思います。
○野﨑委員 バランスがとれるようにすればいいのではないでしょうか。
○広瀬委員 医療の問題で現場で大変なのは仮病というのか詐病というのか,相当大きいと思うのですが,作業をしたくないとかそういう動機が大きいのですかね。想像できるのはどういうことですか。
○高久会長 私が2か所ほど回ってきたときの話では,詐病の場合には作業をしたくないというのが一番多いようです。それから,薬が欲しいということ。
○広瀬委員 薬というのは,胃薬とかそういうものではない。
○高久会長 睡眠薬が多いと言っていました。
○広瀬委員 作業の問題は,第1分科会でどういうふうに取り上げているのか知りませんけれども,強制的な作業の時間などはもっと短くなるかもしれないですよね。
○高久会長 それはあるでしょうね。
○広瀬委員 そうすると,休み時間,自分たちの自由時間に医療に来る人たちならば作業嫌いとは違うことになりますよね。その辺,大いに勘案すべきかもしれないですね。
 それから,詐病というのは専門的には分かるのですか,分からないのですか。
○高久会長 分からないですね。これは刑務所に行ったときに聞いた話ですが,外来希望者の中からセレクトするのは准看護師の刑務官などが判断して選んでいるわけです。詐病かどうかという事も,そういう人たちがやっている可能性がある。詐病は,自覚症状だけの場合は区別をする事はほとんど不可能です。例えば強い貧血があるとかなら分かりますが,痛みは全く100%自覚症状です。モーパッサンの小説で,おばあさんが馬車にひかれて,痛い痛いといって馬車の持ち主がおばあさんが死ぬまで面倒を見なければならなかったという話がありますが,分からない場合もかなり多いと思います。
○宮澤(弘)委員 広瀬委員のおっしゃることと多少関係いたしますが,第1分科会の領域かもしれませんけれども,刑務所というのはもっと静かで落ち着いた雰囲気というものが私は必要だと思うのですが,いきなり軍歌か何かやって,整列してたかたか行っておりましょう。ああいうことは必要なんですかね。
○西田企画官 一人とか二人の刑務官で50~60人の団体を移動させる場合というのは,声を出させるかどうかは別にして,ある程度集団で学校でやっているような動かし方をしないと無理だと思います。例えば,居住空間である舎房からその工場まで移動するときに,一人か二人の職員が,少ないところで30~40人,多いところで100人ぐらいの受刑者の集団を移動させるわけですから,号令をかけて,さあ行きなさいと言わないと,三々五々行きなさいでは……。
○宮澤(弘)委員 三々五々10時に集合なんていってもだめなんですね。
○西田企画官 はい。実際に,もしそれをやったら,決して仲のいいものばかりが集まっているわけではありませんので,トラブルが起きると思います。
○宮澤(弘)委員 腕っぶしの強いやつが先頭を切っていくような雰囲気でしょう。
○西田企画官 いえ,整列する場所も決めてますので,とにかく腕っぷしが強い者も弱い者も全く同じように扱うためにああいうやり方をするのですね。
○高久会長 ほかに何か議論をしておくべきことがあるでしょうか。救急体制は。
○野﨑委員 詐病の問題が出ていますけれども,これは難しい問題で,先ほども痛みについて言われましたけれども,私らの世界でよく問題になったのは,追突事故によるむちうち。これはどんどんどんどん訴えを出されまして,損害賠償額がどんどん上がってきて,非常に増えたのですが,ある時点で裁判所がもう切ってしまったのですね。そうすると,俄然減ってきて,最近は余りむちうちの事故がないのか,よく知りませんけれども,ああいう首にやっている人は見かけなくなってきた。現実に訴えも少なくなってきているというようなところがあるのですね。非常にエモーショナルなところがある。しかし,詐病だと言われて,実際は違ったと言われると非常に問題なんですね。
○高久会長 それこそ裁判になりますね。
