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重大事由解除が認められた裁判例

事由 約款記載例(第一生命) 裁判例
保険金詐取目的の事故招致 (主契約1号)
保険契約者、被保険者または保険金もしくは年金の受取人が保険金または年金(保険料払込の免除を含みます。また、他の保険契約の保険金を含み、保険種類および保険金の名称の如何を問いません。以下本項において同じ。)を詐取する目的もしくは他人に保険金または年金を詐取させる目的で事故招致(未遂を含みます。)をした場合
(特約1号)
保険契約者、被保険者または給付金の受取人が給付金(他の保険契約の給付金等を含み、保険種類および給付の名称の如何を問いません。以下本項において同じ。)を詐取する目的もしくは他人に給付金を詐取させる目的で事故招致(未遂を含みます。)をした場合
(1) 被保険者が偽装の追突事故によって傷害を受けたように装い、災害入院給付特約に基づく保険給付金を詐取しようとする行為が、保険契約の信頼関係を破壊し、契約関係の継続を著しく困難にするものに当るとし、特別解約権の行使による解除を有効と認めたもの(東京地裁S63.5.23・判例時報1297号129頁)。
(2) 被保険者の供述の不自然さ、供述と受傷内容の乖離及び当該保険事故までに多数回に亘り傷害事故で他社傷害保険から保険金を受領していることなどから総合考慮して、故意に保険事故の発生を仮装したと推認されたもの(広島地裁H8.4.10・判例タイムズ931号273頁)。
(3) 交通事故の内容、申告の不自然さ、事故車両が廃車となっていること、10社にも及ぶ保険加入状況等が判明したことにより、故意による事故招致もしくは偽装事故と認められるとして解除が認められたもの(東京地裁H7.9.18、判例タイムズ907号264頁)。
詐欺的請求 (主契約2号)
保険金または年金の請求に関し、保険金または年金の受取人に詐欺行為があった場合(特約2号)
給付金の請求に関し、給付金の受取人の詐欺行為があった場合
(4) 死因と関係のない事故報告書を提出し、死亡証明書に死因が事故死であるかのように記載されるよう検察医に働きかけたことが、保険契約者と保険会社の信頼関係を根底から覆す行為であるとして、詐欺的請求に当るとして解除が認められたもの(福岡高裁H15.3.27・保険事例研究会レポート189号1頁)。
特約解除 (主契約3号)
保険契約に付加されている特約が重大事由によって解除された場合
(5) 特約の解除が認められた事例では、主契約の解除も認められている(例えば、下記札幌高裁H13.1.30のほか大分地裁H17.2.28・判例タイムズ1216号282頁等)。
過剰重複加入による保険制度目的背反 (特約3号)
他の保険契約との重複によって、被保険者にかかる給付金額等の合計額が著しく過大であって、保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合
(6) 住宅ローン債務を抱えながらの7社11件の保険加入状況と収入に比して過大な保険料支払、年収の約3倍の保険金受領、各入院時に頻繁に外出外泊を重ねていたことを総合すれば、過剰重複加入により保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合に当るとして解除が認められたもの(札幌高裁H13.1.30・保険事例研究会レポート178号1頁)。
(7) 保険料負担軽減のために既存契約を解除・減額せざるを得ない状況にありながら、その後まもなく5社8件の多額の保険に短期集中的に加入し、最後の加入日の責任開始日の直後に検診を受けて乳がんの確定診断を受けていることを総合すれば、過剰重複加入により保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合に当るとして解除が認められたもの(東京地裁H16.6.25・保険事例研究会レポート197号5頁)。
その他 (主契約4号)
その他保険契約を継続することを期待しえない第1号から前号までに掲げる事由と同等の事由がある場合
(特約4号)
その他この特約を継続することを期待しえない第1号から前号までに掲げる事由と同等の事由がある場合
(8) 短期集中の保険契約締結、覚せい剤使用、収入に比して過大な入院給付金、診療内容の不合理から、信頼関係が破壊されており、保険契約を継続することを期待しえない事由に当るとして解除が認められたもの(徳島地裁H8.7.17・生命保険判例集8巻532頁)。
(9) 入院給付金の請求に対して、自己の職業(他生命保険会社の営業職員)を偽った上での複数の保険会社との契約締結、生活状況に比して多額の保険料の支払い、短期間における複数の入院、疾病の性質上長期・継続的な入院治療の必要性の疑義があることから、詐欺無効の詐欺には当らないが、信頼関係を損ない、包括条項に当るとして解除が認められたもの(大阪地裁H12.2.22・判例時報1728号124頁)。
参考
(理論上の特別解約権及び遡及効が認められた事例)
(10) 生命保険金の詐取を試みた保険契約者兼被保険者が、自己に見せかけた他人を身代わりに殺害した後、不正請求が露見したため自殺したケースにおいて、身代わり殺人行為をした時点に遡って解約の効力発生を認めたもの(大阪地裁S60.8.30・判例タイムズ572号82頁)。

以上