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更生保護のあり方を考える有識者会議第1回会議

日時:平成17年7月20日(水)自 午後3時01分
至 午後5時21分
場所:法務省第一会議室(20階)


午後3時00分 開会

〔報道関係者入室〕

○事務局長 田中直毅委員がまだお見えになっておりませんけれども,定刻がまいりましたので,ただ今から更生保護のあり方を考える有識者会議,第1回会合を開催いたします。
 初めに法務大臣からあいさつがございます。

1.法務大臣あいさつ

○南野法務大臣 先生方ありがとうございます。本日,更生保護のあり方を考える有識者会議,第1回会合を開催することになりました。委員の先生方にはお忙しい中,お集まりいただきまして誠にありがとうございます。我が国の犯罪情勢が依然として厳しい中,昨年末以来,元受刑者や仮出獄中の者による重大事件が相次いで発生いたしましたのを受け,法務省におきましては2月22日,「再犯防止のための緊急的対策」を取りまとめ,保護観察の充実・強化等の課題に取り組んでおりましたところ,5月に執行猶予中の保護観察対象者による女性監禁事件が発覚し,保護観察の実効性,なかんずく再犯防止機能に向けられる国民の目は厳しいものとなっております。
 我が国の更生保護制度は,保護観察官と保護司との協働態勢の下,民間篤志家の方々の温かい御協力を得ながら犯罪や非行を犯した人々を更生に導いてきたのでございますけれども,処遇が困難なケースの増加や保護司の高齢化等の問題を抱えておりましたところ,ただ今申し上げました状況を踏まえ,更生保護制度の全般にわたりまして検討し,国民の期待にこたえる制度のあり方を明らかにし,これを早期に実現することが必要であると考えまして,この更生保護のあり方を考える有識者会議を立ち上げたものでございます。
 委員の皆様には,それぞれの分野での高い御見識からこれまでの更生保護の枠にとらわれることなく,忌憚のない御意見をいただき,国民の期待にこたえ,あるべき更生保護とは何かについて大きな方向性をお示しいただければ幸せでございます。
 法務省といたしましては,本年12月をめどに中間報告をいただきました上,来年5月までに最終的な御提言をいただきたいと思っておりますが,この会議での御論議を踏まえ,早期に実施できる事柄は,最終的な御提言を待たずに速やかに実行し,そのほかのものにつきましても着実に成し遂げていきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

〔報道関係者退室〕

2.出席者紹介

(事務局長の進行により,出席者の紹介を行った。)

3.座長選出及び座長あいさつ

○事務局長 それでは続きまして,この会議の座長を委員の皆様方からお選びいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。どなたか御推薦いただけますでしょうか。
 清原先生,どうぞ。
○清原委員 僣越でございますが,私から野沢委員を推薦させていただきたいと思います。今日お集まりの委員の皆様すべて御適任だと思っておりますが,私が存じ上げております野沢委員におかれましては,国鉄改革あるいは政界での御活躍をもとに一昨年から昨年まで法務大臣を務められて,この更生保護の問題については責任をとってこられました。また,今現在,聞き及びますと,保護司会の連盟の顧問をされているということでございますので,今回のこの大変難しい問題について座長として御活躍いただくのに御適任かと思い,僣越ですが,私から推薦をさせていただきます。よろしくお願いします。
○事務局長 ありがとうございました。今,清原委員から野沢委員が適任者ではないかと,こういう御意見がございましたけれども,いかがでございましょうか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○事務局長 それでは,御異議ないようでございますので,野沢委員に座長をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 ちょっと席を真ん中の方に移っていただきますので,しばらくお待ちください。
 それでは,座長,よろしくお願いいたします。
○野沢座長 ただ今皆様の御指名によりまして座長を仰せつかりました野沢太三でございます。大変ふつつかではございますが,皆様の御支援,御協力を得ましてお務めを果たしてまいりたいと思います。
 ただ今大臣からお話,御依頼がございました更生保護のあり方という大きなテーマでございますが,日本の更生保護制度というのは大変歴史もあり,かつまた大勢の国民の皆様からお支えいただいた大変立派な制度であると,私も法務省在勤中から大変関心を持って見守ってきたわけでございます。この制度を立派に運営することによりまして,日本の治安,そしてまた一度罪を犯した皆様の立ち直り,復活のためにいかほど役割として大きなものがあったか計り知れないものがあろうかと思うわけでございまして,これからもますますこの制度の立派な運営に努めなければならないわけでございますが,ここに至りまして幾つかの重大な不祥事が保護観察中の方々の中で出てきているということで,国民の皆様もこれに対して大変御関心を深めておるわけでございます。今日お集まりの皆々様はそれぞれの分野で大変豊かな識見をお持ちであり,その意味で皆様からこれから忌憚のない御意見を伺うことによりまして,何とかこの制度のあり方,そして足らざるところ,欠けているところ,また正すべきところが浮かび上がれば幸いと思うわけでございます。
 私も法務省在勤中に司法制度改革という大きなテーマの仕上げの段階で取組をさせていただきまして,国民参加の開かれた,かつまた分かりやすい司法制度の構築という点で多少働かせていただきましたが,更生保護の分野に関してはまだまだ手が届かない段階でバトンタッチをいたしましたこともございまして,今回のこの懇談会の中でできる限りの御意見を申し上げたり,皆さんの御意見を伺いまして,何とか御期待にこたえてまいりたいと思っておりますので,何とぞよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
 なお,お話がありましたとおり,来年の5月までの御報告,そしてまたその前に12月暮れの段階で中間取りまとめというお話もございますので,まず早速できることから始めるということで,皆様方には大変お忙しい中ではございますが,何とぞ月1回ないし2回ということで御協力をいただければ幸いでございます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
 それでは,私,座長ということになりましたので,これから議事を進めたいと思いますが,まずは配布資料等がたくさんございますので,これについて事務局から御説明をお願いいたしたいと思います。
○事務局長 それでは,配布資料につきまして御説明させていただきますので,封筒の中に入っているものを出していただきたいと思います。
 私どもとして考えております更生保護の現状と問題点について説明させていただき,その上で配布資料につきまして御説明申し上げたいと思います。
○野沢座長 手順を早速間違いまして,私,座長を拝命しましたが,いろいろまた事故等もあることを考えまして,座長代理をその前に選出しておきたいと思いますので,事務説明に入る前に座長代理の件についてお諮りを申し上げたいと思いますが,座長代理は座長の指名でよろしいかと思いますが,いかがでございましょうか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○野沢座長 よろしゅうございますか。それでは,金平委員に座長代理をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○金平座長代理 ただ今座長から御指名いただきましたので,それではお受けいたします。皆様,どうぞよろしくお願いいたします。
○野沢座長 どうもありがとうございました。大変突然で失礼をいたしましたが,どうぞ今後ともよろしくお願いします。