○野﨑委員 これは非常に大きな問題になる。だから,ちゃんと正当に見極めないといけない。そうなると,非常に難しいものをだれがチェックするかということになるわけで,そういう体制の整備というのも本当は必要なのかもしれませんね。人員の増員の問題と絡んでの問題でしょうけれども。小学校,中学校の医務室症候群と似たようなところがあるのだという指摘がありますけれども。
○高久会長 救急の問題も気になるのですが,江川委員がおっしゃった高知の場合,最後亡くなったのは日曜日で医者は診ていなかったようですね。普通は当番制になっていますか。
○大橋課長 休日はオンコール。夜間休日の急患が出たときの体制というのは,それなりに各施設ではつくってはおります。だから実際に自宅から登庁する場合もあるし,電話で指示して,外の病院に連れて行くようにとか指示する場合もあります。
○高久会長 複数の医師がいる場合には曜日によって決めているわけですか。
○大橋課長 そうですね。
○高久会長 一人の場合には全部オンコールですから大変ですね。
○江川委員 あのケースの場合は,死ぬほど具合が悪かったのに,何で高度医療施設のところに入らなかったのですかね。高松ですね。
○大橋課長 あれは死亡事案を公表した例ですよね。突然死亡したために司法解剖がされていると思います。つまり,以前に,僕の記憶が正しいかどうか分かりませんが,前の刑のときに医療刑務所で癌の手術をして,そして今回また入ってきて,同名の病状で再び医療刑務所に送るつもりで待っている間に突然亡くなった。風邪の症状が少しあったようですが,突然亡くなったので,検察官に通報して,たしか解剖になったんだと思います。そして死因がはっきりしたということだったと思います。それはそれなりに通報されている例です。受刑者が出た後,いろいろ言ったのを新聞がまた再び取り上げたということだと思います。
○江川委員 同行者の人が対応についてということが出ていましたね。
○広瀬委員 もう一つ,覚せい剤関係の受刑者ですね。暴れたり,人に迷惑をかけたりという受刑者の扱い方なのですが,私は医療専門の刑務所というのはまだ拝見していないのですが,これは相当厳しく対処しなくてはいけない病人だという扱い方をするのがいいのではないかと思いますね。つまり,独居房に懲罰的に入れるというのは余り意味がないので,医療,しかしかなり厳しい,しかも人に迷惑をかけない形での医療を施すという形でやらないと,例えば府中などにいたのでは,まず刑務官が手こずるといいますか,人間の気持ちを損なうようなことにもなりかねないし,あそこでのそういう専門でない医者が相手をする場合には大変危険でもあるし,ますますやる気をなくす。それで,覚せい剤による凶暴性のある入所者は専門の施設に入れるとか,その種のことが必要ではないかと思うのだけれども,どうですかね。
○高久会長 覚せい剤の使用歴がかなり高いですね。30%。その中に恐らくグレードがいろいろあって,一番問題になるのは凶暴性が残っている人たちと思うのですが,それはどれぐらいいるのですか。八王子の医療刑務所で収容できるかどうかということですね。
○江川委員 覚せい剤に限らず依存症からの問題なのですけれども,それは特別な医療とダルクみたいな心理的なというか,そういうケアの部分,そういうのが協力し合った施設をつくるとか,そういうことについては今ここで話し合うのでしょうか,それとも,別の日を改めてやることなんでしょうか。
○高久会長 確かに覚せい剤だけではない。コカイン,ヘロインは減っているのですか。日本は余り多くないのですね。
○野﨑委員 減ってはいないのではないですか。
○高久会長 減ってはいないのですか。だけど日本では圧倒的に覚せい剤が多いですね。だから,覚せい剤や麻薬中毒は,やめたときに強い症状が起こる。江川委員がおっしゃったことがありますね,中毒センターみたいなもの。そういうものをつくった方が良いのでしょうね。提案はできると思います。覚せい剤を含めた中毒の症状の強い者を対象にした特別の医療施設になりますね。医療刑務所の中につくるか,別につくるかは別にしても。しかし,今のような症状の人を全部医療刑務所に収容できるかどうか問題ですね。
