動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱
平成十六年九月八日
法制審議会総会決定
第一 | 動産譲渡に係る登記制度の創設 |
一 | 登記の対象 法人が譲渡人である動産譲渡を登記の対象とするものとし、登記の対象となる動産譲渡に係る動産は個別動産であるか集合動産であるかを問わないものとする。 |
二 | 登記の効力 法人が譲渡人である動産譲渡は、民法第百七十八条の特例として、登記をもって第三者に対抗することができるものとする。 |
三 | 動産譲渡登記の存続期間 動産譲渡登記の存続期間は、十年を超えることができないものとする。ただし、十年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合は、この限りでないものとする。 |
四 | 登記事項の開示 |
1 | 登記事項の開示の対象者 登記事項の概要は何人に対しても開示するものとし、すべての登記事項は当該動産譲渡の当事者、当該動産譲渡に利害関係を有する者又は譲渡人の使用人に対してのみ開示するものとする。 |
2 | 動産譲渡登記事項概要ファイルの創設 動産譲渡登記がされるごとに登記事項の概要を譲渡人の法人登記簿に記録する制度(債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「債権譲渡特例法」という。)第九条参照)を設けることとはせず、譲渡人の本店又は主たる事務所の所在地の登記所に譲渡人ごとに編成する動産譲渡登記事項概要ファイル(仮称)を備えることとし、何人も当該ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができる制度を設けるものとする。 なお、動産譲渡登記事項概要ファイル(仮称)には、次のような方法で登記事項の概要を記録するものとする。 |
(一) | 動産譲渡登記をした登記官は、譲渡人の本店又は主たる事務所の所在地の登記所に対し、当該登記に係る登記事項の概要(注一)を通知しなければならないものとする。 |
(二) | (一)の通知を受けた登記所の登記官は、動産譲渡登記事項概要ファイル(仮称)に当該登記に係る登記事項の概要を記録するものとする。(注二) |
(注一) | 動産譲渡登記に係る登記事項の概要とは、債権譲渡登記の場合と同様に、登記をした旨、譲受人の表示、登記番号及び登記年月日とするものとする(債権譲渡特例法第九条第二項、債権譲渡登記規則第十六条第一項参照)。 |
(注二) | 法務省令において、譲渡人について商号変更の登記等があった場合には、動産譲渡登記事項概要ファイル(仮称)にその変更内容が反映されることとなる旨の規定を設けるものとする。 |
五 | 代理人の占有下にある動産の譲渡 代理人によって占有されている動産について、動産譲渡登記上の譲受人が代理人に対して当該動産の引渡しを請求した場合には、代理人は、遅滞なく、本人に対して、当該請求について異議がある場合には相当の期間内にこれを述べるべき旨を催告し、その期間内に本人が異議を述べなかったときは、その譲受人に当該動産を引き渡しても、本人に対する損害賠償の責めを負わないものとする。 |
六 | その他 その他所要の規定を整備するものとする。 |
第二 | 債権譲渡に係る登記制度の見直し |
一 | 債務者不特定の将来債権譲渡の公示 債権譲渡特例法による債権譲渡登記制度を見直し、債務者が特定していない将来債権の譲渡について、債権譲渡登記によって第三者に対する対抗要件を具備することができるようにするものとする。 |
二 | 譲渡に係る債権の総額 将来債権を譲渡する場合(既発生の債権と併せて譲渡する場合を含む。)には、譲渡に係る債権の総額を登記事項としないものとする。なお、既発生の債権のみを譲渡する場合には、現行法の規定のとおり、譲渡に係る債権の総額を必要的登記事項とするものとする(債権譲渡特例法第五条第一項第五号参照)。 |
三 | 債務者不特定の将来債権の譲渡に係る債権譲渡登記の存続期間 債務者不特定の将来債権を譲渡する場合(債務者の特定している債権と併せて譲渡する場合を含む。)には、債権譲渡登記の存続期間は、十年を超えることができないものとする。ただし、十年を超えて存続期間を定めるべき特別の事由がある場合は、この限りでないものとする。 |
四 | 登記事項証明書の交付請求権者 すべての登記事項を証明する登記事項証明書の交付請求権者に、譲渡人の使用人を加えるものとする(債権譲渡特例法第八条第二項参照)。 |
五 | 債権譲渡登記事項概要ファイルの創設 債権譲渡登記がされるごとに登記事項の概要を譲渡人の法人登記簿に記録する制度(債権譲渡特例法第九条)を廃止し、譲渡人の本店又は主たる事務所の所在地の登記所に譲渡人ごとに編成する債権譲渡登記事項概要ファイル(仮称)を備えることとし、何人も当該ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができる制度を設けるものとする。 なお、債権譲渡登記事項概要ファイル(仮称)には、次のような方法で登記事項の概要を記録するものとする。 |
1 | 債権譲渡登記をした登記官は、譲渡人の本店又は主たる事務所の所在地の登記所に対し、当該登記に係る登記事項の概要を通知しなければならないものとする。 |
2 | 1の通知を受けた登記所の登記官は、債権譲渡登記事項概要ファイル(仮称)に当該登記に係る登記事項の概要を記録するものとする。(注) |
(注) | 法務省令において、譲渡人について商号変更の登記等があった場合には、債権譲渡登記事項概要ファイル(仮称)にその変更内容が反映されることとなる旨の規定を設けるものとする。 |
六 | その他 その他所要の規定を整備するものとする。 |
附 | 帯要望事項 企業の倒産時における労働債権の法律上の保護の在り方については、本要綱案に基づいて立案される法律の施行後における動産・債権の譲渡の公示制度の利用状況等を踏まえ、なお検討することを要望する。 |