4.配布資料説明等

○野沢座長 それでは,資料説明の方をよろしくお願いします。
○事務局長 それでは,説明させていただきたいと思います。
 更生保護は,保護観察官と保護司の協働態勢の下に犯罪や非行を犯した人々を改善,更生させている仕事でありますけれども,それに当たっては更生保護施設,更生保護協会,更生保護女性会,BBS会,協力雇用主等,民間の方々の支援を受けながら仕事を進めてまいりました。
 現行の更生保護制度は,昭和24年の犯罪者予防更生法の制定・施行,昭和29年の執行猶予者保護観察法の制定・施行により今日のものに整備されたのでございますが,制度発足当時と今日とでは当然のことながら犯罪情勢のみならず,社会・経済情勢,地域社会のあり方等が大きく異なってきており,果たして現行の更生保護制度が現在の社会に適合したものとなっているのかとの指摘があります。
 また,先ほど座長の方からもお話がありましたように,刑事司法の各分野で様々な制度改革がなされる中,更生保護の分野でも制度の充実・改善が求められておりました。そのような状況にありましたところ,昨年末から保護観察対象者等による重大な再犯事件が発生し,これを契機として更生保護制度がマスコミや国会などで頻繁に取り上げられ,現行の更生保護制度の問題点が改めて指摘されるとともに,更生保護制度は機能しているのか,再犯防止に役立っているのかなどとの疑問が提起され,更生保護制度は限界に達しているとか,制度疲労に陥っているなどとの指摘もされているところであります。
 そこで,従来から保護局において検討してまいりました事項,それから,今回の一連の事件を契機に指摘されている問題点を整理いたしますと,大きな項目としましては,6項目あります。もとより,当会議で検討事項をお決めになるのは委員の皆様方でございますけれども,参考のためにこの段階でお示しするものでございます。
 以下,これにつきまして御説明いたします。
 まず一つ目は,「現行の保護観察制度の問題点と改善策」です。治安が悪化し,安全で安心できる社会の回復,実現が求められている中で発生した一連の重大再犯事件を契機に,とりわけ再犯防止との関係で保護観察制度のあり方が問われております。例えば,昨年11月に発生した奈良の女児誘拐殺害事件では,性犯罪のような再犯傾向の強い犯罪について処遇はいかにあるべきか,特別の処遇プログラムを受けさせるなど処遇を強化すべきではないか,性犯罪者に関する情報を法務省と警察が共有すべきではないかというような点が問題になりました。
 また,本年2月に発生した愛知県安城市における仮出所者による通り魔殺人事件では,保護観察中の仮出所者に所在不明のものが六百数十名いることが問題にされました。この点については,所在不明者を出さないこと,所在不明になった場合の所在調査のあり方について議論がなされ,後者の関係については警察への協力要請などを行うこととなっております。
 なお,私,今,仮出所とか仮釈放という言葉を使いますけれども,これは仮出獄と同じ意味でございます。先般,監獄法が一部改正されまして,監獄という言葉が使われなくなり刑事施設という名前に変わりますけれども,今その変わり目でありますので,仮出獄という言葉と仮釈放という言葉が混在しておりますけれども,お許し願いたいと思います。
 そこで続けますけれども,さらに5月に検挙されました東京都内における女性監禁事件では,先日逮捕された事件を含めますと,この人物は一昨年8月からの保護観察期間中に4人の女性に対する監禁事件を起こしていたことになるのでありますけれども,本人の行状を見守って遵守事項を守らせることを基本とする現在の「見守り型」の保護観察では立入調査権もなく,対象者の再犯リスクが高い場合には限界があるとの指摘もあります。
 なお,この事件の対象者は保護観察付執行猶予者でしたが,犯罪者予防更生法による仮出所者に対する保護観察と執行猶予者保護観察法による保護観察付執行猶予者に対する保護観察とを比較いたしますと,転居や長期間の旅行について前者が許可制であるのに対し,後者が届出制であり,前者については設定できる特別遵守事項を後者については設定できないなど,後者の方が緩やかであることの問題点が指摘され,この関係では立法府において法改正の動きもございます。今日,お手元に新聞記事のコピーの追加配布の分がありますが,それが関係する部分でございます。
 それから,これらの事件をめぐる議論の過程では,再犯防止の観点からは,例えば刑期満了後の保護観察制度を新たに設けるべきであるとか,性犯罪者の情報を広く一般に公開しておりますアメリカのメーガン法のような制度を導入すべきであるなどのもっと厳しい方策を講ずるべきであるとの議論もなされておるところでございます。
 二つ目は,「仮釈放審理のあり方」です。仮釈放を許すか否かは地方更生保護委員会が監獄の長からの申請に基づいて審理しており,その要件は法律に定められておるわけでございますけれども,仮釈放後の9日目に重大再犯事件を起こした安城市の事件では,仮釈放を認めたことは失敗だったのではないかとの厳しい指摘もあり,仮釈放審理の手続のあり方も検討の課題であると考えております。仮釈放審理に関しては,例えば審理件数に比して委員の数が限られていることなどから,受刑者との面接時間が十分にとられていないとか,仮釈放審理に透明性が確保されていなくてよいのかなどとの指摘もなされております。
 また,犯罪被害者との関係では,仮釈放審理の際に被害者の意見を聴く仕組みを設けるべきであるとの意見もあります。
 三つ目は,「官民協働態勢のあり方」ですが,これは,最初の「保護観察制度の問題点と改善策」と密接な関係があります。現在,保護観察官の定員は約1,000人です。そのうち,保護観察の実務に携わっている職員は約630人でございます。それに対しまして保護司は定員5万2,500人ですが,現在は欠員が生じており,実際には約4万9,000人弱の保護司が任命されております。保護観察の対象者は成人・少年合わせて常時約6万数千人おりますので,単純に平均しますと保護観察官は1人当たり常時約100人の保護観察対象者と約80人の保護司をそれぞれ担当しているのが現状でございます。
 その結果,実際の処遇はその多くの部分を通常の事件については保護司にお願いしているのが実情でございます。もちろん処遇が困難な者などについては,保護観察官が直接接する機会を増やすなどして処遇を強化しなければならないのですが,それにも限界があります。このような状況の中で,更生保護に関する専門的知識に基づき保護観察の事務に従事することとされている保護観察官と,保護観察官の充分でないところを補って事務に従事することとされている保護司のそれぞれの役割をどう考えたらよいのか,保護司にどこまでの役割を期待してよいのかが検討課題であります。
 四つ目は,「保護司制度の基盤整備」です。保護司制度が戦後発足して間もない昭和28年には,保護司の平均年齢は約53歳でありました。最近の保護司の平均年齢は63歳前後であります。また,定員割れの状況が続いていることはさきに説明したとおりですが,保護観察対象者に占める少年の割合が高いことなどから,若い人も含む幅広い年齢層,多様なバックグラウンドを持つ方から保護司になっていただくことが求められております。
 また,従来は退任される保護司が後任の候補者を推薦されることがほとんどでありましたけれども,それでよいのか,公募制の採用等,募集方法に工夫を凝らす余地はないのかなども検討課題となっています。
 さらに,いかに無給のボランティアであるとはいえ,現在の保護司実費弁償金は保護司の事務の実情を反映したものではなく,増額の必要があるのではないかとの指摘,更に進んで,一定の報酬制を導入してはどうかとの議論もあるところであります。
 「保護司制度の基盤整備」の関係では,保護司法上の団体である保護司会の活動に支援をすべきではないか,また,都市部の住宅事情の変化等を考えると,保護司が対象者との面接に使用できる施設を設けてはどうかなどの議論もあるところです。
 五つ目は,「社会復帰のための施策」です。本人の社会復帰にとって生活の安定が何より重要であり,とりわけ住むところと働くところの確保が必要です。就労先の確保等の重要性については従来から認識され,それなりに努力してきましたが,まだ不十分であり,さらに充実する必要があるものと考えております。
 そこで,現在,厚生労働省と法務省で検討チームをつくって種々の就労支援策を検討していますが,アパートへの入居や就職の際の保証人制度などを含め,更にどのような方策があり得るのか幅広く検討すべきものと思われます。
 受刑者が刑務所から仮釈放になる場合,帰るべき家や身寄りのない者については更生保護施設という民間の施設を帰住先として仮釈放が許可されることがあります。安城市の事件では,対象者が更生保護施設に入所しながら,わずか数日で無断退所した挙げ句,刑務所出所後10日足らずの間に犯行に及んでしまったことから,この更生保護施設の存在と問題点も報道等によって浮き彫りになりました。更生保護施設はすべて民間の更生保護法人が運営しており,全国に101施設ありますが,近隣住民との関係もあって新設が困難である上,既存の更生保護施設の中には性犯罪,放火,薬物事件などを犯した者については付近住民に与える不安も大きいことから,受入れをためらうという傾向があるという報道もなされております。