○野﨑委員 池田小学校の事件を見ても,あの被告人というのは,自分の行為は正当だったと言っているし,遺族に謝らないという姿勢が強いですね。それから,きのう結審した事件でも,そういう事件がございましたね。私が申し上げたいのは,昔に比べて非常に偏った性格の犯罪者が増えてきているということです。私は裁判所にいましたから,職業柄,何回も刑務所に行ったことがあるのですが,最近の被収容者は昔に比べて異常な行動に出る者の割合が多いと思います。裁判をやっている過程では,裁判中に精神異常を来せば有罪の判決はしないわけですから,正常な者として判決しているわけですね。しかし,それがああいうふうになってしまうということになると,問題の人が非常に増えてきているということですね。そういう人を含めて刑務所制度をどうしていくのか。一般の人と一緒に入れるのか,別のところをつくるのかということになるのですが,その別なところが全部医療刑務所なのかということだって一つの問題だと思います。だから,刑務所そのものの在り方を論じるときに,いろいろな対応ができる刑務所,そういう柔軟性のある措置がとれるようなことを考えていかないと,今後ますますいろいろな意味で難しい人が出てきて,それを医療刑務所に入れればいいということでは済まない場合があると思うのですね。だから,この問題は我が分科会でも議論して,するべき事項でもあるので,少しどこかに頭を出しておいた方がいいのではないかという気がいたします。
○高久会長 昔私らが習ったころは精神病質と言っていまして,精神病とは別にしていました。最近名前を変えて人格障害と言っている。昔からいたことはいたのですが,最近特に目立つというか,人格障害の人が被収容者の中に非常に多い。恐らく一般社会よりはずっと多いのだと思います。しかし,人格障害は対応のしようがないのですね。治療法がない。ですから広瀬委員が問題になされたのは……。
○広瀬委員 後天的なものでですか。
○高久会長 人格障害というのは恐らく先天的だと思います。まだ分からないですね。ただ,分裂病とかそううつ病とか中毒,そういう病気は対応のしようがあるのですが,人格障害は,いつ症状が現れてくるかもわからないし,知能とも関係ない。非常に難しい。犯罪者の中に人格障害の人は恐らく多いと思います。極端な例が新聞などに大きく出ますが,一般社会でも,それほど目立たないが,そういう人がときどきいるのだと思います。広瀬委員がおっしゃったのは,覚せい剤中毒で暴れて独居房に入れて,そのときに死亡まではいかなくても,けがをした人が多い,そういう人は特別に入院させる必要があるのではないかというお話でしたね。
○江川委員 それにあわせて,人格障害の方は本当に治療をするというわけにはいかないので,確かに問題は問題で,現場の方たちは本当に苦労されていると思うのですけれども,今すぐこうすればいいという対策ができないのですよね。ただ,薬物中毒の場合には,その対策は考え得ることで,一つは,看守の人たちが苦労されているという問題もあるし,もう一つは,そこでストップをかければ再犯の可能性が少しでも減れば,それはそれで社会的にも意味があると思うので,薬物からの離脱のための医療とリハビリとを組み合わせたセンターみたいなものができたら随分いいのではないかなという気がするんですけれども。
○高久会長 そういうことは書けますね。
○野﨑委員 私が申し上げたのは,薬物中毒は医学的には中毒症状が抜けて,終わっているはずなのに,ときどき非常に奇異な行動に出る人が割合にいるということ。それは薬物中毒者と見るのか,薬物を常用していた,それからその問題は立ち切ったのだけれども,精神的に異常性をする行動として残ったのかということです。
○高久会長 人格障害とは違うと思います。それから,薬物,特に覚せい剤の場合には,やめてもずっと精神的な異常が残るのですね。栃木の刑務所に行ったときに精神科のドクターにお話を聞きましたら,覚せい剤をやめた後の精神障害と精神分裂病とは非常に区別が難しい。しかも,その後遺症は長期間にわたって残っているという話ですから,その程度もまたさまざまなのだろうと思います。暴れる,分裂病的な症状が出る,そううつ病的な症状が出る。鑑別が難しいと言っています。
