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会社更生法改正要綱

平成十四年九月三日
法制審議会総会決定

(前注)  この要綱において「第…条」とあるのは、会社更生法の規定を示す。
 この要綱において引用する商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)の規定は、商法等の一部を改正する法律(平成十四年法律第四十四号、平成十五年四月一日施行予定)による改正後のものである。

総則関係

 更生事件の管轄及び移送
   原則的管轄
 更生事件は、更生会社の主たる営業所の所在地、外国に主たる営業所があるときは日本における主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄するものとする(第六条、破産法第百五条、民事再生法第五条第一項参照)。
   本店所在地の競合管轄
 一にかかわらず、更生手続開始の申立ては、更生会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所にもすることができるものとする(第六条参照)。
   親子会社の特則
 一にかかわらず、更生会社が商法第二百十一条ノ二第一項の親会社、他の株式会社が同項の子会社(注)に該当する場合、又は更生会社が同項の子会社、他の株式会社が同項の親会社に該当する場合には、更生手続開始の申立ては、当該他の株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする(民事再生法第五条第三項参照)。
   連結会社の特則
 一にかかわらず、更生会社が商法特例法第一条の二第一項の大会社、他の株式会社が同条第四項の連結子会社に、又は更生会社が同項の連結子会社、他の株式会社が同条第一項の大会社に該当するものとして同法第十九条の二又は第二十一条の三十二により連結計算書類が作成されている場合には、更生手続開始の申立ては、当該他の株式会社の更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
   大規模裁判所の競合管轄
 一にかかわらず、更生手続開始の申立ては、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にもすることができるものとする。
   複数の管轄裁判所の調整
 一から五までにより二以上の裁判所が管轄権を有するときは、更生事件は、先に更生手続開始の申立てがあった裁判所が管轄するものとする(破産法第百七条第三項、民事再生法第五条第六項参照)。
   専属管轄
 会社更生法に規定する裁判所の管轄は、専属とするものとする(第六条、第七十五条第三項、第八十二条第二項、第八十五条第二項及び第百四十八条参照)。
   更生事件の移送
 裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、更生事件を次に掲げる裁判所のいずれかに移送することができるものとする(第七条参照)。
     更生会社の営業所の所在地を管轄する地方裁判所
     更生会社の財産の所在地を管轄する地方裁判所
     二から五までに規定する地方裁判所
   更生債権等の査定に関する異議の訴えの移送
 裁判所は、五により更生事件が係属している場合(八の3により五に規定する地方裁判所に移送された場合を含む。)において、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、更生債権又は更生担保権の査定の申立てについての裁判に対する異議の訴え(第三十一の一参照)を一により管轄権を有する地方裁判所に移送することができるものとする(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第二条の四参照)。
      (注)  商法第二百十一条ノ二第三項により子会社とみなされるものを含むものとする(第二十三において同じ。)。

 送達及び公告
   送達すべき裁判
 更生事件に関する裁判のうち、送達すべきものは、個別に規定するものとする(第十条参照)。
   公告と併用される通知
 更生事件に関する裁判のうち、現行法において公告及び送達をしなければならないとされているもの(送達につき書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができるとされているもの(第十五条第一項参照)に限る。第四十七条第一項及び第二項、第五十一条第一項及び第二項等参照)については、公告及び通知(民事訴訟規則第四条第一項参照)をしなければならないとするものとする。
   公告の方法
 会社更生法の規定によってする公告は、官報に掲載してするものとする(第十二条第一項、民事再生法第十条第一項参照)(注)。
   送達に代わる公告
 会社更生法の規定によって送達をしなければならない場合には、原則として、公告をもって、これに代えることができるものとする(第十六条、破産法第百十七条、民事再生法第十条第三項参照)。
      (注)  公告の方法のうち、「裁判所の指定する新聞紙」に掲載してする方法(第十二条第一項)を廃止することに伴い、「掲示による公告」の制度(第十三条)も廃止するものとする。

三 監督行政庁に対する通知の見直し
 更生会社の業務を監督する行政庁に対する更生手続開始の申立ての通知等の制度(第三十五条第一項(第二百三十五条第二項、第二百七十二条第二項及び第二百八十一条第二項において準用する場合を含む。)、第四十八条(第五十一条第二項において準用する場合を含む。)、第百六十五条及び第二百条第二項)については、再生手続と同様に、通知先及び通知時期を限定するものとする(民事再生規則第六条参照)。

四 更生手続開始の登記等の廃止
 更生会社の財産に属する権利で登記又は登録をしたもの(不動産所有権等)に関しては、更生手続開始の登記、更生手続開始の取消しの登記、更生手続廃止の登記、更生計画不認可の登記、更生計画認可の登記及び更生手続終結の登記等(第十八条第一項(第十九条及び第二十二条において準用する場合を含む。))は、しないものとする(民事再生法第十二条参照)。

五 登記及び登録の嘱託に関する事務の書記官権限化
 更生手続に関する登記及び登録の嘱託の事務(第十七条から第十九条まで及び第二十二条)は、裁判所書記官が行うものとする(民事再生法第十一条、第十二条及び第十五条参照)。

六 更生手続開始前の牽連破産の場合における共益債権の財団債権化
 破産宣告前の更生会社について更生手続開始の申立ての棄却の決定が確定した場合において裁判所が職権で破産の宣告をしたとき(第二十三条第一項本文参照)、又は破産宣告後の更生会社について更生手続開始の申立ての棄却の決定の確定によって破産手続が続行されたとき(第二十五条参照)は、更生手続が開始されていれば共益債権となるはずであった、継続的給付を目的とする双務契約の相手方が更生手続開始の申立て後更生手続開始前にした給付に係る請求権(第百四条の二第二項)及び開始前の借入金等に係る請求権(第百十九条の三)は、破産手続における財団債権とする旨の明文の規定を設けるものとする(民事再生法第十六条第一項、第四項及び第五項参照)。

七 更生手続終了後職権破産宣告までの間の財産保全
 裁判所は、破産宣告前の更生会社について更生手続開始の申立ての棄却の決定をした後、破産の宣告をする(第二十三条第一項本文参照)までの間、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産法第百五十五条第一項(宣告前の保全処分)に規定する保全処分を命ずることができるものとする(注一)(注二)。破産宣告前の更生会社について更生手続廃止若しくは更生計画不認可の決定が確定し、又は破産宣告後の更生会社について更生計画認可の決定後に更生手続廃止の決定(第二百七十七条)が確定した後、破産の宣告をする(第二十三条第一項本文及び第二十六条第一項参照)までの間も、同様とするものとする。
      (注一 ) 保全処分の変更又は取消し、即時抗告(執行停止効)、送達等について、所要の規定を整備するものとする。
      (注二 ) 裁判所は、第二十三条第一項本文の規定による破産の宣告をしないこととした場合には、職権で、保全処分を取り消さなければならないものとする。この取消しの決定に対しては、不服申立てをすることはできないものとする。