 身寄りのない者も社会に受け入れて更生させるため更生保護施設はなくてはならないものなのですが,その大切な機能を民間の施設のみに任せているのは国として無責任ではないかという指摘もあり,この観点からは国立の更生保護施設の設置も検討課題であるとされております。
 最後は,「関係機関との連携のあり方」です。仮出所者等,更生保護の対象者は社会の中で社会に溶け込んで社会復帰を遂げていかなければならないのですけれども,それには地方公共団体,警察,民間団体等関係する機関との連携のあり方も当然大きな課題でございます。
 以上が私どもなりに考えました案でございますけれども,これはあくまでも私どもがこれまでの内部での検討あるいは一連の重大再犯事件を契機として行われた国会での議論,マスコミの報道・論評等を踏まえて問題点を整理したものでございます。
 これから資料説明あるいはヒアリング等を行うことになりますけれども,それを踏まえて委員の皆様方が意見を交わされ,検討事項をさらにお示しくだされば検討のために必要な資料等をさらに御提供申し上げたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
 引き続き,配布資料の説明をいたさせます。
○事務局 では,更生保護業務の概要と,併せて配布資料の御説明をいたします。時間の関係もありまして,ここでは議論の導入としてごく概括的にとどめさせていただきますことをあらかじめ御了承願います。
 まず,更生保護とは,犯罪や非行をした者が社会内で健全な社会人として更生するように援助することにより,犯罪の危険から社会を保護し,個人及び公共の福祉を増進することを目的とするものであり,保護観察,更生緊急保護,仮釈放,恩赦,犯罪予防活動を主たる内容としております。
 そのうち,保護観察とは,保護観察に付された者について遵守事項を遵守するよう指導監督し,その者に自助努力の責任があることを認めて,これを補導援護することによって,その改善及び更生を図ることを目的とする制度でありまして,これが更生保護の主軸であります。これは,犯罪や非行をした者を社会の中に迎え入れ,一般の方々の間で生活させながら一定の決まりごとを守るように指導して,必要な社会規範を身につけさせ,犯罪をしない健全な社会人として更生させるという業務でありまして,犯罪者の社会への再統合とも言われております。
 まず,説明資料の(1)「更生保護処遇までの流れ」,1枚ものですが,これを御覧ください。
 刑事司法における保護観察の位置付けを水色の部分で示しております。裁判で実刑判決が確定すれば,被告人は刑務所で服役いたしますが,仮釈放の可能性がございます。そこで,この図には直接載ってございませんが,受刑中の段階から「環境調整」という業務が行われます。環境調整は,家族や引受人との話し合いによる被収容者,これは受刑者や少年院にいる少年のことを指しますが,被収容者の家庭環境,交友関係,被害弁償,そして釈放後の生計の見込みなどの調査や調整を主な内容としております。
 受刑者についての環境調整は,その者の円滑な社会復帰のために不可欠な業務であります。このように,我々の仕事は犯罪者が刑務所にいる段階から既に始まっているわけです。刑務所から仮出獄した者は,残りの刑期の間,保護観察に付されます。保護観察を担当するのは,受刑者が帰る場所,これを帰住地と言いますが,その帰住地を管轄する保護観察所であります。帰住地に関しては,大変お手数ですが,図説更生保護という雑誌を卓上に配布してございます。この冊子の14ページを御覧ください。
 このページの中ほどに,刑務所出所者の帰住先内訳(平成15年度)という箇所がございます。これを見ますと,仮釈放者のうち実に23.9%が父母や配偶者や知人に引き取られることなく更生保護施設を帰住地として出所しております。親兄弟がいなかったり,家族関係に問題があって家族が引き受けを拒否する場合も少なくありませんから,このような数字になるわけです。このように,更生保護施設は多くの仮出獄者にとって社会復帰への重要な足掛かりとなっております。
 これに対し,裁判所が保護観察付の執行猶予判決を下した場合は,裁判所が判決において宣告した執行猶予の期間中,保護観察に付されることとなります。執行猶予に保護観察が付されるのは,その者を実刑にするまではないものの,自力だけでは社会内で更生するのは困難であろうと裁判所が認定した場合であると言えますが,本人は実刑を免れたことで,あるいはあたかも無罪放免されてしまったかのような錯覚に陥るのか,なかなか保護観察の軌道に乗らないこともございます。先ほどございました執行猶予者の保護観察については,監禁事件を機に社会の耳目を集め,問題を指摘されるに至っております。
 少年事件の場合は,家庭裁判所によって保護観察処分に付された少年と少年院から仮退院してきた少年が保護観察に付されることとなります。少年の健全育成のあり方がこれからの日本の将来に重要な意味を持つといってもよいことにかんがみますと,少年の保護観察は更生保護にとって非常に大切な業務であると言えます。
 このような更生保護は,保護司,そのほかの協力団体の方々の存在抜きには語れません。保護司は,保護観察対象者と直接接する最前線の仕事をしておられ,保護観察業務の実務面のかなりの部分を担っております。保護司は,例えば自分が担当している対象者の保護観察の状況について,保護観察経過報告書という書面を月に1回,保護観察所に提出しなければなりませんし,再犯が起こった場合は事故報告書という書面も書いて提出しなければなりません。通常の日常生活を送りながら時間の合間を縫って対象者の指導もし,就職先などについての相談にも乗る。その上,月々報告書をまとめて保護観察所に提出しているというのが保護司の生活であります。
 よく報道で,対象者は保護司のところに月に2回訪問して指導を受けることになっているという言い方をされていますが,ここでいう保護司のところといいますのは,主に保護司の自宅を指しており,保護司の多くは自宅に保護観察対象者を上げて指導しております。このようなことは,保護司御本人だけではなく,その御家族の理解なしでは到底成り立たないことであります。
 また,保護観察対象者が保護司の指導に従わないこと,あるいは保護司に反抗的な態度をとったり無視したりすることも珍しくありませんが,対象者の処遇に当たる保護司の方々は,保護司かたぎとでもいいましょうか,たとえ対象者が悪くても安易に対象者を責めることなく,自分が至らないのではないかと反省する傾向にございます。
 また,更生保護女性会,BBS会等の御協力も更生保護の大きな支えとなっております。ある更生保護施設の施設長は,毎日在会者の世話に明け暮れて大変な思いをしていますが,更生保護女性会の方々が毎月施設を訪問してくださり,花を生けたり,食事の準備の手伝いをしてくださる。その温かい励ましのおかげで辛い仕事も頑張ることができますと語っておられました。
 このように,多くの民間の方々に支えられて今日の更生保護が成り立っているわけであります。
 次に,説明資料(2)「統計資料」を御説明いたします。
 資料1は,保護観察の新規の受理人員の推移を示してございます。平成16年の総数は6万8,194件でありました。受理件数の多い順番からいいますと,保護観察処分の少年,仮出獄者,少年院からの仮退院者,そして保護観察付の執行猶予者という順でございます。
 次に資料3を御覧ください。資料3は保護観察の新規の受理事件を罪名ごとに見たものであります。
 続いて,資料4。資料4は保護観察の新規の受理人員の保護観察の期間を示したものでございます。黄色の部分が仮出獄者ですが,6か月以内という期間が一番多く,これに対して水色の部分で示しております保護観察付執行猶予者は3年から4年以内の保護観察期間,これが一番多い分布となっております。
 飛びますが,資料9を御覧ください。資料9はただ今問題になっております保護観察事件の所在不明者数及び所在不明率の推移でございます。数値的に申し上げますと,所在不明者は減少していると言えます。
 次に,資料10は保護観察対象者の所在不明人員数の罪名ごとの分布を示したものであります。脚注にございますように,例えば殺人などには未遂罪も含んでございます。
 次に,資料11を御覧ください。資料11は,保護観察事件の終了事由別構成比であります。保護観察の終わり方につきましては,保護観察期間の満了あるいは仮出獄の取消し等がございますが,それぞれどのような保護観察の終わり方をしたのかを示しております。仮出獄者について見ると,平成16年には1万5,383人が保護観察期間の満了により,そして1,021人が再犯をするなどして仮出獄を取り消されております。
 保護観察付執行猶予者については執行猶予の取消しが実は多く,平成16年には1,648人が取り消されております。これは率で申し上げますと,おおむね30%前後が執行猶予を取り消されておると,このようなことになります。
 次に,資料13を御覧ください。行刑施設からの出所受刑者数及び仮出獄率の推移を見たものであります。仮出獄率は昭和59年以降,50%台で推移してございます。
 資料15を御覧ください。資料15は有期仮出獄者の刑の執行率の推移であります。刑の執行率は,裁判所から言い渡された刑期に対して実際に刑務所にいた期間の割合と考えていただくとよいかと思います。御参考までに申し上げますと,平成16年における有期仮出獄者全体の刑の執行率は81.4%となっております。
