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平成12年改正少年法に関する意見交換会(第3回)議事録

第1  日時

平成18年11月27日(月)午後1時32分から午後4時

第2  場所

最高検察庁会議室

第3  出席者(敬称略,五十音順)

甲斐 行夫(法務省刑事局刑事課長)
川出 敏裕(東京大学教授)
河原 俊也(最高裁判所家庭局第二課長)
久木元 伸(法務省刑事局参事官)
佐伯 仁志(東京大学教授)
武 るり子(少年犯罪被害当事者の会・代表)
武内 大徳(弁護士)
椿 百合子(法務省矯正局成人矯正課補佐官)
松尾 浩也(法務省特別顧問)
松村  徹(最高裁判所家庭局第一課長)
三浦  守(法務省大臣官房審議官)
望月 廣子((社)被害者支援都民センター・相談支援室長)
安永 健次(法務省刑事局付)
山口 孝志(法務省矯正局少年矯正課補佐官)
山崎 健一(弁護士)

第4  配付資料

【法務省矯正局配付】
1  矯正処遇の充実【PDF】
2  少年院における重大事犯少年に対する教育【PDF】
【望月氏配付】
3  平成12年改正少年法に関する意見【PDF】
【武氏配付】
4  「犯罪被害者等基本計画」施策についての意見書【PDF】

第5  議題

被害者団体からの意見表明

第6 議事

● 甲斐 それでは,第3回の意見交換会を始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 前回の会議で宿題と申しますか,御議論になったところで,少年刑務所,それから少年院,それぞれの処遇の実情についてお尋ねがございました。本日は矯正局から御出席をいただいておりますので,最初にそれぞれの点について御説明いただきたいと思います。
 それでは,まず最初に成人矯正課の椿補佐官からお願いします。
● 椿 成人矯正課の椿でございます。よろしくお願いします。
 刑務所における少年受刑者の処遇状況についてですが,本年5月から監獄法が改正になりまして,新しい法律が施行されております。まず最初に法改正以前の状況から御説明したいと思います。
 少年につきましては,原則として少年刑務所に収容いたしまして,監獄法改正以前の刑務所におきましては,成人一般が作業中心の処遇の中で,少年受刑者につきましては,それぞれ個々の問題性を十分に見極めまして,改善更生と円滑な社会復帰に向けた効果的な処遇を行うという基本的な考え方に基づいて指導をしてまいりました。
 具体的には,まず処遇の個別化といたしまして,犯罪行為に至った経緯ですとか,その問題性というものを分析して明確にし,個々の少年受刑者の特性に応じました個別的な処遇計画を作成して,それに基づいた処遇を行ってまいりました。
 処遇の個別化のほかに,処遇内容,方法の多様化にも努めてまいりまして,少年受刑者の特性を考慮しまして,個別担任制によります面接,日記指導等の個別指導,あるいは被害者のあった事件の場合は,その置かれた状況や心情,痛みを理解させ罪障感の覚せいを図る指導を行うなど,できるだけの多様化を図ってまいったところです。
 本年5月に施行されました刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の下ではどのような状況にあるかというのを,資料をお配りしておりますので,そちらを御覧ください。
 「矯正処遇の充実(改善指導を中心として)」と題しましたペーパーですけれども,こちらにありますように,新しい法律のもとでは,作業のほかに改善指導や教科指導についても義務づけにより実施することとなりましたので,少年受刑者に対しましても改善指導,教科指導等を義務づけにより実施しております。こちらにPlan,Do,Seeとありますが,これは法改正以前から少年受刑者については行ってきたところでもありますけれども,刑務所の受刑者全般に関しまして,入ってきたときに処遇調査を実施し,それから個別的な処遇の計画である処遇要領を作成し,その後に刑執行開始時指導で受刑生活や改善への動機づけを高める指導を行いまして,その上で矯正処遇,作業,改善指導,教科指導等を行うという流れになっております。
 改善指導の中身としましては,受刑者に犯罪の責任を自覚させまして,社会生活に適応するのに必要な知識や生活態度を習得させるための指導を行うこととしております。特別改善指導としては,被害者の方の状況や心情を理解した上で,その責任を自覚し,被害者やその家族の方等への謝罪などを具体的に考えさせるための被害者の視点を取り入れた教育,あるいは,受刑者の問題性に焦点を当てまして,薬物依存離脱指導,あるいは性犯罪再犯防止指導,こういった指導を実施しております。これらは全受刑者について,刑務所が全般的に改善のための指導を行う体制になったということになります。
 こういった全般的な教育的な環境づくりにある中で,少年受刑者については,更に他の受刑者に比べますと個別的できめ細かな処遇計画を立てること,個別担任制をとること,それから教科指導や職業訓練など,社会適応力を高めたり,改善指導の効果を上げるための基礎的な知識を付与したりというようなことを行っております。さらに,家族等との関係の維持・改善,そういった働きかけも積極的に実施することにしております。
 こういった点が現在の少年受刑者の処遇でございます。以上です。
● 甲斐 では少年矯正課の方から続けてお願いします。
● 山口 少年矯正課の山口と申します。よろしくお願いいたします。
 私の方から,少年院の教育の実情につきまして,特に,この会の趣旨に沿いまして,重大事件を起こして少年院に送致された少年の教育ということに的を絞って説明させていただきます。
 お手元に1枚ものの資料がありますので,これを見ながら説明させていただきます。
 少年院におきましては,平成9年に起きました神戸市連続児童殺傷事件を契機としまして,重大事件を起こした少年を専門的に処遇する課程,これを我々はG3と呼んでおりますが,そういう課程を設けました。このG3におきまして専門的な処遇を実施しております。
 また,少年院の収容期間につきまして,それまで原則2年以内としていた運用がありますが,これを改めまして,長期間の処遇が必要な場合につきましては,必要な手続を経て収容期間を定めることができるようになりました。先ほど申しましたG3は原則2年を超える収容期間が設定されるわけですが,このG3以外にも,必要があれば2年を超える収容期間が設定されることになります。
 この関係で,長期の収容期間が設定される事例がかなり増加してまいりました。資料の一番下に収容状況が書いてありますが,G3に編入された新収容少年は大体毎年数名ぐらいですが,在院期間が721日以上の出院者,721日というのはちょっと中途半端な数字ですが,これは法務省が出している統計の関係でこういう数字が出ており,2年以上と言いかえても差し支えがないと思いますが,こういう2年以上の長期の在院をしたという少年が年々増加しておりまして,平成17年には64名となっております。
 では,こういう重大事件を起こした少年に対して,少年院ではどういう処遇をしているかを説明します。
 まず,少年院では,個々の少年の教育必要性に応じて個別的な処遇計画を策定して処遇に当たっており,これは全少年共通していることですが,どうしても重大事件を起こした少年というのは資質面で大きな問題を抱えていますので,処遇計画を策定するに当たっては,少年鑑別所の鑑別技官を招いて検討会を開いて,綿密な計画を立てております。
 そして,具体的な処遇内容につきまして,大きく4点を挙げさせていただきました。罪障感の覚せい,生命尊重教育,被害者の視点を取り入れた教育,保護関係調整指導でございます。これらはG3だけではなく,重大事件を起こした少年に共通して当てはまる処遇内容です。
 まず,罪障感の覚せいにつきましては,課題作文とか,内省指導とか,写真にあるようなグループ討議等の指導を通しまして,自分が起こした非行の重大性というものを認識させます。これが少年院の教育の基本といっても差し支えありません。
 次に生命尊重教育です。重大事件といいましてもいろいろありますが,やはり生命犯が多くなるだろうということで,命の大切さを認識させる指導に力を入れております。写真は犬の飼育をしている場面ですが,最近では更生支援パートナードッグ計画というものに予算もつきまして,動物を飼育している少年もかなり増加しております。
 次に被害者の視点を取り入れた教育ですが,これは重大事件にかかわらず,全少年に対して実施している教育内容です。写真は,「あひる一会」の方の講演ですけれども,このように被害者の方の生の声を直接少年たちに伝えるというゲストスピーカーによる講話制度とか,役割交換書簡法という技法を用いまして,被害者の方にいわゆる疑似の謝罪の手紙を書かせる指導を行っています。また,更に被害者の方の命日に内省等の指導を行っています。
 最後に保護関係調整指導です。現在,少年院では再犯防止のため就労支援等の働きかけを強化しておりますが,こういう指導はもちろんのこと,やはり重大事件になりますと帰住先の厳しい社会感情というようなこともありますので,早いうちから保護関係機関との検討会を開催して帰住調整に当たっております。
 以上,簡単ではありますが,説明を終了させていただきます。
● 甲斐 ありがとうございました。
 ただ今少年刑務所と少年院の処遇の状況について説明がありましたけれども,これらについて何か御質問等ございましたら,この機会にどうぞお願いいたします。
● 川出 それぞれ1点ずつ質問があります。まず少年刑務所での処遇についてですが,成人の受刑者と比較した場合に,少年の受刑者については,刑務作業と,それ以外の改善指導,教科指導の割合を変えておられるのでしょうか。
 それから,少年院の方ですけれども,御説明によりますと,ある少年がG3の課程に入るかどうかということと,2年を超える収容期間が設定されるかということとは別の問題ということになると思うのですが,このうち,G3に当たる少年についての特別の処遇というのは,具体的にはどういうことをされているのでしょうか。
● 椿 刑務所の場合の作業と改善指導と教科指導の割合というのは特別定めてはおりませんけれども,成人に比べますと,より多くの時間を改善指導に割いております。教科指導にも割いているということです。
● 佐伯 具体的な何か割合とか,資料はございますでしょうか。
● 椿 具体的に実情がどうかといった資料ですと,本日ちょっと手持ちがございません。
● 山口 G3におきましては先ほど説明した主な処遇内容を,特に力を入れて専門的に行っております。例えば生命尊重教育の中に命と心の相談員という,外部の講師の方を招いていろいろ個別面接をしたりする制度がありますが,こういう予算がついているのは,このG3だけとなっております。
● 佐伯 在院期間は医療少年院も含めてのものですか。
● 山口 はい,そうです。医療少年院も含んでおります。
● 佐伯 平成12年以前は医療少年院でも721日を超えるものはなかったということですか。
● 山口 なかったわけではないのですが,非常にまれでありました。平成9年の改正以降は,そういった運用も柔軟に行っております。
● 松尾 刑務所,少年院共通に被害者の視点ということを強調しておられるわけですが,以前と趣が違ってきたのだろうと思いますけれども,大体いつごろから,このように方針が変わったというか,新しいやり方を採用されたのでしょうか。
● 椿 刑務所も少年院もそうですね。被害者の視点を取り入れた教育が必要ではないかということで,平成16年度に。
● 松尾 平成16年。少年院はもう少し早くからですか。
● 椿 研究会を平成16年度に開催しまして,その中で,やはり直接お話を聞くことが非常に効果的ではないかということで,刑務所では平成17年度,昨年度から全庁でゲストスピーカーによる講話の制度を取り入れております。被害者の視点を取り入れた教育というのも,平成16年以前からも,各々の施設でそれぞれ独自に取り組んできたところはございますけれども,全庁的な取組という,本格的な取組は平成17年度からでございます。
● 山口 少年院の方につきましては,平成9年にG3を作ったときに,最初はしょく罪指導という名前で取組を始めたのですが,その後,いろいろ検討して,平成12年ごろから被害者の視点を取り入れた教育という名称に改めて,今,椿補佐が説明したように平成16年の研究会を経て整備を図っているという状況です。