 事件に関する文書等の閲覧等
   文書等の閲覧等の請求
 利害関係人は、原則として、裁判所書記官に対し、更生事件に関する文書等の閲覧及び謄写等の請求をすることができるものとする(民事再生法第十七条第一項から第三項まで参照)(注)。
   閲覧等の請求の時期的制限
 更生会社以外の利害関係人は、他の手続等の中止命令(第三十七条第一項及び第二項)等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとする。また、更生会社は、更生手続開始の申立てに関する口頭弁論又は更生会社の代表者を呼び出す審尋の期日の指定等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとする(民事再生法第十七条第四項参照)。
   支障部分の閲覧等の制限
 管財人が更生会社の財産の処分等をするにつき裁判所の許可(第五十四条参照)を得るために提出した文書等の一定の文書等について、利害関係人による閲覧及び謄写等が行われることにより、更生会社の事業の維持更生に著しい支障を生じ、又は更生会社の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分があることにつき疎明があった場合には、当該部分について閲覧等を請求することができる者を、当該文書等を提出した者、管財人等に限ることができるものとする(民事再生法第十八条参照)。
      (注)  文書等の閲覧等の制度を整備することに伴い、これと重複する関係にある書類の備置きの制度(更生手続開始の申立てに関する書類(第四十九条)、調査委員の調査報告又は意見に関する書類(第百一条の二)、権利届出の書類等(第百三十四条)、管財人の調査報告に関する書類(第百八十三条)、更生手続廃止の申立てに関する書類(第二百七十五条))は、廃止するものとする。

九 最高裁判所規則への委任
 更生手続に関し必要な事項は、会社更生法に定めるほか、最高裁判所規則で定めるものとする(民事再生法第二十条参照)。

更生手続の開始関係

 包括的禁止命令
   発令要件
 裁判所は、更生手続開始の申立てがあった場合において、個別の中止の命令(第三十七条第一項及び第二項)によっては更生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての更生債権者及び更生担保権者に対し、更生会社の財産に対する更生債権又は更生担保権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行としての競売の手続、企業担保権の実行手続、国税徴収法による滞納処分、国税徴収の例による滞納処分及び租税債務担保のために提供された物件の処分(以下「強制執行等」という。)の禁止を命ずることができるものとする。ただし、事前に又は同時に、更生会社の主要な財産に関し仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分をした場合(第三十九条第一項前段)又は保全管理人による管理若しくは監督委員による監督を命ずる処分をした場合(同項後段)に限るものとする(民事再生法第二十七条第一項参照)(注)。
   一定の範囲に属する更生債権等の除外
 裁判所は、相当と認めるときは、労働債権等の一定の範囲に属する更生債権又は更生担保権に基づく強制執行等を包括的禁止命令の対象から除外することができるものとする。
   係属中の強制執行等に対する効力
 包括的禁止命令が発せられた場合には、更生会社の財産に対して既にされている強制執行等は、中止するものとする(民事再生法第二十七条第二項参照)。
   係属中の滞納処分等に対する効力
 更生会社の財産に対して既にされている国税徴収法による滞納処分、国税徴収の例による滞納処分又は租税債務担保のために提供された物件の処分に対する三の中止の効力は、更生手続開始の申立てにつき決定があったとき又は包括的禁止命令の日から二月を経過したときは、失われるものとする(第三十七条第三項参照)。
      (注)  包括的禁止命令に対する即時抗告、公告、送達及び通知、解除等について、所要の規定を整備するものとする(民事再生法第二十七条第五項、第二十八条及び第二十九条、第二の二参照)。

十一 保全段階における中止した強制執行等の取消しの制度
 裁判所は、更生会社の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、更生会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより、担保を立てさせて、他の手続等の中止命令(第三十七条第一項及び第二項)又は包括的禁止命令(第十)により中止した強制執行等の取消しを命ずることができるものとする(民事再生法第二十六条第三項及び第二十七条第四項参照)(注)。
      (注)  中止した国税徴収法による滞納処分等の取消しを命ずる場合においては、あらかじめ、徴収の権限を有する者の意見を聴かなければならないものとする(第三十七条第二項後段参照)。

十二 保全段階における商事留置権消滅請求
 更生会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)は、更生会社の財産の上に商法の規定による留置権が存する場合において、当該財産が更生会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、裁判所の許可を得て、当該財産の価額に相当する金銭を留置権者に弁済して、留置権者に対して、留置権の消滅を請求することができるものとする(第百六十一条の二参照)。

十三 更生手続開始の条件
 更生手続開始の条件を再生手続開始の条件と同様のものに改めるものとする(第三十八条、民事再生法第二十五条参照)。

十四 株主に対する送達の見直し
 更生会社がその財産をもって債務を完済することができないことが明らかであるときは、株主に対する更生手続開始の決定の通知(第四十七条第二項、第二の二参照)は、することを要しないものとする(注)。
      (注)  更生手続開始の決定の通知のほか、公告と併用される、更生手続開始の決定と同時に定めるべき事項に変更を生じた場合の通知(第四十七条第三項、第二の二参照)、更生手続開始の決定を取り消す決定が確定した場合の通知(第五十一条第一項及び第二項、第二の二参照)等についても、同様とするものとする。

十五 労働組合又は使用人代表の手続関与
 更生会社の使用人の過半数で組織する労働組合(これがないときは、使用人の過半数を代表する者。以下同じ。)の手続関与については、現行法及び民事再生法と同様のもの(第百九十五条、同法第四十二条第三項、第百十五条第三項、第百二十六条第三項、第百六十八条並びに第百七十四条第三項及び第五項、第十八の二の1並びに第三十六の二の3及び四の3参照)とするほか、次のとおりとするものとする。
   更生手続開始の申立てについての決定前の意見聴取
 裁判所は、更生手続開始の申立てについての決定をするには、当該申立てを棄却すべきこと又は更生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合を除き、労働組合の意見を聴かなければならないものとする。
   管財人の選任についての意見陳述の機会の付与
 裁判所は、財産状況報告集会を招集しない場合には、管財人の選任について一定の期間内に書面で意見を述べることができる旨を労働組合に通知するものとする(第三十六の四の4参照)。

