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更生保護のあり方を考える有識者会議(第5回)議事概要

1 日時

平成17年10月27日(木)午後2時から午後5時20分まで

2 場所

最高検察庁大会議室

3  出席者

(委員等,敬称略)
(座長)野沢太三(社団法人日中科学技術文化センター会長・前法務大臣),(座長代理)金平輝子(日本更生保護女性連盟会長・元東京都副知事),(委員)清原慶子(三鷹市長),佐伯仁志(東京大学法学部教授),佐藤英彦(前警察庁長官),瀬川晃(同志社大学法学部教授),田中直毅(21世紀政策研究所理事長),堀野紀(弁護士),本江威憙(公証人・元最高検察庁公判部長),桝井成夫(読売新聞東京本社論説委員)(委員・50音順)
(内閣府)
 神村昌通犯罪被害者等施策推進室参事官
(法務省)
 樋渡利秋法務事務次官ほか
(事務局)
 麻生光洋事務局長ほか

4  議題

(1) 犯罪被害者等基本計画において更生保護が担う犯罪被害者等施策について(内閣府説明)
(2) 当面の対策について(事務局説明)
(3) 仮釈放のあり方等について(事務局説明及び意見交換)

5  会議経過

(1) 内閣府の担当者から,犯罪被害者等基本計画案の取りまとめに向けた検討の状況等について,配布資料(別紙1【PDF】,別紙2【PDF】,別紙3【PDF】,別紙4【PDF】,別紙5【PDF】,別紙6【PDF】)により説明を受けたところ,以下のような質問がなされた。
・  犯罪被害者等基本計画案の策定に当たって,修復的司法については盛り込まないでほしいというのが犯罪被害者等の意見か。
(回答 :修復的司法については,取り入れてほしいという犯罪被害者等の要望もあり検討したが,現段階では,加害者に犯罪被害者等が協力しなければならないのか,そもそも犯罪被害者等のためにならないという議論もあり,施策を進めることはよいが,犯罪被害者等のための基本計画案には盛り込まないという結論になった。)
・  別紙5の(20)にある犯罪被害者等の意見の仮釈放審理への反映については,本日,意見交換を行うテーマにかかわることと思うが,基本計画に基づく犯罪被害者等政策と本会議の位置付けはどうなるのか。本会議では,同計画に基づく犯罪被害者等政策を前提に置きながら,議論しなければならないのか。
(回答 :犯罪被害者等の会議が先行しており,これは内閣としての施策であるから,本会議では基本計画を前提に議論を進めたい。しかし,同計画の閣議決定は本年12月の予定であり,必要があればその前に本会議として意見を提出することも可能ではないか。)
(2) 事務局から,当面の対策について,別紙7【PDF】により説明を行ったところ,以下のような意見が述べられた。
・  国の財政状況は非常に厳しいと思うが,説明のあった施策については是非頑張って実施してほしい。特に就労支援について,ハローワークと連携して生活保護受給者の支援を行ったところ,目標以上に就労の確保ができた。自立の基礎となる就労の確保ができれば,再犯が減少すると考えられるので,地道ではあるが重要な施策なので是非取り組んでほしい。特に,法務省だけでなく厚生労働省と協力して,国を挙げて取り組むことに意義があると思う。
・  来年度予算要求事項については,是非頑張ってほしい。政府では公務員を一律10%とか5万人カットするという話もあるが,メリハリをつけて大事なところには是非,人,予算共に付けてほしい。
(3) 事務局から,仮釈放制度について,別紙8【PDF】により説明を行った後,仮釈放のあり方について意見交換を行ったところ,各委員から,以下のような意見が述べられた。
・  現行の仮釈放の許可基準は甚だ不明確である。4つの許可基準は,いずれも性質の異なる矛盾を含んだものであり,しかも,これらを総合的に判断することとなっており,判断基準がないに等しい。再犯のおそれがある者は排除すべきという観点に立つならば,基準はもっと明確にすべきである。明治時代の「再犯のおそれのない者のみを仮釈放する」という基準の方がむしろ明確だったのではないか。刑法の規定が大変抽象的であるところ,法務省令により具体的な基準を定めているが,刑法に委任規定がないことから考えると,法体系的にもこうした定め方はいかがかと思う。