● 甲斐 ほかに御質問等ございますか。
● 山崎 前回,私が,少年刑務所での処遇が,職員の数の問題とかがあってなかなか難しいのではないかということを申し上げたんですけれども,川越の少年刑務所などにも訪問したんですが,全体,千数百名の収容者の中で少年が十数名とかという感じだと思うんですけれども,そこに対する職員の数の割り当てというのが,かなり少年には人手を割かなければいけないので苦しい,厳しい状況ではないかなと思ったので,法改正後に職員数の増加というのはあったのかどうかというのが1点です。
 それと,もう一つは,やはり少年の作業をするスペースとかいうのが決められていますけれども,同じ事件の共犯者などが同じ施設に収容された場合,あるいは,少年受刑者の中でトラブルがあった場合などは,少年も成人の工場に行って一緒に作業をしているという話を聞いたことがあるんですけれども,そのあたり,あるいは川越以外の松本とか水戸とか小規模の刑務所では,必ずしも成人との分離が徹底されていないのではないかという指摘もあるんですが,そのあたりの現状も教えていただければというのが,まず刑務所に対して2点伺いたいと思います。
● 椿 職員数についてですけれども,御案内のように,刑務所人口というのは急激に増加しておりまして,その中でも職員の増員数というのは,他の公務員に比べますと手当てはされているのですが,職員1人当たりの負担率というのは年々増加している状況にございます。ですので,刑務官ですとか,あるいは教育スタッフ,その他のスタッフに限らず負担増が続いているという状況にはあります。そういった中でも刑務所の現場の中では,少年受刑者については特に最大限の努力をして人手を割こうとしているのは実情ですけれども,専門スタッフということでいいますと,法務教官ですね,教育専門官という者がおりますが,この数は今年度,全国で8名増やしております。それから,心理学の専門知識を持ちます心理技官,これも全国で8名を増やしております。合計しまして16名が増えているわけですけれども,これにつきましては,主として性犯罪の再犯防止指導,性犯罪者の処遇プログラム,これを海外の知見にも学びまして,指導時間数の多いプログラムを作成しましたので,この増員されました16名については,主として性犯罪の処遇に携わるという形になっております。この性犯罪ということについて言えば,それ以外に民間から臨床心理士を12名分招く予算措置もされておりまして,性犯罪のところについて言えば,かなりの人的体制が整備されたと言えるかと思います。ただ,なお,まだ整備が必要な部分ではあります。
 それ以外の部分では,はっきりと増えたところはございませんけれども,教科指導に関しまして,教育専門官が配置されていない庁に,外部からお招きするような予算措置もされてはいるところです。ですので,職員数の増加ということは,少年受刑者だけに限ってということではないです。性犯罪に増えた人員がいろいろな研究をしていったり,施設の中で性犯罪の処遇を通じて得たいろいろなノウハウを提供していったりするという意味で,水準向上は図られるかなと思います。
 それから,少年受刑者の処遇環境というお話だったかと思いますけれども,工場について,少年だけで工場を編成することが難しいとか,あるいは少年数が少ないですとか,人間関係とかいろいろな状況もございますので,工場については少年だけの工場に限らず,成人のところの一画に,できるだけ接触しないようにして作業をさせている。職員がよく目配りをして作業をさせているという状況はございます。居室については,成人とははっきりと分画するということは徹底しております。
 以上です。
● 山崎 関連して,前回もちょっと述べたんですが,大阪の寝屋川の事件で判決が詳細な指摘をして,刑務所でもこういう処遇をというのを述べられています。難しいところかと思うんですが,あれが現実に果たして可能なのかということが非常に疑問に思ったんですが,現場の感覚としてはいかがでしょうか。
● 椿 どこまでの処遇を行うかという,その期待されるところがどのあたりにあるかは分かりませんけれども,特に少年受刑者,あるいは重大な事件を犯した少年受刑者が入ってきた場合には,刑務所でそういった専門スタッフたちがチームを作って,どういう処遇を行っていくかということの計画を立てますので,その中でいろいろ資質上の問題に焦点を当てた処遇について検討して実施していくということになろうと思います。スタッフとしましては教育専門官もおりますし,川越ですと調査センターも併設しており,心理技官も多数おりますので,いろいろなチームで話し合って処遇を個別的に展開するということになろうかと思います。
● 山崎 少年院に関してもよろしいですか。2点ですけれども,一つは,処遇期間が2年,3年という形で延びていった場合に,従前,一般の長期で予定されていた各新入期ですとか中間期ですとか,それを2倍,3倍にしているようなイメージなのか。あるいは,長期化したことによって独自のプログラムを新たに作られているのか。そこを1点お聞きしたいと思っています。
 もう一つは,処遇期間が長期化している少年が増えているということで,全体の収容率がどのぐらいなのかという現状もお聞かせいただければと思います。
● 山口 まず1点目です。少年院では,先ほど個別的な処遇計画を策定しているという説明をいたしましたが,その中で新入,中間,出院準備という3つの期を分けて処遇をしております。この枠組みは,これはいわゆる2年を超えるような少年でも変わりはありません。ただ,その中をかなり細分化して,例えば中間期の1期の前期とか,中間期の2期の後期とか細分して処遇を行っています。なるべく細かく分けて少年たちに目標設定をさせやすいような形でやっております。
 具体的な処遇の実情ですが,いろいろな行事というのは,少年院は学校と同じように大体1年サイクルで組んでおります。ですから,例えば3年在院する少年は盆踊りに3回参加しますが,参加形態としては変わることはありません。ただ,本人に対する指導方法ということでは,1年目はどちらかというとただ普通に参加してるだけですが,2年目になれば,かなり企画の部分を任せて,自分でいろいろアイデアを出して参加させたりします。このように視点を少しずつ変えて指導をしていく配慮をしております。
 2点目について,長期化に伴って少年院の収容率はどうかということですが,現在,少年院の収容率というのは若干低下しております。少年人口が少なくなったからなのかもしれませんが,全体で大体7割くらいです。収容期間が長期化したからといって,収容率が格段に上がったということはございません。
● 甲斐 ほかに何かございませんか。
● 武 ゲストスピーカーによる講話とあるんですけれども,私は,遺族の人が話をしに行くというのも聞いたことがあるんですね。これはゲストスピーカーの方から申し入れるのか,それともそちらの方から選ばれて頼むのか,そして,やはり遺族の人が行くのが多いのか,それをまず聞きたいのと,私は,加害者に罪の意識を教えるために被害者の遺族が行かなければいけないというのは,どうしても納得がいかないというか,おかしいと思っているんですね。といいますのは,被害者の権利も何も確立をされていないのに,それなのに遺族にそこに来てもらって話をしてもらうというのは,私は違うような気がしてならないので,そこは申し入れていかれているのか。それを聞いてみたいです。
● 山口 今,ちょっと手元に数字がありませんので,具体的にゲストスピーカーの何件ぐらいが被害者やその遺族の方で,何件ぐらいはそれ以外の方かというのはわかりませんが,被害者やその遺族の方以外にも,例えば大学の相談窓口で相談活動をされている方とか,今日,ちょうど望月先生が来られていますが,望月先生のような,被害者団体等で被害者の支援をされている方等に講話をしていただいております。
 実際に被害者の方から直接話を聞くというのが,一番効果的だとは考えているのですが,これはやはり被害者の方の意向を踏まえないとできない話です。そのためどちらかというと,こちらから働きかけてお願いするというより,いろいろな被害者団体の方から情報をいただいて,あの方ならやっていただけそうだという情報を得て,お願いに上がっております。武先生が言われるように,こちらの方から無理にお願いして,どうしてもやってくださいというようなことはしておりません。
● 武 無理というんじゃないんですけれども,やはり私も一度お電話をいただいたことがありまして,どこの少年院だったか忘れたんですけれども,「どうですか」と言われまして,私は今のように「被害者の権利もまだありません。私は権利がちゃんとなったら行くかもしれないですけれども,今はまだ行きたくないです」と言うと,とてもあっさりと「そうですか」とおっしゃって,何かそれがどうも納得がいかないというか,ものすごく簡単に考えておられるというか,深く考えなければ行くかもしれないわけですよ。でも,私はどうしても遺族の人をたくさん知ってしまったものですから,現状がひど過ぎるのを知っているのでそういうふうに思うんですけれども,何か言われてふっと行ってしまう人もあるなと思って,すごく心配になりまして聞いてみたんです。とてもあっさりでした。
● 山口 対応に失礼があったことについては,おわびいたします。
● 椿 今は職員に対する研修も非常に重要だと考えておりますので,支援者団体の方々等に職員研修にもおいでいただいてということで努力はしてまいっておりますけれども,そういう状況がないように研修もしてまいります。
● 武 職員の方のところだったら行こうと考えたんですけれどもね。少年院の子供たちと言われると,ものすごく考えないといけないことで。また被害者遺族がしんどい思いをさせられているなとか不安になりました。
● 甲斐 よろしゅうございますか。
 それでは,今日の議事の中身に入らせていただきたいと思いますが,本日は,武さんと望月さんから御意見をちょうだいしたいと思いますので,順次お願いしたいと思います。では,よろしくお願いします。
● 望月 よろしくお願いいたします。
 資料をお手元にお配りしてあると思いますので,それを見ながら,私がお話しすることにも耳を傾けていただければと思います。
 まず初めに,被害者と加害者に対する社会の受け皿の余りのアンバランスな状況は,長い間省みられることなく放置されてきたように思います。少年法の改正とか犯罪被害者等基本法の成立など,昨今の法の改正や新法の成立は,このようなひずみのある仕組みを何とかしたいと願ってきた被害者とその関係者の思いが時代の経緯の中で反映されて,形となって現れたものであると確信しております。この少年法の改正の意見交換会では,様々な視点からの検討と点検が行われ,法や制度が行使される場において,だれもが納得できる,より実態に即した運用がなされる可能性が探られなければならないと思っています。
 また,犯罪被害者等基本法の前文にある「国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない」という言葉を念頭に置いて意見の交換がなされることが望ましいと考えています。
 それでは,お配りした資料に基づいて,少し言葉を加えさせていただきます。
 まず,1として少年審判についてなんですが,ここの資料にもありますように,「少年審判の傍聴の可否を含め,犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い,その結論に従った施策を実施する」と,少年法の一部改正の附則第3条に明記されていると思うんですが,それと同時に,犯罪被害者等基本法第3条にも,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられその尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」旨の規定がありますので,犯人が成人であるか少年であるかによって差別されるべきではないと強く思っております。したがって,審判の席には,是非,少年の親族,教員及び被害者等の在席を許すことができる旨を明記していただきたいというふうに思っております。
 1の(2)なんですが,被害者遺族の方の手記をちょっと読ませていただきます。都民センターは自助グループを持っておりまして,これは,その自助グループの一員である,少年事件でお子さんを亡くされた村井さんという方の書いた手記です。