十六 法務大臣及び金融庁長官の手続関与
 法務大臣及び金融庁長官に対する更生手続開始の決定の通知、更生計画案に対する法務大臣及び金融庁長官の意見陳述等の制度(第四十八条(第五十一条第二項において準用する場合を含む。)、第百六十五条、第百九十四条第一項及び第三項、第二百条第二項並びに第二百三十二条第二項)は、廃止するものとする(注)。
      (注)  金融庁長官の手続関与に関する制度を廃止することに伴い、証券取引法の特例(第二百六十六条)も廃止するものとする。

七 担保権の実行禁止の一部解除
   一部解除の許可
 裁判所は、更生会社の特定の財産が事業の更生のために必要なものでないことが明らかであるときは、第六十七条第一項の規定にかかわらず、更生計画案について決議をするための関係人集会を招集する旨の決定(第三十六の五の1参照)又は更生計画案を書面による決議に付する旨の決定(第五十参照)がされるまでの間において、管財人の申立て又は職権により、当該財産の上に存する担保権について、その実行としての競売手続を行うことを許可することができるものとする(第六十七条第六項照)。
   裁判所への報告
 管財人は、更生担保権者から一の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならないものとし、申立てをしないこととした場合には、遅滞なくその事情を裁判所に報告しなければならないものとする(第百十二条の二第三項参照)。
   担保権の実行による換価代金
 一の許可のあった特定の財産に係る担保権の実行としての競売手続における換価代金については、更生計画において、その額を明示し、その更生計画認可後の使途を定めなければならないものとし、更生計画認可の決定があったときは、管財人に交付するものとする(注一)(注二)。
      (注一 ) 更生計画認可の決定があるまでに換価が終了していないときは、その後、換価が終了したときに、換価代金を管財人に交付するものとする。
      (注二 ) 中止した手続の続行命令があった場合(第六十七条第六項参照)についても、三と同様の規律を設けるものとする。

八 営業の全部又は重要な一部の譲渡についての規律
   更生手続によらない営業の全部又は重要な一部の譲渡の禁止
 更生手続開始後その終了までの間は、更生手続によらなければ、更生会社の営業の全部又は重要な一部の譲渡(商法第二百四十五条第一項第一号参照)をすることはできないものとする(第五十二条第一項参照)。
   更生計画認可前の営業の全部又は重要な一部の譲渡
     一にかかわらず、更生手続開始後、更生計画案について決議をするための関係人集会を招集する旨の決定(第三十六の五の1参照)又は更生計画案を書面による決議に付する旨の決定(第五十参照)がされるまでの間において、管財人は、裁判所の許可を得て、更生会社の営業の全部又は重要な一部の譲渡をすることができるものとする。この場合において、裁判所は、当該会社の事業の更生のために必要であると認める場合に限り、許可をすることができるものとする(民事再生法第四十二条第一項ただし書参照)(注一)。
    2(一)  管財人は、1により更生会社の営業の全部又は重要な一部を譲渡しようとする場合には、あらかじめ、次の事項を公告し、又は株主に通知しなければならないものとする(注二)。
     
(1)  譲渡の相手方、時期、対象となる営業の内容及び対価
(2)  譲渡に反対する意思を有する株主は、公告又は通知があった日から二週間以内にその旨を書面をもって管財人に通知すべき旨
    (二)  裁判所は、(一)の(2)の二週間の期間内に、更生会社の総株主の議決権の三分の一を超える議決権を有する株主が、書面をもって管財人に譲渡に反対する意思を有する旨の通知をしたときは、1の許可をすることができないものとする。
    (三)  更生会社がその財産をもって債務を完済することができない場合には、(一)及び(二)の規律は、適用しないものとする。
      (注一 ) 民事再生法と同様に、更生債権者及び更生担保権者並びに労働組合からの意見聴取、許可を得ないでした営業譲渡の効力について、所要の規定を整備するものとする(同法第四十二条、第十五参照)。
      (注二 ) 二の1の許可の申立ては、2の(一)の公告又は通知があった日から一月を経過する前にしなければならないものとする。

九 取締役等の競業避止義務
   取締役及び執行役の競業避止義務
     取締役及び執行役は、第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与された場合を除き、競業行為(商法第二百六十四条第一項参照)をするには、管財人に対し、当該取引に関する重要な事実を開示して、その承認を受けなければならないものとする。
     1の取引をした取締役又は執行役は、遅滞なく当該取引についての重要な事実を管財人に報告しなければならないものとする。
     取締役又は執行役が1に違反して自己のために取引をしたときは、管財人はこれをもって更生会社のためにしたものとみなすことができるものとする。ただし、当該取引の時から一年を経過したときは、この限りでないものとする。
     取締役又は執行役が1に違反して取引をしたときは、当該取引により取締役若しくは執行役又は第三者が得た利益の額は更生会社が被った損害の額と推定するものとする。ただし、管財人が3の本文により、当該取引を更生会社のためにしたものとみなしたときは、この限りでないものとする。
     保全管理人が選任されている場合についても、1から4までに準じた取扱いをするものとする。
   管財人等の競業避止義務
     管財人は、競業行為をするには、裁判所に対し、当該取引に関する重要な事実を開示して、その許可を得なければならないものとする。
     1の取引をした管財人は、遅滞なく当該取引についての重要な事実を裁判所に報告しなければならないものとする。
     管財人が1に違反して自己のために取引をしたときは、当該管財人以外の管財人はこれをもって更生会社のためにしたものとみなすことができるものとする。ただし、当該取引の時から一年を経過したときは、この限りでないものとする。
     管財人が1に違反して取引をした場合には、一の4と同様に取り扱うものとする。
     保全管理人の競業行為についても、1から4までに準じた取扱いをするものとする。

十 取締役等の報酬
   取締役、執行役及び監査役の報酬
 取締役、執行役及び監査役は、保全管理人が選任されている間及び更生手続開始後その終了までの間の報酬を請求することができないものとする。ただし、第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与されている間の報酬は、請求することができるものとする。
   報酬の額
 一のただし書の報酬の額については、管財人が、裁判所の許可を得て定めるものとする。

更生手続の機関関係

二十一 管財人、管財人代理、保全管理人及び保全管理人代理の選任
 管財人、管財人代理、保全管理人及び保全管理人代理については、第七十二条第一項第一号の規定による査定の処分を受けるおそれがある者を選任することはできないものとする(第九十四条、第九十八条、第四十三条第一項において準用する第九十四条及び第四十一条参照)。