○野﨑委員 そういうようなものは,人格障害者とは全く範疇が違うというふうに扱った方がいいのでしょうか。それとも,医療刑務所に入れて治療していても,どうにもならないみたいなところがあるわけですね。
○高久会長 ですから,治療するとすれば薬物,覚せい剤をやめて,その後で非常に激しい肉体的,精神的症状を出す人が対象になる。
○野﨑委員 そうですね。だから,先ほど江川委員がおっしゃられたように,中毒センターを卒業した後,むしろ出てくるわけですよね。
○高久会長 そうです。
○野﨑委員 だからそういうものにも対応できるものをつくらないといけないのではないか。
○高久会長 刑務所に入ると,覚せい剤,麻薬は使えないですから,やめた後の反応として出てくる。反応の出方が人によってさまざまだという難しい点がありますが,激しく出る人がいることは事実ですし,特に麻薬の場合はかなり強い身体症状も出てまいります。そういう人にはどうしているのですか。
○大橋課長 その人たちは離脱症状というのは余りなくて,先ほど言ったような覚せい剤の後遺症として,ときどき幻覚,妄想が出たり,興奮したり。中には持続的に幻覚,妄想が続いている人もいる。問題はそういう覚せい剤をやる人たちというのは基本人格障害を持っている人もいるということなのですね。もちろん,余り持っていない人にもいますけれども。
○高久会長 どれぐらい続くのですか。半年とかもっと。
○大橋課長 分裂病などより短いです。まれに長いのもいますが,1週間とか2週間,数日ということもあります。ですからフラッシュバックのように意外と簡単に治ってしまうこともあります。しかし,簡単でも興奮したときには保護房に入れなければならない。それでしばらくたつとよくなる。分裂病の場合よりはむしろ安定したり,よくなるのは早いのです。
○高久会長 分裂病は長い……。
○大橋課長 なかなか治らない面もあります。
○高久会長 中毒センターをつくったとしても,凶暴性があったときに入れるかどうかということですね。
○野﨑委員 中毒センターとか適当な施設がないと,今のように医療刑務所か保護房かという二つでは芸がなさ過ぎるのではないかということなんですけれどもね。
○高久会長 医療刑務所の中に併設して中毒センターをつくって対策を強化するという方法もあると思います。独立したものをつくるというのはなかなか大変でしょうしね。
○野﨑委員 人格障害者だって一緒に置いておくわけにはいかないというときにどうするのか。医療刑務所には入れられない。そうすると,その人たちだって,どう扱うかということを考えないと,一般の被収容者も迷惑することになる。
○高久会長 人格障害者のパーセンテージは非常に高いと聞いています。
○野﨑委員 だから行動の異常さによると思いますよ。
○江川委員 統計はあるんですか。
○大橋課長 統計上は「精神病質」という表現でありますけれども,しかし,狭義の,狭義というか,ICD10とか何かでつけるような人格障害の正確な統計はまだ出ていないと思います。受刑者の場合には余りにも連続しているものですから。
○高久会長 極端な場合には分かるのだと思うのですが,余り極端でない場合には分からないでしょうね。
○野﨑委員 極端でない場合には問題はないと思いますね。極端な場合が問題だと思います。
○高久会長 そういうデータはないようですね。
○江川委員 薬物のケースというのは物すごく数が多いですし,それが累犯を重ねていくこともあるので,薬物の依存からどうやって脱却させていくかという教育の問題でもありりますし,医療だけではなくて……。
○高久会長 カウンセリングが必要ですね。カウンセリングの方が重要なのかもしれない。各施設には置くわけにはいかない,やはりどこかにそういう人がいてカウンセリングをする。ただ,カウンセリングの場合,期間がかなり長い可能性がある。通うとなると,また保安要員がついていかなければなりませんから,カウンセリングまできっちりやろうとすると,かなり大きな施設でないとできなくなりますね。