「罪の償いとは,何?」
 平成12年10月14日,見ず知らずの少年4人により,純一は,一瞬にして命を奪われてしまいました。殺された怒りは,いまだに消えることはありません。
 今,民事裁判中ですが,加害者少年らの,「被害者への罪の償いとは,何?」と,私の中では大きな疑問が残りました。
 被害者家族には,加害者少年らの情報は何も入ってきません。子供が殺されたのだから,被害者には,当然知らされると私は思っていました。しかし,現実は違ったのです。
 知りたい部分が知りたい。しかし,私の目の前には法律の厚い壁がありました。事件後2年8か月にしてこのような法律の壁にぶつかったのです。加害少年らを,見事,法律がしっかりと守っていたのには驚きました。思わず私は,息ができないような思いにさらされました。
 すぐに,こんな壁があってはならないと思い,私は,関東地方更生保護委員会の方々に私の気持ちをぶつけたこともありました。
 今,加害者少年らは,遺族の私が知らない間に釈放になっています。こんなこと信じられません。被害者当事者さえも知らせずに,人を平気で殺した少年らをかばい,もう死んでしまった大切な我が子のことは何一つも考えてもらえていません。こんな現実おかしいと思います。間違っていると思います。いまだに,加害者少年らからは,何の謝罪もありません。彼らの様子も事件当時から何ひとつ私達には知らされていないのです。
 少年院を出てきたことさえも知らなかったのです。法律は,未成年者を守るが,被害者に対しては,何の手助けもされない。大切な子供を殺されて,私はこの現実に強い怒りをぶつけたくなりました。
 とっくに,少年院から,でてきているのに,彼らはしらんぷり。これは何?これでは,彼らは本当の意味での償いができていないと私は思います。少年院や,刑務所に入れば,そこで充分罪を償ったと,はき違えているのではないかと,新たな怒りを覚えます。
 人を殺して,罪の償いは,被害者(純一)に対してするものである。決して国にするものではない。法律や,国の為だけではない。これは忘れてはならない。国も,被害者に対して,本当の意味での救済をしてほしい。この大事な部分が忘れられている。法律の中になんらかの形で,被害者救済を組み入れてほしい。そう願っています。
 関東地方更生保護委員会の方々から,お話をお伺いして,私は,加害者少年らは,遺族らに詫びる機会を失っているのではないか?と,とても疑問に残りました。現実,遺族は加害者らが詫びにきても,受け入れることがなかなかできないものです。私自身が気持ち的にそうです。詫びにこられても嫌だし,詫びに来ないのも嫌な,一言では言い表せないものが,複雑に交差しているような気がします。裁判にしても,加害者と,被害者が正面きって向き合う部分が何一つない。加害者少年らは,被害者の現実の苦しみを知らないと思います。これでは,いけないと思いました。遺族からみて,加害者少年らをみるとがっかりするとよく聞きます。
 加害者少年を,自分の考えで行動させ,自分で責任をとらせる。どんな結果であろうと,早い段階で,人間として,自分がしてしまったことを反省する機会を作ることが必要だと思いました。自分がしてしまった現実に立ち向かわせる。結果は分かりません。しかし,どんな結果であろうと自分がしてしまったことに対して心に刻む必要があります。大人の考えで,行動を妨げてはならない。全て自分の責任なのだから。他人を殺してまで加害者少年の未来はある分,当然だと思います。身勝手な行動で,人の命を落としたことは忘れてはいけません。
 我が子純一は,とてもやさしく,誰にでも好かれ,友達も多いほうでした。私の自慢の子でした。
 純一の成長を楽しみに生きてきました。純一には,将来の夢や,希望があり,それに向かって一歩一歩進んでいました。
 こんな純一を亡くし残念でしょうがありません。毎日生きていた頃のように,今も,私の生活の中で純一は生きています。純一がいてからこその自分がいます。純一は私の子供としてなくてはならない存在なのです。
 毎日純一がいないことを我慢して生活しています。純一に会いたいです。
 時々,私は,光ヶ丘の現場に行きます。
 今でも,純一が殺された光が丘の現場には,きれいな花がいつも飾られています。まったく知らない人が長い間,飾ってくださっていたことも分かりました。事件以来,きれいな花が絶えることなく不思議に思っていました。
 「はじめは,ここを通ると足がすくんでしまったが,そのうちに,ここで手を合わせたりしているうちに,仕事が入るようになってきたので,花を飾らせてもらっているのです。」と言われたのです。
 私は,純一は死んでしまったけれど,人の「心」の中で生きてくれていると思い,うれしくなりました。花を飾って下さっている方,いつも困っている私を,親切にささえてくださっている弁護士の先生方,いつも協力をしてくださっている光が丘警察の方々,都民センターの皆様方,事件後知り合った方々,この場をおかり致しまして,お世話になり心よりお礼申し上げます。