二十二 数人の管財人の職務執行の見直し
 管財人が数人あるときは、共同してその職務を行うものとするが、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することもできるものとする(第九十七条第一項、民事再生法第七十条第一項参照)。

二十三 管財人等による更生会社の子会社等の調査権
 更生会社が商法第二百十一条ノ二第一項の親会社又は商法特例法第一条の二第一項の大会社に該当する場合には、管財人、保全管理人、監督委員及び調査委員は、その職務を行うため必要があるときは、商法第二百十一条ノ二第一項の子会社又は商法特例法第一条の二第四項の連結子会社に対し、業務及び財産の状況につき報告を求め、又は当該子会社若しくは連結子会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする(第九十八条の二第一項、商法第二百七十四条ノ三、商法特例法第十九条の三参照)。この場合において、当該子会社又は連結子会社は、正当な理由があるときは、報告又は検査を拒むことができるものとする(注)。
      (注)  子会社又は連結子会社の取締役等が正当な理由なく報告若しくは検査を拒み、又は虚偽の報告をした場合について、所要の罰則を設けるものとする。

二十四 監督委員による調査報告
 裁判所は、監督委員に対し、更生会社の取締役等が管財人又は管財人代理の職務を行うに適した者であるかどうか(第九十四条参照)についての調査を命じ、その結果を報告させることができるものとする。

二十五 調査委員制度の整備
 調査委員の制度(第百一条から第百一条の三まで)について、利害関係人に申立権を認める等、所要の見直しを行うものとする(民事再生法第六十二条及び第六十三条参照)。

更生債権、更生担保権等の各種の権利の取扱い関係

二十六 更生計画によらない弁済の制度
 少額の更生債権又は更生担保権を早期に弁済しなければ更生会社の事業の継続に著しい支障を来す場合には、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより、その弁済をすることを許可することができるものとする(第百十二条の二第四項及び第百二十三条第三項参照)。

二十七 議決権の算定における無利息債権の中間利息分の取扱い
 更生手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のものを有する更生債権者等は、更生手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する法定利息を債権額から控除した額の議決権を有するものとする(第百十四条、民事再生法第八十七条第一項第一号参照)。

二十八 使用人の預り金の取扱い
 更生会社の使用人の預り金のうち、共益債権として請求することができる範囲は、更生手続開始前六月間の給料の総額に相当する額又は当該預り金の額の三分の一に相当する額のいずれか多い額とするものとする(第百十九条後段参照)。

二十九 劣後的更生債権制度の廃止
 劣後的更生債権の制度(第百二十一条)を廃止して、現行法において劣後的更生債権とされている請求権については、次のように取り扱うものとする。
   更生手続開始後の利息等
 更生手続開始後の利息、更生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金並びに更生手続参加の費用の請求権(第百二十一条第一項第一号から第三号まで)については、債権の届出(第百二十五条第一項及び第二項参照)、調査(第百三十二条及び第百三十五条参照)及び確定(第百四十三条参照)並びに組の分類(第百五十九条第一項参照)の点において通常の更生債権とは区別せず、当然に他の更生債権に後れる(第百二十一条第二項本文参照)ものともしないが、他方で、議決権は有しないものとし、更生計画において衡平を害しない限り別段の定めをすることができるものとする(民事再生法第八十四条第二項、第八十七条第二項及び第百五十五条第一項ただし書参照)。
   開始後債権
     更生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第百二十一条第一項第四号)については、「開始後債権」とし、更生手続が開始された時から更生計画で定められた弁済期間が満了する時までの間は、弁済等をすることができず、更生会社の財産に対する強制執行等の申立てはすることができないものとする(第百二十一条第二項本文、民事再生法第百二十三条参照)。
     更生計画において、開始後債権を明示しなければならないものとする。
   更生手続開始前の罰金等
 更生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料並びに更生手続開始前の租税等で届出のないものの請求権(第百二十一条第一項第五号及び第六号)については、現行法における取扱い(第百二十一条第二項及び第三項、第百五十七条、第百五十九条第一項ただし書、第百七十二条第二号、第二百二十八条第二項並びに第二百四十一条ただし書)を維持するものとする(民事再生法第八十七条第二項、第九十七条、第百五十五条第三項、第百七十八条ただし書及び第百八十一条第三項参照)。

十 債権質の目的たる債権の第三債務者の権利供託の制度
   第三債務者の権利供託
 更生担保権に係る質権が金銭債権を目的とするときは、当該金銭債権の債務者は、当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託してその債務を免れることができるものとする。
   供託の効果
 一の質権を有する者は、供託金の上に質権者と同一の権利を有するものとする。

十一 更生債権及び更生担保権の調査及び確定の手続
   更生債権等の調査及びその内容の確定の手続
 民事再生法と同様に、更生債権及び更生担保権については、管財人が作成した認否書及び届出をした更生債権者若しくは更生担保権者又は株主の書面による異議により調査を行うものとし、管財人が認めず、又は届出をした更生債権者等が異議を述べた更生債権等の内容については、査定の手続及び査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えにより確定を行うものとする(第百三十五条から第百四十三条まで及び第百四十四条から第百五十六条まで、同法第九十九条から第百十二条まで参照)(注)。
   議決権の額の決定の手続
 民事再生法と同様に、議決権の額に関する確定の手続は設けないものとし、議決権の額について管財人が認めず、又は届出をした更生債権者等が異議を述べた場合には、裁判所が議決権を行使させるかどうか及びいかなる額につき議決権を行使させるかを定めるものとする(第百七十条第二項、同法第百十七条第三項及び第百七十二条第四項参照)。
      (注)  民事再生法と異なり、届出がされていない債権の自認の制度(同法第百一条第三項、第百二条第一項、第百四条第一項、第百五十七条第一項及び第百七十九条第一項参照)は設けないものとする。