○江川委員 だから,医療とカウンセリングを含めた薬物中毒センターみたいなものを,これは今すぐつくるというわけにはいかないでしょうけれども。
○高久会長 提案はできますね。
○宮澤(弘)委員 この第3分科会で,今のような議論が出たことは事実なんですね。ただ,いろいろ難しい問題がある。ですから,第3分科会の御報告のときに,分科会にはこういう議論というか提案があったということは最小限なさったらどうでしょうか。
○高久会長 それは是非書きたいと思います。今までも随分議論がありましたし,覚せい剤中毒は医療の問題で,現場でも薬物中毒が一番大変なのだろうと思っています。是非提案させていただきたいと思っています。
○江川委員 それをするのであれば,薬物中毒の人は本当に後遺症が長いわけですよね。そうすると,中にいたときだけではなくて,外に出た後どうするかという橋渡しのところも必要になってくる。
○高久会長 それが一番重要なのですが,そういう人達は恐らく外に出たらまたすぐ始めてしまう。元の社会に戻れば,すぐ始めてしまう可能性はかなり高いですね。だから中毒ということですけれども。
○江川委員 だから,例えば,本当に思いつきで申し訳ないのですけれども,薬物中毒センターというものができたときに,それはもちろん収容型になるのでしょうけれども,出た後の例えばカウンセリングなどで,ある程度フォローを望んでいる人にはできるようなことというのは不可能なものでしょうか。
○高久会長 刑務所に入っていない人で薬物中毒という人は結構いるわけです。そういう人たちが薬物から離脱するときにどういうところで治療を受けて,どういうところでカウンセリングをされているのか,調べてみないと分からない。
○江川委員 ダルクみたいなそういうものが各地にありますよね。
○高久会長 あるのですか。それは組織になっているのですか。
○江川委員 いろいろな依存症の人たちが依存から脱却するために,ある種,カウンセリングや集団的なサポートみたいなことをやっている。
○高久会長 NPOみたいな組織ですか。
○江川委員 地域によっては刑務所の方と連携をしているところがありますよね。
○高久会長 そういうところと連絡をとれるようなシステムにすればいいわけですね。
○江川委員 多分,絶対量が足りないとは思うのですけれども。
○高久会長 精神科のドクターがコミットせざるを得ないでしょうね。もしそういうセンターができてカウンセリングしたときの方策の一つとしてでしょうが。
 それから,自費診療を認めるかどうかという事はどういうことになっていますか。項目としてあるのですが。お金を払わせた方が,詐病も含めた受診の制限ができるのでないかという議論が,ドクターの中からあった。健康保険でも2割,3割払っているわけです。今は100%国費ですが,少しとったらどうだという意見がドクターからのアンケートにも出ていました。
○野﨑委員 おっしゃられる自費診療の意味なんですけれども,それは健康保険でも取られるのだから,診療を受けたときに1割ないし2割を払えと,こういうことですか。それとも,自費で賄えるなら高度診療設けられるという意味の自費診療ですか。もし後者であるなら,なかなか難しい問題があると思いますね。
○高久会長 後者の場合は特定機能病院として指定された病院に行くことになります。そうすると,それは自分で払わざるを得ないし,本当にお金を出して受けたければ,断るということはできないでしょうね。その病院に入院して保安がついていくということになると思いますが,その様なケースは余りないだろうと思います。ドクターへのアンケートや刑務所で聞いたときには少しお金を取った方が,我も我もと受診を希望しなくなるのではないかというネガティブな思考ですね。
○野﨑委員 もしそうなら,「自費診療」という表示はちょっと違うような気がしますね。一部負担という問題ですね。
○高久会長 一部負担というと,難しい問題になりますかね。