 資料17は,環境調整事件の新規受理件数であります。平成16年では,成人,少年合わせて5万件以上の事件を受理しております。これで環境調整は保護観察と並ぶ重要な業務であるということがお分かりいただけると思います。
 資料18は,更生保護官署の職員定員の推移であります。保護観察所に勤務する保護観察官の定員のうち,所長などの管理職や更生保護施設の管理等に専従しておる者を除き,実際に保護観察業務に従事している保護観察官は,この図では直接出ておりませんが,全国で約630名であります。
 次に,資料19は法務省の予算関係の図であります。
 続きまして,説明資料(3),これは更生保護関連主要法令の変遷を一覧表にした図であります。
 次に,説明資料(4)ですが,これはこれまでの更生保護に関する国会附帯決議あるいは政府の方針,各種提言をまとめたものでございます。昭和50年当時から保護観察処遇の充実,保護司の実費弁償金の問題,待遇の改善,更生保護施設の充実・強化などについて,あらゆる場面で指摘されているのが御覧いただけます。
 続いて,説明資料(5)は,最近の再犯事件について,報道や論説などをまとめたものでございます。
 続いて,説明資料(6)。これは更生保護に関する最近の国会質疑をまとめたものでございます。何の問題についての質疑であるかが分かりますように,こちらで下線を引いてございます。表紙にはキーワードをつけておりますので,適宜御参照ください。
 以上で更生保護業務の概要と配布資料の御説明を終わります。
○野沢座長 御苦労さまでございました。
 ただ今御説明のありました資料あるいは問題提起を含めまして御質問,御意見等ございましたら,先生方の方からどうぞお伺いしたいと思いますが,どうぞ。
○金平座長代理 大変単純な質問をいたしますが,統計資料の23ページに更生保護官署職員定員の推移というのがございます。今,保護観察の問題がいろいろ出る中で観察官が非常に少ないという話が出ておりますが,この定員の推移を見ると少し年度ごとに上がっているということがございます。
 それからもう一つ,冒頭の局長の御説明の中に,定員は1,000名だけれども,実務は630人という御説明がありましたが,観察官の1,000名と600人の差はどういうふうにとればいいんでしょうか。ちょっと数字的なことで恐縮でございますが。
○事務局長 この統計資料の23ページに保護観察官の定員が書いてありまして,997という数字が出ておりますけれども,これを丸めて約1,000人というふうに申したものであります。
 それから,実際の事件を担当している者が約630人というふうに申し上げましたが,それ以外の人たちは何をやっているかと,こういう御質問だと思いますけれども,これは一つは所長とか課長とかいう管理職の者がおります。その者も保護観察官の資格を持っておると,こういうことがあります。
 それからもう一つは,事件を担当している者のほか,保護司会の運営に関する事務とか,あるいは保護司の研修に関する事務,あるいは更生保護法人の監督,それから民間協力団体の関係の事務を担当している者がいます。主としてそちらを担当している者もおりますし,両方やっている者もいるので厳格には区別はしにくいんですが,あえて人数を出すとしたら約630人が事件担当をしていると,こういう整理になるということです。
○金平座長代理 ありがとうございました。1,000人のところ6割が実際の保護観察に当たっていると。4割が別の,それに伴う事務と申しますか,それに当たっている,こういうふうに考えてよろしいですか。
○事務局長 6割,4割と言いますか,63%と37%ぐらいということでございます。
○金平座長代理 ありがとうございました。
○瀬川委員 検討事項の中に「協働態勢のあり方」,それから「保護司制度の基盤整備」があり,先ほどの説明でも保護観察の協働態勢ということを全面に検討するということになっています。しかし,検討の中心は保護司の問題になっており,実際には保護観察官の問題を扱わないという感じになっていると思うんです。
 実際の犯罪者予防更生法のもともとの法制のあり方から見ますと,保護観察官がまず存在して,保護観察官で充分じゃないところを保護司が補うという形になっているわけですね。だから,その点で今回の更生保護のあり方を考える有識者会議として,保護観察官の問題をもう少し前面に取り上げてもいいんじゃないかというふうに思います。もちろん保護局長は予算の関係があり言いにくかったというところはあるかも分かりませんので,むしろ我々委員の側からこの問題は非常に重要だということを前面に出す方がいいんじゃないかと考えます。
 したがって,保護観察官の問題を傍らに置いて保護司の問題を重点的に取り上げるのではなくて,保護観察官の問題も重点的に取り上げて保護司の問題に及ぶという方が法律の体制としても通常でありますし,しかも先ほど説明がありましたように,1人の観察官が100名の対象者を扱うというのは「天文学的な数字」ですし,それからしかも80人の保護司をスーパーバイズしているというのでは観察官の負担はもう本当にすごいものであります。恐らく欧米なんかに比べてもこの点は極めて負担過重だと思うんですね。
 今後更生保護のあり方を考える場合には,対象者に対するケア面のみならず,コントロール面というかスーパービジョン面をも重視する場合には保護観察官の問題というのは触れないわけにはいかないんじゃないかというふうに思いますので,検討事項の中にぜひ観察官の問題も触れていただきたいと思います。
○野沢座長 大変大事な御指摘をちょうだいいたしておりまして,私自身もこの点ちょっと感じておったところでございますが,これまた後ほどしっかり議論する機会があろうかと思いますので,とりあえず御質問をずっと続けさせていただきたいと思います。
○堀野委員 そもそもこの会議が設けられた契機をどう理解すればいいかということなんですが,統計資料の8ページに,保護観察対象者それぞれの再処分率の推移が出ております。これを見ると,仮出獄者は数が少ないのであれですけれども,だんだん減少しているような傾向が見られると。それから,少年については平成7年ごろから右上がりの状況にある。それから,保護観察付執行猶予者は大体横ばい状況にあるというと,この統計上の観察から見れば,今これを特段に改めなきゃいけないという,そういう認識には至らないのではないかと。
 とすると,この新しい改革というのは近時起こった幾つかの衝撃的事件を契機にしてこの会議が設けられるようになったというふうに理解してよろしいんでしょうか。この表の読み方とこの会議の設置目標といいますか,そのことです。
○事務局長 きっかけとしてその事件があったということは否定をいたしませんけれども,それだけが原因かということを言われると,そういうことではありません。冒頭御説明いたしましたように,司法制度改革の中で刑事裁判についていろいろな変革がなされ,なおかつ行刑についても改革がなされている。そういう状況の中で,保護についてもいろいろな改革をしなきゃならないという問題意識があったことは事実でございます。そういう状況の中で一連の事件があったということでございます。
 この8ページの資料の関係なんですが,この再処分率というのは保護独特のものかもしれませんけれども,保護観察期間中に再犯を犯して,その間に確定した数字なんですね。ですから,例えば仮出獄者の再処分率を見ると1%という非常に低い数字になっているんですけれども,この保護観察期間が終わった後に再犯を犯して刑務所へ戻っていった人はここには出てこないわけです。その数字というのは,例えば矯正の統計で5年後の再入率とかいうものが出るわけですけれども,それで見ていただくともっと高い率になっていくわけです。ですから,成人の仮出獄者について状況がそんなに悪くないかといいますと,決してそういうことではないということでございます。
 再入所率につきましては,また次回にでも統計を示したいと思いますけれども,こんな1%というものではないということでございます。
○野沢座長 その点,私も関心がありまして,統計的に見たマクロ的な傾向と最近の事件の傾向を見た質といいますか,中身が大変問題があると。そうすると,結局,何が問題かというと更生保護のあり方なり制度なり,進め方がこのままでいいかどうかという点ではやはり問題があるかなと。問題はマクロの統計と,もう一つは個別の問題の中身,これと両方見ながら進めることが大事かなと今思っておりますけれども,また後ほどの議論の中でひとつよろしくお願いします。
○桝井委員 この資料の9かな,所在不明を見ますと,昭和40年から45年にひどく増えているわけですね,所在不明が。これはこのほかの事情があったんだろうと思います。最近はどちらかというと,もっと増えているのかなというと,どうも減ってきていると,減少傾向にあるということですよね。40年代と今との違いみたいなのをちょっと説明していただきたいのと,それからもう1点は資料10。資料10を見ますと,仮出所の方で刑法犯,強制わいせつ,殺人,殺人の27は気になるんですが,一番多いのは窃盗であるとか覚せい剤,特別法では覚せい剤ということですよね。そうすると,先ほどの話にもなりますが,確かに性犯罪絡みというか,かなり衝撃的な事件があったということで,それが直接の引き金でこういうふうな改革になるんだけれども,例えば強制わいせつ等の事案,これぐらいの数でも困ることは困りますけれども,殺人もそうですけれども,それに比べて圧倒的に窃盗という形のものが多いと。