以上です。
 この中から,少年犯罪に巻き込まれた被害者遺族が様々な場面で法の壁にぶつかり,持っていき場のない苦しい思いを抱きながら,何とか頑張っている様子が理解していただけたのではないかと思います。特に,被害を受けた直後から極めて情報の少ない状態に置かれ,審判には当事者であるにもかかわらずほとんど関与できないという現実は,被害者にとって納得できる仕組みであるとは言い難いものです。
 都民センターでは,市原交通刑務所で行われている教育的処遇プログラムの一環である受刑者とのグループワークに遺族とともに参加していますが,その中でも,加害者は被害者に対して真実及び事実を語る義務があるというテーマが取り上げられます。大切な家族がなぜ被害に遭ってしまったのか,亡くなるときどんな状況だったのか,どんなに苦しかったのか,どんなに怖かったのか。尽きることのない思いを一生抱えて生きていかなければならないのは想像を絶することです。グループワークの中で被害者の訴えを聞いて,そのことを初めて理解する受刑者もいましたし,真実を語らなければ,どんなに謝罪をしても被害者には通じないことに気がつく受刑者もいました。被害者の人間としての自然な思いがどこかでかなえられるような法律や制度が成立することを心から願っています。支援の体験を通して,それは被害者が被害から回復するためには不可欠なことであると感じています。
 2番の記録の閲覧については,特に強調したいところは,少年審判では被害者が審判に関われる状況が全くありませんので,殊更,やはり無条件で記録の閲覧・謄写が認められるように改正をお願いしたいと思います。
 3番については,読んでいただいて理解していただきたいと思います。
 あと,保護観察の体制の強化についてですが,資料にも示したように,指導・教育を受けた少年にとって一番考慮されなければならないのは,出所後の環境だと思います。可塑性に富む少年だからこそ,少年を迎える家庭や学校や職場などがしっかりした受け皿として機能しなければ,再び非行に走り,犯罪を引き起こすような結果になることも少なくないと思います。危険運転致死罪で服役中の受刑者が「この中にいる間は,もう二度と同じようなことは繰り返さない,遺族に対しても誠実に謝罪の気持ちを表していこうという自分の気持ちにも確信が持てるが,ここを出たときのことを考えると,正直なところ不安を感じる」と語るのを聞いたことがあります。このように,成人した受刑者でさえ出所後の不安を抱えるのであれば,少年の場合には意識することもなく周囲の状況に染まってしまうのではないかと思います。少年の可能性を否定するのではなく,どのように支え,支持していくのかは,少年の出所後にこそ問われるべきものであるように感じます。少年の保護観察にとどまらず,少年を取り巻く環境全般との連携がとれるような仕組みを作っていただけるよう検討をお願いいたします。
 被害者もまた少年の更生を望んではいますが,それ以上に,その更生が本物であるかどうかを確認したいという思いを強く抱いています。自分の犯した罪としっかり向き合うことができたのか,被害者への謝罪の気持ちがあるのか,その後,どのような態度で生活しているのかなど,被害者が加害者について知りたいと思う事柄はたくさんあります。特に出所後の少年についてのその思いは切実であり,出所に伴って感じる不安も小さなものではありません。これは被害者の立場を考えれば極めて自然な思いであり,何らかの形で当然知らされるべきものであるように感じます。このような被害者の思いがすくい上げられることは,少年の更生,再犯防止にも確実につながっていくのではないかと思われます。被害者が少しでも納得できる制度を是非整えていただきたいと思います。
 次に,5番の報道制限規定についてですが,これも読んでいただいて理解していただきたいと思います。個々の事例によってかなり対応が違ってくると思いますけれども,適切で柔軟な対応が是非なされるように,今後の課題として検討をお願いいたします。
 それでは,最後に,これも市原刑務所での体験なんですが,交通事故加害者の場合,事故直後から,被害者の周囲の人々,例えば弁護士であるとか保険会社,勤めていた会社の上司,あるいは家族などによって,加害者が犯した罪に直面しないで済む状況がたくさん作られることが分かりました。事例によっては,加害者が事故直後から出所に至るまで一度も遺族と接触する機会を持たず,被害者や遺族の悲惨な状況を目にすることもなく,損害賠償も保険会社や勤め先の会社にすべて任せて,自分は何もしていないということもあります。そして,それが結果として加害者にとっても決してプラスにはなっていないということも明らかになっています。少年事件の加害者にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。少年の保護・育成ばかりに焦点が当てられると,実感を伴った確かな体験として自分の犯した罪に向き合う作業ができなくなり,楽な安易な道を選択する方法ばかり身につけることになるのではないでしょうか。被害者の存在を知り,被害者の言葉を聞き,被害者の思いを受け取ることで,初めて自分の犯した罪と,そして自分自身と向き合うことができるのだと思います。
 アメリカなどでは,修復的司法の実践形態の一つとして,家族グループ会議,ファミリー・グループ・カンファレンスが実際に行われています。これは,加害少年を取り巻く人々,少年の家族,例えばおじいさんとかおばあさんとか,そういう人も含めて少年の家族,そして被害者とその家族,担任教師,スクールカウンセラー,担当警察官などが一堂に会し,ファシリテーターを中心に,少年と少年の犯した罪にかかわるグループワークを行っていくというものです。実際のビデオを見ましたけれども,少年が戻っていく地域社会を巻き込んだこのような取組は,とても意味があるように感じました。もちろん犯罪は軽微なものでありましたし,日本の社会に適した方法であるかどうか,安易な結論を出すべきではないと思います。それと,また重罪の事例に直ちに応用できるものでもないと思いますが,加害少年を含めた私たちの社会が成熟していくためには,できることから取り組んでいくという姿勢がなければ,何も,何の変化も期待できないと思います。加害少年が,その更生過程のどこかで被害者の存在をしっかり知ることなしには,真の更生はあり得ないと思います。
 以前,私は,ある被害者の「私は,加害者が不幸になることは望んでいません。被害者も憎しみや怒りの感情から解き放たれたいのです」という言葉を聞いたことがあります。被害を受けた直後から,人として守られ,気遣われ,ケアされることのないことの少ない状況の中で,その後の厳しい現実の一歩を踏み出さなくてはならない被害者に対して,これからは加害者や国や社会が被害者のためにできることに取り組んでいかなければならないのではないかと思います。少年法も,その改正や見直しだけで終わることなく,時代に即した血の通った法律になるよう,今後の取組をお願いいたします。
 以上です。
● 甲斐 ありがとうございました。
 では,続いて武さん,お願いします。
● 武 私は,この意見交換に声をかけていただいたことを本当に感謝しています。以前であれば,少年法のことを話し合うにしても,専門家だとか大学の先生,そのかかわる機関の人たちで集まっていたと思うんですね。その中に遺族も入れてもらえるということを本当にありがたく思いますし,社会というか,国の考え方も変わってきたなというのをすごく実感しています。だから大切にしたいと思います。
 私は,今,「あすの会」をやられている岡村先生と,まだ会を始める前にお会いしたことがありました。電話も何遍かいただきましたし,そのきっかけは,私が岡村先生のことを知って手紙を書いて,NHKの人が岡村先生に届けてくれて,それがきっかけでした。先生からお電話をいただくようになったんですが,その会を作る前にお会いしたときに,こんなことをおっしゃいました。「自分が事件に遭って初めて分かった。」って。「こんなに被害者というのは置き去りにされていたんだ。」とおっしゃいました。私はそのとき思いました。もちろんそうだと思いましたが,岡村先生は専門家でした。日弁連の副会長もされるような法律の専門家の方が分からなかったんだなと思ったんですね。それほど,やはりみんな人ごとなんだと,法律にかかわっている人も人ごとだったんだなと思いました。もちろん私もそうでした。でも,私は思ったんです。岡村先生は刑事裁判があったんです。それでもそんなことをおっしゃったんですね。私も思いました。刑事裁判もやってもらえない少年事件はどうなるんだって。もっとひどいというか,置き去りのさらに置き去りをされているということが言いたかったんですが,言えませんでした。「そうですね。」ということで終わったんですが,本当にそうなんです。みんな人ごとなんです。今,先生が一生懸命活動されているお陰で,いろいろな法律も変わっていき影響を与えています。すごいなと思って私は見ています。
 私は思うんです。犯罪被害者の遺族になって,少年犯罪の遺族になって,遺族感情がすごくありました。普通ではないと思います。でも,私は会の代表になりました。普通の主婦が代表になったんですね。遺族感情はありますが,いつもこう思うことにしています。意見を言うときには,自分が事件に遭わなかったときはどう考えるかと反対に考えるようにしているんです。遺族感情はもちろん大切にしたいですけれども,意見を言うときには,やはり気をつけようと思いました。それは,代表にもなったからということもありますし,少年事件のことを大切に考えてもらいたいからなんですね。それを気をつけながら,この10年頑張ってきました。私は思うんです。法律にかかわる方,少年事件にかかわる方も,いつもちょっと想像してほしいんです。もし自分の大切な人がこんな目に遭ったらどうだろうって,一瞬でいいんです。想像していただいて,それで話を聞いていただけたら有り難いです。本当は起きない方が本当にいいんですから。
 私は今日,「WILL」という冊子を持ってきました。昨日一生懸命夜中コピーをとって持ってきました。「WILL」というのは,私たちの会が1年に1回やっている集まりの名前なんですね。「WILL」が始まったときに,いつもビデオというか,子供たちの映像を流すんですね。そのときに流れる言葉があります。それを先に読みたいと思います。
 「WILL」意志・決意・願い・気持ち・遺言などを意味する。私たち少年犯罪被害当事者の会は,未成年の加害者によって子供たちを殺された家族の集まりです。掛け替えのない大切なものを失った私たち。聞いてください,子供たちの遺言,確かな意志,私たちの未来へ伝えていきたい。このメッセージを亡くした子供たちの追悼と社会を変える確かな力にしたい。子供たちをこれ以上被害者にも加害者にもしないために,それが私たちの願いです。それをテロップで流しながら「WILL」を始めます。私たちは1年に1回,こんな思いで集まりをしているんですね。
 なぜ「WILL」を始めたかというと,「WILL」を始めて今年で8回目なんですね。私は会を作って丸9年になります。なぜ私たちが,専業主婦だった私が会を作らなければいけなかったかというと,そのころ,少年犯罪の被害者のことは全く考えられていなかったからです。法律も制度も何も考えてはいませんでした。ほったらかしだったんですね。そして大きな事件が起きます。少年事件でも神戸の事件のように特殊性があったり,もちろん社会的に影響力も強い,そういう事件が起きると,みんな一生懸命考えるんです。少年法はどうだ,被害者はどうなんだ。もちろん加害者のことも言いました。問題はどこにあるんだってすごく言いました。でも,私たちの会に入っている約30家族の人は,地域で普通の事件と扱われる人ばかりなんですね。一つもそんなことも考えてはもらっていないんですね。だから,自分たちで場所を作って話をするしかなかったんです。外国ではありました。あるテレビを見ていて,遺族の人が1年に1回,中には何か月かに1回集まって,遺族の人たちで話をしているんですね。多分そのサポートというのがあるんだと思います。すごいなと思って見ていました。日本は探したんですけれどもありませんでした。だから自分で作るしかなかったんですね。学生たちのボランティアがいたこともあり,助けてもらいながら,今まで8回続けています。
 そうやって,犯罪被害者,私たちのような少年犯罪の被害者は置き去りにされてきたんです。まず私たちが大きな問題と考えているのは,日本は法治国家です。かたき打ちはもちろん許されません。大切な子供を亡くしている遺族ばかりなんですね。かたき打ちがしたいんです。でも我慢をしました。我慢をしなきゃいけないんです。もちろん分かっています。でも,なぜ我慢をしたかというと,私たちに代わってちゃんと国が刑事裁判をして裁いてくれると思ったんです。でも,その刑事裁判も多くの人はしてもらっていないんです。私たちはどうしたらいいんだと尋ねました。「民事裁判を起こしたらいいですよ。」と簡単に言うんです。そんなものではないんですね。私たちは,やはり刑事裁判があるのとないのはものすごく大きく違います。そこで,この「WILL」の中に意見書というのを入れてあります。3月2日に法務省に呼んでいただいたときに書いたものです。それを見ながら話をしたいと思います。
 まず,犯罪被害者等基本法ができました。本当に良かったと思いました。今日も国民の集いといって中央大会があります。私もそこに会のポスターを持って行って貼ってきました。本当に良かったなと思ったんですが,中身を読んでみれば,やはり少年犯罪というのはとても難しいんじゃないかと不安が残ったんですね。そこで,この意見書をこのときに作りました。先ほども望月さんがおっしゃったんですが,被害者のための法律なのに,加害者の条件でまた変わってくるんです。大きく分ければ大人の犯罪,少年の犯罪,精神障害の犯罪だと思います。それらの条件によって,やはりこの法律というか,せっかくできた基本計画案が機能しなくなるんですね。だから,私たちにとって,やはり少年法の見直しが大事なんです。