○江川委員 作業をした後のお金というのは今非常に安いわけですよね。それから取るということになると,今度は,受けたいのだけれども受けられないという問題で。
○高久会長 医療水準を下げることになりますね。なかなか難しいですね。
○江川委員 国が拘束しているから,その分は責任を持ちますよという建前が崩れてしまうわけですよね。
○高久会長 おっしゃるとおりだと思います。
○野﨑委員 だから健康保険の云々というのがなくなってくるわけですね。
○高久会長 一部負担もなくなるわけですね。
○野﨑委員 という趣旨ですよね。
○高久会長 そういうことだと思います。
○広瀬委員 適切な医療は国の負担で受けられるという大前提があるわけだから,負担をすれば少し違ったものができるでしょうというのは理屈に合わないかもしれないですね。
○高久会長 難しいと思います。ですから一部負担は難しいですね。
 これで,議論すべきことは大体終わったと思うのですが,10月20日に大分質問があると思いますが,やむを得ないですね。
 次回は何を議論するのですか。
○杉山次長 人的・物的体制の整備と職員の執務環境の改善ということをやろうかと。そのあたりで職員の採用とか異動,それから待遇の関係などの人事制度。それから物的整備の関係,PFIについて,こちらの方から現状等を,人事なので非常にややこしい制度なものですから,その辺を御紹介させていただいて,御質問等を受けてということを考えています。
○江川委員 アンケートの結果はなかったのでしたか。
○杉山次長 刑務官と受刑者のアンケートは今集計中でございまして,10月20日の全体会議で御紹介しようと思っています。
○高久会長 人事の問題もあるのですが,医務官に対する教育をやった方が良いのではないかと思うのです。刑務所の医療は特殊ですし,記録などもきっちりとる様に教える。それは難しいですか。
○大橋課長 医務官に対する教育というのは十分かどうかは別としまして,新しく刑務所に勤務した医師に対しては中央に集めて,新任医官研修というのを一週間丸々ではありませんが,数日間泊まらせてやっております。現場でも,特殊なところですから,新しい人にはある程度教えることをやっております。更に充実する必要があるとは思いますが。
○高久会長 「更に充実」という表現をした方が良いでしょうね。原則カルテの開示になりますと,かなり注意して病歴を書いてもらわないとなりませんし,教育の充実ということはぜひ書きたいと考えています。
 次回は,ヒアリングが主ですね。あとは質疑と。

3.その他

○高久会長 特に議論をすべきことはあるでしょうか。きょうの議論をまとめて次回までに皆さんにお送りして,御意見をいただいた方が良いのかもしれないですね。最終的に私にチェックさせていただいて。難しい問題もありますし,十分な解決というわけにはいきませんが,皆さん方からいろいろな御意見をいただきましたので,出来るだけ積極的な方向で第3分科会,特に医療の問題についてまとめさせていただければと思います。きょうは少し早いのですが,ほかに御意見がなければこれで。
○広瀬委員 前回,話があったのかもしれませんが,矯正医療の医療水準というのはどういう感じになりますかね。先ほどの,医者を集めるためというのは全く関係なく,矯正医療としては例えば世間並みを確保しないと。
○高久会長 健康保険並みというのは難しい。というのは健康保険には特にレベルがないものですから。ですから,一般の人が受けられるのと同じレベルとしか言いようがないと思います。ではどこまでかというと難しい問題がありますが,そういう表現しかないと思います。
○広瀬委員 ここでは一人当たり年間3万5,000円になっているんだけれども,これはかなり割高な感じですか。世間より安いですか。
○大橋課長 安いと思います。
○高久会長 医師の人件費や施設のお金は含まれていない。処置と薬だけですから。
○広瀬委員 実質的には5万円とか7万円とかになるわけですね。
○高久会長 日本の医療費が30兆円で,それを1億何千万人で割ると,刑務所の医療費は安いと思うのですが,比較が難しいですね。