十二 更生担保権に係る担保権の目的の価額の争いに関する手続
   価額決定の申立て
 更生担保権の査定の申立て(第三十一の一参照)をした更生担保権者は、更生担保権の調査において担保権の目的の価額につき争いがあった場合には、担保権の目的の価額を定めるため、当該査定の申立ての相手方の全員(更生担保権の調査において担保権の目的の価額を争わなかった者を除く。)を相手方として、裁判所に価額決定の申立てをすることができるものとする。
   価額決定の申立期間
 価額決定の申立ては、更生担保権の査定の申立てがあった日から二週間の不変期間内にしなければならないものとする。やむを得ない事由がある場合には、更生担保権の査定の申立てをした更生担保権者の申立てにより、この期間を伸長することができるものとする。
   価額を定める決定
 裁判所は、価額決定の申立てを不適法として却下する場合を除き、評価人を選任し、担保権の目的の価額の評価を命じなければならないものとする。裁判所は、評価人の評価に基づき、決定で、担保権の目的の価額を定めなければならないものとする。
   不服申立て
 価額決定の申立てをした更生担保権者及び価額決定の申立ての相手方は、価額決定の申立てについての裁判に対して、即時抗告をすることができるものとする。
   更生担保権の査定の申立て等との関係
     価額決定の申立期間が経過した後(価額決定の申立てがあった場合には、当該申立てについての裁判が確定した後)でなければ、更生担保権の査定の申立てについての裁判は、することができないものとする。
     更生担保権の査定の裁判及び査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えの手続においては、ア.担保権の目的の価額を定める確定決定があるときは、その確定決定において定められた価額に拘束され、イ.担保権の目的の価額を定める確定決定がないときは、更生担保権の調査において争いがなかった価額に拘束されるものとする。
      (注)  価額決定の申立てに係る手続費用(評価人による評価に要する費用を含む。)の予納及びその負担について、所要の規定を整備するものとする(民事再生法第百四十九条第四項及び第五項並びに第百五十一条第一項及び第二項参照)。
三十三 後順位担保権者の更生担保権確定訴訟の帰趨と更生担保権額
 同一の財産の上に複数の担保権が存する場合において、先順位の担保権に係る更生担保権の額が(その被担保債権の額が担保権の目的の価額を超えるとして)担保権の目的の価額と同額で確定した後に、後順位の担保権に係る更生担保権の確定手続において、担保権の目的の価額が先順位の担保権に係る更生担保権の額の確定の際に前提とされた価額より高額であるとされたときは、後順位の担保権に係る更生担保権の額は、(先順位の担保権に係る確定更生担保権額ではなく)先順位の担保権の被担保債権の額を、当該確定手続における担保権の目的の価額から控除した額とするものとする。

十四 社債権者の手続参加
   議決権行使の届出
 社債管理会社(担保附社債信託法上の受託会社を含む。以下「社債管理会社等」という。)が設置された社債を有する者は、社債管理会社等により更生債権又は更生担保権の届出がされたとしても、更生計画案について決議をするための関係人集会を招集する旨の決定(第三十六の五の1参照)又は更生計画案を書面による決議に付する旨の決定(第五十参照)がされるまでの間に議決権行使の届出をしなければ、当該社債に係る議決権を行使することができないものとする(注一)(注二)。
   議決権行使の届出の届出事項
 議決権行使の届出をしようとする者は、その氏名又は名称及び住所並びにその有する社債の金額その他当該社債を特定するに足りる事項を裁判所に届け出なければならないものとする(注三)。
   議決権行使の届出に関する公告
 裁判所は、更生会社が発行する社債について社債管理会社等が設置されている場合において、更生手続開始の決定をしたときは、一の内容をも公告し(第四十七条第一項参照)、かつ、通知しなければならない(同条第二項、第二の二参照)ものとする。
      (注一 ) ただし、社債管理会社等により更生債権又は更生担保権の届出がされた社債を有する者であって、これとは別に更生債権又は更生担保権の届出をした者は、議決権を行使することができるものとする。議決権を行使することができる社債権者(議決権行使の届出をした者及び自ら更生債権又は更生担保権の届出をした者)から社債を譲り受けた者についても、同様とするものとする。
      (注二 ) 社債管理会社等が社債権者集会の決議により総社債権者のために議決権を行使することの授権を受けた場合(商法第三百九条ノ二第一項第二号参照)には、社債管理会社等が総社債権者のためにする議決権行使のみが認められるものとする。
      (注三 ) 更生債権者表及び更生担保権者表の記載事項(第百三十二条参照)に議決権行使の届出の有無を追加するものとした上で、裁判所書記官は、議決権行使の届出があった場合には、更生債権者表又は更生担保権者表にその旨及び社債管理会社等が社債権者のために各別に社債権者を表示することなく更生債権又は更生担保権の届出をしていたときは、届出をした氏名又は名称及び住所を記載しなければならないものとする。

十五 代理委員
   代理委員の選任勧告
 更生手続の円滑な進行を図るために必要があると認めるときは、裁判所は、更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、相当の期間を定めて、代理委員の選任を勧告することができるものとする。
   職権による代理委員の選任
     裁判所は、共同の利益を有する著しく多数の更生債権者、更生担保権者又は株主に対して一による勧告をした場合において、当該勧告を受けた者のうち代理委員を選任しない者があり、かつ、これらの者について代理委員を選任しなければ更生手続の進行に支障があると認めるときは、相当と認める者を、その同意を得て、代理委員に選任することができるものとする(公害紛争処理法第四十二条の八第一項及び第四十二条の九第一項前段参照)。
     1により代理委員が選任された場合には、当該代理委員は、その者のために代理委員が選任されている者(以下「本人」という。)が第百六十条第一項の規定により選任したものとみなすものとする(公害紛争処理法第四十二条の九第三項参照)。
     本人は、それぞれ、いつでも、1による選任により成立した自己と代理委員との間の委任関係を個別に解消することができるものとする。
     1により選任された代理委員は、正当な理由があるときは、裁判所の許可を得て辞任することができるものとする。
     1により選任された代理委員は、更生会社財産から、費用の前払及び償還並びに報酬を受けることができるものとする。その額は、裁判所が定めるものとする。
     5の費用の前払及び償還並びに報酬の請求権は、共益債権とするものとする。
     1により代理委員が選任された場合における当該代理委員と本人との間の関係については、民法第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十四条の規定を準用するものとする(公害紛争処理法第四十二条の九第四項参照)。