 そうすると,今度のこの改革では,こういうふうな社会の予防的なところから見て非常にこれは問題だというところを早く直そうということもあるけれども,どうも見ると伝統的に多いのは窃盗とかこちらの方だと。ですから,先ほどもありましたけれども,改革をする場合に最近の事件に引きずられた形でただ見るというわけではないと思いますので,ここらの数字というか,簡単に言えば殺人とかわいせつというのはもっとよく見ればいいじゃないかという程度ではありませんが,見るということと,もっと本質的な問題があるはずだということなんだろうと思いますけれども,ここらの統計から見て何をどういうふうに改革していくのか。すぐできそうなものもあるけれども,本質的にはどこが,この窃盗を含めて問題なのか。ここらの数字と改革のあり方についてどんなふうに思っておられるのか,ちょっと説明してもらえればと思います。
○事務局 観察課長でございます。最初の所在不明でございますが,13ページの昭和40年代に非常に率が高いというのがどのような理由なのか,ちょっとそこまで分析はし切れておりません。ただ,最近につきましては例えば更生保護施設での改善が非常に進みまして,更生保護施設から所在不明になる者の数が減っておるということが言えると思います。
 また,少年につきましては非常にこれは実務的な感覚でございますが,携帯電話等を持ち歩くようになりまして,本人の居場所を比較的容易に把握できるというのも一つの大きい原因になっておるんだろうと,そのように思っております。
 それから,資料10で窃盗と覚せい剤が所在不明の中に占める人数が多いという御指摘でございます。これも統計的にはやはりもう少し細かく係属件数に対する所在不明者の率を挙げればよかったんだと思いますけれども,もともと受理件数,例えば3ページの資料3を御覧いただきますと,窃盗と覚せい剤が非常に受理件数の中でも大きい値を占めております。そういう意味では,窃盗,覚せい剤の所在不明者も数としては多くなってくると。ただ,資料のつくり方としまして全体の係属件数に対する割合をお示しすべきであったかと今反省をしております。
 以上でございます。
○事務局長 若干補充して御説明しますと,何を議論するかという点だったと思いますけれども,例えば奈良の事件なんかを例にいたしますと,性犯罪者というか特定の分野の者についてどう処遇するかということが強く問われています。ですから,それについてはやはり何らかの方向性というのを,この会議で結論までいくかどうかということは別として,議論していただく必要があると考えております。
 そのほかの問題については,例えば,所在不明の場合についての対策強化をどうするべきなのか,殺人とかの凶悪犯のように非常に社会に影響というか大きな不安感を与えるものとそうでない罪種と分けて考えるべきなのかという議論もあるかと思うのですけれども,そういう点も含めて御議論いただければというふうに思っております。
○佐藤委員 一点だけお尋ねがあるんですけれども,先ほど局長の最初の説明の中に現在の保護観察制度が機能しているのかという指摘が一つと,いま一つの指摘として再犯防止に役に立っているのかという指摘があるというお話でしたけれども,皆さんの御認識としては機能しているかという中身としても再犯防止に貢献できているかということが入っているという認識なのか,そこまでは現在の保護観察制度というのは要求しているものではないという考え方があるのかどうか,そのあたりはいかがですか。
○事務局長 大変難しい質問なんですけれども,再犯防止と保護は無関係かと言われれば,それはやはり無関係ではなくて,再犯防止も私どもの仕事だというふうに思っております。国会でもやはり保護観察というのは再犯防止に役立っているのかという,こういう御質問がありまして,それに対しましては保護観察になっている人となっていない人の再犯率を比較してみると,やはり保護観察にならないというか満期釈放の人たちというのはやはり再犯率が高いわけですね。私どもとしては,やはり保護観察はそれなりに機能しているんではないでしょうかと,こういうふうにお答えしたわけですが,それに対しては,それは再犯しそうもない者を仮出獄させているからそうなるんであって,保護観察が機能しているから再犯率が下がっているんではないんじゃないかと,こういうまた反論があるわけなんで,そこはなかなか難しいところですけれども,私たちとしてはやはり保護の仕事の一部でしょうし,私たちはそれなりに役立ってきたと考えておるのでございます。けれども,もっと再犯防止機能の面において保護がやるべきことがあるんじゃないかと,こういう問題提起を受けているものと認識しています。
○清原委員 資料11について御質問させていただきます。この保護観察事件の終了事由別の構成比なんですけれども,これについてそんなに極端に年代による差はないように見えるんですが,4の保護観察処分少年に関しましては期間満了が減ってきているというような,ほかのところに比べたらそういう傾向が見られて,解除が一定数見られるんですけれども,先ほどの御質問と関係しまして,保護観察があることの機能というか効果というか,それが資料11の(1)と(2)の違いとか,(3)と(4)の違いとかにあらわれているのかどうか,どのようにグラフの変化について読み取ったらいいのかということについてちょっと分かりにくかったものですから,それを一つ教えていただきたいと思います。もう一つは保護観察のことを考えていくときに,全国の地理的な要因によって何か特徴的な保護観察をめぐる問題があるのかどうか。
 つまり,大都市が多いところと,そうではないところと,もちろん犯罪件数も保護観察の件数も違うと思われるのですけれども,その保護観察をめぐる問題で地理的な何らかの相違はあるでしょうか。あるいは保護観察の管内というんでしょうか,支所別といいましょうか,そういうことで何らかの違いがあるのかどうか。都市型,農村型というか,そんなようなことがあるのかどうか。余り今回の統計等では地理的な違いについては読み取れなかったものですから,その辺についての問題があるのかどうか,その二点について教えていただきたいと思います。
○事務局 失礼しました。まず,資料11の少年の解除の件でございますが,これは上の(3)の少年院仮退院者につきましても同じような傾向を見ていただけると思います。昭和48年では退院といいますか解除と同じような措置でございますが,95人でありましたのが昭和53年になりますと1,000人に増えております。以下大体1,000人前後で推移をしておるところでございます。
 先ほど御指摘の(4)の保護観察処分少年につきましても,昭和53年から増えまして,16年にずっと増えてきておるわけでございます。昭和53年に実は従来非常に保護観察の期間が長いという傾向がございまして,できるだけ解除できるものについては早く終了しようということでそのような運用の方針をとっております。そのようなことで,このように解除が増えておるということも言えると思います。
 期間満了が減少しておりますのは,全体的な係属件数が少年につきましては減少もしておりまして,そのようなことが原因になっておるんだと思います。
 それから,保護観察の地域的な違いということでございますが,これも感覚的なところでございますけれども,比較的都市部では本人の状況等の把握が非常に難しくなっておるという感覚を持っております。それに対して,地方では地域も非常にしっかりしておる部分も残っておりますし,家庭の力も残っておるということで比較的保護観察は従来の形で進めていきやすいところがあるかと思います。非常にこれは感覚的なところでございます。
○堀野委員 別の資料ですけれども,附帯決議あるいは政府の方針・各種提言等という冊子の中の「21世紀における矯正運営及び更生保護の在り方について」という矯正保護審議会の提言が出ておりますけれども,21世紀における更生保護の在り方についてというこの提言は,私は中身を十分検討したわけではありませんけれども,恐らく1世紀にわたるかなり長期的なスタンスで御覧になると思いますけれども,この提言というのはどのように評価されているのか。また,これが結論に生かされたのかどうかという,その点については関係当局としてはどういうお考えなんでしょうか。これがあるにもかかわらず,なおかつこの会議を持たざるを得ない,持つことになる。そのまた理由をちょっとお聞きしたい。
○事務局長 これは私どもとしてもまじめに受けとめて,やれることはやってきたのでございますが,ただ,いろいろな事情があってできなかった部分もあるというのも事実なんでございます。それを踏まえてさらに今回,先ほど申したような事情で新たに立ち上げたということでございます。
○野沢座長 十分生かされていなかったということは否めないんでしょうね,こういうことになっているということはね。
○堀野委員 恐れるのは,また数年後にこの会議の結論がこういうふうな形で資料になって出てくるというのを恐れるんですけれども,それは大丈夫なんでしょうかね。
○事務局長 そういうことはないようにという決意で臨んでおります。