○江川委員 それから,歯科,歯医者さんの件なんですけれども,何ヶ月待ちとかというお話になっていましたよね。歯が悪いと食事などもうまくいかなかったりして,全体の衰弱につながったりすることもあるので,歯科の充実の話を少し盛り込んだ方がいいのではないかと思います。
○野﨑委員 例えば,役所の共済組合の歯科なども何か月待ちになるんですよね。ただ,急を要するものは別と見るということになっているのですが,その辺はどうなっているのでしょうか。例えば,今もう歯が痛くて大変だというのも,「あなた,3か月待ちなさい」とかね。
○大橋課長 そんなことはありません。応急処置はします。
○野﨑委員 応急処置はするわけでしょう。だから,その何か月か待つという歯科医療の内容というものをおっしゃられないと,何でもかんでも何か月待たしているということに誤解されかねない気がしますけれどもね。
○高久会長 歯科の人は原則は非常勤ですね。
○大橋課長 そうです。
○高久会長 週に一回ぐらいは来るのですか。
○大橋課長 それはいい方ですね。
○江川委員 その数とか頻度というのは何か規則で定められているのですか。
○大橋課長 お金の問題です。
○高久会長 歯科医には,国家公務員に近い謝金しか払えないから,そう喜んでは来ない。でもないのですか。歯科医は一般には多いのですね。
○江川委員 予算を拡充していくことで,今の問題というのは改善されるわけですね。
○高久会長 ある程度改善されると思います。
○江川委員 だったら,やはりそこのところを提言の中に盛り込んで。もちろん,お金のことが最終的にどうなるかという国会の話になるわけですね。でも,国会でも,これは問題だ,問題だと言われたわけですから,では改善するにはお金が要るんだと。だからもう少し予算を拡充して,何か月待ちとかそういうふうにならないように対応する必要があるというぐらいは盛り込むことは。
○高久会長 それは良いと思います。歯科医の場合は余っている。地方に行くと分からないのですが。都会では余っていると言っています。社会にいる時には何か月も治療を受けずに放置し,刑務所に入って,急に治療してくれというのは些か勝手だという意見もありました。だけど,救急の処置はどうしてもしなければ問題ですから。入れ歯を入れ直すとかそういうことは難しいだろうと思います。もともと入れ歯は私費ですから。
○江川委員 入れ歯というのは私費ですか。
○野﨑委員 それは国費でやるんでしょう。
○大橋課長 入れ歯をつくるというのは基本的に国費ではありません。というのは,歯が1本,2本欠けていても,特に健康にどうのこうのということはございませんから。虫歯とか歯周病とか,そういう疾患に対しては治療は官費で行う。全部歯がない人で,入れ歯を入れないと健康を害するような人は官費ということはあり得ますが,しかし,一,二本ないから入れ歯を入れてくれと言われても。
○西田企画官 咀嚼ができないとか食事がとれないとかいうのであれば官費でやるわけです。ですから,虫歯があっても,日々咀嚼ができて痛みもなければ,それ以上のことをやるとなったら自費になります。
○江川委員 中でつくれるのですか。
○大橋課長 歯医者さんが来る頻度とか,ほかにやることがありましょう。虫歯の人を治療するとか,そちらの方が優先されましょうね。たくさん来て,たくさん患者さんを診て余裕があれば,自費で入れ歯はもちろん可能でしょう。
○高久会長 そうですね。入れ歯は外注するから,歯医者さんが自分でつくるわけではない。ただ,調整をしなければならないから手間がかかるでしょうね。
○江川委員 入れ歯をつくる人がつかまって刑務所に入った場合,その入れ歯持参で入ることはできるのですか。
○西田企画官 めがねと同じ扱いです。
○高久会長 ほかに何かおありでしょうか。
 それではきょうの議論をまとめて皆さん方にお送りいたしますので,訂正あるいは追加することがありましたら,事務局の方によろしくお願いいたします。
 それでは,きょうはありがとうございました。


午後4時37分 閉会