 そこで一番大きなのは,やはり原則逆送です。原則逆送のただし書きを外してほしいと思います。私たちは最初から言っていたんですが,年齢で分けるのではなく,犯罪の種類で分けてほしいとお願いしてきました。せめて命にかかわる事件,それは刑事裁判にしてほしいと思います。年齢が何歳だから難しいといえば工夫はお願いしたいと思います。例えば,年齢が低いから大変だといえば専門家をつけるとか,そして,公開の裁判だから顔が出てはいけないというのではつい立てをする。ビデオでしてもいいんです。公開というのがとても大切なんですね。なぜ公開が大切かというと,少年審判の場合,非公開です。加害者側しか入れません。今は検察官が中には入ることがありますが,それも裁判官が認めた場合です。事件に争いがあるとか,そういう場合に裁判官が認めた場合に入りますが,刑事裁判での検察官の役割と少年審判での検察官の役割は違うんです。この前も弁護士の先生の話にあったように,求刑というか,少年審判は求刑では処分ですよね。処分のかかわるようなことは言ってはいけないとか,ものすごく制限があるわけですね。だから,やはり私は刑事裁判にして,対審構造というのがとても大切だと思います。そこでしっかりと事実認定をしてほしいんです。そうなると,捜査のやり方も変わってくると思うんです。刑事裁判がある,そこで事実認定をされると捜査にも力が入ると思います。
 私は,10年前からずっと訴えてきて,主人がインターネットで会のホームページを作ったんですが,警察官の方からもメールをいただいたことがありました。少年事件はやりにくいとか,少年事件は点数にならないからとか,いろいろなことで力が入らない。やりにくいということもあると思います。でも,刑事裁判になって公開になるんだったら,やはり捜査が関係してくるので,力の入り方が私はきっと変わると思うんですね。だから,望んでいることは,少年事件であってもしっかり捜査をしてくださいということです。そして,刑事裁判にしてしっかりと事実認定をしてくださいということです。事実認定をしたから被害者が有利になるわけではないんです。そこでもしかしたら被害者にも非が出てくるかも分からないんです。それは加害者のためでもあります。被害者と加害者がどうだったのか,しっかりと,事実が大事だから,私は公開の裁判でやってほしいんです。
 何遍も言いますが,そこで年齢が低い場合は工夫をいろいろ考えることは,私はできると思います。そして,14歳以下の場合,とても難しい問題があると思います。それをどうなるかとなると,例えば刑事裁判にするのは難しいかと思います。でも,今のように児童相談所に送って事件を片づけるというのはもっと難しいことだと思います。今は少年院というか,家庭裁判所に送ることもできますが,やはり私は,命にかかわるような重大犯罪は家庭裁判所ではできないと思っています。今まで家庭裁判所は,こんなふうな感覚で調査官の方はおっしゃいました。「ここは事実関係をどうのこうのするところではない。ここは,加害少年がこれから先どうやって生きていったらいいか考えるところだ。」と,そんなふうに答えた調査官の方がいました。それが私は一気に意識が変わるとは思えないんですね。だから,私は思うんです。軽微な犯罪,重大犯罪になるまでの犯罪に力をもっと入れてほしいなと思います。例えば外国ではあります。初犯で,本当に本人が反省をしていたら,子供たちが裁判をするんですね。ティーンコートというのを見ました。子供たちで裁判をして,その中で加害少年が反省をしていくわけです。でも,その前提には反省をしている,罪のやったことが分かっている,そして初犯,最初の事件ということが条件なんですね。そうやったふうに軽微な犯罪を段階をしっかり分けたり,やはり明確にするべきだと思います。最初の場合はこれで済むけれども,次はもうだめだよとか,やはりそういうふうに段階を踏んでいってほしいんですね。
 ある保護処分を受けた子供に話を聞いたことがありました。それは無免許でバイクに乗っていた子でした。家庭裁判所に送られるわけですね。そうしたら,書類が送られて呼び出しがあります。そうすると,たくさんの子供たちが並んでいるそうです。同じような,多分軽微な犯罪だったり,バイクを無免許で乗っていたり,いろいろな事件だと思います。そうすると,1人ずつ呼ばれるそうです。そうすると「はい,君はこうだね。バイクに無免許で乗ったね」と言うと判こを押して,それで終わりだと言いました。それではいけないです。その人は言いました。「それでは,やはりこんなものかと思う。」と言ったんです。やはりやったことを軽微であろうがしっかりと認識させることが必要だと思うんです。それが私は家庭裁判所の役割だと思っているんですね。だから,軽微な犯罪をしっかりと,初めに起こした事件,そして2回目,3回目という感じでしっかりとした指導,分かりやすい指導をしっかりやってほしいと思います。それで私は本当の意味で芽が摘めるんじゃないかなと思うからです。だから,もう犯罪の種類で分けて,軽微な犯罪,重大犯罪,とにかく命にかかわる事件はすべて刑事裁判にしてほしいんです。そして,刑事裁判で事実認定をした後に,この子はこういう事実をやったけれども,やはり保護処分の方がふさわしいんじゃないかという場合は送り返せるわけです。そこで初めて送り返すということは,とても納得がいくんですが,初めから家庭裁判所ですべてを,多くの事件を保護処分にするという,そういう動きがどうしても納得できないんですね。軽微な犯罪と重大犯罪としっかり分けてほしいと思います。
 私は思うんです。少年というのは,もちろん将来がありますし,もちろんきれいな心も持っているかもしれませんが,うそもつくんです。本当に少年だからうそもつきます。だから,やはり私はしっかりとした処分を少年に突きつける必要があると思うんですね。軽微な犯罪だけだったら家庭裁判所で終わるんだけれども,君は重大犯罪を犯したから大人と同じような刑事裁判になるんだよという区分けみたいなものを,私ははっきりする必要があると思うんですね。今のままでは,私は少年の反省の場を奪っているように思えてならないんです。
 うちの事件はもう10年前なので,少年法が改正の前なので当てはまらないかもしれないんですが,こんな形で進んでいきました。加害少年には捜査段階から弁護士さんがついていたんですね。私は思いました。初めから思っていたわけじゃないんです。民事裁判を3年目に起こしたんですが,そのとき振り返って思ったんです。捜査段階から加害少年は弁護士がついて,「ああ,これで助かる。」と思ったんじゃないかと思ったんですね。私は,最初は思ったと思うんです。自分の暴力を振るった相手が死んでしまったと思ったときに,大変だと思ったはずなんです。でも,その「大変だ」という,その人間としての感情を,私は摘み取っているというふうに見えたんです。それが弁護士さんが3人ついていたんです。そして,捜査が終わると家庭裁判所に送られていました。私たちは警察でも家庭裁判所でも事件の内容を教えてもらえなかったので,加害者の言っていることは民事になってから分かったんですが,家庭裁判所に送られた段階で私は思いました。家庭裁判所の調査官に会いに行ったら,先ほども言ったように「ここは事実関係をどうのこうのするところではない。」と言ったんですね。だったら,この少年は事実を突きつけられるところはないんだと思ったんですね。そして,それが少年院に送られたんです。今でこそ2年入っていることもありますが,うちの場合は10か月でした。あんな10か月で私は分かるとは思えないんですね。その当時,30家族の遺族の人たち,本当に1年前後で出ている加害者がほとんどだったんですね。私は,反省をする場もなく社会に復帰していると思ったんですね。怖いと思いました。何の反省もない少年たちを社会にまぎれ込むように出していると思ったんですね。
 やはり私は思うんです。犯罪の自分のやったこと,それを認識できるような仕組みになってほしいと思いました。それが少年法改正なんですね。私たちの会は,少年法を改正するために作った会ではないんです。でも,問題が余りにも多かったので少年法改正を要望するしかなかったんですね。私たちは本当に専門家の集まりではありませんでしたので,苦労でした。でも,そういうふうに何もなかったから,私たちが要望するしかなかったんです。
 そして,逆送年齢も書いていますが,年齢に関係なくしてほしいということです。そして,少年審判の傍聴,意見陳述,それというのは,やはり無条件に,先ほどもおっしゃったように出してほしいと思います。なぜかというと,刑事裁判があれば,その刑事裁判の最中に見ていれば,加害者側の生育とか家庭環境とかが出てくるんですね。見に行けば,傍聴に行けば出てくるんです。でも,私たちは少年審判を傍聴できないし,だから閲覧をしたとしてもプライバシーに関するところ,社会記録に関するところは見せないと言われるんですね。だったらおかしいと思ったんですね。大人の場合は刑事裁判で出していることが,加害者の少年であれば被害者は我慢しなさいということで,それはやはり違うと思います。犯罪被害者等基本法もできました。そういうふうに,大人の犯罪の場合と少年の犯罪の場合の情報の出方がものすごい差があっては,私はおかしいと思います。だから,被害者が望むものは出してほしいと思っています。
 そして,審判の傍聴を皆さんが望むとは思わないんですね。でも,望む人があれば,やはり傍聴をお願いしたいと思います。それは,やはり自分の目で確かめたい,自分の目で,裁判官がどんなことを言うか,加害者がどんなことを言うか見たいわけです。そのために傍聴を許してほしいと思います。そのときに使われることは,被害者の報復感情です。被害者がすごい感情を持って,すごい状態になるんじゃないかということを使われてしまいます。そこでは被害者の感情を使わないでほしいんです。そうしたら法廷を工夫してほしいんですね。今のような小さな法廷,少年審判の場所ではなく,もっと少し距離のあるようなところを考えるとか,そういう工夫を考えたらいいのに,少年審判の傍聴をできない理由を被害者の感情で片づけようとする,そういうことはしないでほしいと思います。
 そして,保護者の責任です。明確にするべきだと思います。少年は未熟だ,保護しなければいけないというのであれば,やはりだれかが責任を負わなければいけないからです。そういう意味で,保護者の責任を明らかにしてほしいと思います。人の命を奪ってもだれも責任をとらないというのはおかしいからです。刑事裁判になれば,これは別です。保護処分でやるのであれば,保護者の責任は私は大切だと思っているんです。
 今日,新聞記事をコピーして持ってきました。平成14年4月3日付けの読売新聞と,4月24日付けの朝日,産経,毎日新聞です。その中に基金の話を書いてあるんです。息子の名前をとって「孝和基金」というのを作っています。これは個人で作っているんですね。なぜ個人で作ったかというと,民事裁判を私と主人は息子のために起こしたんですね。その賠償金がもし入ったなら,それはすべて基金にしようと決めていたんです。なぜかというと,かたき打ちもできない,刑事裁判もしてくれないのに,なぜお金を出して民事裁判をしなければいけないのかと思っていたからです。そして,お金がなければ民事裁判ができない現状を知ったからなんです。お金がないため,精神力もないために民事をあきらめる人がたくさんいることを知りました。国はかたき打ちも奪い,刑事裁判も奪ったのに,民事裁判の費用は見てくれないんですね。それらを奪うのであれば,少年犯罪の場合,民事の費用は見てほしいと思いました。だからすべてを基金にして,民事裁判の費用の一部に使ってもらおうと思ったんですね。少年犯罪,いじめの事件,遭った人の民事裁判を起こすときのための費用の一部に使ってもらっています。現在はうちは何とか賠償金は入っています。7万ずつです。父親,母親,本人で7万ずつ入っています。今,残高が500万少しあります。寄附も募っているので500万少しあるんですね。2例だけ民事裁判の費用に使ってもらいました。
 私は思うんです。国にだけいろいろなことを,とんでもないことを要望しているんじゃないんです。自分でできることは自分でやろうと思ったんです。会の人はいろいろ事情もあるので,会ではできないので個人でやっているんですが,できることはやります。でも,できないことは法律のことなんです。どうかそこを考えていただいて,工夫をしていただいて,少年法の改正をやはり真剣に考えていただきたいと思います。
 私は思うんです。会を作って9年になるんですね。「WILL」を始めまして8回なんです。年々,みんな元気になってくれるように願っていました。この場所にみんな足が運べるように,何とか1年に1回,何でも話せる場所を作りたかったので作ったんですね。でも,みんなだんだんと力を無くしている人も多いんです。私は思ったんです。年齢も関係すると思いますが,大きいことは,何の納得もないことなんです。子供が殺されたのに,自分たちはかたき打ちもできない。それで自分を責めます。だったら国が刑事裁判をしてくれると思う。それもありません。そこで,民事裁判を起こします。必死で起こすんです。自分たちでけんかではないという証明をしたいためです。少年事件というのはけんかと見られがちなんですね。だから一生懸命民事裁判を起こします。加害者に刑罰の意味も含めて責任を負わそうと思って一生懸命起こすんです。でも,判決をもらっても払われないことが多いんです。何回かして行方不明になったり,何回かして破産をしたりします。破産をしたからといって払わなくていいということではないんですが,払わなくなるんです。私たちには追いかける力がありません。だから何をしても納得がいかないわけです。子供の死んだことが残っていて,それに対する責任をどこも負っていない現状がある。それが私は元気が出ない最大の原因だと思いました。
 私は思ったんです。自分より大切な子供を失いました。私は死んでしまおうと思いました。でも,10年たっても生きています。人間って力を持っているんだなと思いました。でも,思うんです。みんな頑張っていこうと思う力をだんだんと無くしてしまうんです。それは年齢のこともありますが,自分で頑張らないといけないということもありますが,余りにも法律がなさ過ぎる,そして制度がなさ過ぎる。被害者と加害者の権利が余りにも違い過ぎるからなんです。せめて人を殺した加害少年並みの権利が欲しいと思います。みんながもう少し自分の力を,本来の人間が生きる力を持っている,その力を出せるようにお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
● 甲斐 ありがとうございました。
 それでは質疑に移りたいと思いますが,少し休憩の時間をとらせてもらってよろしゅうございますか。では,少し休憩をさせていただきたいと思います。
(休憩)
● 甲斐 それでは再開をしたいと思います。
 今,望月さんと武さんの方から御意見をちょうだいしましたので,これに関連して,何か御質問なり御意見なりございましたら,よろしくお願いしたいと思います。
● 松尾 休憩前に望月さん,そして武さんから心情あふるるお話を承ったわけでありますが,今検討している平成12年改正というのは,ある程度お気持ちに沿うような方向の改正であったと思います。ただ,それがまだ十分ではないという御指摘でありますが,また一方において,平成12年改正に対して,あれは行き過ぎであったと,今回の見直しの機会に元に返した方がいいという御意見もあるわけで,私どもはある意味で両方見据えながら,今回の議論を取りまとめていくのかなと思っている次第です。しかし,議論はまだ入り口でありますので,これから皆さんのお話を承りながらいろいろと考えていきたいと思います。