5.委員自己紹介

○野沢座長 ほかによろしゅうございますか。まだこれから資料にとらわれず,また御意見も頂戴する機会がずっと続くと思いますので,議事進行上,次のテーマに進めさせていただきたいと思いますが,ただ今田中委員がお見えになりましたので,ちょっと簡単に自己紹介含めてお願いしたいと思います。
○田中委員 初回から遅れてまいりまして申しわけございません。田中と申します。経済の分野で主に仕事をしてきておるんですが,現在の日本の産業構造が,一度社会から逸脱した,いろいろな理由で逸脱してしまった人に対してもう一度の機会を与えることが難しい社会になり始めているのではないかという漠然としたものでございますが,そういう社会にとっての強靱性というものがひょっとして失われ始めているかもしれないということを考えることがございます。経済構造の真ん中でこの問題が処理できないとすると,非経済的といいましょうか,利潤動機に基づかない何か社会的な仕組みというものが必要かもしれないというふうにも考えているんですが,そういう産業構造の不可避的な変化の中で改めてチャンスを与えることができる社会というのは,それは相当立派な社会だと思いますけれども,そういう社会はどういう視点で少し問題を整とんしなければいけないのかということに関心を持っております。
 たまたまこの考える会のメンバーに選んでいただきましたので,そうしたことを考える機会,またそうした視点から何か発言することができればというふうに思っております。
○野沢座長 では,引き続き一回り簡単に自己紹介を兼ねてお考えになっていることも併せて御発言いただければと思いますが,金平さんの方から一回り,あいうえお順でございますけれども,よろしくお願いしたいと思います。
○金平座長代理 私と更生保護とのかかわりをお話しいたします。約15年ほど前に私は約4年半,恩赦の仕事をさせていただきました。新しい公務のため,途中で恩赦の委員をやめることになりました。ここ10年ほどは,更生保護女性会の会長をしております。私,自称更生保護ボランティアを称しております。先ほど保護司さんもボランティアというお話がございましたが,さらに女性会と申しますのは女性たちで構成しておりますが,全くのボランティアでございます。全国的組織を持っておりまして,会員は20万おります。昭和24年にこの法律ができて以来,女性たちは更生保護の協力者という形でいろいろな仕事を頼まれたようでございます。
 今は時代が変わりましたけれども,やはり協力者であるということには,そういう位置付けには変わっていないというふうに思っております。これについてもいろいろとございますが,そういう更生保護とのかかわりの中で私が更生保護のことを何か一言二言で言うというのも大変難しいのですが,更生保護というのはとにかく人間のよみがえりというふうなものを助けるということで,目的が非常に崇高で,その仕事に携わっていらっしゃる方たちというのが私から見ると保護観察官しかりですが,大変誇りを持ち,熱意を持ってこの仕事をやっていらっしゃるように思います。
 更生保護を支えているボランティアも,これは法律以前からやはり民間の支援者があったわけでございますけれども,これまた非常に熱意を持ってやってきたと思います。犯罪を犯した人が,要するに前科を持った人たちが社会の中になかなか受け入れられないということに対する厳しさ,そこから人々の善意というもので始まり,民間のボランティアが官と一緒に協働するという制度であったかと思います。非常にその人たちは善意である。しかも,ひめやかにこの更生保護というふうなものが行われてきた。だから,社会的には,余り更生保護ということについて知られていないのでございます。私自身が更生保護ボランティアをしていると申しましても,人々はそれはどんなボランティアなのか,更生保護がどういうことをしているのか,そういうことはなかなか分かってもらえないというのが現状かと思います。
 こういう経歴の中で今考えていることは,非常に善意の方がやっていらっしゃるだけに,余り制度を批判なさらないで来ているように思います。自分たちが一生懸命やればいいというお考えがあって,先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども,制度とか外側の仕組みの方を責めるよりも,もっと私が頑張らなくてはいけないと,こういうふうな感じがおありになって,この善意が非常に厳しい言い方をすれば制度を硬直化させたようなところもあるように思います。
 それで,私はこの領域から社会への発信が少なかったというふうなことをどうしても指摘せざるを得ません。したがいまして,この制度というのは機能しなかったのではないんですが,もっと多くの方々の中に発信され,そして多くの方の協力が得られていればもう少し違った発展というんでしょうか,協力体制もできていたんではないかなと思います。
 もう一つだけ申し上げますと,あと官民協働ということがこの世界ではよく言われる言葉でございます。阪神・淡路大震災以来,ボランティアとかNPOが非常にいろいろな分野で活動しておりまして,官民協働の必要性というのがよく言われます。考えてみると更生保護というのはボランティアとの官民協働の草分けじゃないかなというふうに思っています。だけど,私は少し官が民に頼り過ぎているというふうな点もあるように思っております。この内容につきましてはまた後ほどお話しいたしますが,とりあえず今思っていることを申し上げました。
○清原委員 東京都三鷹市長の清原慶子でございます。私は,2003年,平成15年4月30日から市長を務めておりますけれども,その前は大学の教員でございまして,専門は情報政策論あるいは情報社会論ということで,メディアが私たちの暮らしにあるいは社会に与える影響について利用者の立場に立った実証的な研究,それを踏まえた政策を研究するのが専門でございました。ただ,私自身が30年以上前から三鷹市民として市民参加と協働の取組を行政とともにしておりましたので,そうしたことがありまして思いがけないことですが,一昨年の4月に市長になることになりました。
 この間,私は研究者のときに法務省の人権擁護推進審議会の委員を1999年,平成11年から2年間させていただき,その後,司法制度改革推進本部の裁判員制度刑事検討会と公的弁護の検討会の委員をさせていただきました。ただ,法律に関しては全くの素人の立場から意見を申し述べさせていただいてまいりました。今回,この更生保護のあり方を考える有識者会議に対して参加をという声がかかりましたが,更生保護につきましてもいわゆる専門家ではございませんけれども,従来の法務省や司法制度改革検討の中でいわゆる普通の国民・市民感覚から言わせていただくことも委員の1人としては役に立つのではないかということを経験していましたので,お引き受けをさせていただきました。
 私は市長になりましたので,この更生保護のお仕事というのが大変重要な仕事として加わりました。ですから,幾つかその中から申し上げたいと思いますが,まず第一点は,私は社会を明るくする運動の三鷹市の実施委員長でございまして,7月は特に強調月間でございます。犯罪を犯してしまった方が二度と起こさないように,非行に走った青少年が二度と非行に走らないように,そうした地域づくりを進める法務省主唱の運動でございますが,この強調月間にこの更生保護のあり方を考える有識者会議がスタートしたというのは,私は市長としては大変象徴的で意義深いととらえております。
 社会を明るくする運動の実施委員長の3年目を迎えまして,少し工夫をいたしました。市長が実施委員長ではございますが,実質的には保護司会の分区長さんにリーダーをお願いして青少年委員でありますとか,補導連絡会の委員でありますとか,あるいは更生保護女性会,さらにはPTA,学校長,本当に幅広い皆さんの御協力によってこの運動をさせていただきましたが,一昨年初めて市長になったときは,ほとんど反応がなく,何となく形式的に7月やっているというような感じがいたしましてとても残念に思いました。
 そこで問題提起をいたしまして,去年から少しずつ変え,今年はちょうど都議会議員選挙と重なりましたので7月1日のスタートを遅めまして,7月9日に駅頭に立って説明もしながら啓発活動をさせていただきましたが,参加する方も増えましたし,それにこたえて反応してくださる市民の方も増えました。私は,この間の更生保護のあり方を考える有識者会議が立ち上がらなければならないようなメディアの報道であるとか,社会の問題認識は改めていい意味で更生保護に関する社会的な関心を高めることになっていると思いまして,私はこのタイミングというのを逃しては保護局の皆様がかねてから認識されていた問題の改革は本当に進まないのではないかと思っておりまして,南野法務大臣がこの時期に決断されたというのは,自治体で日々このような問題で悩んでいる者としては大変貴重な御決断であるというふうに思います。
 その中から三点ぐらい申し上げます。一点目は,私はこういうことでございますから,保護司の皆様と密接な関係を持ち,先月までの2年間は北多摩保護観察協会の会長という役割も務めておりましたけれども,大変感じましたのは金平委員もおっしゃいましたように,改めて保護司の方の熱意,善意だけではこの更生保護は成り立たない,保護観察は成り立たない。いま一度,保護観察の専門性ということについて,やはり明確に示していかなければ犯罪の多様性あるいは年少化といいましょうか,複雑化といいましょうか,巧妙化といいましょうか,そういうことには対応できないのではないかというような感じを強めております。したがいまして,この保護観察の仕事に携わる専門家の方の専門性の内容についてしっかりと考えるとともに,その育成や研修のあり方についても提案することが必要ではないかと。
 そして二点目は,その上で私はこの保護観察,更生保護の分野でかねてより官民協働,協働という言葉を使われているのは大変意義深く,自治体では協働という言葉なくして今,公の仕事は成り立ちません。三鷹市もそうした取組を大いに進めておりますけれども,そのときに公の立場,あえて官と言わずに公と言いますが,公の立場と民の立場,あるいは役割と責務,そのあたりを明確にしませんと協働は成り立ちません。対等ではございますが,やはり責任の取り方につきまして一定の明確なところがありませんと,保護司さんの希望者は増えはしないだろうと思います。
 しかし,なさった方は皆さん大変達成感もあり,やりがいがあるとおっしゃっていますので,公募制も含めた取組が例示されておりますことは有効なことだろうと思います。
 三点目に,私は地域で犯罪を犯した人のみならず,被害者の方ともかかわっております。被害者の方と直接お会いする中で,被害者の方の苦しみを共有させていただきますと,自分に,あるいは自分の家族に加害した人と共存することの苦しみを理解せざるを得ません。あえて今,同じ地域で社会復帰をしていただきながら,しかし被害者と加害者がどう共に進んでいくのかと,こういう重い課題に直面しておりますので,このあたりの方向性についてこの会議でも議論する機会が与えられれば幸いだと思います。
 いろいろありますが,以上三点,述べさせていただきます。
○野沢座長 大事な今,御提言をいただいておりますので,これは別途また改めて一つ大きなテーマとして取り上げていただいたらと思っております。大変恐縮ですが,一人2,3分ずつでひとつよろしくお願いします。