十六 関係人集会
   関係人集会の招集
 裁判所は、管財人、関係人委員会(仮称)(第三十九参照)、知れている更生債権者及び更生担保権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる債権を有する更生債権者若しくは更生担保権者又は総株主の議決権の十分の一以上を有する株主による申立てがあったときは、関係人集会を招集しなければならないものとし、これらの申立てがない場合であっても、相当と認めるときは、関係人集会を招集することができるものとする。ただし、更生会社がその財産をもって債務を完済することができないことが明らかであるときは、株主をもって構成する関係人委員会(仮称)及び株主は当該申立てをすることができないものとする(民事再生法第百十四条参照)。
   関係人集会の期日の呼出し等
     関係人集会の期日には、管財人、更生会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者、株主並びに更生のために債務を負担し又は担保を提供する者があるときは、その者を呼び出さなければならないものとする(第百六十四条第一項参照)。
     1にかかわらず、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主のうち議決権を行使することができない者は、呼び出さないことができるものとする(第百六十四条第二項参照)。
     関係人集会の期日は、労働組合に通知しなければならないものとする(第十五参照)。
     裁判所は、関係人集会の期日及び会議の目的である事項を公告しなければならないものとする(第百六十七条第一項参照)。
     関係人集会の期日においてその延期又は続行について言渡しがあったときは、1、3及び4は、適用しないものとする(第百六十七条第二項参照)。
   関係人集会の指揮
 関係人集会は、裁判所が指揮するものとする(第百六十六条参照)。
   財産状況報告集会
     更生会社の財産状況を報告するために招集された関係人集会(以下「財産状況報告集会」という。)においては、管財人は、第百七十九条各号に掲げる事項の要旨を報告しなければならないものとする(第百八十七条、民事再生法第百二十六条第一項参照)。
     財産状況報告集会においては、裁判所は、管財人、更生会社、届出をした更生債権者若しくは更生担保権者又は株主から、管財人の選任並びに更生会社の業務及び財産の管理に関する事項につき、意見を聴かなければならないものとする(第百八十八条、民事再生法第百二十六条第二項参照)。
     財産状況報告集会においては、労働組合は、2に規定する事項について意見を述べることができるものとする(民事再生法第百二十六条第三項、第十五参照)。
     財産状況報告集会が招集されない場合には、裁判所は、管財人の選任について一定期間内に書面で意見を述べることができる旨を利害関係人に通知するものとする。
   更生計画案決議のための関係人集会
     更生計画案の提出があったときは、裁判所は、更生計画案を書面による決議に付する場合(第五十参照)及び第二百七十三条第一号の規定により更生手続を廃止する場合を除き、その更生計画案について決議をするための関係人集会を招集するものとする(第二百条第一項、民事再生法第百七十一条第一項参照)。
     1の場合には、あらかじめ、更生計画案の内容又はその要旨を二の1に規定する者(二の2に規定する者を除く。)に通知しなければならないものとする(第二百条第二項、民事再生法第百七十一条第二項、第二の二参照)。

十七 議決権の不統一行使
   不統一行使の要件
 議決権を行使することができる更生債権者、更生担保権者及び株主は、更生計画案について決議をするための関係人集会期日(第三十六の五の1参照)前の裁判所が定める日までに、裁判所に対して書面でその旨を通知すれば、その議決権の一部を更生計画案に同意するものとして行使し、残部については不同意とし、又は棄権することができるものとする。
   公告及び通知
 一の「裁判所の定める日」は、公告し、かつ、議決権を行使することができる更生債権者、更生担保権者及び株主に通知しなければならないものとする。
   代理人による議決権の不統一行使
 代理人が委任を受けた議決権(自己の議決権を有するときは当該議決権を含む。)の全部を統一して行使しない場合についても、一と同様とするものとする。

十八 基準日による議決権者の確定
   基準日の指定
 裁判所は、更生計画案について決議をするための関係人集会を招集する旨の決定(第三十六の五の1参照)又は更生計画案を書面による決議に付する旨の決定(第五十参照)をした場合において、相当と認めるときは、一定の日(以下「基準日」という。)を定めて、基準日における更生債権者表、更生担保権者表又は株主名簿に記載され、又は記録されている更生債権者、更生担保権者及び株主を議決権者と定めることができるものとする(商法第二百二十四条ノ三第一項参照)。
   基準日の公告
 裁判所は、一の基準日を定めた場合には、その日をその二週間前までに公告しなければならないものとする(商法第二百二十四条ノ三第四項本文参照)(注)。
      (注)  株主名簿の閉鎖の命令の制度(第百三十条第二項及び第三項)は廃止し、株主の参加の許可の制度(第百三十一条の二)については、所要の見直しを行うものとする。

三十九 関係人委員会(仮称)
 裁判所は、更生債権者をもって構成する委員会、更生担保権者をもって構成する委員会又は株主をもって構成する委員会がある場合には、利害関係人の申立てにより、各委員会が更生手続に関与することを承認することができるものとし、承認の要件並びに承認を受けた委員会の権能及び地位については、再生手続における債権者委員会と同様のもの(民事再生法第百十四条及び第百十八条、第三十六の一参照)とするほか、次のとおりとするものとする。
   管財人による関係人委員会(仮称)の意見の聴取
 裁判所の承認があったときは、裁判所書記官は、その旨を管財人に通知しなければならないものとし、この通知があったときは、管財人は、遅滞なく、更生会社の業務及び財産の管理に関する事項について、当該承認を受けた委員会(以下「関係人委員会(仮称)」という。)の意見を聴くものとするものとする。
   管財人の関係人委員会(仮称)に対する報告義務
 管財人は、会社更生法の規定により財産目録、貸借対照表又は報告書を作成して裁判所に提出したとき(第百七十八条、第百七十九条、第百八十一条等参照)は、遅滞なく、当該書類を各関係人委員会(仮称)にも提出しなければならないものとする。ただし、当該書類について、支障部分の閲覧等の制限(第八の三参照)の申立てをしたときは、当該支障部分を除いたものを作成して提出することができるものとする。
   報告命令の申出
 各関係人委員会(仮称)は、それぞれ更生債権者、更生担保権者又は株主全体の利益のために必要があると認めるときは、裁判所に対し、更生会社の業務及び財産の管理状況その他更生会社の事業の更生に関し必要な事項について第百八十一条の規定により管財人に報告を命ずるよう申し出ることができるものとし、裁判所は、申出があった場合において、当該申出に相当の理由があると認めるときは、当該申出に係る事項について、第百八十一条の規定により管財人に報告を命ずるものとするものとする。
   費用の償還
 各関係人委員会(仮称)が更生会社の更生に貢献したときは、当該関係人委員会(仮称)の更生手続に対する関与に要する費用を負担した更生債権者、更生担保権者又は株主等は、裁判所がその貢献した程度を考慮して相当と認める額の範囲内で、共益債権者として当該費用の償還を請求することができるものとする。