● 甲斐 ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。
● 松尾 お二人から,もっとしっかりしろとおしかりを受けそうな気もいたしますが,私は,もう35年ほど前の話ですけれども,一度少年法の改正にかかわったことがあります。当時はまだ全くの若輩で,法制審議会の一番末席に座っていたわけですけれども,そのとき,少年法の改正がどんなに難しいことであるかを骨身にしみて感じました。数年前の平成12年改正の時点では,私は少し年をとりまして,少年法部会の責任者として取りまとめをいたしまして,ある程度の前進を遂げたといいますか,もちろん細かく申しますと,部会で扱いましたのは,いわゆる事実認定の適正化の部分でありまして,今日特に御指摘の年齢の関係はまた別途議員立法ということで付加された部分ではありますけれども,全体としてはそれが平成12年の改正という,少年法制定以来の最大の改正ということになりました。そして5年後見直しということで,今こういう会も開かれているわけです。
 もちろん従来のいきさつにすべてとらわれるという気持ちでは全くありませんけれども,今までの長い経緯も一応踏まえながら,できるだけよい方向に持っていきたいと考える次第です。
● 甲斐 何か御意見ございますか。
 私からで恐縮ですが,細かい部分ですが,先ほど,望月さんの方から修復的司法の導入についても検討する余地があるのではないかという御指摘をいただきました。ただ,これについては,被害者の方の中でもいろいろな御意見があるように感じているのですが,例えば,武さんの方では,修復的司法のような形で被害者と加害者が向き合う別の場を設けるというか,何らかの場を設けると,こういった考え方についてはどのようにお考えですか。
● 武 修復的司法というのは,私は加害者のためのものだと思っているんですね。だから,修復的司法を使って加害者と対話とか,そういうことをしようという発想はないです。私たちの会の中で,加害者と会って話を聞いている人もいるんです。それは修復しようとか,そういうことではないんです。刑事裁判もなかった,民事裁判もできなかった。民事裁判を3年以内に起こさなければいけないのでできなかったんです。そうしたら加害者に聞くしかないという,方法が残されたのがそれだから。加害者と向き合ってという,その向き合ってというのもおかしな話なんですけれども,加害者からとにかく聞くしかないという方法をとっている人はいます。でも,私は,それは修復的司法ではないと思っていますし,軽微な犯罪,弁償できるものであれば可能かも分からないんですが,私たちの会のような死亡事件の遺族の人たちは,やはり難しいと思います。まずは法律でしっかりと,やはり事実認定をして,それに合った刑罰を与えてもらいたいということがまずあるので,もしそれがあったなら分からないですけれども,考えるかもしれないですけれども,それがないのに加害者と向き合って話をするというのは,とても考えられることではないんですね。
● 望月 すみません。今,私の意見の中で,一応,実践形態としてファミリー・グループ・カンファレンスのことを申し上げたんですが,それは修復的司法がいいと言っているわけじゃなくて,前回,私は,やはり被害者に修復という言葉はないということをお伝えしたと思うんです。だから,それとはちょっと別個に考えていただいて,少年事件の中で,やはり一つの形としてというんですか,一つの実例として参考になればというような感じでお伝えしたまでなんですね。
 やはり生命,身体にかかわる犯罪に関しては,私たちに今伝えられているような形での修復的司法が功を奏すというふうにはちょっと考えられないです。ただ,まだまだ私たちも勉強不足だと思っていまして,本当に海外で定着している,あるいは制度化されている修復的司法なんかを見ますと,必ずしも加害者のためのものではないし,被害者が許さなくてはいけないという場ではないというようなこともきちんとうたわれていますので,その辺はまだ考慮しなければいけないのかなとは思っていますが,現段階では,やはり今,武さんがおっしゃったように難しいんじゃないかと思います。ただ,やはり少年事件で被害者がかかわれないという実情の中で,何とかそういう場が持てないかということと,あと,やはり少年事件というのは,帰っていった場所の安全性とか,あるいは住民の受け入れというのもすごく問題になると思いますので,そういう意味で地域を巻き込んだ,何かそういう意味でのグループワークみたいなものができたら,それはそれで違った意味があるのかなというふうには思っています。
● 甲斐 ありがとうございます。
 この点でも,ほかの関係でもよろしゅうございますが,いかがでしょうか。
● 久木元 望月さんにお尋ねします。少し技術的なことになるのかもしれませんが,少年審判の傍聴につきまして,前回,二人の弁護士の先生方の御意見の中では,現在ある少年審判規則29条の解釈,それから,そのほかの被害者のための制度をフルに活用していくことをまず考えるべきでないかという御意見と,それは新しく法律に書くべきことであろうという御意見があったと思います。前者の御意見の場合は,少なくとも法律に傍聴ということで入れるのには賛成ではないというような形でおっしゃったと思うのですが,本日の御意見のペーパーを拝見していると,その間ということになるのでしょうか,規則29条に被害者を書くと。これは,この規則に書くということに意味があるのか,あるいは明文化するのであれば,それは規則ということであれ法律ということであれ,ここは特にこだわっているわけではないということなのか。そこを少し確認させていただきたいと思います。
● 望月 すみません。法律としてちゃんと制度化してほしいというのか,あるいはということですか。
● 久木元 少年法という法律があって,その下にといいますか,最高裁判所規則である少年審判規則があるわけです。ですから,規則という形式で書くことが何かの理由でより相当であるとお考えなのか,そこはそんなにこだわっているのではなくて,むしろそう言われるなら,それは法律の方がいいでしょうというお考えなのか,そこの確認をさせていただきたいと思います。
● 望月 やはり法律としての方がいいと思います。規則にこだわっているわけではないです。
● 久木元 分かりました。ありがとうございました。
● 武 やはり法律の中に明文化していただくことが,すごく私たちにとって意義のあることで,なぜかというと,明文化されていないと運用で任されてしまうので,裁判官の一人一人の,その人に任されてしまうというのは差が出てくるんですね。ですから,そのためにしっかりと明文化していただきたいというのがあります。
● 甲斐 今の点で私からも教えていただきたいのですが,傍聴の関係で,これまでは全然そういうものが認められてきていなかった。それについて認めるべきだという御意見ももちろんおありだろうと思うのですが,ただ,個別に見ると,先ほど武さんがおっしゃったように,それこそ重大事件のものもあれば,例えば万引きしました,窃盗でしたというものもあって,そこら辺はもうなべて全部傍聴できるという仕組みの方がいいのか,それとも,重大事件に限ってそういうものを認めていくという考えの方がいいのか。その辺はどんな感触をお持ちでしょうか。
● 望月 私は,やはり希望があれば傍聴の要望をかなえるべきではないかなと思います。
● 甲斐 罪種を問わずという御趣旨ですか。
● 望月 はい。
● 松尾 今の少年法には,「傍聴」という観念はないのです。非公開という原則でありますので,刑事裁判の場合と違って傍聴はない。ただ,御指摘の規則29条にありますように,一定の方の在席を認めることはできるということになっているわけです。そこで,刑事裁判の方でも今,被害者の方の在廷権が検討の対象になっておりますけれども,その場合,刑事の法律ですと,やはりいろいろ詰めなければなりませんので,例えば被害者が多数であった場合にどうするかとか,出席申出の手続をどうするかとか,そういう問題が一々出てきて,いわば権利だ,義務だという議論になってくるわけですけれども,少年法の少年審判手続は,今,裁判官の運用では困るという御指摘もありましたけれども,その辺を柔軟に扱うところが一つの長所でもありまして,刑事ですと「傍聴」と「在廷」は座る場所からして違ってくるわけですね。しかし,保護手続ではそういう細かいことは言わないで,在席を認めれば裁判官のすぐそばに座っていただいてということになるでしょうし,審理の流れに応じて発言されることも,問題がなかろうと思いますが,刑事の裁判だと,一体在廷なのか何なのか,質問権があるのかというような問題が次から次へ出てくるわけですけれども,その点を柔軟に包括的に処理できるという意味で,少年法的な考え方にも取り柄はあると思います。
● 松村 今,望月さんの方から,被害者の方の御希望があれば希望がかなえられるべきだという御意見でした。教えていただきたいのですけれども,大勢の被害者の方に接しておられる立場として,どういう事件の被害者の方でそういう要望が強いとお考えでしょうか。
● 望月 一般と少年と限らずですか。
● 松村 少年事件の場合です。
● 望月 実は,都民センターでは少年事件の件数は比較的少ないものですから限られたことになりますけれども,とにかく情報が少ないということがものすごい大前提にありまして,どこでもそれをすくい上げられていないわけですよね。それで,改正少年法の中で,例えば在席の問題であるとか傍聴の問題であるとかという,そういうことが取り上げられたということで,やはりそれが一つの機会になるのであれば,事実とか,あるいはどんな加害者であったのか,被害者が自分の現実を受け入れて回復していく過程の中で絶対に必要な条件がそこで満たされるのであれば,それは是非していただきたいというふうに思っております。やはり何も情報がないということの訴えがものすごく多いものですから,具体的にということで,やはり現場にはもう何も痕跡はないですし,もちろん亡くなった子供から聞くことができないですし,加害者の少年が言っていることが,例えば複数だったりするとそれぞれ違っていたり,あるいは時を経てまた変わってしまったりというようなことがあると,じゃ,何を信じればいいのかというようなあたりで,やはりものすごい持っていき場のない思いというんですか,そういうものを感じられる被害者はたくさんいらっしゃいます。
● 松村 そういうお気持ちを述べられる方というのは,例えばどういう犯罪に遭われた被害者の方なのでしょうか。
● 望月 やはり殺人です。
● 河原 私からも1点よろしいですか。記録の閲覧とか謄写とか,そういうものをしても,なおやはり事実は分からないと,そういうふうに被害者の方は思っておられるわけなのでしょうか。
● 望月 そうですね。それは個々の被害者によって違うと思いますが,時期は特定できないんですけれども,どこかでやはり加害者に会いたいという思いは必ず出てくるように感じています。そして,加害者の口から,こちらが聞きたいことを述べてもらいたいという思いを持つ被害者の方がとても多いと思います。
● 武 私たちの会は死亡事件の遺族の集まりなので,死亡事件の人ばかりなんですけれども,みんな刑事裁判をイメージしています。刑事裁判がない代わりのものだと思っているので,そんなに仕組みを知っているわけではないんです。事件に遭った直後に,刑事裁判がどうで少年審判がどうって,みんな知らないです。今もしっかりと知らない人もいるんです。だから,刑事裁判のように,なぜ被害者もそれを見られないのかという感覚です。ものすごいものがあるわけではなく,私はそう感じています。
 そして,閲覧とかコピーをとったら分かるのではないかといいますが,最初,事件に遭った直後,閲覧やコピーもとる発想がまずないです。とにかく自分のところは被害者なので,情報は教えてもらえると思うし,とにかく仕組みを知らない,法律を知らないというのが前提なんです。そして,黙っていても教えてもらえると思っているので,自分たちがお金を出してコピーをとらないといけないという発想がまずないんです。だから,刑事裁判のように,そこで何を言っているかを聞きたいという,本当に単純なものだと思います。私も法律が分からなかったので,なぜそこに入れないんだって,それが傍聴するような場所ではないというのも直後は分からないですよね。そういう疑問がずっとありまして,だんだんと,いろいろなものを見ていくと,「ああ,そういう場所ではないんだ。」というのが分かってきましたけれども,そういった意味で,それを見たいです。審判を見届けたいというか,それを強く持つんだと思います。だから,望めばそこに在廷させてくださいということなんですけれども,でも,部屋は,さっきも言ったように工夫をしなければ無理だと思います。難しいと思います。
● 望月 都民センターにかかってくる相談電話でも,実は家族が殺されましたって,だんだん情報を伺っていく中で少年事件ということが分かってくるわけですけれども,もう警察の方にはちゃんと届けて,事情聴取も受けて,「裁判はいつ始まるんですか。」というような,やはり裁判というふうに,今,武さんがおっしゃったように「裁判はいつ始まるんですか。私は何をすればいいんですか。」というような,そういうお電話が結構多いですね。
● 武 少年審判と刑事裁判の違いがまず分からないです。
 ついでにお願いしたいことがありまして,このパンフレットをこの前もいただいたんですけれども,このパンフレットは,いろいろなところに置いていただいていると聞いているんですが,最初も言ったようにパンフレットをもらうという発想もないのがまずなんです。ですから,できたら少年犯罪に遭った被害の人に送ることはできないんでしょうか。そして,ここに「事件の記録を見たりコピーしたりすることができます。」って,すべて自分が請求しないといけないんですね。それも分からないんです。ですから,はがきで,あなたは意見陳述しますかとか,できますけれどもどうしますか,します,しませんとか,はがきでもらうとか,被害者が手にするということを発想するのはやはり時間がかかるんですね。まだまだ知られていないし,まず発想がないんです。もう,自分が何もしなくてもあると思ってしまうからなんですね。