(笑声)
○佐伯委員
 刑法を研究しております佐伯と申します。この問題については,刑事政策の講義を担当した際に,更生保護についても勉強したくらいで,特に深く研究したことはございません。その意味では,今日挙げていただきました検討事項の中では,刑法との関連が深い第1の問題に特に興味を持っております。
 更生保護の制度は,犯罪者や非行少年の社会復帰のための制度なわけですから,その制度を考える上では社会復帰にとって有効かという点が最も重要ですが,同時に,犯罪者や非行少年の自由を制限する制度でもあるので,その法的性質や権利保障の検討も必要ではないかと思っております。また検討の際に議論に加わらせていただきたいと思います。
○佐藤委員 佐藤でございます。昨年の8月に警察庁長官を退官いたしまして,現在は警察共済組合でもう一つの政治的,社会的な課題であります年金と社会医療保険の給付に携わっておりまして,そちらで苦しんでおりますけれども,この度今一つの大きなテーマをいただいて悩んでいるところであります。
 私としては,犯罪を検挙するということに全力を挙げるのは当然として,加えて犯罪を抑止するということに地道に取り組んできた一人として,この保護の問題にスポットライトが当たったということは大変喜ばしいことだと思っております。
 しかし,一方で20年ばかり捜査に携わってきた,そういう一人として見ましたときに,保護司の皆さん方を始め,保護の現状をかいま見,あるいは仄聞をしてきたことにかんがみますと,このテーマはおいそれとはいかないなと痛感する,そういうテーマでもございます。
 と申しますのは,果たしてどこまで要求すべきなのかと。先ほどちょっと御質問申し上げましたけれども,確かに犯罪を防止するということまでを期待されてはいるでしょうけれども,この制度の下で果たしてどこまで求め得るのかという疑問なしといたしません。それほど理念と現状の乖離している世界ではなかろうかと痛感しておりますので,いろいろ懐疑的なことを申し上げるかもしれませんけれども,御容赦をいただきたいと存じます。
 以上でございます。
○瀬川委員 瀬川でございます。私は,刑事政策あるいは犯罪学を特に研究しているところでございます。そういう立場から見ますと,更生保護,すなわち社会内で犯罪者を処遇することの重要性というのは日ごろ極めて痛感しているところでございます。
 よく刑務所が「最後の砦」といいますけれども,そうではなくて,その後ろにまだ更生保護という制度がある。言ってみれば,社会内での処遇は犯罪者を総仕上げするというところでありまして,そういう点でこの制度の重要性というのは強調してもし過ぎることないというふうに考えております。
 それから,最近私が刑事立法に携わったものとしては,行刑改革会議があります。何とか監獄法の改正が100年ぶりにでき,その点は大変喜ばしいと思いました。しかし,同時にそこで感じたことは,刑務所から出た人のアフターケアの問題ですね。この問題の重要性というか,難しさというものを痛感しておりますし,この点の早急な改革というのは必要だというふうに思います。
 少し考えているところを三点ばかり申し上げます。まず更生保護とか社会内処遇の場面で使われる言葉が極めて分かりにくいものが多いということです。法律も犯罪者予防更生法と書いてあるんですけれども,一般の人は恐らく何のことか分からない。犯罪者を予防するのか更生するのか,どこにどのようにつながっていくのか分からない言葉がもう50何年使われているということでございます。
 それから,更生保護という言葉も非常に分かりにくい言葉で,更生というのは何の更生なのか,保護というのは何の保護なのかということが非常に分かりにくいことでございまして,我々は講義などでは社会内処遇という言葉を使います。若干あいまいになるかも分かりませんけれども,今回の会議につきましても,あるいは提言の場面でもそうなんですけれども,一般市民に分かりやすい言葉をできるだけ使うべきではないかと思います。行刑改革の提言もそういうことに気を付けましたけれども,一般の人に分かりやすく,また市民の方たちに協力してもらえるような言葉遣いをすべきじゃないかというふうに思っています。
 それから二番目には,予算的な裏付けのない改革は意味がないんじゃないかと考えております。最終的にはやはり更生保護体制といいますか,社会内処遇体制の充実・強化につなげなければ提言というのは意味がないと考えていますので,予算的に裏付けのある提言になればいいというふうに考えているところでございます。
 それから,最後に事務当局へのお願いでもあるのですけれども,できるだけ事実あるいは数値を明らかにする,情報を開示するという中で議論を進めていただきたい。とかく社会内処遇という場面では一般市民への不安感を募ってはいけないという言い方をされたり,あるいは,プライバシーや個人情報という問題がありますのでなかなかオープンな議論はしにくい場面ではあるんですけれども,提言をまとめる際には是非そういう様々な情報を明らかにして,その中でオープンで公平な議論をしたいというふうに考えています。
 以上でございます。
○野沢座長 ありがとうございました。
 私から一言だけ立場上申し上げますが,法務省におりましたときに司法制度改革に取り組みまして,分かりやすい国民に身近な司法ということでまいりましたが,この更生保護の世界についてはなかなかそこまで手が及ばなかったんです。けれども,何としても立ち直り,復帰可能な社会ということがこれから一番大事だということで保護司連盟の顧問を拝命しておりますけれども,今回の議論を通しまして多少でもこの世界の前進に,そしてこれまで長いこと親しんできた制度そのものも見直しができれば有り難いと思っております。
 ちなみに,行刑改革会議では,刑務所における処遇について大変貴重な提言をいただいたことが100年来続いてきた監獄法の改正という形で実を結び前進できたことを感謝しておりますが,そういうことにちなみまして先生方の忌憚のない御意見をいただければ幸いと思っております。
 以上でございます。
○堀野委員 先ほどはこの会議の存在意義について若干皮肉っぽい御質問をしまして,おわびいたします。私自身は更生保護の問題については,自分たちが現場でやっている刑事裁判の結果を踏まえて非常に強い関心を持っております。最近も私はある刑事事件で2人の保護観察対象者,すなわち元被告人を抱えております。1人は覚せい剤使用罪の女性ですが,幸いにして実刑ではなくて保護観察付の執行猶予を得て,現在2年目を迎え,いい女性の保護司さんに出会って非常によかったと,保護司さんの活動についてその人自身は極めてなじんでおります。
 それから,もう1件は乳児虐待で5年間の執行猶予,保護観察付ということですが,保護司さんに深く関与してもらわなければならないという状況に今置かれております。この裁判では,最終的に裁判官が環境調整に関する鑑定を採用してくださいまして,そして家庭裁判所の調査官出身者などのグループの方の鑑定を得まして,刑務所も一つの選択肢ではあり得るが,この被告人の場合は保護観察が必要だという鑑定意見が出されました。
 ただし,保護司さんがどれだけ具体的にこの人の生活について社会に溶け込んでいける人格形成に資することができるだろうかということについては疑問があるとも述べています。というのは,現在の保護観察制度の中で,ある1人の人について例えば5年間なり3年間なり,その人の更生の長期的プログラムというのを個々の保護司さんがお持ちであるのかどうか,あるいは更生のプログラムを持てるように保護観察官あるいは保護観察所の方で十分に援助していける体制になっているのかどうか。
 つまり,たくさんの対象者を抱え,月2回の面接と月1回の経過報告書の提出を行うという,これは民に頼っているということの一つの大きな限界だろうと思いますけれども,私自身も非常に心配するところですけれども,その鑑定意見の中でもそのような心配は述べられました。判決は幸いにして,幸いにしてと言えるかどうか実刑ではなくて,自分の虐待した子供に対する最高の責任の取り方としてやはりきちんと育てること,自分の人格形成をやることという課題を課された上での執行猶予でした。この人たちと保護観察制度とのかかわり合いの仕方ということについて私自身もこの制度がよりよく機能するために抜本的な改革を遂げられるように,自分たちの経験も踏まえつつ,少しでも役に立てればということで具体的な現場の声等についてはこの会議でいろいろお届けしたいなというふうに考えております。
 以上です。
○本江委員 本江でございます。長いこと検事をやっておりましたが,4年前に検事を辞めまして,現在は民事関係の公証人という仕事をやっております。傍ら千葉大学の方でいわゆる法科大学院の刑事訴訟法という科目を担当してやっております。そのほかに,千葉大学の中で医学部と教育学部,法経学部合わせていわゆる精神障害者による犯罪の研究という,医学との接点の研究会を立ち上げ,その研究も続けてやっております。
 現状はそういうことですが,検事をやっておりましたときに,平成9年7月ごろから2年間この法務省の保護局長をやらせていただきました。その間更生保護については随分いろいろ考えさせられましたし,また保護司さんを始め,更生保護関係者の方々ともたくさんお会いいたしました。
 そういう中で,当時つくづく思ったのは,更生保護というのは要するに刑事司法の機関の一環であると。警察から始まって検察,裁判,そして刑務所の矯正,そして最後に保護という五つの大きな刑事司法の機関のしんがりを受け持つ機関であって,この刑事司法というのは本当は国の仕事だという認識を非常に強く持ちました。それにしては余りにも保護観察官の数は貧弱だし,予算も当時200億に達しなかった。先ほど見たら今も190何億で余り変わっていない。国が安全を安く買い過ぎているんじゃないかという意識を非常に強く持っておりました。
 そういう中で,最近,先ほどから御報告のあった監禁事件等を見まして,報道機関の方が保護司さんの責任に矛先を向けるような兆候が若干見られたのを見て非常に心痛めておりました。そういう情勢の中で,今回のこの会議が立ち上げられたということで,私はどこまでこの会議が突っ込んだ本質的なところまで議論をしてくださるのか,委員の皆様方の御意見を聞きながらもう一度更生保護について自分の頭で考えてみたいと思っているんですが,先ほど佐藤委員の方からもおっしゃいましたけれども,余りにも問題が大き過ぎる。言ってみれば,現在の更生保護というのは国がほとんど何もしなくて,民でもって更生保護が成り立っていると言ってもいいぐらいの状況であります。こういう状況でいつまで続けるのかなということ,国民はやっぱり安全な社会を求めて,犯罪のない社会を求めて非常に強い要求をしてきている今日,やはり国としてもう少しやるべきことがあるんじゃないかと。
 その中には,私が保護局におりましたときにできなかったことを,いろいろ保護局の方に対しても申し上げなければならないと思っておりますが,そういう意味でこういう国民の関心の高まっている機会にこの会議を是非充実させて一定のしっかりとした結論を出していただいて,国民の中に更生保護というものをアピールしていただければなというような思いでこの会議に参加させていただくことになりました。
 ただ,先ほど申し上げましたように,刑事司法の分野ではなかなかプライバシーの問題等もありますので,事が微妙ですから,その辺も配慮しながらしっかりとした議論を続けていくのにお役に立てればなというように思っております。
 以上です。
○桝井委員 私の方は自己紹介させていただきますと,大分昔になりますけれども,社会部の司法クラブで取材活動をしました。そのころはロッキード事件の関係で,捜査から一審の判決まで5年間法務省あるいは検察,裁判所を取材したわけですが,振り返りまして保護局を含めこの更生保護の問題はほとんど取材したことはなかったなということを思っています。その後,司法制度改革の現在に至るまで5年間ぐらい論説ということで担当してまいりました。しかし,この更生保護問題ということについて,取材をしたことはほとんどなかったなと思います。せいぜい刑務所までだったというふうに思います。
 司法制度改革も法曹人口の拡大あるいは捜査,裁判というところまでが中心になり,その後,刑務所における不祥事件が起きて,そこの改革に至りました。さらに今回もこういう形のものが起きて,一番難しい問題に対応するということになったとつくづく感じます。
 そこで,司法制度改革というと,どうも日本の場合はもう1世紀単位のような長い話になっているわけで,この更生保護の問題は恐らく,今回の改革がほとんど最初で最後の機会になるのではないかというような気持ちで臨むつもりです。先ほども刑事司法の最後のところにまで目が向くような時代にやっとなったとありましたが,不祥事はよくないけれども,そこまで目が向くようになったということを積極的にとらえて,この議論に参加していきたいと思います。
 明治以来,保護司制度という日本独自の制度というものはいろいろな形で問題があるようですが,歴史を含めて現状をよく知り,まずこれを幹にしながら,どんなふうに時代に合わせ,よくしていけるのかという点を勉強したいなというふうに思います。更生保護問題に光が当たるということは僕らも責任は重いと思いますけれども,法曹三者自体も率直なところ,余り考えてこなかったんじゃないかと思います。専門家である法曹三者すら考えていなかったということがやっぱりあると思います。今回は,非常にいい機会であると思いまして,よくこの制度の現状,それらの問題点,そして最終的には国の予算を含めてどんなふうに改革を実現させるか,を考えたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○野沢座長 ありがとうございました。