十 保全段階における請求権の共益債権化
   保全管理人の行為によって生じた請求権の共益債権化
 更生会社の業務及び財産に関し保全管理人が権限に基づいてした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権は、共益債権とするものとする(第百十九条の三参照)。
   監督委員による共益債権化の承認
 更生会社(保全管理人が選任されている場合を除く。)が更生手続開始の申立て後更生手続開始の決定前にした、資金の借入れ、原材料の購入その他更生会社の事業の継続に欠くことができない行為によって生じた請求権を共益債権とするには、現行法どおり、裁判所が当該行為の許可をする必要があるものとする(第百十九条の三)が、裁判所は、監督委員に対し、共益債権化の許可に代わる承認をする権限を付与することができるものとする(民事再生法第百二十条第二項参照)。

十一 社債管理会社等の費用償還請求権及び報酬請求権
   費用償還請求権の共益債権化の事前許可
 更生手続開始後、社債管理会社等が裁判所の許可を得て社債管理事務を行った場合には、当該行為によって生じた更生会社に対する費用償還請求権(商法第三百三十六条第一項及び第三百三十七条参照)は、共益債権とするものとする。
   費用償還請求権の共益債権化の事後許可
 社債管理会社等が更生会社の更生に貢献したときは、当該社債管理会社等は、一の許可を得ていない社債管理事務によって生じた費用についても、裁判所がその貢献した程度を考慮して相当と認める額の範囲内で、共益債権者としてその償還を請求することができるものとする。
   報酬請求権の共益債権化の許可
 更生手続開始後における社債管理会社等の報酬請求権(商法第三百三十六条第一項参照)は、裁判所が相当なものとして許可をした限度において共益債権とするものとする。

四十二 代理委員等の報償金等の制度
 代理委員等の報償金等の制度(第二百八十七条)について、管財人に申立権を認める等、所要の見直しを行うものとする。

更生会社の財産の調査及び確保関係

十三 財産評定及び更生担保権に係る担保権の目的の評価
   財産評定における評価基準
 管財人は、更生会社に属する一切の財産につき更生手続開始の時における時価による評定をしなければならないものとする(第百七十七条参照)。
   更生担保権に係る担保権の目的の評価基準
 更生担保権に係る担保権の目的の価額は、更生手続開始の時における時価とするものとする(第百二十四条の二参照)。

十四 担保権の目的である財産の特別な換価制度
   申立て
 管財人は、裁判所に対して、ア.更生手続開始当時、更生会社の財産の上に特別の先取特権、質権、抵当権又は商法の規定による留置権(以下「担保権」という。)が存する場合において、イ.更生会社の事業の更生に必要であるときは、ウ.更生計画案について決議をするための関係人集会を招集する旨の決定(第三十六の五の1参照)又は更生計画案を書面による決議に付する旨の決定(第五十参照)がされるまでの間において、エ.当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付することにより、当該財産の上に存する担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする(民事再生法第百四十八条第一項参照)(注一)(注二)。
   価額の決定の請求
 一の申立てにおいて消滅すべき担保権とされている担保権を有する者(以下「担保権者」という。)は、管財人が当該申立ての際に提示した当該財産の価額について異議があるときは、裁判所に対し、当該財産についての価額の決定を請求することができるものとする(民事再生法第百四十九条第一項参照)(注三)。
   担保権の消滅
     管財人は、二の価額の決定の請求期間内にその請求がなかったときは一の申立てにおいて管財人が提示した価額に相当する金銭を、二の価額の決定が確定したときは当該決定において定められた価額に相当する金銭を、裁判所の定める期間内(当該期間の満了前に更生計画認可の決定があったときは、当該決定までの間)に納付しなければならない(民事再生法第百五十二条第一項参照)(注四)。
     担保権者の有する担保権は、裁判所に対する金銭の納付があったときに消滅するものとする(民事再生法第百五十二条第二項参照)。
   納付されている金銭の管財人に対する交付及び配当等の実施
 裁判所は、更生計画認可の決定があったときは、三の1により納付されている金銭を管財人に交付するものとし、更生計画認可前に更生手続が終了したときは、担保権者に対する配当又は弁済金の交付を実施するものとする(民事再生法第百五十三条参照)。
   更生計画の条項に記載すべき事項
 更生計画においては、三の1により裁判所に納付されている金銭の額を明示し、その更生計画認可後の使途を定めなければならないものとする。
   更生計画認可前における納付された金銭の管財人に対する交付
    1(一)  管財人は、裁判所に対し、三の1により納付された金銭のうち、消滅した担保権に係る被担保債権の元本の額並びに更生手続開始後二年を経過する時までに生ずべき利息及び損害金の額の合計額(同一の財産の上に存する複数の担保権を消滅させたときは、それらの合計額を合算した額)を超える部分の交付を申し立てることができるものとする(注五)(注六)。
    (二)  消滅した担保権に係る被担保債権の内容については、当該被担保債権に係る更生債権及び更生担保権の確定手続が終了する前においては、届出があった更生債権又は更生担保権の内容を前提とするものとし、確定手続が終了した後においては、確定した更生債権又は更生担保権の内容を前提とするものとする。
     消滅した担保権に係る担保権者のすべてが、三の1により納付された金銭の全部又は一部を管財人に交付することに同意したときは、管財人は、裁判所に対し、納付された金銭のうち、同意のあった金額の交付を申し立てることができるものとする(注六)。
      (注一 ) 民事再生法における担保権の消滅の制度と同様に、送達、即時抗告、根抵当権の担保すべき元本の確定等について、所要の規定を整備するものとする(同法第百四十八条参照)。
      (注二 ) この制度を設けることに伴い、商事留置権の消滅請求の制度(第百六十一条の二)は廃止するものとする。
      (注三 ) 民事再生法における担保権の消滅の制度と同様に、価額の決定について、所要の規定を整備するものとする(同法第百四十九条から第百五十一条まで参照)。
      (注四 ) 管財人は、財産の価額が確定した後において、六の1によれば交付を受けることができることとなる額があるときは、財産の価額からこれを控除した額の金銭を納付すれば足りるものとする。
      (注五 ) 管財人に交付されずに裁判所に留保されるべき額は、被担保債権の元本並びに更生手続開始後二年を経過する時までに生ずべき利息及び損害金で、消滅した担保権によって担保されていた範囲に限るものとする。
      (注六 ) 担保権者及び管財人は、六の1の(一)又は2の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