 昨日も被害者の人と話をしたんですけれども,そうだと言っていました。これを手にした人がいなかったんですね。その人は去年の事件でしたし,もう一人の人もまだ間近な事件の人なんですけれども,これを手にはしていなかったんですね。一人の人は,意見陳述もできなかった。知っていればしたかったとおっしゃいました。「こういうのがあったら私は言っていた。」と。でも手にはしていなかったので,結局できなかったんですね。だから,連絡をしてくれるという,被害者に連絡を入れるというふうな何か配慮はできないものでしょうか。
● 久木元 前回,武内先生の方からも,せっかくパンフレットを作っているのであれば,それを送るなり,何か通知のときに一言というようなお話がありまして,早速検討いたしました。まず,事情聴取等で面談の形でお話をする方にはもちろんお見せしますし,必要であればお持ち帰りいただきます。それから,面談以外の場合は,まずはお電話等でお話しすることになると思いますが,そこでパンフレットがあることをお伝えして,必要かどうかをお聞きして,必要であればお送りする。直ちにお送りするというのは,被害者通知を希望される方の中でも書面による通知を御希望されない方,親にも知られたくない方や,寮生活を行っている性犯罪の被害者の方などがいらっしゃいます。ですから,お電話のときは,そういうことの御希望をお聞きした上で,必要であれば,いいよということであればお送りすると,そういうことを早速できないかということで,今,最高検察庁とも協議をしようということで,なるべく積極的に,こちらからパンフレットの存在と書いてあることを御理解いただけるように検討しておるところでございます。
● 佐伯 武さんに原則逆送についてお伺いしたいんですが,御遺族の方がしっかりとした事実認定をしてほしいというお気持ちを持っておられる。それから事実を知りたいというお気持ちを持っておられるということは,これはもう当然のお気持ちだろうと思います。それで,武さんは,先ほど,そのためには刑事裁判にすべきであるという御意見でしたが,少年法の改正によって,少年審判にも検察官が関与できるようになりましたし,合議制といったものも導入されておりますので,しっかりした事実認定をするという点で,どうしても刑事裁判でなければいけないかというと,大分昔とは,もちろん,昔はいいかげんな事実認定をしていたというわけではございませんけれども,大分状況が変わっているのではないかという気がいたします。そういう意味では,少年審判にも何らかの形で被害者の方が傍聴できる,あるいは意見を陳述できる制度を設けることによって,少年審判の中でも御要望をかなえることはできるのではないかという気がするのですけれども,その辺はいかがでしょうか。
● 武 私も詳しいことが分かるわけではないんですが,私が思うのは,先ほどみたいに検察官の役割が違うということもありました。刑事裁判での検察官の役割と,制限のある,事実認定を争う場合に,それだけをやる検察官と私は違うと思ったし,それと期間の短さがあるんですね。少年審判というのは,大体が1回であったり,やはり期間が短いんですね。私たちの会でもそうですが,加害者が複数の場合が多いんです。ものすごく何人もかかわっている加害者がいるのに,そんな短い期間で少年審判で済ますことは私はできないと思っていますし,全部が再犯率が分かるわけではないですが,会の中でも再犯もしていますし,それはやはり事実認定がされなかったんじゃないかと思います。改正になった後は充実しているんじゃないかとおっしゃいますが,やはり期間の短さ,それはあると思います。
 それと,公開というのは私はどうしてもこだわります。公開が大切だと思います。なぜかというと,少年事件というのはいじめが関係していたり,学校が絡んでいたり,いろいろな考えないといけない問題がたくさんあるんです。でも,公開にならなければ学校も考えないんです。みんなそうです。隠れていれば問題を考えないんですね。公になれば考えようとするんです。というか,やはり隠れていれば問題を考えるものが見えないと私は思っているので,公開というのはものすごくまず大事というのはあります。公開の中で事実認定をする。どんなことがあった,そしてどんな事実関係があった。名前や顔,そういうことを私は言っているのではないんですね。どんな事件だったというのは大切だと思うし,それは予防策もやはり関係してくると思います。そういった意味で,やはり刑事裁判が私は必要じゃないかなと思うんですが。
● 佐伯 故意で人を死なせてしまったという事件の中にも加害者が実質的には被害者であるような場合,例えば,虐待で被害を受けていて,我慢ができなくなって殺害してしまったというような事件もあります。もちろん殺人を犯したことについてはそれなりの責任を負わないといけないわけですけれども,刑事裁判が適当でない事件もやはりあるように思うのです。ですから,すべての事件を逆送するという制度が望ましいかというのは,お気持ちはよく分かるんですけれども,やはり慎重に考えるべきではないかという気がいたします。
● 武 虐待をされて,虐待をしていた相手を殺すということですね。
● 佐伯 そうですね。例えば家庭内で虐待を受けていて,我慢できなくなって親を殺害するというような事件もあるでしょう。あるいは,原則逆送事件の中で逆送されていない事件の中には,えい児殺,望まない妊娠を少女がしてしまって,生まれてきた子供を育てられなくて殺してしまうというなものもあると統計資料で出ていますけれども,そういう場合についても,常に刑事裁判が適当かというと,必ずしもそうは言えないのではないかと思います。
● 武 命にかかわる事件ということですね。
● 松尾 今のお話のような意味で,ここで以前承った逆送率約60%というのは,ある意味でバランスのとれた数字ではなかろうかという感じはするわけですね。これが平成12年以前でしたら原則逆送の規定もありませんでしたし,16歳未満は一切逆送できなかったわけですが,その点は今確実に変わっておりますので,おっしゃるような非常に重大な事態というのは,大体において刑事裁判に回っているのではないでしょうか。
 それからまた一方で,この席には調査官はおられないわけですけれども,家庭裁判所の調査官の努力も,被害者の心情を酌み取るということについて,かなり最近は意識しておられるのではないかと思うのですが,このあたり,家裁としていかがですか。
● 松村 今日の武さんのお話を改めて伺って,武さんの事件の調査官がそんなことを申し上げたとしたら,本当に被害者の方々の心情に対する配慮が足りなかったと思うのですけれども,法改正もあり,また被害者問題に対する社会的な重要性の認識もあって,最近の家庭裁判所は,少しずつ努力をしてきて,できる限り少年事件においても被害者の方々に対する配慮ということを忘れずに,家庭裁判所というのは少年の側だけ向くのではなくて,被害者の側にもきちんと向き合っていこうという姿勢に変わってきていると思いますし,もっと変わっていかなければならないと考えています。
 そういった意味で,今家庭裁判所がどのように考えて,これからどのようにしていこうかという点については,次回ここで整理をしてお話をさせていただきたいと思っております。
● 武 先ほどの刑事裁判の話ですけれども,確かに逆送率は上がっているんですね。ですけれども,やはり裁判官の裁量なので,死亡事件であっても,例えば,ここでは逆送されないけれども,こっちの事件は逆送されるという差もあるんです。ですから,私はそれこそ,先ほどおっしゃったようなものをただし書きに入れて,そういうものは刑事裁判にしなくて済むよう反対になってほしいなと願っています。
 先ほど言ったのは,虐待に遭っていたから,その相手を殺したということですが,加害少年も昔虐待に遭っていて,そういう環境にあったから犯罪を犯したということをよく言われるんですね。だから加害者も被害者なんだということをよく言われるんですが,私は,さっきのとは別なんですが,犯した犯罪と,その子の家庭環境や持っているもの,それは別だと思いますね。治療が必要であれば治療をしたらいいと思うんです。ただ事実認定は大事だということを言っているんですね。本当にどうしても思うのは,確かに逆送率は上がっているが,差があってはいけないと私はどうしても思ってしまいます。「じゃ,あなたは残念だったね。裁判官の考えがそうだったから逆送にならなかった。」と少年審判で済むわけです。刑事裁判になった場合とならない場合の差は,すごく扱いが違います。それはなぜかというと,死んだ者に対しての責任のとり方が違うんです。刑罰であるか保護処分であるか。少年院に行ったから罰ではないわけです。
 やはり刑罰が与えられるということと,与えられないということは大きな差があるんです。遺族にとってものすごく大きな差です。殺されたのにだれも刑罰を与えられない。おかしいと思うんですね。納得はできないです。だから,やはり私は刑事裁判というのを望みますし,そこで事実関係が出て,被害者にも非があるとか,本当にこれは事実をやったら保護処分がいいといえば送り返したらいいと思うんですね。やる前から少年だから何だからということで保護処分にしてしまうのではなく,事実関係をやってからではだめなんでしょうかということをいつも言っているんです。工夫をしながら事実関係をやってから,じゃ,こういう事実が出ましたので保護処分にしましょうというのだったらものすごく納得がいくんです。でも,まだ刑事裁判もやっていない,事実認定も法廷でやっていないのに,もうあなたの加害者は保護処分ですよって,何の納得もできないんですということを言いたいんですね。何か,先ほどの,家庭内の事件であれば考えないといけないという配慮は分かります。すごく分かります。
● 山崎 すみません。今までのとはちょっとまた視点が違うんですけれども,既に12年改正で閲覧・謄写や意見陳述が認められたことを受けて,皆さん,被害者の方は当然それを御存じない方が多い。実際事件を受けて,例えば支援センターの方にアクセスされた方々というのは,そういう制度を支援センターから知らされるという形になるわけでしょうか。そのときに,被害者側につく弁護士制度構想も提唱されたりしていますけれども,そういう需要というのがどの程度あるのでしょうか。私も被害者側でやったケースは何件かありますけれども,犯罪当初から知り合いを通じて来た場合などは,比較的制度の利用とかもスムーズにできた部分はあったかと思うんですが,それを積極的に活用するという発想を被害者の方々はどのようにお考えになっているのかなということをお聞かせ願えますか。
● 望月 何度も武さんの方からも発言がありましたように,本当に被害者の方というのは何も知らない状況で電話がかかってきますので,特に少年法が改正されたあたりから,私たち,電話相談の中で,やはり私たちができる範囲の説明をさせていただいています。私たちは専門家ではありませんので,できる支援とできない支援がありますので,その部分に関しては,やはり少年事件の場合は弁護士さんに是非相談してくださいということをお勧めします。こちらで是非お願いしたいというような具体的なことに発展していって,私たちの方でもかなり具体的な事実が明らかになった場合には,それこそ被害者支援の方の先生を個人的に御紹介しましょうかというようなあたりまですることもあります。でも,そこまでいかない場合は,とりあえず,例えばSOSと呼ばれるような弁護士会による犯罪被害者やその家族に対する支援機関ですとか,そういうところにちょっと相談してみて,今こちらに言ったようなお話をされてみてはどうですかという形で返すようにしています。少年事件に関しては特に,やはり弁護士さんに御相談を一回されることをお勧めしますということは強く言っています。
● 山崎 そういう需要というか,ずっとかかわってこられたお立場からも,特に期間が短いとか,よく分からないという点が多いという意味で,少年事件の場合は特にアドバイスをされているということになるんでしょうか。
● 望月 期間が短いというのは,少年審判のですか。
● 山崎 例えば,審判まで終わるまでにきちんと手続をとらなければいけないとか,特に少年事件の場合はとおっしゃったのは,具体的にはどういうことでしょうか。
● 望月 やはり,情報をその被害者の方が得ることは非常に難しい状況にありますし,あと,その中で法的な手続みたいなものがたくさんあると思うんですね。ですから,私たちが介入して,そこから弁護士さんにお願いして,またこちらに戻ってこちらというような二度手間ではなくて,やはり被害者の方にもできることをしていただきたいという姿勢を持っていますので,是非御自分で相談してみてくださいという形で,もちろん時期によっていろいろな場合があると思うんですね。緊急を要することがもう何日もたってしまっているとか,全然連絡がない,待っても待っても何も言ってこないみたいな,そういう方もいらっしゃいます。そのときには,もう本当にすぐに,弁護士さんに相談された方がいいですよということは必ず言うようにしています。
● 武 私もそうです。連絡があるので,直後の人であれば,やはりすぐに弁護士さんをいろいろな人から教えてもらって,全国ばらばらなので,大阪だと分かるんですが,ほかの県だと分からないので,いろいろな人に尋ねながら,どの人が被害者のことを一生懸命やってくださるか,そして今必要なことは何か。時期があるので,やはりすぐに見つけます。早く終わってしまうので。
● 山崎 そのあたりをもし,例えば公的な制度として速やかに弁護士がつくような,かつ,ちゃんと中身が伴わないと当然だめだというのが大前提ですけれども,そういうのは構想としては被害者の方々のお気持ちとしてもおありになると考えてよろしいんでしょうか。
● 望月 そうですね。やはり一般の刑事裁判と同じように,少年事件の被害者の方にもそれなりの専任の弁護士を付けるとか,あるいは保護司さんでも専任の保護司さんが付くとかということは,是非検討していただきたいというふうには思っています。
● 武 私たちもそれを願っています。でも,私は弁護士さんというのは基本的には被疑者に付くのが仕事だと思っているので,それはまだゆっくりでいいです。でないと,とても苦労される方がおられるんです。被害者の何が知りたいということが分からない人がいるわけです。例えば,被害者は加害者に自分の子供がどんなことをされたか,右から殴られたか,左から殴られてどう倒れたか知りたいんです。でも,その弁護士さんは分からないので,「それは余り関係がない。死んでしまった事実があれば損害賠償はできる。」というようなことをおっしゃるわけですね。そういう発想は,私は後で分かったんですが,間違ってはいないんです。でも,被害者の遺族のことを分かっていれば,右から殴られ,左から殴られは大事なんですね。だから,慌ててできることではないと思うんですね。やはり今まで被疑者に付いておられるのが仕事なので,そうなるんだと思います。だから,それは慎重に考えて,でも,できたらうれしいと思います。