6.議事の公開等のあり方について

( 会議の公開のあり方については,議事概要,議事録,資料を法務省ホームページを通じて公開するとともに,会議終了後,事務局長が記者レクを行うことに決定した。)

7.意見交換(今後の進め方等について)

○野沢座長 さて,次の会議が8月23日と予定されておりますが,中身につきましては関係者からのヒアリングあるいは今日御提案がありました議論の整理,あるいは皆さん方から御意見の開陳を引き続きお願いするということですが,関係者からのヒアリングについて事務局で考えた案があると思うので,ちょっとそれを御披露していただきたいと思います。事務局の方から要点を説明してくれませんか。
○事務局 御説明いたします。今座長から御紹介がございましたように,次回は8月23日午後3時から午後6時までこの場所で開催いたします。
 委員の皆様に保護観察の現場サイドの目,あるいは保護観察の周辺の方々の目から見た更生保護の現状をまず知っていただくと,そういう趣旨からのヒアリングと,その後,委員によるフリートーキングを予定しております。また,この有識者会議における検討事項も最終的に次回お定めいただきたいと,このように考えております。
 ヒアリングの予定者につきましては,ただ今候補者のリストを挙げておりますけれども,これは事務局長から御説明いただけますか。
○事務局長 私どもとしましては実際に保護観察に当たっております者,あるいはその経験者,いわば内側から更生保護について語る人と,いわば外側から保護観察を見る人として,保護観察の対象者であった者,協力雇用主,あるいは特に少年関係なんですが,警察の関係者の方や少年補導員の経験のある方,こういう方々を考えております。
 次回をヒアリングとフリートーキング,意見交換として時間的なことを考えますと,2時間程度ヒアリングに充てるといたしますと,大体1人20分で5名ぐらいの方が適当かなというふうに思います。もしそれでよろしいということであれば,これから交渉いたしましてこの中から5名の方にお願いしたいと考えております。
○野沢座長 このほかにまだこういう人の意見を聞いたらどうかという御希望,御要望があろうかと思うんですが,ありましたら是非ひとつ挙げていただいて,今回もし間に合わなければ,次回でもよろしいですね。
○事務局長 はい。
○野沢座長 私から一つお願いしたいのは,保護司の方々を1人か2人呼ぶというのも大事ですが,保護司連盟なり保護司会なりの代表的な方々の御意見も聞いてみたらいかがかと思うんですが。これはひとつ是非予定に加えていただければと思います。
○本江委員 大変結構なことだと思うんですが,5名も呼ぶと恐らく時間が全部つぶれてしまうんじゃないかなと。だから4名ぐらいにして,最初のうちはできるだけ議論をする時間も取っていただいた方がいいのではないかなという気がするんですが。
○野沢座長 3時間あるわけですか。そのうち2時間がヒアリング,あと1時間がフリートーキングですね。それを個別にやるか,全体をまとめてやるかということもありますね,運営上。
○本江委員 5名になりますと,ヒアリングだけで終わってしまいませんか。
○事務局長 やり方としましては,毎回そのテーマに応じたヒアリングを行うという方法もあろうかと思いますけれども,私どもが5名というふうに申し上げましたのは,最初にいろいろな方からお話を聞いていただいて,更生保護全体のイメージをつかんでいただいた上で,まず全体について意見交換を,それから個別のテーマに進んでいっていただければいいのかなというふうに考えたわけでございます。もしそこでまたヒアリングが必要であれば,更に追加するということも十分あり得るかと思いますが。
○本江委員 質問時間は。
○事務局長 例えば1人20分ぐらいだと考えれば,10分か15分最初にお話していただいて,それに対する質疑応答の時間を5分なり10分設けるということでいかがかと思いますが。
○桝井委員 人数が多いから,例えば要点は書面にしたものを事前に読むなりして絞ってやらないと,時間がかかり過ぎませんか。
○野沢座長 事務局と相談ですが,おいでいただく方にできればレジュメか何か,言いたいことをとにかく書きつらねてきていただいて,ここでは重点的にそこを補完するなり説明するなりしていただくという,そうした方が効果が上がるんじゃないかと思いますので,また御相談させてください。
○堀野委員 私は40年間弁護士をやっているんですけれども,まだ具体的に保護司さんという人に会ったことがないんですよね。ですから,恐らく初歩的な質問をいろいろするかも分からない。5分か10分の質疑だとほとんど分からないまま過ぎてしまうという可能性もありますので,できれば,例えば保護司さんなら保護司さんでじっくり聴く時間があった方がいいのかなという感じがするんですが。書面ももちろんいいかも分かりませんし,何かいい本があるというふうにも聞いていますけれども,もう少し丁寧にヒアリングした方がいいのかなという感じがします。
○瀬川委員 我々が聴きたいのは先ほどどなたかおっしゃったように,建前ではなくて,むしろ保護司さんが実感としているというか,非常に御苦労されている現実を是非話していただきたいと思うんです。つまり,何か美的なことを聴きたいのではなくて,むしろこういう場で非常に困難があるとか,こういうところで非常に苦労されてどうしようもない場面とか,あるいは法制上,デッドロックに陥っている点とか,そういうことを聴きたいのです。日ごろの更生保護関係者の方たちの本音のところを率直に聴きたいと思っています。
○野沢座長 そのこととちょっと関連するんですが,この会議はみんな法務省か検察でやることになっていますが,例えば現場の保護司さんの集まりに我々が出向いて行って,現場で話を聴くというようなことは考えられないですか。それは回数を増やさないとちょっと難しいですか。
○事務局長 回数もですが,10人の委員の皆様全員がそろう日程を調整するのがまず非常に困難です。例えば更生保護施設なども見学していただきたいんでございますけれども,10人そろってということはほとんど不可能ですので,もし今座長がおっしゃられたような点について御希望があるとすれば,そういう日を何回かセットして,その中の好きな日に行っていただくというようなことであれば十分可能でございます。
○野沢座長 ちょっと工夫してみていただけませんか。具体的にはまた御相談ということで。どうでしょう,今言った更生保護施設の見学をするとか,あるいは地方委員会の先生方,これは入っているとは思いますが,そうしたところの御意見も聴いて,会議とは別に加えていただくことをお許しいただいて,できれば現場へ行きたいなと思うんですが。確か行刑改革会議のときも何か所か,外国まで出向かれて見学されたようですけれども,その辺よろしくお願いいたしたいと思います。
 以上でよろしゅうございましょうか。
 それでは,本日の会議はこれにて終了いたしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

午後5時21分 閉会