更生計画関係
四十五 更生計画による更生債権等の弁済期間
 更生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き(注)、担保があるときはその担保物の耐用期間又は十五年のいずれか短い期間、担保がないとき又は担保物の耐用期間が判定できないときは十五年の範囲内で、その債務の期限を定めるものとする(第二百十三条参照)。
      (注)  特別の事情がある場合には、二十年の範囲内で債務の期限を定めることができるものとする。
 また、更生計画の変更(第二百七十一条)をする場合についても、当初の更生計画認可の決定から十五年の範囲内で債務の期限を定めるものとし、特別の事情がある場合には、当初の更生計画認可の決定から二十年の範囲内で債務の期限を定めることができるものとする。

四十六 更生計画の定めに基づき発行する社債の償還期限
 更生計画の定めに基づき社債を発行する場合には、その償還期限を制限しないものとする(第二百十三条、第四十五参照)。

四十七 更生計画の定めに基づく新株発行
 更生計画の定めに基づき新株を発行する場合において新株の払込期日を更生計画認可の決定の日から三月以上を経過した日としなければならないとする制限(第二百二十二条第二項第二号及び第三項第三号)は、廃止するものとする。

十八 更生計画案の提出時期
   管財人の提出時期
 管財人は、更生手続開始の決定の日から一年以内の裁判所の定める日までに、更生計画案を作成して裁判所に提出しなければならないものとする(第百八十九条第一項参照)。
   更生会社、更生債権者、更生担保権者及び株主の提出時期
 更生会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主は、更生手続開始の決定の日から一年以内の裁判所の定める日までに、更生計画案を作成して裁判所に提出することができるものとする(第百九十条第一項参照)。
   提出時期の変更
 裁判所は、申立てにより又は職権で、一及び二の裁判所の定める日を変更することができるものとする(第百八十九条第二項及び第百九十条第二項参照)。

十九 書面投票制度
   書面投票の決定
 裁判所は、更生計画案について決議をするための関係人集会(第三十六の五の1参照)を招集するに当たり、相当と認めるときは、議決権を行使することができる更生債権者、更生担保権者及び株主であって当該関係人集会に出席しないものが裁判所の定める期間内に書面その他の最高裁判所規則で定める相当な方法をもって議決権を行使することができる旨の決定をすることができるものとする。
   公告及び通知
 一の決定をした場合には、関係人集会の期日及び目的の公告(第百六十七条第一項、第三十六の二の4参照)においてその旨をも掲げ、かつ、関係人集会の期日に呼び出すべき者(第百六十四条、第三十六の二の1及び2参照)に対して更生計画案の内容を通知する(第二百条第二項、第二の二及び第三十六の五の2参照)とともに、そのうち議決権を行使することができる者に対しては、更生計画案に同意するかどうかを裁判所の定める期間内に書面その他の最高裁判所規則で定める相当な方法で回答できる旨をも通知しなければならないものとする。

五十 書面による決議
 裁判所は、更生計画案の提出がされた場合において、相当と認めるときは、更生計画案を書面その他の最高裁判所規則で定める相当な方法による決議に付する旨の決定をすることができるものとする(民事再生法第百七十二条参照)(注)。
      (注)  書面による決議に付する旨の公告や更生計画案の内容の通知等について、所要の規定を整備するものとする(民事再生法第百七十二条第二項から第五項まで、第二の二参照)。

十一 更生計画案の可決要件等
   更生計画案の可決要件
 更生計画案を可決するには、更生債権者の組においては議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の同意、更生担保権者の組においては更生担保権の期限の猶予の定めをする更生計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の三分の二以上に当たる議決権を有する者、更生担保権の減免その他期限の猶予以外の方法によりその権利に影響を及ぼす定めをする更生計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の四分の三以上に当たる議決権を有する者、清算を内容とする計画案(第百九十一条参照)については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の十分の九以上に当たる議決権を有する者の同意、株主の組においては議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数に当たる議決権を有する者の同意を得なければならないものとする(第二百五条参照)。
   続行期日の指定
 更生計画案について決議をするための関係人集会(第三十六の五の1参照)において更生計画案が可決されるに至らなかった場合においても、更生債権者の組においては議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の三分の一以上に当たる議決権を有する者、更生担保権者の組においては議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者、株主の組においては議決権を行使することができる株主の議決権の総数の三分の一以上に当たる議決権を有する者がそれぞれ期日の続行に同意したときは、裁判所は、管財人、更生会社若しくは議決権を行使することができる更生債権者、更生担保権者若しくは株主の申立てにより又は職権で、続行期日を定めて言い渡さなければならないものとする(第二百六条参照)。

五十二 更生計画認可の決定に対する株主の即時抗告権
 更生会社がその財産をもって債務を完済することができない場合には、株主は、更生計画認可の決定に対して即時抗告をすることができないものとする(第二百三十七条第一項参照)。ただし、更生計画の条件が株主間で平等でないこと(第二百二十九条本文に違反すること)を理由としてする場合には、この限りでないものとする。

更生計画認可後の手続、更生手続の廃止関係

五十三 更生手続の終結時期(終結要件)
 更生計画の不履行が生ずることなく当該更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の三分の二の弁済を終えたときは、原則として、更生計画が遂行されることが確実であるものとして、更生手続終結の決定をしなければならないものとする(第二百七十二条第一項本文参照)。

十四 更生手続終了後における査定の手続及び異議の訴えに係る訴訟手続の帰趨
   更生債権等の査定関係(第三十の一参照)
     査定の手続
      (一)  更生計画認可前に更生手続が終了したときは、当然に終了するものとする。
      (二)  更生計画認可後に更生手続が終了したときは、継続するものとする。
     査定に関する異議の訴えに係る訴訟手続
      (一)  管財人が当事者となっている場合
 更生手続が終了したときは、中断し、更生会社においてこれを受け継がなければならないものとする。
      (二)  更生債権者、更生担保権者又は株主が当事者となっている場合
       
(1)  更生計画認可前に更生手続が終了したときは、当然に終了するものとする。ただし、当該訴訟手続が、更生債権者又は更生担保権者がその権利の内容の確定を求めるため更生手続開始当時に係属していた訴訟を受継したものであるときは、終了せずに中断し、更生会社においてこれを受け継がなければならないものとする。
(2)  更生計画認可後に更生手続が終了したときは、継続するものとする。
   第七十二条第一項第一号の査定関係
     査定の手続
 更生手続が終了したときは、当然に終了するものとする。
     査定に関する異議の訴えに係る訴訟手続
 更生手続が終了したときは、中断し、更生会社においてこれを受け継がなければならないものとする。

その他

五十五 その他
 その他所要の規定を整備するとともに、この改正に伴い、民事再生法その他の法令に所要の改正を加えるものとする。