・  許可基準そのものを議論する前に,まず,許可基準どおりにきちんと運用されているのか,実証してほしい。現在の仮釈放審理は内輪で行われ,パブリックな目に触れない形で行われている。刑事司法の中でこれほどパブリックな視点が入っていない分野はない。保護観察所長を経験した,いわば保護観察官のエリートの委員が,ごく内輪で「総合的に」判断しているのが現状ではないか。仮釈放のあり方ついて建設的な議論をするためには,まず運用そのものの実態がどのようになっているのかを把握する必要がある。
・  個人的には,仮釈放そのものを原則化する制度を導入すべきと考えており,「許可基準」ではなく,むしろ「不許可基準」を明確にする方が実践的ではないか。仮釈放の原則化は,裁判所の量刑判断を変更することにもなるため,犯罪被害者等からの抵抗が強いだろうし,施設内処遇と社会内処遇とは連続したものであることについて国民の理解が得られないと困難だと思うが,発想を逆転し,不許可基準を明確にした上で,すべての受刑者に社会内処遇の機会を与えることにしたらどうか。
・  刑法の規定が「改悛の状があるとき」とあるだけで抽象的であり,そもそも仮釈放の許可基準は示しにくい性質のものではないか。限られた時間で仮釈放の許可基準を定めることは困難だと思う。また,そもそも仮釈放は,裁判所の決定を変更するものであり,弁護士や裁判官等,相当権威のある委員構成でないとバランスが取れない。仮釈放審理をもっとオープンなものにし,相応の専門性を持った委員構成とすることが大切である。さらに,委員数が絶対的に不足しており,十分な審理ができていない。その一方で,現在の仮釈放審理事件記録は,書き物が多いように感じる。もっと頭で整理する訓練をし,効率的な審理手続,事務処理を行う必要がある。
・  基準があいまいだということは,それだけ判断の余地があるということで,判断者の心証の価値が上がることにもなる。一方で,客観性という点で問題はあるだろう。
・  書類が多過ぎるという話があったが,別の意味で書類が足りないのではないかと思った。即ち,仮釈放は,裁判所の量刑判断を変更することなのだから,合議の結果,どうしてそのような結論に達したのかという過程は記録として残しておくべきではないか。
・  棄却率が低いと思ったが,これは,矯正施設の仮釈放申請基準と,地方更生保護委員会の仮釈放許可基準がほぼ同一であるためではないか。
・  仮釈放を原則化すべきだという理念に立つと,仮釈放審理の充実と仮釈放後の社会内処遇の充実とを車の両輪として考える必要がある。仮釈放審理の充実という観点から考えれば,抜本的に委員の増員を図らないといけない。また,準備調査に携わる保護観察官の大幅な増員も必要。施設駐在官制度もよい制度なので,保護観察官を増員して全ての矯正施設に駐在させるべきである。さらに,矯正施設の外部にいるソーシャルワーカーのような立場から,施設内処遇と社会内処遇をつなぐ役割を担う者を導入することも必要ではないか。
・  全国に委員が53人しかいないというのは少なすぎる上,委員構成も保護観察所長経験者が多く占めるなど,極めて内輪なものになっており,別の人が,別の視点で関与する仕組みが必要である。現行のように,保護観察所長経験者の委員は3人でもいいが,ソーシャルワーカーや専門性を持った人がオブザーバーとして参加し,5人くらいの委員構成で議論する必要がある。
・  すべての事案について同じエネルギーを費やす必要はなく,比較的軽微な事案に対する審理は簡素化し,もっと早期に仮釈放にすることもよいし,重大事案についてはより慎重な審理を行うという,「二極化」をしていくべきである。また,一人の委員のみが本人と面接し,その心証に基づいて合議を行うという方法では客観的な判断ができないのではないか。重大,困難な事案については,合議体による合同面接を行うシステムを導入するなど,手厚い審理を行うべきではないか。さらに,矯正施設の中にもっと入り,主体的に調査・審理してもよいのではないか。
・  事件記録を見ると,同じ情報が何度も重複して記載されているだけで,プラスの情報は非常に少ないと感じた。
・  関東地方更生保護委員会の視察では,委員は週末も自宅で審理票を書くなど休む暇がないという話があったので,考える必要があると思った。
・  今後の改善策として,精神科医やソーシャルワーカー等の精神医学や心理学の専門性を持った人を審理過程に入れることは大切である。
