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電子公告制度の導入に関する要綱

平成15年9月10日
法制審議会総会決定

第1  株式会社についての電子公告制度の導入
 1  電子公告の許容
 株式会社の公告は,官報・日刊新聞紙に掲げる方法によるほか,インターネットを利用する方法により行うこともできるものとする。

 2  電子公告の方法
 インターネットを利用する方法による公告(以下「電子公告」という。)は,当該公告内容を次に掲げる期間,当該電子公告のためのインターネットホームページ(以下「公告ホームページ」という。)に掲げることにより行うものとする。
  (1)  公告中に記載された期間又は法定の期間内に債権者や株主等が債権の申出,異議の申出,反対の意思の通知,株券の提出等の行為をすることができることとされている公告については,当該期間。
  (2)  貸借対照表(商法特例法上の大会社にあっては,貸借対照表及び損益計算書。以下「貸借対照表等」という。)の公告については,5年間。
  (3)  一定の日の2週間前又は3週間前に公告をしなければならないとされているもの(基準日・割当日の公告等)については,当該一定の日までの間。
  (4)  (1)から(3)までに掲げる公告以外の公告については,1か月間。

 3  短期的な公告の中断があった場合の取扱い
 2の(1)から(4)までに定める期間中に公告の中断(公告ホームページに公告の内容が掲げられず,又は不正確な内容が掲げられることをいう。以下同じ。)があった場合においても,次に掲げる要件のすべてを満たすときは,適法な公告が行われたものとみなすものとする。
  (1)  公告の中断があったことについて株式会社に故意若しくは重過失がないこと,又は正当な事由があること。
  (2)  公告の中断があった時間の合計が,公告ホームページに公告の内容を掲げるべき時間の10分の1以下であること。
  (3)  当該株式会社が,公告の中断があったことを知った後速やかに,その旨,公告の中断があった期間及び公告の中断の内容を当該公告に付して公告したこと。

 4  定款の記載事項
 電子公告を公告の方法とする株式会社の定款には,電子公告を公告の方法とする旨のみを定めれば足りるものとする。

 5  登記事項
 電子公告を公告の方法とする株式会社は,公告ホームページのアドレスを登記しなければならないものとする。

 6  調査機関による調査
  (1)  電子公告を行う株式会社は,当該公告の内容が当該公告の期間中,公告ホームページに掲載されているかどうかについて,調査機関の調査を受けなければならないものとする。
  (2)  調査機関は法務大臣の登録を受けるものとし,登録の要件その他調査機関がその業務を適確かつ円滑に遂行するようにするための所要の規定を整備するものとする。
  (3)  調査機関は,電子公告の終了後,当該電子公告についての調査の結果を当該電子公告をした株式会社(すなわち,当該調査の申請をした株式会社)に通知するものとする。
  (4)  調査機関の調査結果の通知書であって,当該調査機関が調査を行ったすべての日時において当該公告の内容が公告ホームページに掲載されていた旨の記載があるものは,それのみで,登記申請の際の添付書面としての「公告をしたことを証する書面」としての適格性を有するものとする。

 7  その他
  (1)  電子公告を公告の方法とする会社は,やむを得ない事由により電子公告をすることができない場合には,官報又は日刊新聞紙に掲げる方法によって公告をすることができるものとする。この場合においては,定款に,その旨及び公告をする方法を定めなければならないものとする。
  (2)  次に掲げる公告等は,廃止するものとする。
    ア  社債管理会社が弁済を受けた場合に社債管理会社がすべき公告及び通知(商法第309条第2項。同法第332条で準用)
    イ  株式会社から有限会社,有限会社から株式会社への,資本減少を伴わない,組織変更の決議の公告及び通知(有限会社法64条ノ3。同法67条5項で準用)
    ウ  株主代表訴訟の場合の公告又は通知(商法第268条4項)以外の訴え提起があった旨の公告(商法第105条第4項及び同項を準用する各規定)
  (3)  社債管理会社がすべき社債権者集会開催の公告(商法第320条2項)及び社債権者集会の決議の執行者がすべき社債の期限の利益喪失の公告(商法第335条)について,商法中改正法律施行法第61条の例外として,社債発行会社の公告の方法が電子公告であるときは,これらの公告は官報で行うこととする。
  (4)  清算の際の債権申出を促す公告(商法第421条第1項,同法第485条第2項及び第3項で準用)を電子公告によって行う場合には,公告の回数は1回で足りるものとする。
  (5)  法務省において,調査機関に調査の申請がされた電子公告についてのリンク集のホームページを開設する(調査機関に届出義務を課す。)ものとする。
  (6)  その他株式会社について電子公告制度を導入することに伴い,所要の規定を整備するものとする。

第2  貸借対照表等の公開の方法の見直し
 1  電子公告を公告の方法とする株式会社が貸借対照表等の公告をする場合には,第1の6にかかわらず,調査機関の調査を受けることを要しないものとする。

 2  電子公告を公告の方法とする株式会社による貸借対照表等の公告については,商法第283条第4項本文の規定にかかわらず,その全文を公告するものとする。

 3  電子公告を公告の方法としない株式会社(官報又は日刊新聞紙を公告の方法とする株式会社)は,現行法におけるのと同様に,貸借対照表等の公開を,電磁的公示の方法(商法第283条第5項)によって行うことができるものとする。

 4  電子公告を公告の方法とする株式会社については,商法第283条第4項ただし書及び5項を適用しないものとする。

 5  貸借対照表等の公告のための公告ホームページは,他の公告事項についての公告ホームページとは異なるアドレスとすることができるものとする。

第3  株式会社の各種債権者保護手続における個別催告の省略等
 1  合併及び資本減少・準備金減少における債権者保護手続並びに会社分割における承継会社がすべき債権者保護手続については,官報公告に加えて,日刊新聞紙による公告又は電子公告をも行った場合には,個別催告をすることを要しないものとする。

 2  会社分割における分割会社がすべき債権者保護手続については,官報公告に加えて,日刊新聞紙による公告又は電子公告をも行った場合には,不法行為によって生じた債権を有する者以外の債権者に対しては個別催告をすることを要しない(不法行為によって生じた債権を有する債権者に対しては個別催告を要する。)ものとする。

第4  有限会社の各種債権者保護手続における個別催告の省略等
 第3に準じた取扱いをするものとする。

第5  合名会社・合資会社の合併の際の債権者保護手続における個別催告の省略等
 合名会社・合資会社の合併のうち,合併後に無限責任社員がいなくなる場合の債権者保護手続については個別催告の省略は認めないものとし,それ以外の場合については,株式会社の合併における債権者保護手続と同じ取扱いをするものとする。