● 甲斐 ほかに何かございますでしょうか。
● 望月 ちょっと視点が違うんですけれども,ちょっと裁判所の方にお伺いしたいんです。私たち,少年が交通事故を起こした講習会というんですか,割と自損事故ですとか,被害者がいても二,三週間の傷害というような形,あるいは無免許の少年に保護者とともに一緒に来てもらうという講習会にゲストスピーカーとして自助グループの被害者の方が行って,それの付添いで行っているんです。それは結果としてもう3回ぐらいやっているんですけれども,結果はとてもいい結果で,やはりそれがあるとないとでは違うというような御報告をいただいているんですが,私がその場で感じたことは,要するに集まってもらう加害者と,その保護者に対して,担当の調査官の方がとても優しいというか,お客様に対するような態度というか,そういう感じを非常に受けたんですね。そのことはそのときにも申し上げたんですけれども,やはり何かそういう構えがあって,実は「これというのは,こちらから来てくださいと言って来ていただくものなんですか。あるいは,こういうものがありますから参加する方はしてくださいというものなんですか。」と聞いたら,それは招集するものだというふうにおっしゃって,当然の義務として,事故を起こした者は講習会を受けるんだ。そこで裁判官から審判を下されるというようなことを聞いたんですけれども,そういう場であるにもかかわらず,グループワークにしても,何か少年から意見を聴取するに際してもとても優しくて,学校の先生が生徒にするような対応の仕方だったんですね。そうすると,やはり来た方も,何か襟を正すというか,自分はこういう事件を起こしてしまって,こういう講習を受けなければいけないんだというような心構えみたいなものが,そこで既に弱まってしまうんじゃないかなという印象を受けました。そのあたりはどうなんでしょうか。やはりかかわる場合にどういうような態度というか,どういうような対応をされているのかなとすごく疑問を感じたんですね。
● 河原 それは,刑事裁判を傍聴された裁判官の態度なんかとは全然違うという御印象ですか。
● 望月 もちろん裁判官の方なんかでも,人によっては「黙秘権があるんですよ。」みたいな,傍聴していると,被害者が聞くと「あれは何だ。」というような態度をされる方もいるんですけれども,そうじゃなくて,何か和気あいあいとした場みたいになってしまっているような感じがして,決して「君たちはこういう事故を起こしたんだから,こういう講習を受けて,こういうことを今考えなさい。」みたいな,そういう感じではなかったので,一緒にいた被害者の方も,「これじゃどれぐらい伝わるか分かりませんね。」というようなコメントをされていたものですから,そのあたりの認識というのはどうなのかなと。例えば軽微なものじゃなくても,重大な犯罪を犯した少年なんかに対しても,どういう態度で,あるいはどういう立ち位置から接しているのかなって,ちょっと知りたいなと思いまして。
● 河原 それも12年の改正で変わりまして,今までも決して和気あいあいとやっていたとは思わないのですけれども,少年の内省を促すようなものにしなければいけないというように改正され,それも当然のことを明文化しただけではないかと思います。個別の事案によって,あるいはその調査官の個性によって,あるいは,来ている少年,保護者の心構え等々によって,望月さんが見られたものについて,これはというのがあったのかもしれませんけれども,調査官は調査官なりに,やはりどのようにやっていくのが,この事件での少年や保護者に対しては一番効果的かということをいろいろ考えてやっているわけです。ただ,望月さんたちから,それが和気あいあいと見られたのであれば,それはまことに残念なことで,そのように感じたとは思いますけれども,そのように見られないようにするように,また我々もそのようなお話などを研修の場などでも伝えていきたいと思っております。
● 望月 分かりました。ありがとうございました。
● 武 一つ聞いてもいいでしょうか。少年の処分が決定してから3年以内に閲覧やコピーができるとなっているんですね。大人の場合はもっとあると聞いているんですが,何か調書とかを見られるのが大人も3年なんですか。
● 甲斐 大人も一応3年が基準になります。
● 武 これは,やはり民事の期限が3年だからでしょうか。
● 甲斐 そういったところを参考にしているからだろうと思います。
● 武 3年を過ぎてからやはり見たいという人も出てくるわけですね。1年,2年,三回忌を終えて,初めて,もう少し経たないと落ち着かないという人が多いんですね。ですから,これはもっと広げられないものかなというふうにも思ってしまいました。
 それと,この審判手続が開始された後というのと,裁判所に送られた後というのはどう違うのか,少し聞きたいんですが。この申し出ができる期間というのがありまして,審判手続が開始された後って,これ,一緒だと感覚で思っていたんですが,これは大きく違うんでしょうか。
● 河原 これは条文の要件に沿ってそのまま書いているだけなんです。武さんたちのような重大事件だと,ほとんど審判開始は必要になるんですけれども,全体の多くの事件を見ますと,本当に軽微な万引きのような,それも初回のようなものになりますと,家庭裁判所に事件が係属いたしましても審判は開かれないと,そういうものもございますので,条文上はそういう要件を切り分けているということです。
● 武 そうですか。分かりました。
 もう一つお願いがありました。少年による性被害の犯罪なんですが,出てからの情報を知りたいというものです。その人は亡くなってはいないので,被害に遭った人のお母さんなんですけれども,知りたいという場合に,大人の性犯罪であれば手続の用紙が検察庁にあるんです。そのお母さんは自分で動かれるお母さんだったので検察庁に聞きに行くと,大人の犯罪の場合の用紙はあるけれども,少年の性被害の犯罪の場合の用紙はまだないとおっしゃっていました。そして,「大人の犯罪に一応書いてください。これはどうなるかは分かりません。」ということを言われたそうなんですが,やはりそういうことも大人と少年で差があっては私はいけないと思うんですね。そのお母さんもおっしゃいました。「うちは大人とか少年とか,そういうものは関係がないんだ。たまたま少年であったわけで,なぜこんなに違うんだろう。」ということをおっしゃっていたので,そういうところももっと考えていただきたいなと思います。
● 甲斐 今おっしゃったのは,刑務所なり少年院に入って出るときに,出ましたよとか,そういう情報をもらいたいということでよろしいでしょうか。
 おっしゃるように,成人の場合については出所情報の提供という制度を既に設けておりまして,被害者の方の御希望があれば,それは結構後の話になりますので,先に申込書を書いておいてもらって,後を引き継いで,出そうなときにまたお知らせするという仕組みをとっております。それで,少年については,実は今まさに検討中で,まさに今までが結構かたく運用してきていたということもあって,そういう制度自体が今までは少なくとも存在はしていなかったので,おっしゃられたような取扱いになるのだろうと思いますが,さはさりながら,このままでいいと我々も思っているわけではなくて,どういう形で提供できるようにするのが一番いいのか,今度また少年と成人の場合では,それこそ少年院とか,あるいは別の機関も関係してきますので,そこら辺の仕組みをどうするかということもあって,いままさに検討中の課題になっております。
 ほかに御質問,御意見等ございますでしょうか。
● 松尾 武さんの説明された意見書について,一つ単純な質問なんですけれども,損害賠償について国の立替払ということも考えた方がいいという御指摘ですが,その結びのところに税金の投入は絶対にすべきでないと書かれているのは,あくまで加害者本人から徴収せよという御趣旨でしょうか。
● 武 分かります。立替払はしてほしいんですね。なぜかというと,追いかけるのが大変だからです。行方不明になったり,そして,自分のところは財産がないからと言って隠していても分からないというのがあるので,やはり国がしっかりとそれを追いかけてほしいので,まずは国が立替払してほしいんですが,それで終わってしまえば加害者は喜ぶわけです。
● 松尾 終わらないと思いますよ。少なくとも財務省はしっかりやるでしょう。
● 武 だから,しっかりとその立替払した分を,加害者からやはりずっと取り続けていただきたい。それは追いかけられると思うんです。そういう意味です。だから,それで済ませては絶対いけませんよということです。
● 甲斐 ほかにございませんか。
 今日は武内先生は余り御発言がなかったようですが,いかがでしょうか。
● 武内 では,私は武さんにちょっとお伺いさせてください。
 今,成人の刑事裁判では,先ほど松尾先生からお話があった,在廷といって法廷の中に入れるようにするかどうかということとあわせて,被害者が直接被告人に質問をするというような,一定の範囲で裁判の手続にかかわるというようなことを議論されています。武さんの個人的なお気持ちで結構ですけれども,もし当時そういう制度があったとしたら,傍聴を超えて,さらに加害少年に質問をしたり,意見陳述は今もできるけれども,直接いろいろ聞いてみたいとかというようなお気持ちはありますか。それとも,あるいはほかの人なんかを見ていて,いや,そこまでかかわろうという気持ちになかなかなれないというような実情がおありなのか。そのあたり,少し教えてもらえますか。
● 武 私はないと思います。傍聴して意見陳述をして,それも必要なときに,例えば私は民事裁判の経験しかないんですが,真ん中で言わせてもらって,最後にまたもう一回言わせてもらうとか,それで私は満足したと思います。専門家ではありませんので,今も在廷ということを言われていますが,そんなに専門的なことは分かるわけではないので,そこまで入ろうとは私は思ってはいないです。求刑も思ってはいない。求刑まで入れるでしょう。そうしたら,遺族はみんな死刑と言うかもしれない。そうしたら,かえって何か悪いイメージになってしまうというのを私は恐れるというか,そっちの方を心配します。でも,すごく検察官が変わってきました。被害者に代わって感情を出したり,被害者に代わっていろいろなことを言ってくださったり,私はそういう姿を見て,遺族の人が「ああ」と言うのを横で見ています。
● 久木元 よろしいですか。武さん,すみませんが,いただいた書面について少し御趣旨を明確にしておきたいと思うのです。保護者の責任という(4)ですが,これを以前から私も拝見していて,親にも責任があるということを明文化してもらいたいということなのですが,責任という場合,おっしゃるような刑罰を受けろということなのか,あるいは,そのほかの何らかの責任のとり方を制度として作れということなのか,あるいは,親にもいわゆる精神的な規定といいますか,子供をこういうことにするのには親にも責任があるんだから,そういうことを自覚させるようにしなければいけないというような御趣旨なのか,その辺はどのようなものを保護者の責任という言葉でおっしゃっておられるのか,教えていただけますでしょうか。
● 武 それは,やはり保護処分で済ますのであれば,だれかが責任をとらないといけないと思っているので,そういった意味で明文化してほしいんです。例えばここに保護処分で,私はどうしても死亡事件の遺族のことを頭に入れて話をするんですが,大体が民事裁判になるわけですね。そうしたら,損害賠償金を請求された場合は親がしっかりしなさいとか,しっかりと一緒になって払っていきなさいとか,そういった意味で,はっきりとした責任を負わせてほしいんですね。指導しなさいとか,何かそういうあいまいなものではしないので。損害賠償金請求,勝訴しても払わない本人も多いですし,本人が破産をしたりもするんですね。少年ですから,何か居場所が定まらなかったりもする特徴もあるんです。ですから,しっかりと親がそういう場合は代わってちゃんとしなさいよというようなことをやはり明文化してほしいと思います。
● 久木元 もっぱらということというか,かわりに施設に入れとか,あるいはそういうことではなくて……。
● 武 それも言いたいです。私はそう思っていますけれども。
● 久木元 ここに書かれてあるのは,損害賠償なんかの責任があるのであれば,それをきちんと親に履行させるような法律にしてもらいたいということでしょうか。
● 武 でも本当は,保護処分で済ますのでは親も一緒に入りなさいとは言いたいです。感情的には思っています。そうでないと,親は子供のしたことだと言って逃げるんですね。ものすごくみんな苦労しているんです。
● 甲斐 よろしいでしょうか。
● 武内 では,もう一つ武内から確認というか,お伺いさせてください。武さんからいただいた意見書の1枚目ですかね。検察官送致についてというところの中に,「私たちは必ずしも刑事処分や厳罰化を求めているわけではありません。大切な子どもがいつ,誰に,どのように殺されたのかという事実を知りたいのです。」と書いてございます。逆送をしてもらいたいんだというお気持ちの中には,先ほどもおっしゃっておられたけれども,公開の手続で見えるところでやってもらいたいというお気持ちが強いというふうに伺ってよろしいですか。
● 武 強いんです。そうです。
● 武内 逆に言うと,少年事件の少年審判の手続が何らかの形で被害者の方たちに見えるものになったとしたら,ここにあるような,いつ,だれに,どのように殺されたかという事実が少年審判の中である程度明らかになるのであれば,必ずしも逆送を望むことではないんだというふうに伺ってもいいのでしょうか。
● 武 ですから,少年審判というものが,さっきも言ったように検察官の役割も違うし,そういうものが違うわけですから,そこで同じものになるわけではないですよね。ですから比べられない。それでは納得できない。
● 武内 必ずしも傍聴とか記録の閲覧・謄写だけではないんだということですね。対審構造をとっているかの違いとかもあるということですか。
● 武 あります。大きいです。
● 武内 分かりました。
● 甲斐 ほかにはございませんでしょうか。
 それでは,今日はこの辺で終わらせていただきたいと思います。
 次回は,最高裁の方から御意見をちょうだいして,また質疑応答をさせていただきたいと思います。
 次回は12月11日の午後1時30分からで,場所は同じ20階ですが,法務省の第一会議室で開きたいと思いますので,よろしくお願いします。
 今日はどうもありがとうございました。
-了-

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