・  委員個人の長年の勘も重要だろうが,専門的知見をもっと取り入れる必要がある。委員とするかどうかは別だが,精神科医等の専門的知見を常態的に活用する仕組みを導入するべきである。
・  仮釈放の許可基準を明確にすべきである。ある程度類型化すれば,メリハリの効いた審理もし易いし,基準も明確になるのではないか。
・  病院では電子カルテが導入されているが,事件記録を電子データとして蓄積し,さらに刑事司法機関において情報の共有を図ったらよいと思う。
・  第一に仮釈放審理については,基準の明確化と共有化が重要である。第二に,判断者の多様化,多元的な視点が重要である。委員として導入するのがよいのか,意見を聞くだけの仕組みとするのかは問題であるが,医者,臨床心理士,ソーシャルワーカー,教員など,多様な人が多様な次元から判断を行うべきである。第三に,地方更生保護委員会の審理を第三者が検証する仕組みが必要ではないか。第四に,準備調査に関しては,現在はあまりに繁忙だと思うので,保護観察官の増員も必要である。第五に,文書の堆積とは正にそのとおりであって,迅速かつ適正な審理を行うためにはマトリックス化された情報が必要だと思う。検証システムの導入により,定数化可能な要因等を分析し,重点化と簡素化と負担の軽減を図らないと,仮釈放審理の充実を図れないと思う。
・  昭和20年代には,受刑者本人による出願制度を採用していたのに廃止されたとあった。そのような制度があれば,受刑者のインセンティブになるかと思う反面,悪用されるおそれもあり,いかがかとも思う。
・  現状において,受刑者本人から,仮出獄後の生活設計のようなものを提出させていないのか。
・  本人に申請権を認めるとして,それにどんな意味があるのか疑問である。申請権を認めるとすれば現状を大きく変えることになり,かえって本人の更生意欲をそぐことになるのではないか。
・  そもそもこの有識者会議の始まった契機が,仮釈放者による再犯事件であったために,仮釈放のあり方が議論されているのだと思うが,「安全・安心な国づくり」という観点から言えば,仮釈放者であろうと満期出所者であろうと問題ではない。今求められているのは,仮釈放制度をどうするかよりも,再犯可能性の高い人が社会復帰する際に,どういう支援,教育を受けられるかが重要であり,そうした観点から議論する必要がある。
・  満期出所者も仮釈放者も同じ。しかし,全体の再犯防止を考える上で,仮釈放審理を充実させるための人員は必要ではないか。
・  本人の関与については,その発想自体がよく分からない。刑を受けるのは,本人の行為責任によるものであり,刑を全うすべき責任があるだろうが,それがなぜ出願権を本人に認めるという方向に行くのか。そのような権利を認めることについて世の中の賛同は得られないと思う。
・  仮釈放を受ける権利ではなく,仮釈放申請の機会を受ける権利ではないか。
・  本人による申請については,職権審理の発動を促す程度のことを考えたらよいのではないか。
・  『罪と罰』という雑誌に,アメリカでは,犯罪が増加したため厳罰化し,次々刑務所に入れた結果,満期まで刑務所に居た者が出所しては再犯するということで,刑務所が犯罪再生工場になっているという内容の論文が掲載されていた。そこまで踏まえて社会的なコストを考えると,仮釈放により再犯を防ぐことは,社会的コストを減らす意味で必要ではないか。
・  受刑者本人が仮釈放審理において主体的に関与していないことは事実だろう。現在は,ほとんど情報を与えられていない。なぜ仮釈放が不許可になったのか,少なくとも許可基準の4項目のうち,どれに当てはまらないのかくらいは伝えてもよいのではないか。一切情報を与えないで仮釈放の手続を進めることは,改善更生という面ではすごくマイナスだと考えられる。手続の公正さを担保するためにも,棄却した場合には,その理由を伝えてもよいのではないか。

6  今後の日程等

 次回は,11月22日(火)午後2時から開催し,引き続き仮釈放のあり方等について議論するほか,保護観察の充実強化等について議論する予定。


(文責 更生保護のあり方を考える有識者会議事務局)

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